投資詐欺の法令と被害

投資詐欺の分類

詐欺の商材

いわゆる投資詐欺は、大昔からありますが、時代により流行りになる商材には違いがあります。IPOバブルに沸いた00年代には未公開株詐欺が隆盛でしたが、今では昔ながらの未公開株詐欺は、ほとんど見られません。

一昔前は、ファンド詐欺やFX自動売買詐欺、現在では、仮想通貨詐欺など、そのトレンドは時代に色濃く影響を受けます。

特殊詐欺

こうした詐欺的投資勧誘を行っているグループにはいくつかの系統があって、振込詐欺に端を発したグループは、反社会的勢力と密接に関係している特殊詐欺性が強い属性です。こうした中には、出資金の受け渡しも現金やレターパックを利用するなどして、足がつかないようにするなど、その業態がほとんど振込詐欺と区別ができないグループもあります。

振込詐欺を母体とするグループの勧誘対象顧客層は、多くの場合、高齢者であって、いわゆる名簿リストを利用した電話勧誘や訪問で出資を勧誘する傾向が強いです。勧誘の際には、時に劇場型勧誘をし、また、電話や書面で名乗る事業者や事務所が実在しないことも多く、受け子が詐欺罪で現行犯逮捕されたりすることもあります。

こうした特殊詐欺系のグループは、第三者の目線で見ると、少しでも実態を作って事業をしていれば、ただちに違法とは言えない状況となるのに、なぜわざわざ、自ら進んで現行犯逮捕の対象になる完全な詐欺をするのは不思議に思うこともあります。

しかし、実際にこうした特殊詐欺系のグループの実態を伝え聞くところ、経営は、ほぼ反社会的勢力が支配しており、従業員は、学校教育をほぼ受けておらず、場合によっては知的障害とのボーダーラインにいる者も多いとされ、社会に居場所がない若者の、事実上「セーフティーネット」になっているという実情もあるとされています。

MLM

ある意味で投資詐欺業界の底辺である特殊詐欺系業者に対して、MLM系のグループはそれよりも総じてマトモで、悪徳商法色が強いとはいえ、実態のあるオフィスと組織を備えている傾向があります。

MLM系のグループは、上位の役職者が高級車、高級時計、タワーマンション等の過度に瀟洒な生活を見せびらかして、また、SNSも併用して成功をキーワードに比較的若年の出資者を勧誘する傾向にあります。

MLM系の投資スキームの内容は、必ずしも完全な詐欺ではない場合も多く、場合によっては収益が出て配当がある程度続くケースも見られます。もっとも、資本コストという意味では、MLMは極めて効率の悪いスキームであって、モノの販売であればともかく、投資スキームでは、これが長期間、破綻せずに継続した例はほぼありません。

ポンジスキーム

投資詐欺では、出資者への配当は、他の出資者からの出資金を充当する、いわば蛸配当の形式で運営されていることが多く、これをポンジスキームとも呼称します。被害額の大きい経済事件では、結果的にポンジスキームの形態で運営されていたことが後日発覚することが一般的です。

こうした業態は、MLMの形態で勧誘されるケースが多いです。総じて、代表者のカリスマ的な魅力に依存していたり、又は自動売買、アービトラージ、外国での運用等の素人を煙に巻くパワーワードがキーワードになっており、豪華なセミナーや海外を絡めた横文字スキームでの勧誘を行うケースが多くなっています。

先物系

MLM系以外に有力な勧誘スキームとして、当該業者は正規の登録をしていないものの、役職員のキャリアを遡ると商品先物取引業界出身である事業者が存在します。

こうした事業者は、業界用語で「マメ屋」とも言います。

商品先物取引業界の中でも、商品先物取引法制定までは、無登録で業務を行うことができた、いわゆるロコロンドン取引を手掛けていた業者は、総体的に問題がある事業者が多いとされます。こうした業態では、高齢者を主たるターゲットとして、いわゆる「リスト」を使って電話勧誘し、訪問で契約を取る業態が多くなっています。

総じて先物取引系の業者は、二酸化炭素排出権取引などのある程度適法性が検討されており、かつ、詐欺とまでは言えない一定の実態がある取引を提供することが一般的です。商品先物取引系の事業者は、金地金取引や訪問買取(押買い)のスキームも、多く用いる傾向にあります。

なお、商品先物取引業者としての許可や、金融商品取引業者として登録を受けている正規の業者は、こうした悪徳商法・詐欺的商法の概念には当てはまらず、正規の手続きを経て正当な事業を行っている事業者であることを併せて申し添えます。

詐欺性のないスキーム

単に出資金を返還できないだけの状態というだけでは、投資詐欺であると断定することはできません。実際に真面目に投資スキームが運営されていたとしても、結果的に全損となる場合も珍しくないからです。

出資者に損害を与えて、出資金が全損となったという意味では、かつてのJAL、そごう、ダイエーなども同じように出資者(株主)にはほぼ1円も返金できない破綻劇となりましたが、これを詐欺という人はいないでしょう。

投資スキームの適法性の分析方法

参考のため、我々業規制の専門家がこうした投資スキームの適法性を検討するうえで、どのような観点とチェックポイントから検討を加えているのか解説します。

なお、当事務所は消費者の相談は受けておりません。よって、以下の説明は事業者側のリーガルチェックをベースとする分析の目線です。

絶対的禁止事項

詐欺罪

出資対象事業の不存在の場合には、詐欺罪に該当すると考えられます。しかしながら、詐欺罪であることを立証するのは非常に難しく、金融商品取引法違反の無登録営業であったとしても、実際に出資対象事業を、例え出資金のごく一部であっても行っていた場合には、詐欺罪で立件できる可能性は相当に低くなります。

出資対象事業の成否に関わらず、実際に事業を行っていた事実はあって、また、数年などの比較的長期間にわたって配当が行われてきた場合には、詐欺罪で立件される例をあまり見ません。逆に言えば、出資対象事業が存在していなかったり又は著しく事実と異なる説明が行われていたり、運用が実際に行われていなかったりといった事業がない限りは、詐欺罪で立件される可能性は低いといえます。

破綻時点でのオーナーは全国の約7万3千人、負債総額が約4300億円の大型経済事件になった安愚楽牧場事件でも、元社長らは詐欺罪では不起訴となりました。同事件は、結局特定預託法違反に矮小化され、元代表取締役は2016年の控訴審判決で、実刑ながらもその刑期はわずか懲役2年6月に終わっています。

出資法違反

銀行や信用金庫等の預金取扱金融機関を除き、不特定多数から、元本を約して出資を募る行為は、出資法違反にあたります。元本と配当利回りを約して不特定多数から出資金集めをする事業者は、必ず悪質事業者です。

しかし、投資リテラシーの低い層には、しっかりとしているものの難しい投資商品よりも、シンプルで素人でも理解できる仕組みの投資商品のほうが売りやすいという構造的問題もあって、毎月の配当利回りと元本保証を謳う出資法違反の資金募集が後を絶ちません。

こうした出資法違反は、金銭消費貸借契約や社債の形態で行われることも多くなっています。出資法違反は下記のように如何なる名義をもってするか問わないため、金銭消費貸借、社債はもちろん、ファンドや社員権への投資契約の形態であっても、書面又は口頭で元本や利回りの保証を約して出資金を受け入れる場合には、出資法違反を構成します、

(出資金の受入の制限)
第一条 何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。

第二条 業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。
2 前項の「預り金」とは、不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであつて、次に掲げるものをいう。
一 預金、貯金又は定期積金の受入れ
二 社債、借入金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、前号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの

業規制・開示規制

金融商品取引法違反

開示規制

株式や社債の発行者(すなわち、会社自身)による出資者を募集する行為は、金融商品取引業に該当せず、これを行っても、それだけでは金融商品取引法違反にはなりません(詐欺罪や出資法違反になるかどうかはまた別の話です。)。しかしながら、金融商品取引法は、こうした有価証券を一定以上の金額・人数から募集する場合には、有価証券届出書の提出を義務付けています。

これは、大人数に販売する有価証券は、その内容を予め国に届出して、関係者が予めその会社の財務内容を確認できるようにするための制度です。

有価証券届出書を出さずに私募できる条件は、株式、社債に関しては一定の条件を満たす同一の有価証券で半年間(改正案施行後は3か月)で49人になっています。発行金額が1億円未満の場合には、有価証券届出書は免除されるものの、いずれにせよ1000万円を超える場合には、有価証券通知書の提出義務があります。

合同会社社員権等の二項有価証券の場合は、有価証券投資事業権利等に該当する一定の場合に限り有価証券届出書の提出義務があります。私募の人数制限は総数で499人です。

有価証券により同一とみなす条件が決まっており、これを超える人数の募集をする場合で、事前に有価証券届出書又は有価証券通知書を出していない場合には、無届募集として金融商品取引法違反になります。

また、保有者の総数が一定の条件を満たす場合にも、有価証券報告書の対象になります。有価証券報告書を提出しない場合も、金融商品取引法違反を構成します。

原則として次に掲げる有価証券の発行者は、事業年度ごとに有価証券報告書を提出しなければなりません。

金融商品取引所に上場されている有価証券
店頭登録されている有価証券
募集または売出しにあたり有価証券届出書または発行登録追補書類を提出した有価証券
所有者数が1000人以上の株券(株券を受託有価証券とする有価証券信託受益証券及び株券にかかる権利を表示している預託証券を含む。)または優先出資証券(ただし、資本金5億円未満の会社を除く。)、及び所有者数が500人以上のみなし有価証券(ただし、総出資金額が1億円未満のものを除く。)

関東財務局HP

業規制

無登録営業

金融商品取引法第2条第5号及び第6号は、民法に規定する組合契約、商法に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約、有限責任事業組合契約、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、出資者が出資又は拠出をした金銭等を充てて行う事業から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、一定の除外項目に該当しないもの及びで外国におけるこれに類するものは、すべて金融商品取引法の規制対象である「ファンド」であると定めています。

一定の除外項目とは、全員が事業に参加する場合(JV等)や、株式、社債、投資信託、社員権等の金融商品取引法ですでに別途の有価証券として定まっている場合です。

つまり、出資をして事業が行われ、それに基づく配当があるものは、株式や社員権等の法令で明確に適用除外が明記されている有価証券を除いて、すべて「ファンド」であって、その募集には第二種金融商品取引業の登録が必要になるということです。

よって、配当を約して無登録で出資金集めをしているケースでは、多くの場合、金融商品取引法違反(無登録営業)で立件が行われます。

エージェント多段階構造

MLM系のグループは、エージェント、代理店等と称する多層構造の勧誘を行うことが多くなっています。金融商品取引法では、有価証券の私募の取扱い、売買の媒介等のいわゆる「代理店」業務は、金融商品取引業(有価証券の種別に応じて第一種金融商品取引業又は第二種金融商品取引業)に該当します。

株式、社債は、少人数相手に会社自身が募集している限り適法であり、また合同会社社員権の場合には、有価証券投資事業権利等に該当する場合には499人、該当しない場合にはこれを超えて不特定多数に取得勧誘しても、法令には違反しません。しかしながら、こうしたエージェントは、法令上会社自身ではなく、独立代理店による募集と見られますので、エージェントには金融商品取引業登録が求められます。

これを行わずに、MLM等で有価証券の取得勧誘が行われている場合には、金融商品取引法に違反していますので、金融商品取引法違反(無登録営業)で立件が行われます。

資金決済法違反

業規制

無登録営業

暗号資産の売買、交換等は暗号資産交換業に該当しますので、いわゆる独自コイン、独自トークンの販売は、暗号資産交換業者に委託しない限りは、資金決済法に違反する無登録営業です。暗号資産交換業に登録せずに、海外発行等で暗号資産を居住者相手に勧誘できないかという相談を頂くことがありますが、外国暗号資産交換業者は居住者に対する勧誘は禁止されており、居住者向けの勧誘対象無限定の日本語サイトを開設する時点で資金決済法に違反します。

エージェント多段階構造

資金決済法でも、金融商品取引法と同じく、暗号資産の売買の媒介は暗号資産交換業に該当します。よって、暗号資産投資に関する代理店、エージェントも、暗号資産交換業の登録が必要になります。MLM形式で、各種暗号資産を販売しているエージェントは、基本的に資金決済法に違反していると考えていいでしょう。

銀行法違反

詐欺的スキームでは、集金者から、投資先へ資金を集約するため、多くの場合、銀行法に定める為替取引に該当する行為が行われます。これを察知した銀行による口座凍結を避けるため、独立エージェントである勧誘員が現金で資金を預かって、関連会社から最終投資先に資金を送金したり、海外投資スキームでは国際送金したりといった行為が多く行われています。

こうした行為は銀行法の規制する為替取引に該当し、銀行免許を受けるか、又は資金決済法に基づく資金移動業の登録が必要になります。

なお、海外事業を行う実態が不明の投資スキーム業者から、資金の決済手段を確保するために資金移動業の登録をしたいとの相談を受ける場合がありますが、財務局はそこまで愚かではありませんので不可能です。基本的に、怪しげなスキームを合法化するために登録業者を買収しても、当局はそうした業務を認めないので、買収資金は無駄になります。

特定預託法違反

上記は、「出資」させる契約形態での各種法令の適用を議論してきましたが、法令は出資ではなく、売買とその後の取引の組み合わせによる、実物投資スキームも規制対象にしています。豊田商事事件等を受けて、現在、貴金属や和牛などの限られた商品のみ、特定預託法で、事業者は情報公開、クーリングオフ、書面交付等が義務付けられています。

しかしながら、令和3年特定預託法改正で、原則として預託商法は禁止となることが予定されており、今後はいわゆる現物まがい商法も広く禁止の対象となります。

勧誘手法規制

特定商取引法違反

いわゆる訪問販売規制、連鎖販売規制等を定める消費者保護の法律である特定商取引は、投資詐欺の立件でも多く利用されています。

消費者庁、都道府県は不実告知、クーリングオフ妨害、書面不交付等の特定商取引法違反での立ち入り検査や行政処分を頻繁に行っており、また、警察も事件の捜査において、立証が容易な形式犯である特定商取引法違反や、場合によっては同じく形式犯性がある金融商品取引法違反を取り掛かりにして、詐欺的事業者の立件を行う場合があります。

特定商取引法違反や、見方によっては金融商品取引法違反も、いわゆる形式犯の色彩が強い犯罪です。また、これらは法定刑が軽く、立件に求められる高度な法令理解に比して、量刑はいわゆる「ションベン刑」しか期待できない犯罪として、それ単独の立件は避けられる傾向があります。しかし、その先に詐欺罪の成立可能性が見通せたり、又は特殊詐欺グループの関与が明白で、悪質性が強い場合には、捜査当局も積極的に刑事事件として立件する例が見られます。

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