固定的利回りの出資勧誘と出資法

元本保証・配当固定の禁止と歴史

金融商品取引業者又は登録金融機関出身者には、感覚的に理解しにくいのですが、世間の一定層の投資案件では「元本保証」「毎月固定利率での配当」という形態での出資金集めが行われています。しかしながら、法令上はこうした行為は、いわば「疑似銀行」行為であり、法律で禁止されている犯罪なのだと認識する必要があります。

歴史的経緯を見ると、昭和20年代には、保全経済会、光クラブ、広島殖産等、元本保証で出資金を集め、高利で貸付を行う疑似銀行の業態が広く存在しました。インフレーションを背景に、出資者に高利を約束して出資を集めて、事業者に対して超高利で貸付を行うというこうした業態は、当初より適法性が疑わしい存在でした。

最終的には、保全経済会事件は詐欺罪等で理事長が逮捕されました。光クラブは物価統制令違反で立件されたほか、大蔵省内では銀行法違反での立件が検討されたとされます。また、広島殖産は、貯蓄銀行法違反で解散させられたと記録に残っています。

これらの事業は、現代における同種の金集めと異なり、高いインフレ率による資金不足を背景として、当初はビジネスとして成立していました。事業の収益性自体は、超高金利を払ってでも当座の資金を確保したいという企業からの強い資金需要に裏付けられていたためです。

とはいえ、銀行等と異なり脆弱な資本的業務的基盤しか持たないこれらの事業者は、当局の取締やドッジラインによるインフレ率低下、スターリン暴落等の外部環境の変化により容易に破たんし、実際に広く消費者被害を与えました。これらの経緯を受け、昭和29年法律第195号「出資法」が制定されました。

出資法の制限内容

出資法は、第1条で出資金の受入の制限を定め、「何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。」としています。

また、第2条では預り金の禁止を定め、「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。」「前項の「預り金」とは、不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであつて、次に掲げるものをいう。」「1 預金、貯金又は定期積金の受入れ、2 社債、借入金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、前号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの」と定めており、名義の如何を問わず、金融機関以外が元本保証して公衆から資金を集める行為を禁止しています。

金融庁のガイドラインは預り金の定義を「不特定かつ多数の者が相手であること、金銭の受け入れであること、元本の返還が約されていること、主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること」としています。

つまり、出資話でよくある「元本保証」「何年後に元本は返済する」「配当は月(年)〇%を払う」というスキームは、どんな契約の名義を用いようと、基本的に縁故者(親族又は既存取引先等のごくごく狭い特定の者)以外にこれを行った場合、犯罪であるということです。

なお、出資法には、他にも「浮貸し等(金融機関の職員がその地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金銭の貸し付け、金銭の貸借の媒介又は債務保証をすることをいう。典型的には、銀行員が銀行を通さずに顧客間の融資を仲介する行為。 )の禁止」「金銭貸借等の媒介手数料の制限」「高金利の処罰(超高金利への刑事罰を定める)」等が定められています。

戦後経済と出資法

出資法には、出資の受入れの禁止、銀行員の浮き貸しの禁止、高金利の処罰と、一見するとお互いに関係ないような条項が並んでいます。しかしながら、これらを「昭和20年代の日本経済」という文脈で把握すると、その関係がすっきりと理解できます。

太平洋戦争による産業供給力の破壊を原因とした高インフレ、物不足を背景にして、戦後直後の事業者は常に手元資金が不足する状況に置かれていました。一方で、原料を仕入れて製造さえすれば、物価の上昇も激しく買い手もいるので必ず儲かる、という構造もあり、事業者の運転資金需要は極めて旺盛でした。

そのため、従来の業規制であった金融業取締規則が新憲法施行と同時に失効したことと併せ、戦後直後の高利貸しは莫大な利益を上げることができました。例えば、貸金業者であった森脇将光氏は1948年度の長者番付で日本1位になっています。

しかしながら、貸金業務を営むには多額の資本が必要です。いわゆる金主を見つけてくることができればいいのですが、そうでない場合には、不特定多数の個人から資金を調達する必要があります。そのために、新聞等で広告を出して不特定多数から出資金を募ったのが、保全経済会や光クラブであり広島殖産なのです。

また、こうした超高利貸しが極めて儲かることを目の当たりにした多くの銀行員は、相対的に低金利な自行から融資を行うよりも、借入希望者と貸付希望者を個人的にマッチングして、双方から手数料をもらったほうが儲かると考えました。その結果、銀行員の間で浮き貸しが横行したのです。

高金利は、物価統制令(通称「マル公」)で制限されていましたが、戦後のインフレーションでその違反への罰則は有名無実となり、高金利処罰は昭和20年代初めには、法規制として実効性を失っていました。出資法は、これらのアプレゲール的な行為を一括して取り締まる法律だったといえます。

疑似銀行業務への規制と未来

出資法の解釈において、貸金業者等のノンバンクが社債を発行することは、「不特定多数の者からの金銭の受入」に該当するものとされていたため、ノンバンクは社債を発行することができず、出資法制定以来、長らく預金受け入れ金融機関以外が疑似銀行行為を行うことは禁止されてきました。

平成11年に、規制緩和により「金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律」により、登録を受けたノンバンクであれば貸付業務のための社債を発行することは可能になりましたが、登録を受けていない貸金業者は、依然として貸付業務のための社債を発行することは禁止されています。

このように、出資法は長年にわたり我が国の疑似銀行行為を取り締まってきた重要な法律であり、例え「投資」「ファンド」等の名目であっても、元本を保証したり、利回りを固定したりする出資金集めは、原則として犯罪になるということをすべての前提に考える必要があります。

しかしながら、近年急速に成長している、元利を保証しない匿名組合形式で第二種金融商品取引業者として出資金を募り、貸金業登録に基づき資金の貸し付けを行う「貸付型クラウドファンディング」及び「ソーシャルレンディング」(以下「貸付型ファンド」)は、非常に興味深い業態です。

上記の歴史的経緯を踏まえると、貸付型ファンドが新たな疑似銀行業務の変種であることはわかりますが、契約上元本保証をしないために出資法の規制対象にはなりません。貸付型ファンドに関して、法令や自主規制団体規則が綿密に定まっており、既にその適法性が確立されています。

貸付型ファンドは、従来、根強い需要がありながら、規制上の理由で存在することができなかった「疑似銀行業務」に対するニーズに応えることができます。よって、個人的にはその業界規模は、今後さらに拡大していく可能性があると見ています。

※当事務所は事業者向けにサービス提供を行っており、消費者相談は行いません。

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