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電子申込型電子募集取扱業務とは

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電子申込型電子募集取扱業務とは情報提供義務契約締結前交付書面記載事項訪問又は電話の禁止親法人・子法人の関与する行為の制限業務管理態勢審査義務目標募集額の扱い発行者が応募代金の払込みを受けることがないことを確保するための措置クーリングオフ顧客への情報提供不動産特定共同事業での重畳適用

電子申込型電子募集取扱業務とは

電子申込型電子募集取扱業務とは、平成 27 年 5 月 29 日付けで施行された改正金融商品取引法において規定された電子募集取扱業務のうち、金融商品取引業等に関する内閣府令第 70 条の2第3項第1号及び第2号に掲げる方法により顧客に有価証券の取得の申込みをさせる業務をいいます。

具体的には、第1号は、ウェブサイト等を閲覧させることにより投資家から申し込みを受け付ける方法、第2号は、第1号によりウェブサイト等を閲覧させた後にメール等の通信により申し込みを受け付ける方法です。第2号で「音声の送受信による通話を伴う場合を除く」とありますので、ウェブサイト等に募集要項のみを掲載して、音声電話で申し込みを受け付ける方法は、電子申込型電子募集取扱業務ではなく、単なる電子募集取扱業務に該当するということになります。

3 前項第二号から第七号までの「電子申込型電子募集取扱業務等」とは、電子申込型電子募集取扱業務(電子募集取扱業務のうち、次に掲げる方法により当該電子募集取扱業務の相手方(以下この項において「顧客」という。)に有価証券の取得の申込みをさせるものをいう。以下この項において同じ。)又は第一種少額電子募集取扱業者若しくは第二種少額電子募集取扱業者が行う電子募集取扱業務(電子申込型電子募集取扱業務に該当するものを除く。以下この項において同じ。)及びこれらの業務において取り扱う募集又は私募に係る有価証券についての法第二条第八項第九号に掲げる行為(電子申込型電子募集取扱業務又は第一種少額電子募集取扱業者若しくは第二種少額電子募集取扱業者が行う電子募集取扱業務に該当するものを除く。)をいう。
一 金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された顧客が申し込もうとする有価証券に関する事項を電気通信回線を通じて顧客の閲覧に供し、当該金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該顧客の申込みに関する事項を記録する方法
二 金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機と有価証券の取得の申込みをしようとする顧客の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて又はこれに類する方法により顧客が申し込もうとする有価証券に関する事項を送信し(音声の送受信による通話を伴う場合を除く。)、当該金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該顧客の申込みに関する事項を記録する方法

金融商品取引業等に関する内閣府令第 70 条の2第3項

電子募集取扱業務で詳述した一定の種別の有価証券について電子申込型電子募集取扱業務を行う金融商品取引業者は、電子募集取扱業務特有の規制に加えて、電子申込型電子募集取扱業務特有の規制に服します。

特有の規制には、金融商品取引法及び同政令内閣府令に加え、自主規制団体による規則があります。

第二種金融商品取引業務として行う場合には、一般社団法人第二種金融商品取引業協会の「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」(以下「電子募集規則」という。)が適用されるほか、第一種金融商品取引業務(第一種少額電子募集取扱業務に限る)として株式投資型クラウドファンディング業務を行う場合には、日本証券業協会「株式投資型クラウドファンディング業務に関する規則」(以下「クラウドファンディング規則」)が適用になります。

なお、第一種金融商品取引業務としての電子申込型電子募集取扱業務は、ほぼ株式投資型クラウドファンディング業務として行われています。その他に、私募社債の電子申込型電子募集取扱業務も見たことはありますが、株式投資型クラウドファンディングその他第一種金融商品取引業務の場合の詳細は第一種少額電子募集取扱業に関する別途の記載に譲ります。そこで、本項目では、以下、とくに第二種金融商品取引業に関する記載に重点をおいて説明していきます。

ちなみに、第二種少額電子募集取扱業務という制度があり、正規の第二種金融商品取引業の登録を受けなくとも、少額のファンドに関する電子申込型電子募集取扱業務ができる登録種別がありますが、こちらに書いた通り、緩和的規制が僅かでメリットがほぼなく、制度として事実上利用されていません。

情報提供義務

電子募集取扱業務の項目で記載した通り、電子募集取扱業務を行う場合、金融商品取引法43条の5及び金融商品取引業等に関する内閣府令146条の2に基づき、手数料等、リスク及び追加的な契約締結前交付書面記載事項について、電子募集取扱業務を行う期間中、見やすい箇所に明瞭かつ正確に表示して提供することが義務づけられます。

さらに、第二種金融商品取引業務として電子募集取扱業務を行う場合は、電子募集規則第4条で、募集又は私募の取扱いの期間中の閲覧に関して「正会員及び電子募集会員は、電子申込型電子募集取扱業務等において、募集又は私募の取扱いに関する申込期間中は、当該正会員及び電子募集会員の運営するホームページにおいて、当該募集又は私募の取扱いの内容を投資者が閲覧できる状態におかなければならない。」と定めています。

さらに、電子募集規則第5条では、「電子募集取扱業務についての情報提供」として、以下のような義務を定めており、ウェブサイト上に、以下のような事項の記載を設けて、顧客が閲覧可能な状態に置く必要があります。電子申込型電子募集取扱業務等の参入の際には、財務局にウェブサイトの遷移図の提出を求められることになりますが、サイト案にあらかじめ下記のような事項を盛り込んでおく必要があります。

(電子募集取扱業務についての情報提供)
第 5 条 正会員及び電子募集会員は、金商法第 43 条の5に規定する措置を講ずるに当たっては、金商業等府令第 146 条の2の規定を遵守するものとする。
2 正会員及び電子募集会員は、電子申込型電子募集取扱業務等を行うに当たっては、次の各号に掲げる事項について、金商業等府令第 146 条の2第3項の事項と同等のものとみなして、同条の規定を遵守するものとする。
① 電子申込型電子募集取扱業務等として行う旨
② 電子申込型電子募集取扱業務において取り扱う有価証券について金商法第2条第8項第9号に掲げる行為(電子申込型電子募集取扱業務に該当するものを除く。)を自ら行う場合にはその旨
③ 電子申込型電子募集取扱業務において取り扱う有価証券について第 18 条の規定に基づき他の金融商品取引業者又は登録金融機関に募集又は私募の取扱いを委託する場合にはその旨
④ 電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券に関して、金融商品取引法上の開示は義務付けられていない旨
⑤ 事業者が作成する第 36 条第1項及び第2項に掲げる書類について、公認会計士又は監査法人による外部監査を受けていない場合にはその旨
⑥ 分配金の一部又は全てが元本の一部払戻しに相当することがある場合にはその旨
⑦ 電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券について、その換金性が著しく乏しい場合などの場合にはその旨
⑧ 出資対象事業の終了までの間、出資対象事業の持分に係る契約の中途での解約が禁止又は制限されている場合には、その旨及びその制限の内容
⑨ 電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券について、当該有価証券の売買を行ったとしても、その権利の移転が事業者に認められない可能性がある場合にはその旨
⑩ 顧客が取得する有価証券の価値が消失する等、その価値が大きく失われるリスクがあること
⑪ 正会員は、電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券及びその発行者に関する投資者からの照会に対して、電話又は訪問の方法により回答することができないこと。
⑫ 電子募集会員は、第二種少額電子募集取扱業務において取り扱う有価証券及びその発行者に関する投資者からの照会に対して、金商業等府令第6条の2各号に規定する方法以外の方法で回答することができない旨
⑬ 顧客が電子申込型電子募集取扱業務等に関して正会員又は電子募集会員に照会する場合の連絡方法
⑭ 第 33 条第2項の規定により、正会員及び電子募集会員が事業者に募集申込金を支払う場合にはその旨
⑮ 正会員及び電子募集会員は、事業者の作成する第 36 条第1項及び第2項に掲げる書類について、当該正会員及び電子募集会員の運営するホームページ等の顧客専用画面において顧客に提供を行う旨
⑯ 事業者と正会員及び電子募集会員との間で利害関係が認められる場合にはその内容
⑰ 第 20 条の適用がある場合にはその旨

3 正会員及び電子募集会員は、前項第4号から第 10 号まで、第 14 号及び第 19 号に掲げる事項については、金商業等府令第 146 条の2第2項に規定する措置と同様の措置を講じなければならない。

電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則第5条

さらに、表示を巡っては、電子募集規則第13条では「正会員及び電子募集会員は、電子申込型電子募集取扱業務等において、顧客に対して、顧客自身の判断と責任において金融商品取引を行うべきものであることを、当該正会員及び電子募集会員の運営するホームページ等を用いて表示しなければならない」との規則もあります。

また、同第15条には「正会員及び電子募集会員は、電子申込型電子募集取扱業務等に関して、出資対象事業の性質上、又は出資対象事業の持分に係る契約により、その事業の終了までの間、中途での解約が禁止又は制限されている場合には、その旨を当該正会員及び電子募集会員の運営するホームページ等を用いて表示しなければならない」とありますので、留意する必要があります。

また、第一種少額電子募集取扱業務として行う場合には、クラウドファンディング規則第9条にウェブサイトにおける情報提供に関する定めがあります。

契約締結前交付書面記載事項

電子募集取扱業務では、当該有価証券の発行者の商号、名称又は氏名及び住所、当該有価証券の発行者が法人であるときは、代表者の氏名、当該有価証券の発行者の事業計画の内容及び資金使途が契約締結前交付書面の記載事項として追加されます。

さらに、電子申込型電子募集取扱業務等(電子申込型電子募集取扱業務又は第一種少額電子募集取扱業者若しくは第二種少額電子募集取扱業者が行う電子募集取扱業務(電子申込型電子募集取扱業務に該当するものを除く))では、金融商品取引業等に関する内閣府令第83条第6項に基づき、以下の項目がさらに追加になります。

六 電子申込型電子募集取扱業務等の場合にあっては、次に掲げる事項
イ 申込期間
ロ 目標募集額
ハ 当該有価証券の取得に係る応募額が目標募集額を下回る場合及び上回る場合における当該応募額の取扱いの方法
ニ 当該有価証券の取得に係る応募代金の管理方法
ホ 第七十条の二第二項第三号に規定する措置の概要及び当該有価証券に関する当該措置の実施結果の概要
ヘ 電子申込型電子募集取扱業務等に係る顧客が当該有価証券の取得の申込みをした後、当該顧客が当該申込みの撤回又は当該申込みに係る発行者との間の契約の解除を行うために必要な事項
ト 当該有価証券の取得に関し、売買の機会に関する事項その他の顧客の注意を喚起すべき事項
七 (略)

金融商品取引業等に関する内閣府令第83条第6項

第二種金融商品取引業務として行う場合には、電子募集規則第6条第1項では「正会員及び電子募集会員は、電子申込型電子募集取扱業務等において、契約締結前交付書面を交付するに当たっては、前条第2項各号に掲げる事項(該当する事項に限る。この条において同じ。)を含めて記載しなければならない。」と定めており、電子募集取扱業務についての情報提供の項目の諸々記載事項を契約締結前交付書面にも反映する必要があります。

また、第一種少額電子募集取扱業務として行う場合には、クラウドファンディング規則第10条に契約締結前交付書面に関する定めがあります。さらに、同第11条は「株式投資型クラウドファンディング業務による店頭有価証券の取得を初めて行う顧客から、契約締結前交付書面に記載された金融商品取引行為についてのリスク、手数料等の内容を理解し、当該顧客の判断及び責任において当該取得を行う旨の確認を得るため、あらかじめ、前条第1項に掲げる事項を含む所定の書面を作成するとともに当該顧客に交付し、株式投資型クラウドファンディング業務による店頭有価証券の取得に関する確認書を徴求」しなければならないと定めています。

訪問又は電話の禁止

第二種金融商品取引業務として電子申込型電子募集取扱業務を行う場合には、電子募集規則第9条により訪問又は電話による勧誘が禁止されることになります。

第一種少額電子募集取扱業務として行う場合には、クラウドファンディング規則第12条に勧誘手法併用の禁止に関する定めがあります。また、同3条では株主コミュニティにおける募集等の取扱い等との併用禁止が定められていることも注目されます。

(訪問又は電話の禁止等)
第 9 条 正会員は、電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券について、顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、金商法第2条第8項第9号に掲げる行為を行ってはならない。
2 電子募集会員は、第二種少額電子募集取扱業務以外の方法で募集の取扱い又は私募の取扱いを行ってはならない。

電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則第9条

(勧誘手法併用の禁止)
第 12 条 会員等は、電話又は訪問の方法等、金商業等府令第6条の2各号に規定する方法以外の方法により、株式投資型クラウドファンディング業務に係る投資勧誘を行ってはならない。

株式投資型クラウドファンディング業務に関する規則第12条

親法人・子法人の関与する行為の制限

金融商品取引業等に関する内閣府令153条第1項第14号で、当該金融商品取引業者の親法人等又は子法人等が発行する有価証券に係る電子申込型電子募集取扱業務等を行うことが禁止行為になっています。

これは金融商品取引法第44条の3の銀証分離規制(グラス・スティーガル法)関連の禁止行為です。

また、電子募集規則第10条でも「正会員又は電子募集会員の親法人等又は子法人等が関与する行為の制限」として、「正会員及び電子募集会員は、当該正会員及び電子募集会員の親法人等又は子法人等が発行する有価証券に係る電子申込型電子募集取扱業務等を行ってはならない」と定まっています。

これに関しては、証券取引等監視委員会が公表した令和3年の証券モニタリング概要・事例集で〔金商法第 44 条の3第1項第4号に基づく金商業等府令第 153 条第1項第 14 号〕「当社は、電子申込型電子募集取扱業務等を行うにあたり、単に当社が当該発行者の議決権を直接保有していないことをもって、当該発行者が当社の子法人等へ該当しないとの判断しており、対象となる有価証券の発行者について、出資、人事、資金、技術、取引等を踏まえた慎重な検討を行った上で、当該発行者が当社の子法人等へ該当するかどうかを判断していなかった。その結果、当社は、当社の子法人等が発行する有価証券に係る電子申込型電子募集取扱業務等を行っていた。」との第二種金融商品取引業者への指摘事例が掲載されています。

倒産隔離スキーム、SPC等を利用した証券化スキームにおける電子申込型電子募集取扱業務の利用の可否は、同14号及び同15号をも踏またうえで、個別の事案の性質や第二種金融商品取引業者の関与の程度を踏まえて精密な検討が必要になりますので、留意が必要です。

業務管理態勢

業務管理態勢整備義務のうち、電子申込型電子募集取扱業務に固有に適用される規制に関しては、以下のように定まっています。

(業務管理体制の整備)
第三十五条の三 金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業又は登録金融機関業務を適確に遂行するため、内閣府令で定めるところにより、業務管理体制を整備しなければならない。

金融商品取引法第35条の3

(業務管理体制の整備)
第七十条の二 (略)
2 法第三十五条の三の規定により金融商品取引業者等(電子募集取扱業務を行う者又は第六条の二各号に掲げる方法により法第二条第八項第七号に掲げる行為(法第三条各号に掲げる有価証券又は金融商品取引所に上場されていない有価証券(令第十五条の四の二各号に掲げるものを除く。)について行う場合に限る。)を業として行う者に限る。第二号において同じ。)が整備しなければならない業務管理体制は、前項の要件のほか、次に掲げる要件を満たさなければならない。
(略)
三 電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱おうとする有価証券に関し、その発行者の財務状況、事業計画の内容及び資金使途その他電子申込型電子募集取扱業務等の対象とすることの適否の判断に資する事項の適切な審査(電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の募集又は私募に係る顧客の応募額の目標として設定した金額(次号及び第五号並びに第八十三条第一項第六号ロ及びハにおいて「目標募集額」という。)が発行者の事業計画に照らして適当なものであることを確認することを含む。)を行うための措置がとられていること。
四 電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の募集又は私募に係る顧客の応募額が顧客が当該有価証券の取得の申込みを行うことができる期間(次号及び第八十三条第一項第六号イにおいて「申込期間」という。)内に目標募集額に到達しなかった場合及び目標募集額を超過した場合の当該応募額の取扱いの方法を定め、当該方法に関して顧客に誤解を生じさせないための措置がとられていること。
五 電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の募集又は私募に関して、顧客の応募額が申込期間内に目標募集額に到達したときに限り当該有価証券が発行される方法を用いている場合には、当該目標募集額に到達するまでの間、発行者が応募代金(これに類するものを含む。第七号及び第八十三条第一項第六号ニにおいて同じ。)の払込みを受けることがないことを確保するための措置がとられていること。
六 電子申込型電子募集取扱業務等に係る顧客が電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の取得の申込みをした日から起算して八日を下らない期間が経過するまでの間、当該顧客が当該申込みの撤回又は当該申込みに係る発行者との間の契約の解除を行うことができることを確認するための措置がとられていること。
七 発行者が電子申込型電子募集取扱業務等に係る顧客の応募代金の払込みを受けた後に、当該発行者が顧客に対して事業の状況について定期的に適切な情報を提供することを確保するための措置がとられていること。
八 (略)

金融商品取引業等に関する内閣府令第70条の2

第3号 審査義務

取り扱おうとする有価証券に関し、その発行者の財務状況、事業計画の内容及び資金使途その他電子申込型電子募集取扱業務等の対象とすることの適否の判断に資する事項の適切な審査を行うための措置をとることを規定しています。

第二種金融商品取引業務として電子申込型電子募集取扱業務を行う場合には、電子募集規則第23条は、具体的な審査の際の独立性の要件として以下の条件を示しています。

(1)専門の審査部門を設置すること。
(2) 審査業務を遂行する担当者(以下「審査担当者」という。)は、募集又は私募の取扱いを推進する業務(営業業務)に携わらないこと。
(3) 審査部門を担当する責任者は、募集又は私募の取扱いを推進する部門(営業部門)を担当する責任者とならないこと

そして、具体的には次に掲げるすべての要件を満たしている場合は、これらの要件を満たしているものとみなすとしています。

(1) 審査担当者は、当該審査案件に係る募集又は私募の取扱いを推進する業務(営業業務)に携わらないこと。
(2) すべての審査案件について、電子募集業内部管理統括責任者を含む複数の責任者等から構成される会議体により、募集又は私募の取扱いを行うかの判断を行うこと。
(3)電子募集業内部管理統括責任者が、募集又は私募の取扱いの判断に係る資料及び情報の重要性について分析及び評価を行い、募集又は私募の取扱いを行うかの判断について、その過程の適正性を確認すること。

さらに、電子募集規則第24条から第27条は、審査に係る社内規則及び社内マニュアルの整備、社内記録の作成、保存、社内規則等の遵守の確認に関して、それぞれ組織体制に関する定めを置いています。

具体的な募集又は私募の取扱いに関する審査の実施に関しては、電子募集規則第28条から31条に定めが置かれています。なお、発行者審査に関しては、こちらの記事で詳述していますので、併せてご参照ください。

また、第一種少額電子募集取扱業務として行う場合には、クラウドファンディング規則第4条において発行者についての審査義務が定められています。

第4号 目標募集額の扱い

取り扱う有価証券の募集又は私募に係る顧客の応募額が申込期間内に目標募集額に到達しなかった場合及び目標募集額を超過した場合の当該応募額の取扱いの方法を定め、当該方法に関して顧客に誤解を生じさせないための措置をとることが求められています。第二種金融商品取引業務では、電子募集規則で具体的な定めがあります。

(募集申込金の管理等)
第 33 条 正会員及び電子募集会員(当該正会員及び電子募集会員の資本金の額又は出資の総額が 5,000 万円以上であって、特定有価証券等管理行為を行う場合に限る。)は、電子申込型電子募集取扱業務等に関して、事業者が設定する目標募集額に達するまでの間は、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第 16 条第1項第 14 号の2に規定する方法により、顧客の募集申込金その他の出資又は拠出に係る金銭を管理するものとする。
2 前項の目標募集額に達していない場合であっても、出資対象事業の持分に係る契約により事業者の出資対象事業が開始される(出資対象事業がすでに開始されている場合にあっては、当該出資対象事業に出資又は拠出される金銭により当該事業が継続して行われる場合を含む。)場合には、正会員及び電子募集会員は、当該事業者に募集申込金を支払うこととする。
3 正会員及び電子募集会員は、事業者が定める申込期間内に目標募集額に到達しなかった場合又は目標募集額を超過した場合等の取扱いについては、募集・私募の取扱い契約で定めることとし、当該取扱いについて顧客に誤解を生じさせないよう必要な措置を取らなければならないものとする。
4 正会員及び電子募集会員は、前3項の内容について、当該正会員及び電子募集会員の運営するホームページ等を用いて表示を行うこととする。

電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則第33条

第5号 発行者が応募代金の払込みを受けることがないことを確保するための措置

電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の募集又は私募に関して、顧客の応募額が申込期間内に目標募集額に到達したときに限り当該有価証券が発行される方法を用いている場合には、当該目標募集額に到達するまでの間、発行者が応募代金(これに類するものを含む。第七号及び第八十三条第一項第六号ニにおいて同じ。)の払込みを受けることがないことを確保するための措置がとられていることという要件が定められています。

この定めにより、実務上、目標募集額を定める電子申込型電子募集取扱業務では、有価証券等管理業務又は特定有価証券等管理行為により、いったん金融商品取引業者が申込金を預かり、その後目標募集額に達した段階で発行者に応募代金を送金するという事務フローを取らざるを得ないと解されています。

そのため、第二種金融商品取引業務を行う場合、金融商品取引法施行令第1条の8の6第1項第4号及び金融商品取引法第二条の定義に関する内閣府令第16条第1項第14号の2に定める特定有価証券等管理行為として、資本金の額又は出資の総額が5000万円以上である法人が、以下の要件を満たす信託を利用して申込金を管理する必要があると解されています。

十四の二 法第二条第八項第十六号に掲げる行為のうち、金融商品取引業者が、電子申込型電子募集取扱業務等(売出しの取扱いを除く。以下この号において同じ。)を行う場合において、当該電子申込型電子募集取扱業務等に関して顧客から金銭の預託を受ける行為であって、次に掲げる方法により、当該金銭と自己の固有財産とを分別して管理するもの
イ 銀行、協同組織金融機関の優先出資に関する法律第二条第一項に規定する協同組織金融機関又は株式会社商工組合中央金庫への預金又は貯金(当該金銭であることがその名義により明らかなものであって、当該金融商品取引業者が当該金銭についてロに掲げる金銭信託をする基準日として週に一日以上設ける日の翌日から起算して三営業日以内に当該金銭信託をする場合に限る。)
ロ 信託会社(信託業法第二条第二項に規定する信託会社をいう。)又は信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第一条第一項の認可を受けた金融機関をいう。)への金銭信託(当該金銭であることがその名義により明らかなものであって、当該金融商品取引業者を委託者とし、当該金融商品取引業者の行う電子申込型電子募集取扱業務等に係る顧客を元本の受益者とするもののうち、金融商品取引業等に関する内閣府令第百四十一条第一項第四号に掲げる方法により運用されるもの又は元本補塡の契約のあるものに限る。)

金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第16条第1項

第6号 クーリングオフ

顧客が有価証券の取得の申込みをした日から起算して8日を下らない期間が経過するまでの間、いわゆるクーリングオフができることを定めた規定です。

さらに、第二種金融商品取引業務として電子申込型電子募集取扱業務を行う場合には、電子募集規則第35条では、「クーリングオフができること」及び「顧客がすでに募集申込金を払い込んでいる場合の返金方法について、当該顧客と事業者との間で締結される出資対象事業の持分に係る契約において定められていること」に関して、ホームページ等を用いて表示を行うことが定められています。

第7号 顧客への情報提供

発行者が顧客に対して事業の状況について定期的に適切な情報を提供することを確保するための措置をとる義務が定められています。

第二種金融商品取引業務として電子申込型電子募集取扱業務を行う場合には、電子募集規則第36条では、「出資対象事業の計算期間の終了毎(当該事業の計算期間が1年を超えるものにあっては少なくとも年に1回とし、これらの契約において分配が行われるとされているときを含むものとする。)に適切に提供する旨が規定されていることを確認しなければならない。ただし、1年を超えて分配が行われない旨が業務委託等の契約及び出資対象事業の持分に係る契約に規定されるとともに当該正会員及び電子募集会員のホームページ等を用いて表示され、かつ、その期間中、出資対象事業の進捗が当該ホームページ等を用いて定期的に表示される場合における、これらの契約において分配が行われるとされているときにおける情報提供及び最終の計算期間の終了時の情報提供以外については、この限りではない」と定めています。

詳細な報告事項に関しては、こちらの記事で詳述していますので、併せてご参照ください。

また、第一種少額電子募集取扱業務として行う場合には、クラウドファンディング規則第16条において「店頭有価証券の発行者が当該店頭有価証券を取得した顧客に対して事業の状況について定期的に適切な情報を提供することに関し、当該発行者との間で契約を締結しなければならない」「会員等は、前項の契約に基づき発行者により情報の提供が行われていることを確認しなければならない」と情報提供義務が定められています。

不動産特定共同事業での重畳適用

現物不動産に係る特例事業者が発行者となる「倒産隔離(SPC)型の現物不動産ファンド」の販売を行う行為は、不動産特定共同事業の第4号事業であると同時に、第二種金融商品取引業者でもあります。これは、不動産特定共同事業法と金融商品取引法の重畳適用となるためです。

よって、こうしたファンドをインターネット上で募集又は私募の取扱いする行為は、電子申込型電子募集取扱業務に該当するとして、本項目記載の電子申込型電子募集取扱業務特有の規制の対象になります。

なお、インターネット上でのファンドの募集等の行為は、不動産特定共同事業法では電子取引業務と称されます。令和5年9月29日には国土交通省より電子取引業務に係る必要な態勢整備等の要件が不動産クラウドファンディングに係る実務手引書の公開により示されました。

同手引書は、直接的には不動産特定共同事業に係る記載であるものの、重畳適用が予定されている第4号業務を射程とすることを通じて、電子申込型電子募集取扱業務に求められる態勢整備基準や技術水準を、部分的かつ具体的にに示していると解することが可能です。

当事務所のこちらの記事(不動産クラウドファンディングの実務手引書に関する解説記事)に記載の通り、不動産クラウドファンディングを行わない第二種金融商品取引業者であっても押さえておきたい内容です。

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