自動売買ツール(EA)と投資助言・代理業
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投資ツールと金融商品取引法-登録が不要な自動売買ツール-MT4と金融商品取引法-自動売買ツールと媒介-自動売買ツールと投資運用業-無登録営業の罰則-連鎖販売(MLM)・消費者被害-無登録営業時の金融当局及び捜査機関の対応
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投資ツールと金融商品取引法
いわゆるFX取引やバイナリーオプション取引では、自動売買ツール(EA・シストレ)及びインジケーターなどが、取引に広く利用されています。とくにFXでは、MetaQuotes Softwareによって開発された「MT4」を利用したEA・インジケーターの利用が多くなっています。
近年では、暗号資産(仮想通貨)の現物取引及びデリバティブ取引(いわゆる仮想通貨FX・ビットコインFXと呼ばれる)でも、EA・インジケーターの普及が進んでいます。暗号資産は、金融商品取引法の規制対象になりませんが、デリバティブ取引の場合には金融商品取引法の規制対象になります。
これらの投資ツールは、動作内容や課金形態、接続方法等により、金融商品取引法上の登録の要否が異なっています。登録が必要なく、普通のコンピュータソフトと同じように自由に販売できる場合もありますし、投資助言・代理業などの金融商品取引業の登録が必要になる場合もあります。
投資助言への金融商品取引法の適用 | |
株式 | 〇 |
FX・バイナリーオプション | 〇 |
仮想通貨現物 | × |
仮想通貨FX | 〇 |
投資ツールが投資助言・代理業の登録を要するかどうか、登録をしていない業者が違法かどうかに関するご質問を受けることは非常に多いです。当事務所では、登録が必要である際の登録手続きの代行・支援から、登録が不要な販売形態に関するコンサルティングや契約書等の整備まで、ニーズに応じて依頼者を支援しております。
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ツールの機能
売買タイミングを具体的に指示する自動売買ツール(EA)の場合と異なり、インジケーターなどの投資分析ツールは、そもそも投資助言・代理業の規制の対象になりうるツールなのかというところから検討が必要です。デリバティブ取引は、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の提供が、投資助言・代理業とされています(金融商品取引法第2条第2項第11号)。
FX、バイナリーオプション及び暗号資産FXなどのデリバティブ取引の場合、投資判断とは、行うべきデリバティブ取引の内容及び時期についての判断ですので、これらの内容が含まれないツール、例えばドル円が上がりそう、下がりそうのみを表示するインジケーターは、販売の様態や課金形態関係なく、そもそも投資助言・代理業の対象にならないと考えられます。
これに対して、株式等の有価証券に関連する取引の場合は、投資判断(投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断)に加え、有価証券の価値等の助言も投資助言・代理業とされています。ここでの有価証券の価値等とは、有価証券の価値、有価証券関連オプションの対価の額又は有価証券指標の動向をいうとされています。よって、株式等の有価証券に関連する取引の場合には、株や株価指数が上がりそう、下がりそうレベルの予想インジケーターでも、投資助言・代理業に該当する可能性が出てきます。
投資助言・代理業以外の問題点
投資ツールの販売に、特定のFX業者等との間のIB契約やアフィリエイト契約が伴う場合には、媒介業務(第一種金融商品取引業)の該当性が問題になるほか、無登録の海外FX業者に対する送客が伴う場合には、犯罪の幇助になるという問題もあります。
また、Bitcoin等の現物暗号資産の投資ツールであって暗号資産交換業者との間のIB契約やアフィリエイト契約が伴う場合には、資金決済法第2条第7項第2号に掲げる媒介業務(暗号資産交換業)の該当性が問題になります。また、無登録の海外暗号資産交換業者かつ居住者に対して勧誘を行う者への送客が伴う場合には、犯罪の幇助になるという問題もあります。
さらに、自動売買機能のオンオフができないなど、顧客から「投資を行うのに必要な権限を委任されている」とみられる条件を満たす場合には、本来、アドバイスのみ業務である「投資助言・代理業を超えて、顧客の代わりに資産運用をする業務である「投資運用業」に該当するとされています。
そうした場合には投資助言・代理業の登録を受けていたとしても、登録を受けていない投資運用業を営んだものとして、法令違反となります。過去にはこれで実際に行政処分を受けた業者もいます。
登録が不要な自動売買ツール
自動売買ソフトの販売の登録の要否に関しては、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」VII-3-1(2)②イ.a.並びにb.で金融庁は登録不要なケースを以下のように定めています。
・ 新聞、雑誌、書籍等の販売
(注)一般の書店、売店等の店頭に陳列され、誰でも、いつでも自由に内容をみて判断して購入できる状態にある場合。一方で、直接業者等に申し込まないと購入できないレポート等の販売等に当たっては、登録が必要となる場合があることに留意するものとする。
・ 投資分析ツール等のコンピュータソフトウェアの販売
(注)販売店による店頭販売や、ネットワークを経由したダウンロード販売等により、誰でも、いつでも自由にコンピュータソフトウェアの投資分析アルゴリズム・その他機能等から判断して、当該ソフトウェアを購入できる状態にある場合。一方で、当該ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報等に係るデータ・その他サポート等の提供を受ける必要がある場合には、登録が必要となる場合があることに留意するものとする。
会員登録が不要で、かつスタンドアローンの売買ツールのソフトウェアの売り切りでの販売は、基本的には投資助言・代理業の登録は不要と読めます。
会員制は許されるか
会員制で、自動売買ソフトの販売又はレンタルをする業者は、北海道財務局の公表文「自動売買ソフトの販売・レンタル業者にご注意!」にあるように、一般的には投資助言・代理業者に該当すると考えられるとされています。
監督指針には「不特定多数の者を対象として、不特定多数の者が随時に購入可能な方法により、有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断(以下「投資情報等」という。)を提供する行為」が投資助言・代理業に該当しないものの「不特定多数の者を対象にする場合でも、インターネット等の情報通信技術を利用することにより個別・相対性の高い投資情報等を提供する場合や、会員登録等を行わないと投資情報等を購入・利用できない(単発での購入・利用を受け付けない)ような場合には登録が必要となることに十分に留意するものとする。」とあります。
会員制であることは、まさに、「会員登録等を行わないと投資情報等を購入・利用できない(単発での購入・利用を受け付けない)」場合に該当すると考えられます。
販売サイト構築の留意点
上記の理由により、論理的には投資助言・代理業に該当しない形で投資ツールを販売しようとする場合には、会員のID及びパスワードを入力しないと購入できないような販売サイトは構築せず、会員登録なしでも、ツールを購入できるようにする必要があると考えられます
一般に、ECサイトでは、購入者データの把握のために、購入の際には会員登録を義務付け、顧客にはマイページを閲覧できるようにするというオペレーションが割と広く行われています。しかし、「会員登録せずに買う」の経路も設けておかないと、投資助言・代理業の登録が必要となる可能性が出てきます。
ただし、この点について、今のところ実務上大きな問題になった例は聞きません。おそらく金融商品取引業該当性を検討するうえで、形式はさておき行為としてあまり本質的ではないからでしょう。
課金形態
基本的に、売り切りであれば、投資助言・代理業の登録を要する可能性は下がり、継続課金を前提とするものは投資助言・代理業に該当する可能性が高まると考えられます。
もっとも、登録義務が除外される「新聞雑誌」も、定期購読すれば継続課金であり、継続課金行為そのものだけで、投資助言・代理業に該当すると断定することはできないと考えられます。
ただし、継続課金の対価として投資情報等に係るデータ・その他サポート等の提供を行うことが予定されている場合には、明らかに投資助言・代理業に該当するものと考えられます。
継続課金の売買契約があり得るか
別記事にも書いていますが、投資助言・代理業に該当しない例外要件である「随時に購入可能」であることは、当然に当該契約が「売買契約」であることを含意します。
継続課金とした場合には、一般的には、当該契約が売買契約(販売)ではなく役務提供契約(サービス)である可能性が含意されると考えられますので、そうでないと主張を整理する場合には個別の深い検討が必要です。
また、「売り切りだが売買代金を分割して収受する」ことが認められるかという議論があります。しかしながら、これは単に金銭の受領方法の問題ですので、基本的には、売買代金を分割して受領したことのみをもって、投資助言・代理業の登録を要すると考えることはできないように思われます。
どこまでのサポートが許されるか
ダウンロード、インストール方法を教えるなどの、いわゆるテクニカルサポートは、投資助言・代理業の登録をせずとも、許容されると考えられています。また、バグの修正や、OSや外部アプリケーションのアップデートに伴うパッチの配布であれば、許容されるものと考えられます。
しかしながら、サポートの際に、投資情報を提供したり、相場予想などに回答したり、または、バグ・動作不具合の修正を超えた、改良ロジック・アルゴリズムの配布、データ配信などの投資判断に関するようなアップデートを提供すると、投資助言・代理業を構成する可能性が高いと考えられます。
MT4と金融商品取引法
MT4は、国内でも複数の第一種金融商品取引業者が取引ツールとして導入しており、システムトレード、自動売買の世界では極めてメジャーなツールです。登録を受けた投資助言・代理業には、投資助言・代理業として、こうしたMT4対応のツールを販売している業者も多く存在します。
一方で、MT4を利用した自動売買ツール・インジケーターの配布は、投資助言・代理業の登録を要さない投資ツールの販売業務としても構築することが難しくありません。それは、売り切りで販売を行い、かつ、その後のサポートをしなくても動作させることが機能上容易だからです。
なお、MT4は世界的に普及したツールであるがため、海外の無登録のFX業者でも多数採用されています。しかし、こうした無登録業者への送客前提でサービスを構築したり、IB報酬を受領したりすると、無登録営業の幇助となり、金融商品取引法違反を構成する可能性があります。
前述のように現物暗号資産取引に関しても、無登録の海外暗号資産交換業者かつ居住者に対して勧誘を行う業者への送客につき、資金決済法上、同様の問題があります。
自動売買ツールと媒介
自動売買ツールの販売に伴い、特定のFX業者、バイナリーオプション業者及び仮想通貨取引所(暗号資産デリバティブ取引)等に送客する行為は、媒介業務(第一種金融商品取引業)の無登録営業を構成する場合があります。
また、自動売買の対象が株式などの有価証券の場合には、同じく金融商品仲介業と構成される可能性があります(通常意識されることは少ないですが実際に過去に当事務所で取扱った事例です)。
海外無登録業者への媒介
海外の無登録業者に対する送客は、金融庁・財務局も厳しい姿勢で臨んでおり、こうした海外無登録業者と紐づいた自動売買ツールの提供者が、金融商品取引法違反であるとして金融庁に警告・公表された例も、以前から多数存在しています。
アフィリエイト契約
また、国内業者とアフィリエイト契約に基づき、自社の自動売買ツールの利用の際に口座開設できるとして、特定の業者を紹介する例が見られます。これは、アフィリエイトの枠内にとどまる限り適法ではありますが、一般に特定のFX業者・証券会社に強く紐づくことは、念のため避けられる傾向にあります。ただし、実際には特定のFX業者・証券会社とタイアップしてサービスを提供している投資助言・代理業者も、多数存在しており、実務の取扱いは揺れています。
API接続
媒介への該当性の論点は、投資助言・代理業の登録業者であってもなくとも、基本的に同じです。API接続は、特定の業者に紐づいていると見られやすく、証券会社の例ですが、API接続では金融商品仲介業に該当するとの当局の指摘を受け、スクレイピング方式の自動売買を行った例があります。
ただし、一般には、API接続が直ちに媒介に該当するというような整理は取られていません。API接続を前提とする自動売買ツールは、登録業者でも普通に存在しています。FX業者と証券会社で判断基準が異なるのだという説も存在しますが、API接続を利用して、かつアフィリエイト契約に基づいて特定の証券会社のタイアップしている投資助言・代理業者も存在します。
とはいえ、令和0年代半ば以降の投資助言・代理業者に対する監督厳格化で、こうしたスキームはもはや通用しにくくなっています。一般にAPIを利用した自動売買を行う投資助言・代理業は考えないほうがいいと思われます。
自動売買ツールと投資運用業
特定の投資ツールが、投資運用業に該当しないとするためには、顧客から取引権限を有するID及びパスワードを預からないことが必要であると考えられています。
金融商品取引法第2条第8項第12号ロで「当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約」を投資一任契約と定義しています。取引IDとパスを預かる行為は、一般に取引権限の委任にあたると解されるためです。
前述の行政処分事例では、日経225先物取引の自動売買システムを利用したサービスにつき、「顧客のために、当社が管理する自動売買システムを介して、顧客が取引に使用する口座(以下「顧客口座」という。)のある証券会社に対し直接、日経225先物取引に係る売買の発注を行っていることから、顧客から投資判断を一任されている状況」であり、「顧客から当社に対し、証券会社の顧客口座のID及びパスワードを通知させており、当社は当該ID及びパスワードを用いて、顧客のために、当社が管理する自動売買システムを介して日経225先物取引に係る売買の発注を行っていることから、顧客のために当社から直接証券会社に発注するのに必要な権限を委任されている状況」にあると認定しました。
当局は上記の状況で、当該業者が管理する自動売買システムを介して、顧客口座のある証券会社に対して日経225先物取引に係る売買の発注を行い、顧客の金銭の運用を行うことは、投資運用業(金融商品取引法第2条第8項第12号に掲げる投資一任業務)に該当すると判断を示しています。
また、取引権限を有するID及びパスワードを預からないことに加え、当局は、自動売買ツールが投資運用業に該当しないとするためには、直近における行政解釈実務上、自動売買ツールのオンオフが可能であること、自動売買モードだけではなくシグナル配信のみでの利用も可能であることも必要であると関係業者に内示しています。
なお、取引権限を有しない取引履歴の閲覧のみのID及びパスワードの割り当てを受ける行為に関しては、一般的に、直ちに投資運用業に該当することはないと考えられます。そのため、とくに成功報酬制を採用する投資助言・代理業者では、顧客の取引履歴の確認のために、閲覧権限のみ割り当てられた銀行・証券口座のID及びパスワードの割り当てを受けるケースが存在しています。
サーバー動作型シストレ
自動売買のうち、動作速度・動作の確実性等の観点から、顧客のPC上ではなくサーバー上でシステムトレードが行われ、顧客はVPN等でそこに接続する形態である場合には、顧客のPC上で動作する場合に比べて投資運用業に該当する可能性が高まります。
サーバー契約者がシステムトレードの提供者であり、かつシステムトレードの管理をしているのも提供者であって、そこに顧客の取引ID及びパスワードが保存されていれば、投資運用業に該当する可能性は非常に高いと考えられます。
他方、サーバー契約者が顧客自身であり、かつ、システムトレードの提供者は、テクニカルな初期設定のみを行い、顧客の取引ID・PASS及びサーバーへの継続的なアクセス権限をいずれも有しない技術的かつ従属的な役割を果たすに過ぎない場合には、サーバー動作型シストレでも適法性を確保した様態を想定することが可能です。
他方、顧客の取引ID・PASSがサーバーに保存されているものの、暗号化されて事業者には物理的に復号不能な様態で管理されている場合の取扱は判然としません。
とはいえ、投資運用業の要件のひとつが取引権限の委任であることを考えれば、取引ID・PASSの業者側復号不能の場合には取引権限の委任があると見るのは困難であるという感想を持ちます。
無登録営業の罰則
自動売買ツールの販売が、投資助言・代理業をはじめとする金融商品取引業の無登録営業を構成する場合の罰則はこちらに記載の通りです。
連鎖販売(MLM)・消費者被害
自動売買ツールは、いわゆるMLM方式での連鎖販売や、高齢者又は金融リテラシーが十分でない顧客への強引な販売といった、投資者保護上問題がある販売方法により、非常に高額で販売されている例が多くあるとされます。
投資助言・代理業の登録をしている業者がそのような販売手法での販売を行うことは、現在では少なくなくなっていますが、無登録業者からのこうした被害に関する相談は非常に多くなっています(ちなみに当事務所は消費者の相談は受けませんのでご了承ください)。消費者としてこうした被害にあった際には、地域の消費者センター、法テラス、弁護士会等の法律相談等を利用するようにしてください。
また、令和4年現在、マッチングアプリ等を利用して海外の無登録FX業者に取引誘導し、取引証拠金や追加証拠金等と称して、金銭の国際送金を要求する、いわゆる国際ロマンス詐欺の事例も目立って増加しています。
神学論争
前記の媒介該当性の議論もそうですが、全般にシステムトレードに関する議論は、必ずしも制定当時の金融商品取引法が想定していなかった業態であることもあり、非常に難解で、かつ当事者間で意見が分かれています。令和3年9月には証券監督者国際機構から、「人工知能及び機械学習を利用する市場仲介者及び資産運用会社向けのガイダンス」も出て、今後さらなる法整備が進むのかもしれませんが、いずれにせよ現時点では、あたかも中世スコラ哲学や神学論争に近いものがあります。
ちなみに、そうした神学論争の延長線において、何もせずに投資した資金が確実に増えるツールが存在するかという議論があります。これは、いわゆる永久機関と同じような話で、現実味がありません。必ず勝ち続けるツールは、自動売買に真剣に取り組む方の間ではいわゆる「聖杯」と呼ばれており、通説(と言っていいかわかりませんが)ではその存在が否定されています。
無登録営業時の金融当局及び捜査機関の対応
行政当局の関与
こうした無登録業者による消費者被害の情報が寄せられると、金融庁・財務局は、必要に応じて報告命令や臨店検査を実施し、法令違反があれば警告や裁判所への禁止及び停止命令の申立、捜査当局への告発などを行っています。
ただし、金融庁・財務局は、個別の消費者紛争を解決する機関ではありません。
情報提供自体は社会的に有益ですが、目先の消費者紛争を解決に導いてくれる機関ではありませんので、その点は間違えないようにする必要があります。
投資は自己責任であり、金融事業者相手に紛争を提起する場合には、基本的に自ら費用を払って弁護士に依頼して解決をしてもらう必要があります。捜査機関や監督当局は、特定の個人の困りごとを解決してくれることはありません。
ただし、消費者センターは、こうした事案に関する相談が消費者から寄せられた場合には、助言やあっせん等の相談処理を行っています。また、消費者からの相談件数が多い事業者に関しては、都道府県庁や消費者庁が、特定商取引法に基づき、立ち入り検査を実施しています。
公的機関に相談するのであれば、消費者センターが第一選択肢になります(なお、当事務所は金融事業者向けのサービスを提供しており、消費者からの相談は受けません。)
ちなみに、国民生活センターと全国の消費生活センターは、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)で情報を共有しています。そのため、個別の紛争の地域は色々でも、全国の苦情の総件数が多くなってくると、立ち入り検査の対象となる可能性が上がります。
捜査当局による立件
無登録業者による自動売買ツールの悪質な販売は、特殊詐欺に準じたものとして、警察に金融商品取引法違反、特定商取引法違反、詐欺罪等で立件されることがあります。
これに加えて出資金の拠出と預かりを伴う場合には出資法違反等で立件される場合もあります。
警察による立件がなされるのは、多くの場合ではMLM方式での連鎖販売や、高齢者又は金融リテラシーが十分でない顧客への強引な販売がなされているケースです。
ただし、オンラインでの販売がメインであっても、背後に反社会的勢力や半グレ等の関与があり、大規模に無登録営業を行ったケース等では、警察に立件された例があります。
ちなみに、こうした捜査当局の立件対象となる悪質な業態は、2010年代後半に非常に流行しました。しかし、当局の取締まりの強化と、youtube等の動画系無料投資コンテンツの伸長により、2020年代に入って明らかな退潮を見せています。