行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

投資運用業者に対する行政処分

2022/07/21

令和4年7月15日、金融庁は投資法人資産運用業務を行う某投資運用業者に対して、忠実義務違反で、3か月間の業務停止命令(適切な利益相反管理の観点新たな資産運用委託契約の締結禁止及び不動産(不動産信託受益権を含む)の取得に係る運用指図禁止)及び業務改善命令を行いました。

REITの運用業者に対する行政処分は14年ぶりです。また、同社は、大手電力系上場企業です。業務停止期間の長さと相まって、異例とまではいえないものの、かなり厳しい処分が下された印象です。

忠実義務違反による行政処分

適切な利益相反管理の観点から問題となる、不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけ及び不適切な不動産鑑定業者選定プロセスが処分理由になりました。

金融庁は、資産運用ビジネスの活性化を重要な政策目標としており、投資運用業者の参入促進やビジネス環境の整備の不断の努力が続けられています。

他方、既存の投資運用業者の顧客に対する忠実義務違反や善管注意義務違反に対しては、以前よりも厳しい姿勢で臨んでおり、とくにここ数年行政処分が頻発している印象があります。

現在の政策が継続される限り、金融庁が投資運用業者に対して求める高いレベルの受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)の徹底が緩和されることはあり得ません。

従って、投資運用業者は、今後ますます善管注意義務及び忠実義務に対して高度な注意を払う必要があり、利益相反管理の徹底をはじめ内部管理体制の水準を引き上げていく必要があります。

不動産関連アセットマネジメント業務の注意点

今回の処分事由は、業務の性質上、投資法人資産運用業務だけではなく、不動産関連特定投資運用業(不動産信託受益権に係る投資一任業務やファンド運用業務)にもそのまま当てはめることができる内容です。不動産アセットマネジメント関連事業者は、今回の処分を熟読する必要があります。

処分では、「不動産鑑定業者から提示された鑑定評価額に係る中間報告又は概算額が親会社の売却希望価格に満たなかった3物件の不動産について、親会社の売却希望価格を優先し、親会社の売却希望価格を伝達するなどしたうえで、鑑定評価額が当該売却希望価格を上回るものとなるよう、算定を依頼した不動産鑑定業者に対し、鑑定評価額を引き上げるための働きかけを行っていた」ことが、不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけであると指摘されています。

また、複数の不動産鑑定業者を利用していたところ「最も高い概算額を提示した不動産鑑定業者(以下「当該不動産鑑定業者」という。)の鑑定報酬額が、概算額を聴取した他の不動産鑑定業者と比して最も廉価になるよう、当該不動産鑑定業者と交渉していた。」ことに加え「当社は、当該不動産鑑定業者による概算額が最も高かったことを伏せたうえで、当該不動産鑑定業者の鑑定報酬額が最も廉価であることを理由に、当該不動産鑑定業者を鑑定評価の依頼先として選定していた。」ことが、親会社の利益を優先した不適切な不動産鑑定業者選定プロセスとされています。

こうした状況は、特に親会社や関係会社が存在する不動作アセットマネジメント会社では、不動産関連特定投資運用業でも実務上頻発していることです。

こうした課題を抱える投資運用業者は、不動産鑑定の選定や依頼プロセスの社内規程の明確化及び透明化の取り組みを直ちに進める必要があるでしょう。

お気軽にお問い合わせください

お電話無料相談窓口 03-6434-7184 受付時間 : 9:00 -17:00  営業曜日 : 月〜金(除祝日)
メール無料相談窓口メールでのご相談はこちらをクリック