組合ヴィークルの選択

組合ヴィークルの選択

ファンド組成のヴィークルとしては任意組合(NK)、匿名組合(TK)投資事業有限責任組合(LPS)、有限責任事業組合(LLP)、外国法に基づく組合など、いくつか選択肢があります。こうした組合型のヴィークルは、共同事業性等の一定の除外要件を満たしていない場合、「集団投資スキーム」と総称されます。

実際の利用では事業ファンドの形態であれば、商法上の「匿名組合」、有価証券投資の場合には投資事業有限責任組合が使われるケースが一般的です。

事業ファンドで主に匿名組合が利用される理由は、その使い勝手のよさです。匿名組合以外の任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、外国法に基づく組合はそれぞれ根拠とする法律は個別に異なりますが、以下のように何らかの問題があります。個別に見ていきましょう。

任意組合

任意組合は、民法第667条の定めに基づき、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによってその効力を生ずるとされています。そのため、そもそもの制度自体が共同事業を想定するものであるため、各組合員が無限責任を負うことが出資者サイドにはリスクとして存在しています。組合名義の借り入れを行った場合、返済義務が一般組合員にも及ぶために理論上リスクが無限大であり、出資者にとっては問題です。

実際に想定できるケースで思考実験してみると、例えば任意組合で発電所を設置して事業を行ったとして、その発電所が過失による事故で近隣の地域に多大な財産的損害を及ぼした場合が考えられます。この場合、近隣への法的な賠償責任は、事業を行う組合自身の財産を超え、組合を構成する一般組合員の個人財産まで及ぶことになります。

投資事業有限責任組合

投資事業有限責任組合は、投資事業有限責任組合法に基づく組合であり、無限責任組合員と有限責任事業組合員で構成されます。そのため、一般の出資者を有限責任組合員として組合に加入させることにより、その組合員の責任は出資金額までに制限されます。そのため、一般の出資者が無限責任を負う問題は解決されます。

しかしながら、投資事業有限責任組合法で、組合の目的が一定に制限されていることにより、株式、持分、新株予約権、指定有価証券、金銭債権、工業所有権、著作権又は信託の受益権等の法令の定めるのもの以外での運用は行うことはできません。また、登記することと、年度ごとに会計監査を受けることが義務付けられています。

また、外国法人への投資も制限されます。外国法人への金銭の貸付けは、投資事業有限責任組合法の事業の範囲外であるため、これを投資事業有限責任組合の事業として行うことはできません。また、外国法人の発行する株式、新株予約権などの取得・保有は、その取得の価額の合計額が総組合員の出資の総額の50%に満たない範囲内に制限されますので、外国株式等を主たる対象としたファンドは設定できません。

⇒さらなる詳細は投資事業有限責任組合の記事をご覧ください。

有限責任事業組合

有限責任事業組合は、組合員が共同で事業を営むことを前提としたものです。つまり、基本的には事業は共同で運営しなければならないので、出資者として業務執行を代表者等に全部委託することは認められていません。ファンド出資者的な立場での参加は、法律が想定していないと考えられます。

業務執行について、経済産業省は、「業務執行の内容としては、例えば、対外的な契約締結などのLLPの営業に関する行為や、その契約締結のための交渉、あるいは、具体的な研究開発計画の策定・設計、帳簿の記入、商品の管理、使用人の指揮・監督等、組合の事業の運営上重要な部分が含まれます。」と解説しており、単に組合員集会に参加するといったコミットメントでは許容されないのは明らかです。

また、原則的には業務執行は全員の同意が必要であり、特約でこれを排除したとしても最低限、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財については、全員一致又は組合員の3分の2以上の同意で決定することが必要です。そのため、実質的運営者が独断で決定するファンド的な運用はできなくなっています。

⇒さらなる詳細は有限責任事業組合の記事をご覧ください。

匿名組合

匿名組合は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる(商法535条)とあり、つまり、匿名組合は出資を受ける「営業者」と出資をする「匿名組合員」との2者間の契約で成り立っています。

ここでの「匿名」とは、営業者の匿名組合として行う取引は営業者の固有の名義で行うため、匿名組合員が取引先等第三者に顕名されないといった意味ですので、出資者匿名が義務付けられているわけではありません。

匿名組合は、営業者と組合員が共同して事業を行うものではありませんので、組合員との合意を必要とせずに資金を運用する事が出来ます。そのため、特に事業ファンドや不動産証券化を行う上での実務上は、ヴィークルには匿名組合を用いるのが一般的です。

⇒さらなる詳細は匿名組合の記事をご覧ください。

外国法に基づく組合

主に、ケイマン・BVI(英領バージン諸島)等のオフショア地域における、リミテッドパートナーシップ契約等も、ファンドのヴィークルとしてよく利用されます。国内に拠点を置く資産運用業者のケースでは、主に、海外投資家から資金の拠出を受けて運用する場合や、出資対象事業の所在地が海外である場合、又はレギュレーション等の理由でファンドの多層構造が必要である場合などに利用されます。

なお、海外で資産を運用したほうが有利なのではないかといった漠然とした理由で、海外ファンドの組成の相談をされることがありますが、基本的に運用者が外国に移住せず、かつ、投資家は本邦の居住者主体である場合、節税効果は期待できません。また、居住者を相手方とする場合や、ファンド運営者が本邦に拠点を有する場合には、原則として金融商品取引業の登録または適格機関投資家等特例業務の届出が必要であり、金融商品取引法に基づく業規制にも緩和はありませんので、抽象的な理由に基づき海外スキームには、とくにメリットはありません(もちろん具体的なメリットに基づく組成を否定するものではありません)。

株式等への投資ファンドの場合

以上で見てきたように、一般的には匿名組合がもっとも使い勝手がよいのですが、ファンドの内容によりその例外もあります。例えば、株式への投資では、匿名組合を用いると、個人投資家は組合に生じた利益が雑所得となり総合課税になります。しかしながら、投資事業有限責任組合や任意組合では、個人投資家に帰属する収益は税率20.42%の分離課税となります。

任意組合は前述の無限責任の問題がありますので、ベンチャーファンド等の株式投資型ファンドでは、有限責任性が確保される投資事業有限責任組合を用いるのがほとんどです。

ただし、前述のように投資事業有限責任組合は監査を行うことや登記をすることが義務付けられているので、他の組合と比べてコストや運営の手間は重いものになります。

出資対象事業毎の留意事項

投資事業有限責任組合法では、「外国法人の発行する株式、新株予約権などの取得・保有はその取得の価額の合計額が総組合員の出資の総額の50%に満たない範囲内であれば可能」となっているため、外国株式のみに投資する投資事業有限責任組合は組成することはできません。

また、外国為替証拠金取引は個人の場合には分離課税となりますが、投資事業有限責任組合法ではデリバティブ取引はヘッジ目的以外にこれを行うことはできないと解されています。そのため、外国為替証拠金取引を主として行うための投資事業有限責任組合は同じく組成することはできません。

このように、投資する商品や対象とする投資家、スキーム等にあわせて、最適なファンドの形態を検討する必要があります。何が最適なのかは、事案によってそれぞれに異なりますので、ぜひともお気軽にご相談ください。

なお、こうした組合型のヴィークルは、共同事業性等の一定の除外要件を満たさない限り、金融商品取引法第2条第2項第5号及び第6号に掲げる集団投資スキームに該当して、その募集又は私募及び主として有価証券又はデリバティブ取引による運用は金融商品取引法所定の手続きが必要であることにご留意ください。

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