行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

投資助言・代理業の運営

このページの目次
行為規制概略:投資助言・代理業(投資顧問業)の行為規制(i)広告規制(ii)適合性の原則(iii)書面交付義務(iv)クーリングオフ(v) 金銭又は有価証券の預託の受入れ等の禁止(vi) 金銭又は有価証券の貸付け等の禁止金融商品取引業者共通規制特別の利益の提供の禁止投資助言業務に関する特則
留意点:投資助言・代理業(投資顧問業)の運営実務のポイント各種届出苦情・紛争処理業務方法書における料金体系の設定
問題事例:投資助言・代理業(投資顧問業)で問題が生じやすいケース海外FX等関連業務外国投資案件関連業務名義貸し誇大広告
自主規制規則:投資顧問業協会規則
Q&A:投資助言・代理業の運営に関するよくある質問

⇒【行いたい業務の登録の要否が知りたい方へ

投資助言・代理業(投資顧問業)の行為規制

投資助言・代理業は、金融商品取引業のうち、金融商品取引法第2条第8項第11号に掲げる投資助言業務及び第13号に掲げる投資顧問契約又は投資一任契約の代理・媒介業務から成り立っています。

その規制の体系は、旧投資顧問業法の規制を継承したものと、金融商品取引業共通の規制に基づくものの2要素から成り立っており、いずれも投資者の保護をその目的としています。

本項目では、金融商品取引業の登録を受けて実際に投資助言・代理業の運営をしていくうえで、事業者が留意すべき行為規制等について解説していきます。なお、以下は逐条解説ではなく、実務上の重要性に応じて言及の程度に緩急をつけております。

(i)広告規制

集客にあたっては、多くの事業者で新聞・雑誌・インターネット等での広告を行うことになると思います。しかしながら、ここでの広告はセミナーで配布する勧誘資料等も含む広い概念です。

金融商品取引法第37条では、広告規制の対象は、「その行う金融商品取引業の内容について広告(※1)その他これに類似するもの(※2)として内閣府令で定める行為であると定まっています。

※1

広告

① テレビCM
② ラジオCM
③ ポスターを貼る方法
④ 新聞に掲載する方法
⑤ 雑誌に掲載する方法
⑥ インターネット・ホームページに掲載する方法
※2

広告類似行為

①郵便
② 信書便
③ ファクシミリ装置を用いて送信する方法
④ 電子メールを送信する方法
⑤ ビラ又はパンフレットを配布する方法
⑥ その他
ただし、次に掲げるものは広告等に該当しない。【金商業等府令第 72 条各号】
イ.法令又は法令に基づく行政官庁の処分に基づき作成された書類を配布する方法
ロ.個別の企業の分析及び評価に関する資料(アナリスト・レポート)であって、金融商品取引契約の締結の勧誘に使用しないものを配布する方法
ハ.次に掲げるすべての事項のみが表示されている景品その他の物品(ノベルティ・グッズ)を提供する方法
a.次に掲げるいずれかのものの名称、銘柄又は通称
ⅰ.金融商品取引契約又はその種類
ⅱ.有価証券又はその種類
ⅲ.出資対象事業又はその種類
ⅳ.ⅰ~ⅲまでに掲げる事項に準ずる事項
b.金融商品取引業者等の商号、名称若しくは氏名又はこれらの通称
c.元本損失が生じるおそれがある旨(当該事項の文字又は数字が当該事項以外の文字又は数字
のうち最も大きなものと著しく異ならない大きさで表示されているものに限る。)
d.契約締結前交付書面(又は目論見書)の内容を十分に読むべき旨

広告規制は、近年急速に実務上の重要性が高まっている分野です。

後述しますが、近年では投資助言・代理業者のインターネット上での問題ある広告に関して、下記のように当局の問題意識が非常に強まっており、広告規制その他各種ガイドラインを遵守した業務運営が求められています。

(7)投資助言・代理業者
投資助言・代理業者については、顧客に誤解を生じさせる広告を行っていな
いか、虚偽の説明による勧誘を行っていないか等について検証を行う。

令和元事務年度 証券モニタリング基本方針(P6)より引用

また、金融商品取引業者は、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(III-2-3-3 広告等の規制)に基づき、広告規制に違反しないよう、事前に広告審査を行って、それを社内で保存することが求められています。

また、広告規制違反となる不適切な広告行為に関しては、具体的な行為の具体的な態様により、断定的判断、虚偽告知、重要な事項につき誤解を生ぜしめる表示等の禁止行為にも該当する場合があります。

なお、サイト上に「特定商取引に基づく表示」を掲載している業者を見かけますが、金融商品取引業者の行う金融商品取引業に関しては、特定商取引に関する法律の適用はありません。そのため、投資顧問契約に関するサイトの場合には、オンライン契約の形態だったとしても、特定商取引法に基づく表示は不要となります。

 金融商品取引業者が広告等をするときは、当該業者の商号等及び顧客の判断に重要な影響を及ぼす一定の事項を表示しなければならない。
 金融商品取引業者が広告等をするときは、金融商品取引行為を行うことによる利益の見込み等について、著しく事実に相違する表示又は著しく誤認させるような表示をしてはならない。

また、一般社団法人日本投資顧問業協会は「広告、勧誘等に関する自主規制基準」を定めて、投資助言・代理業における広告出稿における留意点を明らかにしています。

とりわけ、同第14条の定める過去の助言実績に関するルールは、インターネット上でマーケティングを行う消費者向けの事業者にとって重要な位置を占めています。

(助言の実績の表示)
第 14 条 会員は、助言の実績について個々の銘柄に係る実績例を掲げて広告を行う場合には、第 4 条から第 6 条の趣旨を踏まえ、過去 1 年間の自己の助言全体の実績が適正に反映されるよう配意しなければならない。その場合において、過去 1 年間に行った助言の一部についてのみ表示を行うときは、自己に有利なもののみを表示してはならず、かつ、当該表示が自己の行った助言実績の一部であることを明示しなければならない。
2 前項の広告を行うときは、次に掲げる事項を表示しなければならない。
(1)損益実現の基礎となった売買及び反対売買(先物取引にあっては限月における最終決済又は受渡決済、オプション取引にあっては権利行使を含む。)の助言に係る有価証券等の銘柄
(2)当該助言を行った日付
(3)当該助言の内容(例えば、売り、買い又は待ち等の別)
(4)当該助言の価格(特定の価格についての助言でない場合はその日の終値若しくは気配値又は直近の市場価格)ただし、反対売買等に係る助言が行われていない場合は、広告掲載時直近の市場価格
(5)将来の運用成果を約束するものではない旨
3 第 1 項の広告を行うにあたっては、第 11 条及び第 12 条の規定に留意する。

広告、勧誘等に関する自主規制基準

さらに、近年、youtube、twitter、facebook等のソーシャルメディアを利用したプロモーションやサービス展開が広がっていますが、これに対し、同じく一般社団法人日本投資顧問業協会は「ソーシャルメディアによる広告及びアフィリエイト広告に係る留意事項」で、自主規制規則のガイドラインを示しています。

実務上、協会非加入業者にとっても、協会による自主規制規則は広告の適切性を審査するうえで重要な基準であると考えられています。そのため、広告を出稿する際には、法令だけではなく自主規制規則への十分な留意が必要です。

広告規制は、現在の投資助言・代理業者に対する当局の監督上の関心のコアです。関東財務局管内では、令和4年末に、令和5年1月末日を回答期限とした、広告に関するアンケート調査も実施されました。

(ii)適合性の原則

実際に顧客と契約する際には、金融商品取引法第40条第1号に定める適合性の原則が適用されます。そのため、一般投資家と投資顧問契約を締結する際には、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針に基づき、顧客カードの作成義務を負います。そのため、顧客には契約時に収入、資産、職業等を確認する必要があります。

なお、オンライン業務を中心とする投資助言・代理業者には、実務上、顧客審査をまったく行っていない業者も存在します。その根拠として、投資助言・代理業者は、原則として、第一種金融商品取引業や第二種金融商品取引業等と異なり、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認の義務を負わないため、本人特定事項等の確認が不要であることと混同して、顧客審査が要らないと考えている事業者も見られます。

しかしながら、上記のように適合性の原則に基づく取引時の顧客審査が必要であること、また仮に、適合性の原則の適用されない特定投資家であったとしても、法令等に基づく反社会的勢力との関係遮断の必要性があることから、取引開始前に顧客審査をまったく行わない業務フローは、理論上許容されないと考えられます。

さらに、犯罪収益移転防止法上、投資助言・代理業者は特定事業者であるため、投資助言・代理業者もまた、金融庁のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインに基づきAML/CFTの態勢整備が求められています。

同ガイドラインに基づく顧客管理(CDD)の観点から考えても、やはり投資助言・代理業者がサービス提供に際して、顧客の属性情報を収集せず又は反社会的勢力該当性を何ら審査しないという業務フローはどう考えても無理があります。

もちろん、実務上は顧客情報をほぼ収集していない投資助言・代理業者が存在するのは事実です。しかし、法令上もそれで構わないということにはなりません。

旧投資顧問業法での規制の在り方と金融商品取引法での規制の在り方の間にはかなりのギャップがあり、昔からの事業者には、適合性の原則等を十分に配慮していない事業者が多いと解されます。

これは、金融商品取引法が施行されて以来、規制当局の規制の目線は、登録業務の範囲を超えた法令違反業務(海外金融商品の販売等)や誇大広告の取り締まりなど、より悪質な業態に向けられてきました。そのため、適合性の原則違反まで細かく目を向ける余裕がなかったことが背景にあると解されます。

 金融商品取引業者は、金融商品取引行為について顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約の締結の目的に照らして不適当な勧誘により投資者の保護に欠けること、又は欠けることとなるおそれがないように業務を行わなければならない。

(iii)書面交付義務

投資顧問契約を締結する際には、投資顧問契約書とは別に、顧客に対して、契約締結前の書面の交付(金融商品取引法第37条の3)及び契約締結時等の書面の交付(金融商品取引法第37条の4)が必要になります。うち、契約締結時交付書面は、顧客氏名や契約成立日を記載する必要があることから、顧客毎にこれを作成・交付する必要があります。

オンラインやeメールでの、いわゆる電磁的方法によりこうした書面の交付をする場合には、電磁的方法により交付する書面の種別を明記したうえで、予め電磁的方法による交付の同意を取得し、保存する必要があります。なお、電磁的方法による交付の同意に関しては、記録保存をするとともに、「予め」の要件定めの関係で取得手順に留意する必要があります。

なお、契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面の他にも、いわゆる「法定帳簿」として、投資顧問契約書、クーリングオフ書面、助言記録、特定投資家制度の関連書面等が定められています。これら法定帳簿は、社内での一定の年数の保存をすることが必要になります。

なお、助言記録に関しては、令和4年12月23日に発表された「金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」において「投資顧問契約に基づく助言の内容を記載した書面に係る媒体の柔軟化」が打ち出されるとともに、従来の法令上明瞭ではなかった記載事項について、監督指針案において「投資顧問契約に基づく助言の内容を記載した書面の作成に当たっては、助言日、助言を行った者、相手方である顧客、銘柄及び売買の別並びに、口頭で助言を行った場合にはその要約を記載するものとする。また、書面で助言を行った場合には当該書面の写しを保存するものとする。」と明確化が図られています。

また、法定帳簿を電磁的なデータで保存する場合には、法令監督指針で具体的な保存方法の要件について定められています。例えば単にデスクトップ上のエクセルで保存してあるだけ、といった状態では法令違反を構成するため、注意が必要です。さらに、上記の改正監督指針案では音声記録による助言記録に関して、保存に関する要件が定められています。

 金融商品取引業者は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、顧客に対し、当該業者の商号等、契約の概要及び顧客の判断に重要な影響を及ぼす一定の事項を記載した書面を、契約締結前に交付しなければならない(当該契約締結前1年以内に、当該顧客に対して一定の書面を交付している場合等は除く。)
 金融商品取引業者は顧客に対し、一定の場合を除き、契約が成立したとき等において、当該業者の商号等、契約の概要その他一定の事項を記載した書面を交付しなければならない。

(iv)クーリングオフ

金融商品取引法第37条の6にクーリングオフが定められています。投資顧問契約を締結した顧客は、契約締結時書面を受領した日から10日間は、当該契約を書面又は電磁的⑥により解除することができるとされています。これは、特定商取引に関する法律の定めるクーリングオフとは異なる制度です。

また、その際の費用の清算に関しては、投資顧問契約に基づく助言を行っていない場合は、投資顧問契約締結のために通常要する費用を受領し、行っている場合には、契約内容に応じて日割り又は回数割で清算をするように法令で定まっています。

 金融商品取引業者と投資顧問契約を締結した顧客は、一定の場合を除き、契約締結時等の書面を受領した日から10日間は、当該契約を書面により解除することができる。
 金融商品取引業者は、上記により契約が解除された場合、一定の対価(当該解除までの期間に相当する手数料等)の額を超えて当該解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を顧客に請求することはできない。

もともと、法令上、クーリングオフは書面で行う必要があると定められていました。そのため、メールでクーリングオフの受け付けをすることができないと解されることが、実務上投資助言・代理業者の間で問題になっていました。これを受け、令和3年5月26日公布の令和3年金融商品取引法改正で、以下のようにメール等の電磁的記録でクーリングオフの手続きができることが明示されました。

同改正は、令和4年5月9日施行されています。

(書面等による解除)
第三十七条の六 金融商品取引業者等と金融商品取引契約(当該金融商品取引契約の内容その他の事情を勘案して政令で定めるものに限る。)を締結した顧客は、内閣府令で定める場合を除き、第三十七条の四第一項の書面を受領した日から起算して政令で定める日数を経過するまでの間、書面又は電磁的記録により当該金融商品取引契約の解除を行うことができる。
2 次の各号に掲げるものにより行う前項の規定による金融商品取引契約の解除は、当該各号に定める時に、その効力を生ずる。
一 書面 当該書面を発した時
二 記録媒体に記録された電磁的記録 当該記録媒体を発送した時

新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律案(改正金融商品取引法案第37条の6)

他方で、電話によるクーリングオフを受け付けていいのかという論点がありますが、法令上、電話による意思表示だけでは明らかに要件を満たすクーリングオフとしては成立しないと見るべきでしょう。

実務上、その点を厳しく追及すると、投資者保護の面でマイナスになりかねない面もあります。そのためか、検査等では、金融商品取引業者等が電話による顧客クーリングオフを受け付けしたことをもって、不備指摘されたケースは聞いたことがありません。

しかしながら、契約上正当な根拠なく投資顧問契約の解約に応じて、報酬等を返金することは特別の利益の提供に該当する恐れすらあります。顧客から電話によるクーリングオフの連絡を受けた際は、書面又は電磁的記録による解除を行うよう、顧客を案内する必要があると解されます。

(v) 金銭又は有価証券の預託の受入れ等の禁止

投資助言・代理業者は、金融商品取引法第41条の4に基づき、有価証券等管理業務として行う場合その他政令で定める場合を除くほか、顧客から金銭又は有価証券の預託を受けれることはできません。これは、投資運用業のうち投資一任業務を行う者に関しても同様です。

有価証券等管理業務等を行う場合とは、第一種金融商品取引業者が金融商品取引法第2条第8項第16号に掲げる有価証券等管理業務として行う場合、すなわち証券会社及びFX業者が取引口座で資金を預かる場合の他、信託業務を営む金融機関である登録金融機関が信託業務として行う場合、預金、貯金又は銀行法第二条第四項に規定する定期積金等の受入れを行う場合(金融商品取引法施行令第16条の9)及び他人のために暗号資産の管理を業として行うことにつき法律に特別の規定のある者が当該管理を行う場合(暗号資産交換業者。金融商品取引業等に関する内閣府令第126条の2)です。

特定投資家向けには預託の受入れ禁止が免除されますが、預託を受けた金銭・有価証券を分別管理する体制が整備されていない場合には特定投資家相手であっても適用対象になります。

 金融商品取引業者は、一定の場合を除き、その行う投資助言業務に関して、いかなる名目によるかを問わず、顧客から金銭若しくは有価証券の預託を受け、又は当該業者と密接な関係を有する一定の者に顧客の金銭若しくは有価証券を預託させてはならない。

(vi) 金銭又は有価証券の貸付け等の禁止

金融商品取引法第41条の5により、投資助言・代理業者は、投資助言業務に関して、顧客に対して金銭や有価証券の貸し付けを行うことは禁止されています。

ただし、令和5年の年初現在、貸付等禁止規制にかかる一定の場合の規制緩和がパブリックコメントに付されています。

 金融商品取引業者は、一定の場合を除き、その行う投資助言業務に関して、顧客に対し金銭若しくは有価証券を貸し付け、又は顧客への第三者による金銭若しくは有価証券の貸付けにつき媒介、取次ぎ若しくは代理をしてはならない。

金融商品取引業者共通規制

上記で見てきたものの他、金融商品取引業者一般に対する規制と同じく、投資助言・代理業者も、業務管理体制の整備義務、誠実公正義務、情報提供義務、名義貸しの禁止、虚偽告知の禁止、顧客情報の適正な取り扱い、標識の提示、断定的判断の提供の禁止、特別の利益の提供の禁止、公衆縦覧等の共通規制に服します。

なお、機関投資家向けに業務を行う場合には、規制の簡略化が図られています。特定投資家に該当する顧客に対しては、広告規制、適合性の原則、クーリングオフ等が適用されず、また、一部の書面交付が不要となるなど、一定の行為規制の免除がありますので、規制の適用関係が変わってきます。

特別の利益の提供の禁止

実務上、特別の利益の提供の禁止は非常に重要な論点です。投資顧問料等の割引、キャッシュバック等のキャンペーンは、常に特別の利益の提供の禁止に抵触しないか、また、現在届出済みの業務の内容又は方法を記載した書面との矛盾抵触が生じていないかを綿密に検討したうえで、これを設定する必要があります。

投資助言業務に関する特則

投資助言業務を行う金融商品取引業者に対しては、上記に加えて、金融商品取引法第38条の2で投資顧問契約の締結や解約に関し、偽計・暴行・脅迫をする行為の禁止、顧客勧誘に際しての損失補填の約束の禁止が禁止されます。

また、投資助言業務に関する特則では、金融商品取引法第41条で顧客に対する忠実義務及び善管注意義務が規定されています。また、同第41条の2及び金融商品取引業等に関する内閣府令第126条で、投資助言業特有の禁止行為として以下の事項が定まっています。

一 顧客相互間において、他の顧客の利益を図るため特定の顧客の利益を害することとなる取引を行うことを内容とした助言を行うこと。
二 特定の金融商品、金融指標又はオプションに関し、顧客の取引に基づく価格、指標、数値又は対価の額の変動を利用して自己又は当該顧客以外の第三者の利益を図る目的をもつて、正当な根拠を有しない助言を行うこと。
三 通常の取引の条件と異なる条件で、かつ、当該条件での取引が顧客の利益を害することとなる条件での取引を行うことを内容とした助言を行うこと(第一号に掲げる行為に該当するものを除く。)。
四 助言を受けた顧客が行う取引に関する情報を利用して、自己の計算において有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引(以下「有価証券の売買その他の取引等」という。)を行うこと。
五 その助言を受けた取引により生じた顧客の損失の全部又は一部を補てんし、又はその助言を受けた取引により生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させること(事故による損失の全部又は一部を補てんする場合を除く。)。

金融商品取引法第41条の2

一 自己又は第三者の利益を図るため、顧客の利益を害することとなる取引を行うことを内容とした助言を行うこと。
二 有価証券の売買その他の取引等について、不当に取引高を増加させ、又は作為的に値付けをすることとなる取引を行うことを内容とした助言を行うこと。
三 当該金融商品取引業者の関係外国法人等(第三十二条第三号に掲げる者であって、令第十五条の十六第一項各号又は同条第二項各号のいずれかに該当するものをいう。以下この号並びに第百三十条第一項第九号イ及び第十五号ハ(2)において同じ。)が有価証券の募集又は私募を行っている場合において、当該関係外国法人等に対する当該有価証券の取得又は買付けの申込みの額が当該関係外国法人等が予定していた額に達しないと見込まれる状況の下で、当該関係外国法人等の要請を受けて、当該有価証券を取得し、又は買い付けることを内容とした助言を行うこと。

金融商品取引業等に関する内閣府令第126条

投資助言・代理業(投資顧問業)の運営実務のポイント

ここまで見てきたように、投資助言・代理業者には、多数の行為規制があります。オンライン専業で投資顧問業務を行う事業者には、投資助言業務をネットビジネスの一種と考えている方もいますが、これらの規制を見て頂ければわかるように、投資助言・代理業者は金融商品取引業者であり、いわば「金融機関」です。

金融商品取引業者又は登録金融機関にお勤めになったことがなく、ネットビジネスで投資系商材を扱われている、という場合には、意図したマーケティング手法が法令上許容されるか、とりわけ慎重な検討が必要です。

投資助言・代理業は、金融商品取引業の他の業態と比して、一般的には求められる常勤役職員の人数は少なめです。しかし、投資助言・代理業者といえど、あくまで証券会社等と同じ金融商品取引業者ですので、法令上多くの義務を負っています。

現在、投資助言・代理業者に対しても頻繁に臨店検査が実施されていますので、これらの法令上の義務を確実に履行できる体制を構築することが重要になっています。

とはいえ、投資助言・代理業者は、第一種金融商品取引業者、第二種金融商品取引業者等と比べれば、行為規制の複雑性は限定的ですので、当初に適切な業務フローを構築できれば後々非常に楽になります。

各種届出

日常の投資助言・代理業者としての業務運営上は、各種変更届や年次の事業報告書の確実な提出が大切になります。金融商品取引業では、業務の内容又は方法、役員、所在地、定款、グループ会社の異動等、届出義務が定められている事項に動きがあるたびに、当局への変更届が必要になります。

こうした届出等での遅延が続くと、監督当局より内部管理態勢が脆弱な業者であると見做される傾向があり、業務方法書の変更や変更登録申請等の際にも事実上の障害となる場合がありますので、ひとつひとつは細かい手続きであるとは言え、最大限の注意を払って確実に手続義務を履行する必要があります。

苦情・紛争処理

顧客からの苦情・紛争処理に関しては、社内の苦情・紛争処理規程に基づき、社内規則に適合した解決を図る必要があるほか、必要に応じてADR措置(FINMACや弁護士会ADR)を活用しての紛争解決が求められます。

ちなみに、ADR措置を講ずるまで営業を開始することができない関係で、金融商品取引業登録が完了しても、一般社団法人日本投資顧問業協会への加入(それにより業務委託先であるFINMACを利用可能)か、弁護士会のADRの利用手続きが完了するまでは業務を開始することはできません。

また、弁護士会のADRは、苦情処理手続きを行わないため、弁護士会のADRで紛争処理体制を整備する場合には、苦情紛争に関しては、社内で社内規則を制定して金融商品取引業者自らがこれを行うことになります。

なお、かかる苦情紛争が、自社の法令規則等の違反に起因している場合には、事故届出書の提出を含め、必要な手続きを講じたうえで、内部管理態勢の改善を行っていく必要があります。

業務方法書における料金体系の設定

投資助言・代理業者の新規登録や、既存業者の業務の内容又は方法の変更において、料金体系に幅を持たせたいというニーズが非常に多くなっています。顧客と相談の上で報酬レートを決めるので、特定の数字を書きたくないといった要望や、変動のあるレートにする場合も、その決定基準は示すことができないという考え方です。

プライベートバンキング的なビジネスでは比較的一般的な考え方ですが、金融商品取引法との相性は悪いです。

業務の内容又は方法の案に、例えば報酬額10万円~100万円等と書くと、具体的に数字を決めること、変動制であれば計算基準を明記することが求められるのが一般的です。相当昔に登録を受けた事業者では、このように根拠なく幅が広い報酬帯の業務の内容又は方法でも、登録、受理をされていた時期がありましたが、令和3年現在では、とりわけ一般投資家向けの投資助言・代理業者では、こうした幅を持たせた料金設定をするのは極めて困難です。

これはいわば実務上の不文律として取り扱われていましたが、令和3年の証券モニタリング概要・事例集で、こうした料金設定に関する指摘が掲載されました。

基本料金や成功報酬料に係る不適切な取扱い〔内部管理態勢不備に係る指摘〕

【概要】
当社は、投資顧問料の基本料金について統一的な基準を設けずに独自の判断で減額・免除を行っていたほか、成功報酬料について契約内容に則った算出を行っていないことに加えて一部については顧客から言われるがまま受け入れて減額していた。

【検査結果の要旨】
当社は、基本料金に見合う収益を得ることができなかった既存顧客の契約更新に際し、基本料金を個別に設定するための基準を設けずに、当社社長の独自の判断により個別に基本料金を減免し、顧客間で公平性を欠いた不適切な取扱いをしていた。また、成功報酬料に関しても、契約で定めた方法で金額を算出していないなど、不適切な取扱いをしていた。

証券モニタリング概要・事例集

投資助言・代理業(投資顧問業)で問題が生じやすいケース

投資助言・代理業は、その業界での「知名度」に比して「正確な業務内容」が、必ずしも事業者に十分には理解されていません。そのため、事業者に金融商品取引法に関する十分な知識がないと、主観的には法令違反をするつもりがないのに規制に抵触している場合があります。

これは、法令に対する認識不足から、投資助言・代理業の範囲を正確に理解できていないケースが非常に多いということを意味します。第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業等他の種別と比べて、投資助言・代理業では、コンプライアンス機能が弱い会社が比較的多いことがこの傾向に拍車をかけている気がします。

海外FX等関連業務

投資助言・代理業では金融商品の販売することはできず、また顧客資産の運用もできません。さらには、証券口座やFX口座の開設の代理店もできません。その点は、非常に重要なポイントになります。

近年、海外FX業者の居住者に対する無登録営業が社会問題になり、当局による取締まりが強化されています。一定の要件を満たすプロ向けの外国業者は、確かに登録義務が課せられないですが、居住者の個人向けの海外FX業者は、基本的に所在地にかかわらず法令違反です。

「海外へ顧客を連れていき、海外業者が海外で顧客を勧誘しているので日本法は関係ない」「オフショア法人が代理店であって、日本ではサポートのみ提供している」「顧客から手数料を受け取っていないから問題ない」などの主張をよく耳にしますが、金融商品取引法上、これらはいずれも無登録営業を構成する可能性があります。

無登録海外FX業者に顧客を送客して、投資助言・代理業として、PAMMによる自動売買取引を提供したい等の相談を受けることがあります。しかしこれはスキーム的に登録手続自体が不可能ですし、内容的に第一種金融商品取引業及び投資運用業の登録を要すると思われ、そもそも投資助言・代理業の範囲でもありません。

外国投資案件関連業務

無登録海外FX業者のケースと同様、外国ファンドや外国積立型保険(実質的には保険性はなくファンドに該当する商品性のもの。オフショア地域に複数存在。ただし令和2年現在では同商品を国内で販売する者は激減。)の居住者に対する無登録での販売も見られます。

しかしながら、これも海外FXと同様、同じく投資助言・代理業者による勧誘はできません。投資助言業は顧客の利益のために助言する「投資家側」の業務となりますので、そもそも直接・間接に販売手数料を収受すること自体がおかしいといえます。

なお、投資助言・代理業者は、年次の事業報告書で、助言を行った有価証券について、有価証券の発行者、発行者から委託を受けた運用会社又は管理会社から、経済的利益を直接又は間接に受領していないかどうか記載を求められています。

こうしたケースで、実際には発行者から直接・間接に経済的利益を受け取っているにもかかわらず、受け取っていないと記載した場合には、事業報告書の虚偽記載として行政処分の対象になり得ます。

投資顧問契約・投資一任契約の代理・媒介は投資助言・代理業でもできますが、FXのIBは第一種金融商品取引業、ファンド販売は第二種金融商品取引業の登録をする必要があります。

ただし、その場合も媒介先が海外無登録FX業者の場合には違法性は治癒されませんので、居住者を相手方とする限りは、適法に海外無登録FX業者に送客する余地はありません。

そもそも、令和4年における先端の感覚では、海外における無登録のFX/BO/MAMM/PAMM/自動売買スキーム自体、平成色が抜けない過去の遺物なので、今更やるメリットはないと思います。

名義貸し

投資助言・代理業者は、例えばシステムトレードの開発者や外部の有名トレーダー等からシグナル配信の提携の誘いを受けたり、集客の代行業者から営業を受けるなど、外部から各種業務提携の申し入れが、頻繁に寄せられる傾向にあります。しかしながら、こういった提携の適法性に関しては、極めて抑制的に解する必要があります。

これらは、提携関係の実態次第で非常に法令違反を発生しやすい取引類型です。金融商品取引法上、投資助言及び勧誘は、必要な金融商品取引業の登録を受けた外部業者以外には、委託してはいけないことを認識する必要があります。近年、当局は外部への名義貸しには厳しい姿勢で臨んでいます。

金融商品取引業の登録がない者に対し、自社名義をもって、他人に金融商品取引業を行わせた場合、金融商品取引法第36条の3に違反するため、実際に登録取消しを含む行政処分事例が生じています。

誇大広告

前述のように、主として株式に対する助言を行う投資助言・代理業者に対する監督が近年、極めて厳しくなっています。虚偽告知・重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示等の誇大広告行為に絡んで、行政処分事例が頻発しており、インターネットを利用した個人向け株式投資顧問への参入は、比較的ハードルが高いです。

また、広告規制に関しては、一般社団法人日本投資顧問業協会の「広告、勧誘等に関する自主規制基準」に関しても留意してこれを行う必要があります。

一説には、2010年代初頭、いわゆる「競馬の予想屋」業態が、警察の取締強化により成立しにくくなったため、それまでインターネット上で競馬の情報サイトを営んでいた、いわゆる半グレに該当するグループがそれに代わる業態として投資顧問業に一斉に参入したと言われています。

2010年代の半ばは、これが社会問題になり、証券取引等監視委員会・財務局は、これに対して徹底した取り締まりを行いました。

投資助言・代理業者に対しては、令和3年の証券モニタリング概要・事例集でも、引き続き「⑦ 投資助言・代理業者  これまでの検査結果を踏まえ、顧客に誤解を生じさせる広告手法を用いていないか、虚偽の説明による勧誘を行っていないか等」をモニタリングの重点項目に挙げています。

しかし、概ね平成30年頃以降、徹底的な臨店検査により、順次行政処分を受けた改善又は廃業が進み誇大広告系投資顧問は過去の業態になりつつあります。

当局の監督強化により金融商品取引業をめぐる情勢は、毎年大きく変化しています。ネット上の情報など、既に過去のものになってしまっている場合もありますのでまずはお気軽にご相談ください。

投資顧問業協会規則

投資助言・代理業の運営にあたっては、前述の協会規則も重要となります。協会規則は、事業者の行為の適否を判断するうえでの一定の指針と解されており、一般社団法人日本投資顧問業協会非加入業者であっても、その規則の内容を把握して、自主的に各種基準を遵守する必要があります。

なかでも、投資助言・代理業の現在の監督上の重点は、広告の状況にあります。証券取引等監視委員会による令和2年8月4日付の証券モニタリング基本方針では、「(7)投資助言・代理業者投資助言・代理業者については、これまでの検査結果を踏まえ、顧客に誤解を生じさせる広告手法を用いていないか、虚偽の説明による勧誘を行っていないか等引き続き検証を行う。」とされています。

前掲の「広告、勧誘等に関する自主規制基準」における、投資意欲を不当にそそる表現等の禁止、推薦、保証等の表現の禁止、適正な情報の提供、利益保証の表示の禁止、断定的又は刺激的な表示等の禁止、優越性の表示、助言の実績の表示、運用実績等の表示、限定的な誘引の表示や、「ソーシャルメディアによる広告及びアフィリエイト広告に係る留意事項」に関しては、特段の注意を払う必要があります。

また、「投資助言業に関する業務運営基準」においては、以下の要件を満たした社内規程の整備義務を課していることに注意が必要です。

イ 役員(非常勤役員を除く。)、使用人及びこれらと生計を一にする親族(直系尊属を除く。)に適用する。
ロ イに掲げる者が行う取引については、取引の日付、取扱証券会社名・取引口座名、銘柄・数量・売買の別等を届け出る。
ハ 株式等及び投資証券等の取引は投資を目的とする場合に限り行うことなどその保有、取引について必要な条件を付する。
ニ 管理責任者を設置する。

こうした義務は、金融商品取引業者の役職員の投機的取引の禁止を定めた法令の趣旨を反映した自主規制規則に基づくものです。協会への非加入業者であっても、基本的にその趣旨を踏まえて、適切な社内規程と管理態勢を整備する必要があると解されます。

投資助言・代理業の運営に関するよくある質問

当社はネットで情報会員を集めるマーケティングノウハウがあります。これを生かして株式やFXの投資顧問を始めたいです。どのようにすればいいでしょう。

投資助言・代理業者は、「経験者」が必ず必要になりますので、ネットビジネスが母体の事業者であっても、必ず銀行や証券、投資顧問等のOBを役職員で確保することが必要になります。これを確保できない、また採用する予算もない場合には、登録は不可能です。なお、個人でのトレードや、金融商品取引業者又は登録金融機関ではない会社の経験は経験と扱われません。
経験者の確保が必要です。なお、ネットビジネス、とりわけ、情報ビジネスの発想を、そのまま投資助言・代理業に持ち込むと、適合性の原則、広告規制等の金融商品取引法上の義務との関係で違法状態を生じる可能性もありますので、業務に関する規制を事前に入念に検討してから、参入するかどうか決定いただいたほうがいいと思います。

投資顧問業者には、どのくらいの頻度で検査が来ますか?

投資助言・代理業者には、定期的な検査は実施されていません。
しかしながら、顧客数が多くなった場合や、何か目立つようなサービスを取り扱っている場合、はたまた顧客からの苦情が多い場合等、当局から検査を実施する必要性が高いと判断された場合には、無予告での臨店検査が随時実施されています。

投資助言・代理業に登録すると当局にはどのような報告が必要になりますか?

契約件数や売上、当期の業務状況や決算概要などを記載した事業報告書を、年に1回、金融庁の統合モニタリングシステムを利用して提出する必要があります。また、商号変更、定款変更、役員変更等の多くの事柄が届出事項と決まっており、変更が発生した場合には一定期日内に届出の義務があります。
さらに、一般的な事項に関する報告命令やアンケート等が年に数回程度不定期に実施されるほか、何らかの当局の関心事項が生じた場合、特に個別業者に対して、財務局から報告書の提出を命じられる場合があります。こうしたいわゆる「報告徴求」は、何らかの処分が当局の念頭にあることが多く、特に慎重な対応が必要です。

プロモーションのため、割引キャンペーンや、プレゼント・キャッシュバックキャンペーン等を実施したいのですが可能でしょうか?

通常、料金等のサービス内容は業務の内容又は方法を記載した書面(いわゆる「業務方法書」)に定まっており、その内容を変更するには変更届出が必要になります。
また、変更届出義務を履行することは当然のこととして、キャンペーン内容は、景品表示法の制限を受けるほか、一部の顧客だけを正当な根拠なく優遇して、いわゆる特別の利益の提供に該当しないように、キャンペーン内容を定める必要があります。また、先着人数限定といった、いわゆるネット広告でよく用いられるプロモーション手法に関しても、虚偽告知として行政処分が行われた先例があります。

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