2021/09/27
今年の特定商取引法及び特定預託法の改正はかなり大規模なもので、消費者被害防止のための新ルールが導入されました。
金融商品取引業・適格機関投資家等特例業務には特定商取引法の適用はありません。
しかし、個人向け投資関連ビジネスのうち、売り切り投資ソフトウエア、分譲型太陽光パネル、社債及び合同会社社員権販売など、金融商品取引業に該当しない業態で業務を行っている事業者には特定商取引法の適用がありますので、特定商取引法の改正動向に注意を払う必要があります。
詳細は、政省令の発表を待つ必要がありますが、ひとまず関連事業者にとって、実務上重要な個所をピックアップします。
特定商取引法改正
特定商取引法の改正で注目されるのは、従来、書面で交付することが義務付けていた概要書面・契約書面に関して、消費者の同意がある場合には電磁的方法による交付が可能になった点です。
従来、非常に多くの事業者から、顧客との契約を電子化して、書面の交付をしないようにしたいとの相談を受けていましたが、訪問販売等の特定商取引法所定の販売形式の場合には、概要書面・契約書面の電子化は許されず、印刷した書面を交付する必要がありました。
消費者の承諾が要件ではありますが、今回の改正は顧客とのペーパーレスでの契約に道筋を開くものです。
あわせて、消費者側からのクーリングオフに関しても、電子メール等の電磁的方法で行うことが可能になりました。金融商品取引法に基づくクーリングオフも、令和3年金商法改正で、電磁的方法で行うことを可能とする制度改正がなされており、社会全体でのペーパーレス化に向け、各種制度の見直しが進んでいます。
悪質な定期購入対策やいわゆる送り付け商法対策についても、今回の法改正でルール化されましたが、こちらは投資関連事業者にはあまり関係しなそうな規定です。
特定預託法改正
投資的なスキームの関係では、特定預託法改正により、いわゆる預託商法が原則として禁止になったことが注目されます。いままでは、金や和牛などの特定の商品に限られていた規制対象も、今回の改正で全ての物品等を対象とするようになり、いわゆる組み合わせ取引に関しては、預託が伴う場合には、特定預託法違反を構成する可能性を検討する必要が生じました。
物販の形式に仮託した実質的利殖スキームや実質的集団投資スキームに関しては、改正法施行後は原則としてこれを行うことができなくなると見るべきだと思います。
図表出典:消費者庁資料
改正法の施行日
改正法は、一部の規定(※)を除き、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において、政令で定める日から施行されます。
※:一部規定の施行時期について
【1】売買契約に基づかないで送付された商品に係る改正規定(特定商取引法第59条及び第59条の2)は、令和3年7月6日に施行されました。
【2】契約書面等の交付に代えて、購入者等の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができるものとすることに係る改正規定(特定商取引法第4条第2項及び第3項等/預託法第3条第3項及び第4項)等は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において、政令で定める日から施行されます。