投資運用業の行為規制

投資運用業の行為規制

投資運用業の運営にあたっては、法令及び自主規制規則に定めのある、投資運用業者固有の禁止事項に注意する必要があります。投資運用業に特有の禁止事項は、旧投資顧問業法から引き継がれた規定が多く、その具体的な禁止の内容は投資助言・代理業者における禁止行為とかなりの部分で類似しています。これは投資運用業者と投資助言・代理業が、同じ「受託者」として責任を負っていることに基づくものと理解されています。

投資助言契約も投資一任契約も、いずれも法律上は「委任契約」であるとされています。一般社団法人日本投資顧問業協会は、倫理綱領で「受託者責任の徹底」として、「我々は、顧客からの信任に応え適切に業務運営を遂行するため、受託者責任について再認識し、忠実義務及び注意義務を全うする。そのため、我々は、高い職業倫理意識をもって、顧客の利益を自己の利益より優先し、全ての顧客を公平に扱い、細心の注意を払って投資顧問業務を運営する」と謳っています。

具体的行為規制及び禁止行為

金融商品取引法は、投資運用業者の顧客に対する義務として、権利者に対する忠実義務・善管注意義務を定めています。忠実義務・善管注意義務は、取締役が会社に対して負う責任と同等であり、専門的知識を持っている投資運用業者として高度の注意を払い、権利者の利益のために忠実に業務をすることを求めるのがその趣旨です。

その他行為規制として、損失補塡等の禁止、特定投資家へのアマ成り告知、誠実義務 、名義貸しの禁止、広告規制、契約締結前交付書面・契約締結時交付書面等の交付義務、虚偽告知、断定的判断その他金融商品取引法38条に定める禁止行為、投資運用業特有の禁止行為、適合性の原則、顧客情報適正取扱、運用財産の分別管理等があります。

上記以外の投資運用業特有の禁止行為とは、金融商品取引法第42条の2及び金融商品取引業等に関する内閣府令130条に具体的に定められています。以下にその簡略化した概要を列記します。これは、その趣旨はいずれも忠実義務・善管注意義務を具体的化したものといえます。

  1. 自己取引(運用財産と自社又はその取締役若しくは執行役との間における取引)
  2. 運用財産相互取引(金融商品取引業等に関する内閣府令129条に定める例外の他、運用財産相互間における取引。)
  3. 特定の金融商品、金融指標又はオプションに関し、取引に基づく価格、指標、数値又は対価の額の変動を利用して自己又は権利者以外の第三者の利益を図る目的をもつて、正当な根拠を有しない取引を行うこと。
  4. 通常の取引の条件と異なる条件かつ権利者の利益を害することとなる条件での取引を行うこと。
  5. フロントラニング(運用として行う取引に関する情報を利用して、自己の計算において取引を行うこと。)
  6. 損失補填(金融商品取引業等に関する内閣府令129条の2に定める例外の他、権利者の損失の全部若しくは一部を補塡し、又は利益に追加するため、当該権利者又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させること。)
  7. その他自己取引(自己の監査役、役員に類する役職にある者又は使用人との間における取引を行うこと。)
  8. 自己又は第三者の利益を図るため、権利者の利益を害することとなる取引を行うこと。
  9. 一定の場合を除き第三者の利益を図るため、不必要な取引を行うこと。
  10. 他人から不当な取引の制限その他の拘束を受けて運用財産の運用を行うこと。
  11. 不当に取引高を増加させ、又は作為的な値付けをすること。
  12. 一定の場合を除き第三者の代理人となって当該第三者との間における取引を行うこと。
  13. 取引の申込みを行った後に運用財産を特定すること。
  14. 公募投資法人に関し、市場リスクにより発生し得る危険に対応する額として算出した額が運用財産の純資産額を超えることとなる場合において、デリバティブ取引を行い、又は継続することを内容とした運用を行うこと。
  15. 公募運用財産に関し、信用リスクを適正に管理する方法としてあらかじめ金融商品取引業者等が定めた合理的な方法に反することとなる取引を行うことを内容とした運用を行うこと。
  16. 一定の関係者が有価証券の引受け等を行っている場合において、当該者に対する当該有価証券の取得又は買付けの申込みの額が当該者が予定していた額に達しないと見込まれる状況の下で、当該者の要請を受けて、当該有価証券を取得し、又は買い付けることを内容とした運用を行うこと。
  17. 運用の再委託時に委託を受けた者が当該委託に係る権限の再委託をしないことを確保するための措置を講ずることなく、当該委託を行うこと。
  18. 取引の決済のため顧客から口座に預託を受ける場合において、当該取引の決済以外の目的で当該口座を利用し、又は当該金銭若しくは有価証券を当該取引の決済のため必要な期間を超えて当該口座に滞留させること。
  19. 廃止前厚生年金基金令の規定に違反するおそれがあることを知った場合において、当該存続厚生年金基金に対し、その旨を通知しないこと。
  20. 存続厚生年金基金から、廃止前厚生年金基金令の規定に違反し、運用財産の運用として特定の金融商品を取得させることその他の特定の取引に関する指図を受けた場合において、これに応じること。
  21. 積立金の運用に関して、存続厚生年金基金に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げること。
  22. 投資一任契約に基づく運用信託財産の管理について、運用を行う金融商品取引業者が、対象有価証券について一定の情報の確認態勢を満たすことなく、当該対象有価証券の取得又は買付けの申込みを行うこと。

また、投資一任業務においては、有価証券等管理業務(第一種金融商品取引業)として行う場合その他、法令の定める一定の場合以外で、「いかなる名目によるかを問わず、顧客から金銭若しくは有価証券の預託を受け、又は当該金融商品取引業者等と密接な関係を有する者として政令で定める者に顧客の金銭若しくは有価証券を預託させてはならない。」とされています。

さらに、原則として、顧客に対し金銭若しくは有価証券を貸し付け、又は顧客への第三者による金銭若しくは有価証券の貸付けにつき媒介、取次ぎ若しくは代理することも、禁止されています。こうした預託・与信の禁止は、投資助言・代理業者と同様の規制です。

運用報告等

投資運用業者は、原則として、半年(又は1年)に1回、運用財産に関する「運用報告書」を作成して、権利者に対して交付をする義務があります。そのうち、私募の集団投資スキームの自己運用業務を行う場合には、運用報告書を作成したときは、遅滞なくこれを内閣総理大臣に届け出なければならないとされています。運用報告書の記載事項は、以下の通りです。また、運用の詳細の記録に関していうと、運用報告書の作成とは別に法定帳簿である運用明細も社内で作成して保存する必要があります。

平常からの運用資産・取引状況の管理や利益相反防止体制が機能していれば、運用報告書の作成に大きく手間取ることはないと思います。逆に言えば、ここに書いてあるようなことに関して、運用報告書作成の時点であわてて調査しなければわからないようであれば、そもそも普段から運用管理体制に問題があるといえると思います。

  1. 当該運用報告書の対象期間
  2. 当該運用報告書の基準日における運用財産の状況として次に掲げる事項
  3. イ 金銭の額
    ロ 有価証券の銘柄、数及び価額
    ハ デリバティブ取引の銘柄、約定数量及び単価等
  4. 当該運用報告書の対象期間における運用の状況として次に掲げる事項
  5. イ 取引を行った日
    ロ 取引の種類
    ハ 金融商品取引行為の相手方の商号、名称又は氏名
    ニ 取引の内容として次に掲げる事項
    (1)有価証券の売買その他の取引にあっては、取引ごとに有価証券の銘柄、数、価額及び売付け等又は買付け等の別
    (2)デリバティブ取引にあっては、取引ごとにデリバティブ取引の銘柄、約定数量、単価等及び売付け等又は買付け等の別
  6. 当該運用報告書の対象期間において支払を受けた運用財産の運用に係る報酬の額
  7. 当該運用報告書の対象期間において運用財産に係る取引について第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業又は登録金融機関業務に該当する行為を行った場合にあっては、当該運用報告書の対象期間における当該行為に係る手数料、報酬その他の対価の額
  8. 当該運用報告書の対象期間において次に掲げるものとの間における取引を行ったときは、その内容
  9. イ 自己又はその取締役、執行役、監査役、役員に類する役職にある者若しくは使用人
    ロ 他の運用財産
    ハ 自己の親法人等又は子法人等
  10. 当該運用報告書の対象期間において行った金融商品取引行為に係る取引総額に占める前号イからハまでに掲げる者を相手方とする金融商品取引行為に係る取引総額の割合
  11. 当該運用報告書の対象期間における運用財産の運用として行った金融商品取引行為の相手方で、その取引額が当該運用財産のために行った金融商品取引行為に係る取引総額の百分の十以上である者がいる場合にあっては、当該相手方の商号、名称又は氏名並びに当該運用報告書の対象期間において行った金融商品取引行為に係る取引総額に占める当該相手方に対する金融商品取引行為に係る取引総額の割合
  12. 当該運用報告書の対象期間における運用財産の運用の経過(運用財産の額の主要な変動の要因を含む。)
  13. 運用状況の推移
  14. 財務又は投資一任契約に係る業務に関する外部監査を受けている場合において、対象期間において当該外部監査に係る報告を受けたときは、当該外部監査を行った者の氏名又は名称並びに当該外部監査の対象及び結果の概要

自主規制規則による制限

金融商品取引法に定める投資運用業者の行為規制の他に、一般社団法人日本投資顧問業協会の自主規制規則を遵守する必要があります。同協会では、「業務執行体制に関する自主規制基準」「ファンド運用業に関する業務運営基準」「ラップ業務に関する業務運営基準」「投資一任契約に係る議決権等行使指図の適正な行使について」「投資一任契約における「引値を条件とした取引」に関する留意事項について」「平均単価による取引実施のための業務体制等の整備について」「顧客資産の合同運用・同一運用に関する自主規制基準」等の投資運用業者に関連する自主規制規則が定められています。

近年参入する投資運用業者のほとんどは、一般社団法人日本投資顧問業協会に加入するので、同協会の自主規制規則を遵守する義務を負うことになります。また、仮に同協会に加入しないとしても、基本的に自主規制団体の規則は、法令に定めのないことを新たに規則として「付加」するものではなく、法令の趣旨を具体化、実質化してその遵守すべき事項を詳細化したものといわれています。

同協会の規則は、他の自主規制団体規則に比べても、その性格が強いように思います。よって、実務上は、同協会の自主規制に関しても法令同様の位置付けとして遵守するよう、社内態勢を構築する必要があります。

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