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電子募集業務及び電子募集取扱業務とは-適用対象有価証券-取扱業務-規制対象行為-勧誘手法の規制-行為規制-契約締結前等の顧客への情報の提供等-情報提供義務-業務管理態勢
電子募集業務及び電子募集取扱業務とは
電子募集取扱業務とは、平成26年金融商品取引法改正により、従来の第一種金融商品取引業務及び第二種金融商品取引業務のうち特定の行為を差すものとして、新たに定義された制度であり、平成27年5月29日付けで施行されました。
また、令和5年の同法改正により、電子募集取扱業務の範囲が貸付型ファンド等にも拡大するとともに、あらたに貸付型ファンド等の自己私募又は自己募集等を規律する、電子募集業務の概念も新設されました。
電子募集取扱業務は、有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い(金融商品取引法第2条第8項第9号)を、金融商品取引業等に関する内閣府令第6条の2第1号(金融商品取引業者のホームページを通じた方法)又は第2号(金融商品取引業者のホームページを通じた方法による場合で電子メール等により情報を送信する方法(音声の送受信による通話を伴う場合を除く))により、業として行うことをいいます。
電子募集業務は、貸付事業等権利に該当する有価証券の募集又は私募、売出し又は特定投資家向け売付け勧誘等を、同様に前記の電子情報処理組織を使用する方法等で行うことを指します。
ただし、電子メール等により情報を送信する方法については、web会議ツール等の利用により音声通話を伴う場合には、電子募集取扱業務に該当しないとされています「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(同P6 No.28)。
ファンド持分や信託受益権等をはじめとする一定の有価証券の電子募集取扱業務や、貸付型ファンド等の電子募集業務を行う場合には、金融商品取引法第29条の2第1項第6号の規定に従い変更登録を受けなければなりません。
なお、電子募集取扱業務の中でも、顧客からの申込の受付や契約までオンライン上で行う場合には、電子申込型電子募集取扱業務に該当します。同様にそれが電子募集業務の場合は電子申込型電子募集業務に該当し、一段と厳格な規制に服することになります。
六 第三条各号に掲げる有価証券又は金融商品取引所に上場されていない有価証券(政令で定めるものを除く。)について、電子募集業務(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより第二条第八項第七号又は第八号に掲げる行為(政令で定めるものを除く。)を業として行うことをいう。以下この章において同じ。)又は電子募集取扱業務(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより第二条第八項第九号に掲げる行為を業として行うことをいう。以下この章において同じ。)を行う場合にあつては、その旨
適用対象有価証券
電子募集取扱業務の規制対象のうち、上記条文に登場する「第三条各号に掲げる有価証券」は、以下の有価証券です。
(適用除外有価証券)
第三条 この章の規定は、次に掲げる有価証券については、適用しない。
一 第二条第一項第一号及び第二号に掲げる有価証券
二 第二条第一項第三号、第六号及び第十二号に掲げる有価証券(企業内容等の開示を行わせることが公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定めるものを除く。)
三 第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利(次に掲げるものを除く。)
イ 次に掲げる権利(ロに掲げるものに該当するものを除く。第二十四条第一項において「有価証券投資事業権利等」という。)
(1) 第二条第二項第五号に掲げる権利のうち、当該権利に係る出資対象事業(同号に規定する出資対象事業をいう。)が主として有価証券に対する投資を行う事業であるものとして政令で定めるもの
(2) 第二条第二項第一号から第四号まで、第六号又は第七号に掲げる権利のうち、(1)に掲げる権利に類する権利として政令で定めるもの
(3) その他政令で定めるもの
ロ 電子記録移転権利
四 政府が元本の償還及び利息の支払について保証している社債券
五 前各号に掲げる有価証券以外の有価証券で政令で定めるもの
また、金融商品取引法施行令第 15 条の4の2に、登録申請書における電子募集業務又は電子募集取扱業務を行う旨の記載を要しない有価証券が以下のように定められています。
(登録申請書における電子募集業務又は電子募集取扱業務を行う旨の記載を要しない有価証券等)
第十五条の四の二 法第二十九条の二第一項第六号に規定する有価証券から除くものとして政令で定めるものは、次に掲げる有価証券とする。
一 法第二条第一項第一号及び第二号に掲げる有価証券
二 政府が元本の償還及び利息の支払について保証している有価証券
三 第二条の十一に規定する有価証券
四 法第四条第一項から第三項までの規定による届出又は発行登録(法第二十三条の三第三項に規定する発行登録をいう。)が行われている有価証券
五 有価証券に関して法第四条第七項に規定する開示が行われている場合(同項第二号に掲げる場合に限る。)における当該有価証券
六 法第四条第一項第四号に該当する売出しに係る有価証券
適用除外になる有価証券の種別には、国債、地方債、政府保証債、日本国の加盟する条約により設立された機関が発行する債券で、当該条約によりその本邦内における募集又は売出しにつき日本国政府の同意を要する債券、有価証券届出書の提出・発行登録・既に開示が行われている有価証券、外国で既に発行された有価証券又はこれに準ずるものとして政令で定める有価証券の売出し(金融商品取引業者等が行うものに限る。)のうち国内における当該有価証券に係る売買価格に関する情報を容易に取得することができることその他の政令で定める要件を満たす売り出しにかかる有価証券が指定されています。
令和6年10月31日以前は、7番目として「出資された金銭の50%超を金銭の貸付にあてる集団投資スキーム型の有価証券」が含まれていましたが、これは削除されました。
よって現在は、貸付型ファンドも、「電子募集取扱業務」及び「電子募集業務」の適用対象になります。貸付型ファンドは、第二種金融商品取引業者の場合には第二種金融商品取引業に加え貸金業の登録を受けたうえで、自ら発行するファンドの自己募集の形態で募集又は私募(電子申込型電子募集業務)が行われていることが多くなっています。
他方で、証券会社の場合は、これとやや事情が異なっています。
貸付型ファンドを第一種金融商品取引業の登録を受けている者が販売者となって組成しようとする場合、自己資本規制比率等を考慮すると、第一種金融商品取引業者自身が、自己募集の形態で募集又は私募を行うことは現実的ではありません。
それは、自己資本規制比率の算定にあたって「リスク相当額」と計算される、貸出債権の「取引先リスク相当額」が、とりわけ適格格付けを付与されていない貸出先の場合には25%と非常に高いためです。そのため、第一種金融商品取引業のバランスシート上で貸出しを行う場合、120%の維持を義務付けられている自己資本規制比率に対する、強い下押し圧力になります。
よって、証券会社の販売するソーシャルレンディングでは、通常、親子会社等の関係会社で貸金業登録を行ったうえで、その発行するファンド持分の募集又は私募の取扱いをする形態(電子申込型電子募集取扱業務)で販売を行うことになっています。
いずれにせよ、非上場で開示が行われていない政府非保証の有価証券に関しては、オンライン上の募集が広汎に規制対象となるということです。
なお、金融庁はパブリックコメントで、「改正金商法施行令第15条の4の2各号に掲げる有価証券の募集・私募の取扱いを、ウェブサイト等(改正金商業等府令第6条の2各号に掲げる方法)を利用して行うことは、改正金商法第29条の2第1項第6号に規定する「電子募集取扱業務」には該当しない、との理解でよいか。」という問いに対して、「ご指摘の有価証券の募集・私募の取扱いの場合でも電子募集取扱業務に該当します。ただし、改正金商法施行令第15条の4の2各号に規定する有価証券のみを取り扱う場合であれば、登録申請書における電子募集取扱業務を行う旨の記載等は不要です。」(平成27年5月12日付け金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」No17)と回答していますので、適用除外有価証券を取扱う場合にも、概念的には電子募集取扱業務に該当することに注意が必要です。
取扱業務
有価証券の「取扱業務」が、電子募集取扱業務の規制の対象となり、発行者が自社である有価証券の募集又は私募(例えば、金融商品取引法第2条第8項第7号の集団投資スキームの自己募集)等に関しては、貸付型ファンド等(貸付事業等権利)の場合には電子募集業務となります。
電子募集業務と電子募集取扱業務、いずれも変更登録の対象です。どちらに該当するかは、ファンドが自社以外の第三者発行なのか、自社発行なのかで決まります。
また、募集又は私募(7号)及び売出し業務(8号)に関しては、ファンドが貸付型ファンド等(貸付事業等権利)でない場合には、電子募集業務には該当しません
ファンド業務に関して言えば、第二種金融商品取引業者自身が無限責任組合員や営業者になる場合には、取扱業務には該当せず、ファンドが貸付事業等権利にに該当する場合には電子募集業務となります。逆に、たとえ100%子会社やSPCが発行者の場合であっても、法的には自己募集(金融商品取引法第2条第8項第7号)ではなく取扱業務(金融商品取引法第2条第8項第9号)に該当しますので、電子募集取扱業務に該当することになります。
また、電子募集取扱業務は第二種金融商品取引業だけではなく、第一種金融商品取引業にもかかわってくる規制です。とはいえ、株式投資型クラウドファンディングに関しては、令和3年現在、実務上、証券会社ではなく第一種少額電子募集取扱業者によって提供されている状態です。ちなみに、第一種金融商品取引業者がその行う第一種金融商品取引業務(証券業務)において有価証券の取扱ではなく自己募集を行うことは、基本的には想定できないように思います。
なお、FX/CFDなどの取引は、市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引に該当しますので、そもそも有価証券に関連する業務ではなく、電子募集業務・電子募集取扱業務の規制の対象にならないことは論を待ちません。
規制対象行為
電子募集業務及び電子募集取扱業務として規制の対象となる具体的な取得勧誘の内容ですが、金融商品取引業等に関する内閣府令第6条の2では、以下のように定義されています。第1号は、ウェブサイト等を閲覧させることにより投資家を勧誘する方法、第2号は第1号によりウェブサイト等を閲覧させた後にメール等の通信により勧誘をする方法です。
(有価証券の募集等に係る情報通信の技術を利用する方法)
第六条の二 法第二十九条の二第一項第六号に規定する内閣府令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された情報の内容を電気通信回線を通じて相手方の閲覧に供する方法
二 前号に掲げる方法による場合において、金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機と相手方の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて又はこれに類する方法により通信文その他の情報を送信する方法(音声の送受信による通話を伴う場合を除く。)
金融庁は、パブリックコメントで「インターネット上だけではなく電話や訪問を行う場合であっても、当該インターネット上での募集又は私募の取扱いは電子募集取扱業務となるのか」という問いに対して、「その他の手法を併用して当該行為を行う場合であっても、電子募集取扱業務に該当します。」としているほか、「金商業者のホームページ上において、個別商品の概要や手数料、予想リターン、申込期間などを掲載したページを設けている場合、当該ホームページにおいて、商品の申込みを受け付けていなくても募集又は私募の取扱いに該当するのか。」という質問に対しても、基本的には該当すると回答しています(上掲 No.23、24)
また、「フェイスブック、ミクシィ、LINE等の SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)、ツイッター等のマイクロブログ、YouTube 等の動画・写真共有サイト及びブログといった各種のソーシャルメディアによるものも含まれると理解してよいか」という質問に対しても、「ご指摘のSNS等については、その機能に応じて個別に判断する必要がありますが、サーバーに記録された情報の閲覧による方法又はこれに関連するインターネットを介したメッセージの授受に係るサービスの場合には、同条第1号又は第2号に該当する」としています(上掲 No.25)。
募集要項を掲載しただけでも、また、掲載場所がSNSであっても規制対象になるということであり、電子募集業務及び電子募集取扱業務に該当する範囲は広くとられていますので、電子募集業務及び電子募集取扱業務を行っていない金融商品取引業者は、インターネット上の情報発信には細心の注意を払う必要があります。
なお、上記第2号に掲げる「通信文その他の情報を送信する方法(メール等での勧誘)」に関して、金融庁は「前号に掲げる方法による場合において」という要件は、ウェブサイト上での取得勧誘(同条第1号に該当する行為)を行わずにメール等の同条第2号に掲げる方法のみで勧誘を行う場合は、同条第2号の要件を満たさない」と回答しており、ウェブサイトには募集要項を掲載していない中で、単に電子メールで勧誘を行うだけでは電子募集取扱業務に該当しません(上掲 No.27)。
勧誘手法の規制
電子募集業務及び電子募集取扱業務を行う際に、並行して対面や電話での勧誘を行うことができるのかという論点は、実務上よく議論になります。
金融庁は「第一種・第二種少額電子募集取扱業者は、電子募集取扱業務に該当しない金商法第2条第8項第9号に掲げる行為を行うことはできないため、法律上、電話や対面による勧誘を行うことはできません。なお、投資者が申込みを電話や対面で行うことを希望される可能性もあることから、電話や対面による取得の申込みは禁止しておりません。」としていますので、原則的には、第一種金融商品取引業又は第二種金融商品取引業の登録を受けている場合には電話や対面による勧誘が可能に思えます(上掲 No.27)。
しかしながら、これには自主規制規則による制限があります。電子募集取扱業務のうち、金融商品取引業等に関する内閣府令第 70 条の 2 第 3 項第 1 号(金融商品取引業者のホームページを通じた方法)又は第 2 号(金融商品取引業者への電子メール等を通じた方法(音声の送受信による通話を伴う場合を除く))に掲げる方法により顧客に有価証券の取得の申込みをさせる業務である「電子申込型電子募集取扱業務」及び電子募集業務のうち電子申込型電子募集業務に該当する場合には、日本証券業協会又は一般社団法人第二種金融商品取引業規則により、以下のような制限がかかっています。
よって、第二種金融商品取引業務において電子申込型電子募集業務及び電子申込型電子募集取扱業務を行う場合並びに株式投資型クラウドファンディングを行う場合には、電話や対面による勧誘はできないということになります。
(訪問又は電話の禁止等)
第 7 条 正会員は、電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券について、顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、金商法第2条第8項第7号から第9号に掲げる行為を行ってはならない。
2 電子募集会員は、第二種少額電子募集取扱業務以外の方法で募集の取扱い又は私募の取扱いを行ってはならない。
(勧誘手法併用の禁止)
第 12 条 会員等は、電話又は訪問の方法等、金商業等府令第6条の2各号に規定する方法以外の方法により、株式投資型クラウドファンディング業務に係る投資勧誘を行ってはならない。
行為規制
(1)契約締結前等の顧客への情報の提供等
行おうとする有価証券の取扱が、「電子申込型電子募集取扱業務ではない電子募集取扱業務」又は「電子申込型電子募集業務でない電子募集業務」に該当する場合、当該有価証券の発行者の商号、名称又は氏名及び住所、当該有価証券の発行者が法人であるときは、代表者の氏名、当該有価証券の発行者の事業計画の内容及び資金使途が契約締結前交付書面の記載事項として追加されます。
さらに電子申込型電子募集取扱業務等(電子申込型電子募集取扱業務又は第一種少額電子募集取扱業者若しくは第二種少額電子募集取扱業者が行う電子募集取扱業務(電子申込型電子募集取扱業務に該当するものを除く))及び電子申込型電子募集業務では、下記第6号イからトまでの事項も記載事項になります。
もっとも、顧客に対する情報提供に関しては、事業型ファンドの私募の取扱等に関する規則や電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則等の自主規制規則にも、詳細に提供すべき情報が定まっており、実務上は本条文よりも自主規制規則への適合性が契約締結前交付書面のチェックのメインになります。
(有価証券の売買その他の取引に係る契約締結前交付書面の共通記載事項)
第八十三条 その締結しようとする金融商品取引契約が有価証券の売買その他の取引に係るものである場合における法第三十七条の三第一項第七号に規定する内閣府令で定める事項は、前条各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項とする。ただし、その締結しようとする金融商品取引契約が電子募集取扱業務に係る取引に係るものである場合以外の場合にあっては、第三号から第六号までに掲げる事項を除く。
一 当該有価証券の譲渡に制限がある場合にあっては、その旨及び当該制限の内容
二 当該有価証券が取扱有価証券である場合にあっては、当該取扱有価証券の売買の機会に関し顧客の注意を喚起すべき事項
三 当該有価証券の発行者の商号、名称又は氏名及び住所
四 当該有価証券の発行者が法人であるときは、代表者の氏名
五 当該有価証券の発行者の事業計画の内容及び資金使途
六 電子申込型電子募集取扱業務等の場合にあっては、次に掲げる事項
イ 申込期間
ロ 目標募集額
ハ 当該有価証券の取得に係る応募額が目標募集額を下回る場合及び上回る場合における当該応募額の取扱いの方法
ニ 当該有価証券の取得に係る応募代金の管理方法
ホ 第七十条の二第二項第二号に規定する措置の概要及び当該有価証券に関する当該措置の実施結果の概要
ヘ 顧客(特定投資家を除く。)が当該有価証券の取得の申込みをした後、当該顧客が当該申込みの撤回又は当該申込みに係る発行者との間の契約の解除を行うために必要な事項
ト 当該有価証券の取得に関し、売買の機会に関する事項その他の顧客の注意を喚起すべき事項
七 当該有価証券が電子記録移転有価証券表示権利等である場合にあっては、当該電子記録移転有価証券表示権利等の概要その他当該電子記録移転有価証券表示権利等の性質に関し顧客の注意を喚起すべき事項
(2)情報提供義務
金融商品取引業者等が電子募集業務及び電子募集取扱業務を行う場合、金融商品取引法43条の5及び金融商品取引業等に関する内閣府令146条の2に基づき、手数料等、リスク及び上記の追加的な契約締結前に提供しなけばいけない事項について、電子募集業務及び電子募集取扱業務を行う期間中、見やすい箇所に明瞭かつ正確に表示して提供することが義務づけられます。
第四十三条の五 金融商品取引業者等は、第三条各号に掲げる有価証券又は金融商品取引所に上場されていない有価証券(第二十九条の二第一項第六号に規定する政令で定めるものを除く。)について電子募集業務及び電子募集取扱業務を行うときは、内閣府令で定めるところにより、第三十七条の三第一項の規定により提供しなければならない情報のうち電子募集業務及び電子募集取扱業務の相手方の判断に重要な影響を与えるものとして内閣府令で定める事項について、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより、これらの有価証券について電子募集業務及び電子募集取扱業務を行う期間中、当該相手方が閲覧することができる状態に置かなければならない。
第百四十六条の二 金融商品取引業者等は、第三項に規定する事項を、電子募集業務又は電子募集取扱業務の相手方の使用に係る電子計算機の映像面において、当該相手方にとって見やすい箇所に明瞭かつ正確に表示されるようにしなければならない。
2 次項に規定する事項のうち法第三十七条の三第一項第五号に掲げる事項、第八十二条第三号及び第五号に掲げる事項並びに第八十三条第一項第六号(トに係る部分に限る。)に掲げる事項の文字又は数字については、当該事項以外の事項の文字又は数字のうち最も大きなものと著しく異ならない大きさで表示するものとする。
3 法第四十三条の五に規定する内閣府令で定める事項は、法第三十七条の三第一項第四号に掲げる事項の概要、同項第五号に掲げる事項、第八十二条第三号及び第五号に掲げる事項並びに第八十三条第一項第三号から第七号までに掲げる事項とする。
4 法第四十三条の五に規定する内閣府令で定めるものは、金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された情報の内容を電気通信回線を通じて電子募集業務又は電子募集取扱業務の相手方の閲覧に供する方法とする。
(3)業務管理態勢
金融商品取引法第35条の3及び金融商品取引業等に関する内閣府令第70条の2に業務管理態勢の整備義務が定められており、とりわけ電子募集業務及び電子募集取扱業務を行う場合の義務が詳細に規定されています。
同第70条の2第1項は、全般に適用される規制であり、電子募集業務及び電子募集取扱業務に限ったものではありません。
また、続く同第2項の業務管理態勢整備義務に関して注目されるのは、適用範囲を、「電子募集業務及び電子募集取扱業務を行う者」又は「第六条の二各号に掲げる方法により法第二条第八項第七号又は第八号に掲げる行為(法第三条各号に掲げる有価証券又は金融商品取引所に上場されていない有価証券(令第十五条の四の二各号に掲げるものを除く。)について行う場合に限る。)を業として行う者」としていることです。
貸付事業等権利以外の自己私募又は自己募集は、電子募集業務にも電子募集取扱業務にも該当しません。しかし、業務管理態勢の整備に限っては、貸付事業等権利以外の自己募集のみを行う金融商品取引業者等であっても「法第3条各号に掲げる有価証券又は金融商品取引所に上場されていない有価証券(令第15条の4の2各号に掲げるものを除く。)」の自己募集を業として行う場合には、電子募集業務又は電子募集取扱業務を行う場合と同様に義務が適用されることになりますので注意が必要になります(上掲 No.56)。
具体的な義務としては、(1)金融商品取引業等に係る電子情報処理組織の管理を十分に行うための措置がとられていること(=システム管理態勢の整備)及び(2)標識に表示されるべき事項(金融商品取引業協会に加入していない場合にあっては、その旨を含む。)に関し、web上の閲覧に供する措置がとられていることが必要になります。
システム管理態勢の整備に関しては、一般的には、システム管理に関する社内規程や各種マニュアルの整備、障害対応態勢の構築、外部委託先管理やシステム監査等の実施体制の整備等が必要になると考えられています。
なお、第一種少額電子募集取扱業務及び第二種少額電子募集取扱業務を行う際には追加的に同項8号の態勢整備があります。また、電子申込型電子募集業務等及び電子申込型電子募集取扱業務等を行う場合、さらに、同3項から第7項の体制整備が求められることになります。
なお、第一種少額電子募集取扱業務及び第二種少額電子募集取扱業務並びに電子募集業務及び電子申込型電子募集取扱業務に関しては、別項目で詳述しますので、ここではこれ以上詳しく説明しません。
(業務管理体制の整備)
第三十五条の三 金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業又は登録金融機関業務を適確に遂行するため、内閣府令で定めるところにより、業務管理体制を整備しなければならない。
(業務管理体制の整備)
第七十条の二 法第三十五条の三の規定により金融商品取引業者等が整備しなければならない業務管理体制は、金融商品取引業等を適確に遂行するための社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいう。)を整備し、当該社内規則等を遵守するための従業員に対する研修その他の措置がとられていることとする。
2 法第三十五条の三の規定により金融商品取引業者等(電子募集業務を行う者その他の法第二十九条の二第一項第六号に規定する有価証券について第六条の二各号に掲げる方法により法第二条第八項第七号又は第八号に掲げる行為を業として行う者及び電子募集取扱業務を行う者に限る。)が整備しなければならない業務管理体制は、前項の要件のほか、次に掲げる要件を満たさなければならない。
一 金融商品取引業等に係る電子情報処理組織の管理を十分に行うための措置がとられていること。
二 電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱おうとする有価証券に関し、その発行者の財務状況、事業計画の内容及び資金使途その他電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等の対象とすることの適否の判断に資する事項の適切な審査(電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の募集又は私募に係る顧客の応募額の目標として設定した金額(次号及び第四号並びに第八十三条第一項第六号ロ及びハにおいて「目標募集額」という。)が発行者の事業計画に照らして適当なものであることを確認することを含む。)を行うための措置がとられていること。
三 電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の募集又は私募に係る顧客の応募額が顧客が当該有価証券の取得の申込みを行うことができる期間(次号及び第八十三条第一項第六号イにおいて「申込期間」という。)内に目標募集額に到達しなかった場合及び目標募集額を超過した場合の当該応募額の取扱いの方法を定め、当該方法に関して顧客に誤解を生じさせないための措置がとられていること。
四 電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の募集又は私募に関して、顧客の応募額が申込期間内に目標募集額に到達したときに限り当該有価証券が発行される方法を用いている場合には、当該目標募集額に到達するまでの間、発行者が応募代金(これに類するものを含む。第六号及び第八十三条第一項第六号ニにおいて同じ。)の払込みを受けることがないことを確保するための措置がとられていること。
五 電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等に係る顧客(特定投資家(法第三十四条の二第五項の規定により特定投資家以外の顧客とみなされる者を除き、法第三十四条の三第四項(法第三十四条の四第六項において準用する場合を含む。)の規定により特定投資家とみなされる者を含む。以下同じ。)を除く。)が電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の取得の申込みをした日から起算して八日を下らない期間が経過するまでの間、当該顧客が当該申込みの撤回又は当該申込みに係る発行者との間の契約の解除を行うことができることを確認するための措置がとられていること。
六 発行者が電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等に係る顧客の応募代金の払込みを受けた後に、当該発行者が顧客に対して事業の状況について定期的に適切な情報を提供することを確保するための措置がとられていること。
七 第一種少額電子募集取扱業務又は第二種少額電子募集取扱業務において取り扱う募集又は私募に係る有価証券の発行価額の総額及び当該有価証券を取得する者が払い込む額が令第十五条の十の三各号に掲げる要件を満たさなくなることを防止するための必要かつ適切な措置(第十六条の二各項に規定する算定方法に基づいて当該有価証券の発行価額の総額及び当該有価証券を取得する者が払い込む額を適切に算定するための措置を含む。)がとられていること。