行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

届出から募集開始の流れ

届出から募集開始までの流れ

届出のタイミング届出前後の流れ特例業務に関する留意点先例の集積臨店検査の実施抜本的規制強化特例業務に外務員資格が必要なのかご相談の受付

届出のタイミング

適格機関投資家等(1名以上の適格機関投資家+49名以下の適格機関投資家に該当しないが一定の要件をクリアするセミプロの投資家(特例業務対象投資家))を対象にした私募及び運用業務である「適格機関投資家等特例業務」を行う場合は、あらかじめ「届出」を行う必要があります。

そのため、実務上はいつまでに届出を行う必要があるのか、つまり、どの段階から私募に該当するのかということが問題になります。

金融商品取引法施行時の平成19年のパブリックコメント(P538 No7)では、「いわゆる集団投資スキーム持分(金商法第2条第2項第5号・第6号)は、一般に、その組成において投資者の需要等を踏まえながらその内容を確定させていく方法等が取られることが多く、どの時点を捉えて「取得の申込みの勧誘(募集)」が開始されたかを判断することが困難であることが想定されることから、金商法では、集団投資スキーム持分の「募集」の有無については、投資家が当該持分を取得するタイミングをとらえて判断することとしており、「取得勧誘であって有価証券の募集に該当しないもの」が「私募」とされています(同条第3項第3号参照)」としており、実際に投資者にファンドを取得された時点が開示規制上の募集に該当するタイミングとしています。

よって、有価証券届出書の提出義務に関する開示規制においては、集団投資スキーム持分等のいわゆる二項有価証券の募集に関して、実際に勧誘に応じた所有者の数を基準として、公募(500名以上)が私募(499名以下)か判断されます。

また、適格機関投資家等特例業務の届出時も、適格機関投資家の名称を届出書に記載することが求められていますので、適格機関投資家に対して、届出前(つまり適法に私募ができるようになる前)に、ヒアリングを行った上で出資の目途を付ける行為が届出前に行われることは、制度上当然に予定されていると解釈できます。

しかしながら、複雑なのは、同パブリックコメント(上記と同項番)で金融庁が「ご指摘の事例において、日本の投資家に対して「外国LPS持分」の取得勧誘を行った場合、結果として日本の投資家が取得勧誘に応じず取得に至らなかった場合でも、取得勧誘が行われて日本の投資家が取得することとなる可能性がある以上、実務的には、「募集」又は「私募」(金商法第2条第8項第7号)に該当するものとして、当該外国集団投資スキームの運営者は、金融商品取引業の登録(又は適格機関投資家等特例業務の届出)を要するものと考えられます」としていることです。

同パブリックコメントの後半の説明は、同前半の説明と論理的に矛盾しているようにも思われます。投資家に持分を取得させた時点が募集又は私募のタイミングなのか、声掛け時点が募集又は私募のタイミングなのか、あるいは業規制と開示規制で判定のタイミングが異なるのか判然としません。

実務上、この点は厳密に詰められておらず、業規制の観点からは、(i)声掛け時点で募集又は私募に該当する(ii)ただし、適格機関投資家等特例業務において当初適格機関投資家を探す段階での適格機関投資家へのヒアリングは募集又は私募に該当しない(iii)開示規制上は取得時点で判定するという暗黙のルールの下に制度運営されています。

届出前後の流れ

適格機関投資家に該当しない、すなわち特例業務対象投資家への具体的な出資勧誘は届出後とすべきでしょう。また、気を付けて頂きたいのは、適格機関投資家からの出資を受けることが出来なかった場合は、適格機関投資家等特例業務の要件を満たさないことです。

特例業務対象投資家から資金を集める算段がついたとしても、適格機関投資家が出資をしなければ、スキームそのものが機能しません。そのため、業務の順番としては、以下のようになります。

適格機関投資家からの出資内諾の取りつけ

適格機関投資家等特例業務の届出

適格機関投資家との契約
投資事業有限責任組合の場合ファンドを登記


ファンド用別段名義銀行口座開設

適格機関投資家からの出資金払込

特例業務対象投資家への私募及び出資金払込受付

運用開始

なお、届出前に投資者よりLOIを取りたい、銀行口座開設前に自社の口座に払込を受けたい等のフライング行為をしたいという相談を受けることがよくあります。

その法的な適否は、二項有価証券の勧誘の定義や、有価証券等管理業務の定義等が関連してきます。

払込に関しては、証券会社が有価証券等管理行為で預託を受ける場合又は第二種金融商品取引業者が特定有価証券等管理行為で預託を受ける場合を除き、ファンド用(同一の出資対象事業につき払い込みを受ける別段名義口座)ではない発行者名義口座で資金を預かることや、エクスローとして第三者(関係会社や弁護士等)名義の銀行口座に払込を受ける行為は、分別管理義務違反を構成します。

また、規制とはまた別の角度の論議ですが、数日程度の前倒しを法令等遵守よりも優先する事業者の運用パフォーマンスは総じて振るわない印象があります。

大勢に影響がないにもかかわらず、法令上グレーになりかねない事項を数日単位で急ぐことは実益に乏しく思います。適格機関投資家等特例業務で、こうした出資時系列の誤りを理由にして、行政処分を受けた先例もあります。

特例業務に関する留意点

先例の集積

平成19年の金融商品取引法の施行から10年を超える年月が経過し、当局による事業者への処分事例が積みあがってきた結果、当初はあいまいだった適格機関投資家等特例業務の要件に関する行政の解釈が明らかになってきました。

以前は、適格機関投資家からの出資の順序は(1)自己募集業務(ファンドの募集)に関しては、最終的に適格機関投資家の出資があれば、その他の投資家との出資の先後は問わない(2)自己運用業務(主として有価証券又はデリバティブ投資を行うファンドの運用)に関しては、運用開始までに適格機関投資家の出資が必要であると担当者ベースで説明がなされていた時期もありました。

しかし、現在では、平成27年の某業者に関する関東財務局の警告書の発出を通じ、自己募集業務・自己運用業務いずれに関しても、適格機関投資家等特例業務を行うには、適格機関投資家が最初に出資する必要があるうことが示されています。

また、適格機関投資家等特例業務届出者自身を、自ら運営するファンドの適格機関投資家とすることができないことは当初より明示されていたものの、適格機関投資家等特例業務届出者自身が無限責任組合員として業務執行する投資事業有限責任組合を適格機関投資家として、別途自ら組成したファンドで適格機関投資家等特例業務に基づく自己募集を行うことができるのかという点に関しても、従来ははっきりしておらず、当局も明瞭な回答を避けていました。

しかし、現在では適格機関投資家等特例業務届出者自身が無限責任組合員として業務執行する投資事業有限責任組合では、適格機関投資家への取得勧誘行為がないと考えられるため、適格機関投資家等特例業務の自己募集業務を行う上での適格機関投資家にならないことが平成26年の某社への行政処分を通じて明らかになっています。

さらに監督指針のIX-1-2(1)③は着眼点として「適格機関投資家等特例業者又は適格機関投資家等特例業者が運用する他のファンドが唯一の出資適格機関投資家であるなど、適格機関投資家等特例業務の要件を充足しない私募又は運用が行われていないか。」と定めています。

さらに、同②では「出資適格機関投資家が、例えば適格機関投資家等特例業者から、ほとんど実体のない業務に対する対価として報酬を受け取ることや、適格機関投資家等特例業者の子会社等又は関係会社等で実体のないものとなっていること等によって、実際には適格機関投資家として取得又は保有していないと評価し得るような状況となっていないか。」とあり、関係会社を適格機関投資家とする特例業務自体に否定的なガイドラインが示されています。

そのため、自らが関与するヴィークルを特例業務遂行上の唯一の適格機関投資家と位置付けることは、現在では基本的には禁忌と解されています。

臨店検査の実施

かつては、適格機関投資家等特例業務届出者に対する検査はあまり行われていませんでした。しかしながら、関東財務局で証券監督第三課が発足したことに象徴されるように、適格機関投資家等特例業務届出者への監督は、金融商品取引法施行時よりもはるかに強化されており、業者に対する報告命令も頻繁に発出されています。上記のような留意点を的確に把握して適切に業務をする必要性が高まっています。

また、報告命令にとどまらず、平成27年には、適格機関投資家等特例業務届出者に対して、証券取引等監視委員会・財務局の集中的な臨店検査が実施されました。

そして、検査の結果、問題が見つかった事業者に対しては、警告書の発出による社名及び代表者名の公表が極めて頻繁に行われていた時期も平成後半を中心として存在していました。

もっとも、適格機関投資家等特例業務に関する規制強化と、金融庁の検査に関する方針の転換もあり、悪質な事業者はほぼいなくなったこともあり、当局による検査や警告の事例は大きく減少しています。

抜本的規制強化

平成27年の金融商品取引法改正で、適格機関投資家等特例業務に対する規制が強化されました。

適格機関投資家等特例業務に対する当局の考え方は、純粋なプロ向け業務に制度を縮小させたうえで、「金融商品取引業者並みの規制、監督体制を敷く」ということにあることは明らかです。

旧法時代に存在していた「届出だけで誰でも簡単にファンドが作れます、適格機関投資家も紹介します。」という、安易なやり方は通用しませんし、一般の個人投資家相手に勧誘することもできなくなりました。こういう発想で適格機関投資家等特例業務によりファンド組成することは不可能と考えるべきです。金融機関を立ち上げるのだという意識と責任感を持って事業に当たらない限り、事業者様にとってもリーガルリスクが非常に高いと考えます。

当事務所は、適格機関投資家等特例業務を行うのであれば、事業者様自身が相応の知識、経験を有するか、もしくは専門家や証券会社等を十分に関与させて適切に業務ができる体制を整備したうえで、適格機関投資家から純投資を受けることができるように取り組むことが、依頼者様の利益にかなうと考えています。

特例業務に外務員資格が必要なのか

第二種金融商品取引業者のケースと同様、適格機関投資家等特例業務届出者においても、営業担当者に外務員資格が必要かどうか、依頼者様から質問を受ける場合があります。

第二種金融商品取引業者においての上記の記事において解説した通り、第一種金融商品取引業者で証券業務及び金融先物取引業務を行う者以外には、そもそも外務員資格、外務員登録の制度自体が存在しませんので、外務員に登録したくても、適格機関投資家等特例業務届出者には登録制度自体がありません。

ご相談の受付

当事務所が組成や運営に関与した適格機関投資家等特例業務届出者は膨大な数に上っており、事例ベースでの豊富な知識と経験があります。適格機関投資家等特例業務を検討中の方は、お気軽にご相談ください。

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