行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

セキュリティトークン・STOとは

セキュリティトークンを巡る規制動向

金融業界において、セキュリティトークン、STOへの関心が急激に高まっています。

政府はセキュリティトークンに関し「経済財政運営と改革の基本方針2022」(いわゆる「骨太の方針」) において、「Fintech の推進のため、セキュリティトークン(デジタル証券)での資金調達に関する制度整備、暗号資産について利用者保護に配慮した審査基準の緩和、決済手段としての経済機能に関する解釈指針の作成などを行う。」と方針を打ち出しています。

国策として積極的にセキュリティトークンの制度整備を進めることが明示されたことで、今後セキュリティトークン関連ビジネスは大きく成長することが期待できます。

デジタル資産の法的分類

いわゆるセキュリティトークンは、有価証券をブロックチェーン等の電子帳簿でデジタル化したものを指します。

こうした有価証券は、法令上、金融商品取引法第29条の2第1項第8号及び金融商品取引業等に関する内閣府令第1条第4項第17号に定義されており、「電子記録移転有価証券表示権利等」と呼称されています。

既存の金融商品取引業者が第一種金融商品取引業第二種金融商品取引業及び投資運用業において「電子記録移転有価証券表示権利等」に関する業務を行うには、変更登録を受ける必要があります。

第一種金融商品取引業については、セキュリティトークンの売買、売買の媒介、募集又は私募の取扱等のいわゆる証券業務(金融商品取引法第2条第8項第1号から第10号までに掲げる行為(第7号を除く))又は当該デリバティブ取引についての同項第1号から第5号までに掲げる行為が該当します。

第二種金融商品取引業については、セキュリティトークン募集又は私募(金融商品取引法第2条第8項第7号に掲げる行為)が該当します。

投資運用業に関しては、セキュリティトークンについての第2条第8項第12号(投資一任契約、投資法人資産運用業)、第14号(投信委託業)又は第15号に掲げる行為(集団投資スキームの自己運用)が該当します。

暗号資産及びNFT

ビットコインやイーサリアム等のいわゆるユーティリティートークンに分類される仮想通貨は、収益分配性がなく有価証券に該当しないため、セキュリティトークンではありません。ユーティリティートークンのうち、いわゆるステーブルコインも同様です。

これらの現物及び信用取引に関する業務は、暗号資産交換業に該当します。

ただし、ユーティリティートークン型仮想通貨(暗号資産)及び資金決済法で規制されるステーブルコインであっても、そのデリバティブ取引(いわゆる「ビットコインFX」「仮想通貨FX」等と呼称される差金決済取引等)は、暗号資産等関連デリバティブ取引として、第一種金融商品取引業に該当しますので注意が必要です。

また、NFTも収益分配性がない場合にはセキュリティトークンにはなりません。

電子記録移転有価証券表示権利等

「電子記録移転有価証券表示権利等」は、金融商品取引法第2条第2項に掲げるみなし有価証券のうち、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示されるものとされています。

「電子記録移転有価証券表示権利等」には、大別して2種類があり、ひとつがが株や社債等の伝統的な有価証券をブロックチェーン化したもので、日本証券業協会はこれを「トークン化有価証券」と呼称しています。

そして、もう一つが、信託受益権、持分会社の社員権、集団投資スキーム持分等の金融商品取引法第2条第2項各号に掲げる各号みなし有価証券をブロックチェーン化したものであり、「電子記録移転権利」と呼称されます。

トークン化有価証券

「トークン化有価証券」は、もともと第一種金融商品取引業登録を受けた証券会社が取扱っていた株や社債等をデジタル化しただけの資産ですので、引き続きその取扱等は第一種金融商品取引業登録が求められます。

自主規制団体は日本証券業協会となっており、従来の証券業務の延長線上の業務と捉えられています。日本証券業協会では、「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」等の自主規制規則でトークン化有価証券への規律を定めています。

電子記録移転権利

「電子記録移転権利」は、信託受益権や集団投資スキーム持分等、元来第二種金融商品取引業者が取扱っていた各号みなし有価証券をブロックチェーン化したものです。

こうした電子記録移転権利の募集又は私募の取扱いは、従来は第二種金融商品取引業に位置付けられていたのですが、令和2年施行の改正で、電子記録移転権利の募集又は私募の取扱いが第一種金融商品取引業に位置付けられるようになりました。

電子記録移転権利関連の第一種金融商品取引業の自主規制団体は、一般社団法人日本STO協会となっています。一般社団法人日本STO協会の会員は、比較的FINTECH系の新興企業の多い暗号資産交換業の業界団体と異なり、主に大手証券会社から構成されています。

これは、セキュリティトークンのプラットフォームが、信託銀行や大手証券会社等の大手金融機関の主導する少数のコンソーシアム主導で開発が進められていることに起因しています。そのことは、いわゆるFINTECHベンチャーにとってのSTO業務への参入ハードルの高さを示しています。

他方、電子記録移転権利の自己募集や適用除外電子記録移転権利の関連業務に関しては、第二種金融商品取引業となっています。従来から自己募集が第二種金融商品取引業であった集団投資スキームに限らず、合同会社社員権等の自己募集も電子記録移転権利では第二種金融商品取引業に該当することになっています。

なお第二種金融商品取引業に代えて適格機関投資家等特例業務の利用も可能です。

適用除外電子記録移転権利

電子記録移転権利に類似するものでも、電子記録移転権利に該当しないトークンが存在します。

金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第9条の2で、ブロックチェーンベースであっても、電子記録移転権利に該当しないもの、通称「適用除外電子記録移転権利」が定められています。適用除外電子記録移転権利に該当する場合には、募集又は私募並びに募集又は私募の取扱いであっても、従来通り第二種金融商品取引業として業務を行うことができます。

適用除外電子記録移転権利に該当するには、以下のように取得者を概ね適格機関投資家等に限定したうえで、一定の移転制限の技術的措置を講ずる必要があるとされています。

一 当該財産的価値を次のいずれかに該当する者以外の者に取得させ、又は移転することができないようにする技術的措置がとられていること。
イ 適格機関投資家
ロ 令第十七条の十二第一項第一号から第十一号まで又は第十三号に掲げる者
ハ 企業年金基金であって、金融商品取引業等に関する内閣府令(平成十九年内閣府令第五十二号)第二百三十三条の二第二項に定める要件に該当するもの
ニ 金融商品取引業等に関する内閣府令第二百三十三条の二第三項に定める要件に該当する個人
ホ 金融商品取引業等に関する内閣府令第二百三十三条の二第四項に定める者
二 当該財産的価値の移転は、その都度、当該権利を有する者からの申出及び当該権利の発行者の承諾がなければ、することができないようにする技術的措置がとられていること。

金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第9条の2

セキュリティトークンの流通

「トークン化有価証券」に関しては、日本証券業協会規則の適用があり、とりわけ未上場株式を表示するトークンの場合には、非上場株式の発行・流通に対して厳しい制限が適用されます。

また、電子記録移転権利も含め、セキュリティトークンの流通市場は現在事実上存在しておらず、また近い将来、認可金融商品取引所に上場されるされる見込みもありません。

現在、セキュリティトークン関連事業者の間では、PTSの活用や店頭取引に関する規制の見直し(STO協会要望)等を通じて、セキュリティトークンの流通性を確保するための、政策提言やロビイング等の取り組みが続けられています。

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