行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

第一種金融商品取引業の運営

第一種金融商品取引業の運営

このページの目次
第一種金融商品取引業の社会的役割内部管理態勢の整備第一種金融商品取引業者の日常事務兼業規制--付随業務届出業務承認業務事後チェックへの備え第一種金融商品取引業の業務・運営支援

第一種金融商品取引業の社会的役割

第一種金融商品取引業者の運営には、他の金融商品取引業の業態とは比べ物にならない大きな経済的、事務的な負担が伴います。費用面では、必要となる役職員の人数、諸会費及び取引システムの維持等で多額のコストがかかる業態です。

また、新規の登録はもちろん、登録後の事務処理も、総じて金融商品取引業の他の登録種別よりも高くなっています。

これはある意味で当然であり、第一種金融商品取引業は、野村證券・大和証券等の、世界で活躍する大手証券会社と同じ区分の登録です。

さらにいえば、証券業を祖業とする米国系最大手証券某社グループは、金融安定理事会(FSB)による「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)」30行に分類されています。現代では証券業務、とりわけ投資銀行業務は、商業銀行業務と並んで又はこれと融合し、国際的な金融システムにおいて、重要な位置を占めています。

したがって、証券会社やFX業者等の第一種金融商品取引業者に対して求められるリスク管理体制や内部管理態勢のハードルも自ずと高くなります。

内部管理態勢の整備

第一種金融商品取引業者は、取締役会や監査役がその機能を発揮することや、営業部門・コンプライアンス部門・内部監査部門の3つの部門が、いわゆる「3つの防衛線」として機能して、法令違反を防ぐ体制にあることなど、いわゆる「内部管理態勢」の実効性の確保が、強く求められています。

重要な事項で、取締役会決議などの所定の手続きを踏まなかったり、経営戦略が営業に偏重して、コンプライアンス部門や内部監査部門が、営業部門を効果的にけん制できない態勢にあったりすると、内部管理態勢の不備として問題になります。

こうしたことを避けるには、必要な部門の設置や規程の整備等の形式的な態勢整備はもちろんのこと、それを実際に担当者として日々運営する人間の、知識経験や人的資質などの実態面も考慮して態勢を検討する必要があります。

余談ですが、こうした人的及び資金的なリソースを十分にもたない事業会社が、数億円程度の第一種金融商品取引業を中途半端に買収してしまうと、その後の維持に苦労するのが通例です。

経営方針及び具体的な予定事業が金融監督当局の求めるレベルの粒度及び内容に合致しないと、いつまでたっても希望する業務は実現できません。

さらに、そもそも予算がないと、母体企業自らが金融業のプロでない限り、金融監督当局の求めるレベル感の内部管理態勢は構築できません。営業にせよ、コンプライアンスにせよ、証券業界において、一流の知識経験及び実務能力を有するスタッフは、他業界で想定されるような低いサラリーでは雇用できません。

よって、他業界から、人的及び資金的なリソースを十分にもたない状況で第一種金融商品取引業へ参入しても、あらゆる意味(買収先法人、雇用人材、採用システム等)での安物買いの銭失いにより、極めて高い確率で行き詰まります。

第一種金融商品取引業者の日常事務

日々の運営のなかでは、帳簿の記帳や計算も重要になります。店頭デリバティブ取引では、顧客資産の区分管理のために信託銀行と契約して信託必要額を信託する必要があります。この契約なども開業に先立って準備して、信託必要額を計算できる体制をとっておかなければなりません。また、開業後も区分管理必要額を日々算定して、必要な金額が信託されているか毎営業日確認しなければなりません。

また自己資本規制比率の算定という、デイリーベースでのより専門的な計算も必要となります。そのため、この分野に精通した事務の専従者がいないと、そもそも会社の運営自体が継続困難でしょう。

当事務所の代表は、自己資本規制比率の日々の計算担当者としての実務経験がありますので、自己資本規制比率の計算に関しても支援が可能です。

もっとも、自己資本規制比率については、証券会社等において自己資本規制比率の算定を、自らの人生をかけた専門的キャリアとして取り組んでいる方もいます。そのくらい複雑で奥が深い分野でもあります。

兼業規制

付随業務

第一種金融商品取引業及び投資運用業を行う金融商品取引業者には、金融商品取引法第35条に基づき、兼業規制が課せられています。兼業には、付随業務、届出業務及び承認業務の3種類があり、付随業務は当局への届出なしで、金融商品取引業に付随するものとして当然に営むことができる業務です。

有価証券の貸借又はその媒介(同条第1項第1号)、信用取引に付随する金銭の貸付け(同条第1項第2号)、顧客から保護預りをしている有価証券を担保とする金銭の貸付け(同条第1項第3号)のように、明らかに証券業等の本業に付随する業務もあります。

他方で、「他の事業者の事業の譲渡、合併、会社の分割、株式交換、株式移転若しくは株式交付に関する相談に応じ、又はこれらに関し仲介を行うこと」(同条第1項第11号)「他の事業者の経営に関する相談に応じること」(同条第1項第12号)といった、投資銀行業務的色彩のある毛色が違う業務もあります。

また、付随業務には同条第1項第9号のように「有価証券に関連する情報の提供又は助言(第2条第8項第11号に掲げる行為に該当するものを除く。)」もあります。

投資助言・代理業に関連し「証券の営業マンによるアドバイスは、売買手数料等は生じるとして、アドバイスそれ自体には有償性のないものであるが、投資助言・代理業に該当するのか」との質問を受けることがありますが、同号により投資助言・代理業ではなく付随業務との位置付けであるとわかります。

届出業務

届出業務に関しては、これを行う際に遅滞なく届出をすることが求められている業務であり、金融商品取引業との関連性が深い業務がこれに分類されています。商品市場における取引等や、貸金業、宅地建物取引業及び不動産特定共同事業等がこれに分類されています(金融商品取引法第35条第2項)。

承認業務

金融商品取引法第35条第4項では「金融商品取引業者は、金融商品取引業並びに第1項及び第2項の規定により行う業務のほか、内閣総理大臣の承認を受けた業務を行うことができる」とされています。

平成10年の金融システム改革法で、証券会社の兼業が原則不可から原則可に変わったものの、同第5項に「当該申請に係る業務を行うことが公益に反すると認められるとき、又は当該業務に係る損失の危険の管理が困難であるために投資者の保護に支障を生ずると認められるときに限り、承認しない」とある通り、問題がある兼業は、監督当局がストップをかけられる仕組みになっています。

なお、平成10年の金融システム改革法に伴う証券業と兼業との間の弊害防止は、現在の金融商品取引法第44条(二以上の種別の業務を行う場合の禁止行為)及び第44条の2(その他業務に係る禁止行為)に、その名残をとどめています。

実務上、承認業務の承認の可否決定は政策に基づき裁量的に決められている側面があります。令和5年現在、伝統的な第一種金融商品取引業者(証券会社及びFX)で、暗号資産交換業者を兼業する会社は1社しかありません。

これを除き、現在、暗号資産交換業者と金融商品取引業者を兼業する業者は、暗号資産交換業に祖業を有する会社で、暗号資産関連デリバティブ取引の提供に伴い第一種金融商品取引業に登録した業者です。

伝統的な第一種金融商品取引業者の商号やサービス名を冠する事業者が、暗号資産交換業に参入している事例は、子会社等のグループ会社による別法人方式になっています。

これは、暗号資産交換業の制度発足当初から現在至るまで、金融監督当局が、金融システムにおけるリスク管理の観点から、伝統的な第一種金融商品取引業者暗号資産交換業を兼業することに対して抑制的な姿勢を取っていることが背景にあります。

暗号資産交換業の制度発足当初において、暗号資産交換業者及び既存第一種金融商品取引業者それぞれに関して当事務所で参入の支援をした際に、当局からはっきりとクリアすべき課題として指摘された経験があます。

事後チェックへの備え

第一種金融商品取引業者に対しては、数年に一回のペースで証券取引等監視委員会又は財務局の臨店検査が行われています。検査は、投資助言・代理業者や第二種金融商品取引業者に対しては、ある意味で「目立ったところにだけ来る」という面があることは否めませんが、第一種金融商品取引業者では、検査は「そのうち必ず来る」性質のものです。

従って、日々の一切の業務は、すべて事後的に財務局のチェックを受けるという前提で業務をしなければなりません。当事務所では、第一種金融商品取引業者様の日々の業務の支援などもお手伝いしております。新規に第一種金融商品取引業に参入される場合なども、支援を承っておりますので、是非ともお気軽にお声掛けください。

第一種金融商品取引業の業務・運営支援

第一種金融商品取引業での業務開始に関して、様々な場面で当事務所は業務を支援しております。具体的には主に以下のようなケースが考えられますが、それ以外のケースでも、ご相談を頂ければ、適切な対処法を提案させていただくことが出来ます。

自己資本規制比率算定支援

当事務所の代表者は、自己資本規制比率の算定事務の実務経験があります。実際の算定の支援から検証、算定方法の指導に至るまで、幅広い貢献が可能です。また、会計事務所等との連携により、財務経理面を総合的に支援することができます。

コンプライアンス体制構築、指導

社内におけるコンプライアンス体制の強化を支援します。研修会における講師などの引き受けも可能です。コンプライアンス体制の構築を通じて、適正に業務を推進できる会社作りに貢献します。当局の検査対応や、模擬検査などの実施も可能です。

各種報告書作成

当局及び自主規制団体に対する、事業報告書をはじめとした各種報告書の作成を支援します。定期的に求められる報告書から臨時調査まで、実際の作成経験に根差した的確なアドバイスが可能です。さらに、当局オフサイトモニタリングシステムに関しても、操作法を把握しております。

新規事業計画の立案

証券、FX、CFDビジネスへの参入にあたり、新ビジネスの事業構想がおありだと思います。当事務所は、そうしたビジネスの実現に向け、事前確認手続きや当局との折衝を支援することで、御社に幅広い協力をします。

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