行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

投資助言・代理業とは

投資助言・代理業とは

このページの目次
登録要否の検討投資助言・代理業の定義代理・媒介業務とは何か投資助言業務とは何か有価証券とデリバティブ取引の規制範囲の違い新聞、雑誌、書籍等の場合、その他登録義務の除外新しいサービスへの規制適用各種業態と投資助言・代理業の関係システムトレードをめぐる神学論争個別事例での検討の依頼

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登録の要否の検討

投資助言・代理業とは、平成19年まで存在した、投資顧問業法に基づく投資顧問業(助言)が、金融商品取引法制定時に、金融商品取引業のうちの投資助言・代理業と位置付けられたことにより発足した、金融商品取引業の登録種別です。

当事務所は、毎日のように、投資助言・代理業に関する業務上のご相談をお受けしています。そして、新規に参入を検討している依頼者様にお話を伺うと、投資助言・代理業に登録するだけでは、そもそも希望する事業が不可能な場合もあれば、逆に投資助言・代理業の登録自体が不要なケースもあります。

また、銀行等の預金取り扱い金融機関、証券、FX業者、第二種金融商品取引業者及び投資顧問業者等(要するに金融商品取引業者又は登録金融機関)での職務経験がある、常勤経験者(フルタイム)が社内にいない限り、登録は不可能です。

個々の事案で、投資助言・代理業の登録の要否に関して具体的に検討すると、その結論は本当に色々です。また、当局に相談しながら登録申請の手続きを進めるうちに、途中の見直しでスキームが大きく変わることもよくあります。投資助言・代理業の定義が、わかりやすいようでわかりにくいからです。

投資助言・代理業の定義とは

投資助言・代理業への該当性を検討するにあたって、「投資助言・代理業」の範囲を正確に理解する必要があります。投資助言・代理業は、「投資助言業務」(11号業務)と「投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介業務」(13号業務)から成り立っています。

(i)投資助言・代理業務(11号業務)

投資助言業務は、顧客との間で投資顧問契約を締結して、顧客に投資助言を提供する業務のことで、投資助言とは、有価証券の価値等や金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を提供することです。なお、投資顧問契約は、有償性が要件になっていますので、投資顧問料の収受がない無料メルマガ、無料ブログ等は投資助言業務に該当せず、金融商品取引業登録を必要としません。

ただし、証券会社やFX業者等の第一種金融商品取引業者が行う投資助言型自動売買サービスは、直接的に顧客から投資顧問料を取らなくとも、顧客が当該取引を行うことにより、実質的にスプレッド収益や売買手数料の形で金融商品取引業者が収益収受することができます。そのため、実務上、第一種金融商品取引業に加えて投資助言・代理業の変更登録を求められることがあります。

(ii)代理又は媒介業務業務(13号業務)

また、投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介業務とは、顧客が他社との間で投資顧問契約や投資一任契約(ファントラ・特金・ラップ等の投資顧問業務)を締結する際に、契約の間に入って代理したり媒介(契約を成立させようと尽力する行為)をする業務です。「他の投資顧問業者の代理店業務」と考えるとわかりやすいでしょう。

なお、これはあくまで投資一任契約と投資顧問契約の代理店ですので、集団投資スキーム型ファンドや投資信託等の有価証券又はデリバティブ取引の代理店業務(売買の媒介や募集又は私募の取扱い等)は、投資助言・代理業では行うことはできません。

こうした業務は、対象商品により、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、金融商品仲介業又は金融サービス仲介業に該当します。

※金融商品取引法第2条第8項
十一 当事者の一方が相手方に対して次に掲げるものに関し、口頭、文書(新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時に購入可能なものを除く。)その他の方法により助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約(以下「投資顧問契約」という。)を締結し、当該投資顧問契約に基づき、助言を行うこと。
イ 有価証券の価値等(有価証券の価値、有価証券関連オプション(金融商品市場において金融商品市場を開設する者の定める基準及び方法に従い行う第二十八条第八項第三号ハに掲げる取引に係る権利、外国金融商品市場において行う取引であつて同号ハに掲げる取引と類似の取引に係る権利又は金融商品市場及び外国金融商品市場によらないで行う同項第四号ハ若しくはニに掲げる取引に係る権利をいう。)の対価の額又は有価証券指標(有価証券の価格若しくは利率その他これに準ずるものとして内閣府令で定めるもの又はこれらに基づいて算出した数値をいう。)の動向をいう。)
ロ 金融商品の価値等(金融商品(第二十四項第三号の三に掲げるものにあつては、金融商品取引所に上場されているものに限る。)の価値、オプションの対価の額又は金融指標(同号に掲げる金融商品に係るものにあつては、金融商品取引所に上場されているものに限る。)の動向をいう。以下同じ。)の分析に基づく投資判断(投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべきデリバティブ取引の内容及び時期についての判断をいう。以下同じ。)
十三 投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介

代理・媒介業務とは何か

投資助言・代理業者の殆どは「投資助言」を行う業者ですが、本稿では先に投資助言・代理業のうち「代理業」について解説します。

投資助言・代理業のうち「代理業」を構成する、「代理又は媒介業務」は、前述のように「他の投資顧問業者の代理店業務」です。そのため、同じく他の金融商品取引業者等の代理店業務である金融商品仲介業(IFA)や、金融サービス仲介業とは、業務内容の一部重複が存在しています。

金融商品仲介業者では、第一種金融商品取引業者、投資運用業者又は一定の登録金融機関の委託を受けることにより、金融サービス仲介業者ではかかる委託契約なくとも顧客と当該者の間で、いずれも「代理又は媒介業務」を行うことができるからです。

そして、投資助言・代理業者の行う「代理業」は、実務上、投資運用業者や信託銀行と、外国において投資顧問業務又は投資一任業務を行っている海外資産運用業者間の投資顧問契約又は投資一任契約の媒介の形態として行われることが多くなっています。

投資助言・代理業のうち、「代理・媒介業務」は、外国資産運用業者の行う投資一任業務(EAM)に関して、ファンドでいうところの「プレースメント・エージェント業務」に相当するような、外国業者の役務の国内導入目的で利用されることが多いからです。

「代理・媒介業務」は、今も昔も、さほど活発でも業界規模の大きいビジネスでもありませんが、欧米や香港等の資産運用業者にコネクションを有し、国内の金融機関等との間の橋渡し的な動きをする投資助言・代理業者は、一定数存在しています。

「代理・媒介業務」では、理論上は、他の金融商品取引業者と個人投資家との間の投資一任契約や投資顧問契約の代理店業務(代理又は媒介業務)をすることもできますが、実際には「代理・媒介業務」はその殆どが機関投資家向けであり、個人向けを主力とする業者はあまり見ません。

また、外国において投資助言業務又は投資一任業務を行う者は、国内の投資運用業者及び信託銀行を相手方とする場合、金融商品取引法第61条の登録義務の除外規定により、無登録で投資助言業務を行うことが可能です(金融庁・投資運用業等登録手続ガイドブック)。

そのため、投資助言・代理業者として登録を受け、媒介業務行うとして業務方法書に記載のある金融商品取引業者は、国内資産運用会社等と外国投資助言業者の間の投資顧問契約又は投資一任契約の代理又は媒介業務を行うことができます。

とはいえ、おそらく投資助言・代理業の登録業者の9割以上は、「投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介業務」ではなく「投資助言業務」に関して行われていますので、以下は主に投資助言業務に関して解説していきます。

投資助言業務とは何か

結論の概略から言うと、当然ながら「有価証券の価値等や金融商品の価値等の分析に基づく投資判断」を「有料提供」することが、投資助言・代理業の投資助言業務となります。その定義に当てはまらないものは、投資助言・代理業のうちの投資助言業務(11号業務)ではありません。

登録の要否の検討の依頼はこちらをご覧ください。

メルマガだけで銘柄配信をしているので、登録は不要では?

投資の学校を経営しているが、投資助言・代理業(投資顧問)に登録が必要なのか?

トレード手法を教えるだけであれば投資助言・代理業の登録は不要ではないだろうか

外国為替のレポートを配信しているが登録が必要か。また日経平均ならどうか

という質問は、よく聞かれるところです。
一理あるものもあれば、通用しないものもあります。また、近年では以下のような質問も増えています。

note、discord、facebookグループ等で投資のオンラインサロンを立ち上げたいが、合法的に進めるにはどうすればいいのか

youtuber等の動画配信者だが有料サービスやシストレ販売には投資助言・代理業登録が必要なのか

金融機関での勤務経験者はいないが顧問契約や外部委託等の利用で投資助言・代理業登録は可能か

以下、答えを見ていきましょう。

有価証券とデリバティブ取引の規制範囲の違い

株式・債券、投資信託などの一般的な有価証券や有価証券指標は、有償で有価証券の価値等(≒値動き予想)の助言をするだけで、「投資助言・代理業」の要件に当てはまります。つまり、株が上がりそう、下がりそう等の予想を有償でする場合には、原則として登録が必要です。有価証券の価値等の定義が、「有価証券の価値、有価証券関連オプションの対価の額又は有価証券指標の動向をいう」とあり、有価証券については動向予想だけで投資助言・代理業だからです。

なお、有価証券指標とは、金融商品取引法第2条第2項第11号イで、「有価証券の価格若しくは利率その他これに準ずるものとして内閣府令で定めるもの又はこれらに基づいて算出した数値をいう。」とされています。また「これに準ずるもの」とは、金融商品取引法第2条の定義に関する内閣府令第18条で、「有価証券に係る収益その他これに準ずるものの配当率及び割引の方法により発行された有価証券の割引率」であるとされています。

よって、株式等の有価証券価格や、公社債等の利率及びこれをもとに加工して計算した指標は、理論上有価証券指標に該当することとなります。その点、日経平均株価やダウの動向の助言をするのみであれば、投資助言・代理業に該当しないのではないかという議論及び一定の有権解釈が存在します。

しかしながら、日経平均株価やダウは「金融商品の価値等の価値、オプションの対価の額又は金融指標の分析に基づく投資判断」に該当するか否かを待たずとも、そもそもが有価証券の価格に基づいて算出した数値であって、その動向は「有価証券指標」の動向に該当しています。よって、動向の助言をするだけで投資助言・代理業に該当する可能性があると考えます。

なお、旧投資顧問業法では、経済指数や企業業績等を伝えることは、黙示的に将来価値の動向を表示しない限り「有価証券の価値等」の助言にならないとされていました。

一方で、有価証券指標に関連しない外国為替証拠金取引(FX)や暗号資産等関連デリバティブ取引(仮想FX)等のデリバティブ取引では、値動き予想を配信しただけでは、投資助言・代理業の登録は原則不要になります。あくまで、売買ポイントにおける投資判断(売買等)を具体的にアドバイスした場合のみが規制対象です。

こちらは、金融商品取引法に、「金融商品の価値等の価値、オプションの対価の額又は金融指標の分析に基づく投資判断(投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべきデリバティブ取引の内容及び時期についての判断)の助言と定義されているからです。外国為替証拠金取引は、デリバティブ取引ですので、取引の内容及び時期についての判断の提供が投資助言・代理業ということになります。

なお、投資判断とは、旧投資顧問業法の時代には、解説書で有価証券の種類、銘柄、数、価格及び売買の(別、方法及び時期)、現在で云う所の「有価証券関連デリバティブ取引」に関しては、行うべき取引の(内容及び時期)とされていました。また、これらの要素の1つでも判断することは、投資判断を行うことになるとのことです。

デリバティブ取引について、金融商品取引法の解釈等を定めている「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」VII-3-1(2)②イ.c.では、以下のように解説されています。これを為替の事例に当てはめると、単に円安、円高の予想をしているだけで、売り買いには言及していなければ、投資助言・代理業には該当しません。

・金融商品の価値等について助言する行為
(注)有価証券以外の金融商品について、単にその価値やオプションの対価の額、指標の動向について助言し、その分析に基づく投資判断についての助言を行っていない場合、又は報酬を支払うことを約する契約を締結していない場合には、当該行為は投資助言業には該当しない。
例えば、単に今年の日本の冬の平均気温について助言するのみでは、投資助言業には該当しない。

また、暗号資産(旧・仮想通貨)に関しては、法令上金融商品ではあるものの、現物の売買や、現物の投資顧問(助言・一任)業務は、金融商品取引業の業規制の対象にはなっていません。

※現物売買は資金決済法上の暗号資産交換業であり、投資顧問業務(助言・一任)は令和4年1月現在は、無規制です。ただし、金融審議会では現物暗号資産の投資助言業務に関して規制論議が令和4年末現在にて行われています。また、暗号資産ファンドは、第二種金融商品取引業の登録が必要です(なお実際には令和4年現在暗号資産ファンドは行政指導によりほぼ組成できません)。

これに対して、暗号資産関連デリバティブ取引は、金融商品取引法の業規制の対象となるデリバティブ取引と位置付けられています。よって、投資助言・代理業との関係では、暗号資産関連デリバティブ取引(いわゆる暗号資産FX。差金決済取引やオプション取引等)の投資判断を具体的にアドバイスした場合のみが規制対象です。

但し、投資判断の助言が、暗号資産現物取引への助言であるのか、それとも暗号資産関連デリバティブ取引の助言であるのかは、一般論として外観だけでははっきりしません。

そのため、既存の投資助言・代理業者が暗号資産に関して売買ポイントの助言を行う場合には、念のため、暗号資産関連デリバティブ取引に該当する取引に関して投資助言業務を行うとして、財務局にその旨業務方法書の変更届出をすることが多いです。

いわゆるセキュリティートークンに関しては、暗号資産ではなく電子記録移転有価証券表示権利等又は電子記録移転権利として、有価証券と位置付けられていますので、有価証券の価値等(≒値動き予想)の助言をするだけで、「投資助言・代理業」の要件に当てはまります。

さらに、商品先物取引に関しては、いわゆる総合取引所構想に関連する近年の法改正により、一定の市場デリバティブ取引が、金融商品取引法上の市場デリバティブ取引に位置付けられていることにも注意が必要です。

ただし、商品CFD(法令上は、「店頭商品デリバティブ取引」に該当)に関しては、金融商品取引法第2条第22項第1号の「売買の当事者が将来の一定の時期において金融商品(第二十四項第三号の三及び第五号に掲げるものを除く。第三号及び第六号において同じ。)及びその対価の授受を約する売買であつて、当該売買の目的となつている金融商品の売戻し又は買戻しその他政令で定める行為をしたときは差金の授受によつて決済することができる取引」であり、その原資産の商品が同除外要件である第二十四項第三号の三の該当するため、投資助言・代理業の規制対象である店頭デリバティブ取引から除外されています。

新聞、雑誌、書籍等の場合、その他登録義務の除外

投資助言・代理業の登録義務の例外として、新聞、雑誌、書籍等の形態で不特定多数の者により随時に購入可能な形になっていれば、投資助言・代理業の登録は不要と定められています。

実務上、この例外がどこまで適用されるかは、頻繁に問題になります。かなり以前には、「有料メールマガジン」は、新聞、雑誌、書籍等に類するものではないのかという議論がありました。しかし、現在では一般に、読者登録を要する有料メールマガジンの形態であれば、投資助言・代理業者の登録を要するのが実務になっています。

金商法施行前後の2000年代後半に、財務局は、有料メルマガ等の業態で「info●●」等の販売プラットフォームで投資系商材を販売していた業者に対して、説明会を開催して、投資助言・代理業の登録を求めたという歴史的経緯があります。

そこから十数年経過した現代において、「当社サービスは、一斉配信のメールマガジンやグループラインで、個々の投資家に直接アドバイスをしていない。よって、投資助言・代理業ではない」という主張は、周回遅れです。

とはいえ、実態として投資助言・代理業に該当すると思われるオンラインメールマガジンの業態でも、並行して同じ情報に関して書店等に書籍等を卸して流通に供したり、又はamazon等のプラットフォーム上にて、kindle等電子書籍の形式で配信することにより、新聞、雑誌、書籍等の形態で不特定多数の者により随時に購入可能な形と同視できる形態を取った場合の法令の適用関係は、判然としません。

また、継続的な購読の形態を採用せず、会員登録不要かつ、売切りの形にてweb上で、例えば銘柄配信等の投資助言を含む情報を販売した場合にどのような扱いになるかという論点もあります。誰でも、いつでも自由に内容をみて判断できるか否かの問題がありますが、理論上は、新聞、雑誌、書籍等の形態で不特定多数の者により随時に購入可能な形と認められれば、これを無登録で行う余地もあるように思えます。

しかし、後述のソフトウェアのケースと異なり、実務上、情報配信ではこうした場合も投資助言・代理業の登録を要すると解するのが一般的です。こうしたモデルは、経済的な実態の面で、単発(スポット)銘柄配信を投資助言・代理業として行っている登録業者とほぼ同じビジネスモデルになりますので、これを適法に無登録で行うことができるとすれば規制の欠陥といえます。

web上の情報配信の業態に対しては、売り切りであっても「新聞、雑誌、書籍等の形態で不特定多数の者により随時に購入可能な形」になっているか否かは抑制的に解される傾向があるように感じます。

自動売買ソフトの登録の要否

自動売買ソフトの販売に登録がいるかどうかも、よくある論点です。本論点に関しては、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」VII-3-1(2)②イ.a.並びにb.で金融庁は登録不要なケースを以下のように定めています。

・ 新聞、雑誌、書籍等の販売
(注)一般の書店、売店等の店頭に陳列され、誰でも、いつでも自由に内容をみて判断して購入できる状態にある場合。一方で、直接業者等に申し込まないと購入できないレポート等の販売等に当たっては、登録が必要となる場合があることに留意するものとする。
・ 投資分析ツール等のコンピュータソフトウェアの販売
(注)販売店による店頭販売や、ネットワークを経由したダウンロード販売等により、誰でも、いつでも自由にコンピュータソフトウェアの投資分析アルゴリズム・その他機能等から判断して、当該ソフトウェアを購入できる状態にある場合。一方で、当該ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報等に係るデータ・その他サポート等の提供を受ける必要がある場合には、登録が必要となる場合があることに留意するものとする。

会員登録等が不要で、かつスタンドアローンのシステムトレードのソフトウェアの売り切り販売は、基本的には投資助言・代理業の登録は不要と読めます。そのため、アルゴリズム・アップデートのない独立動作システムトレードソフトウェアは、事業者が投資助言・代理業の登録を受けていなくとも、情報商材的な切り口でのプロモーションも含め、広く販売行為が行われている現状があります。

ただし、そのソフトにどこまでのサポートが許されるのか、サーバー利用型のアプリケーションの場合にはどうなるのか等を考えていくと、個々の事例での投資助言・代理業の登録の要否の境界事例は依然として非常に判断が難しいものがあります。

サポートに関しては、テクニカルサポートは許容されるとみることができると思いますが、それを超えて投資判断の提供になるようなサポートを提供すると投資助言・代理業を構成する可能性がありそうです。また、サーバー利用型の場合には、サーバーの契約者が誰になるのかがポイントだと思います。

また、課金形態ですが、基本的には売り切りで考えるべきであり、月額等の継続的な課金方式であれば投資助言・代理業に該当する可能性が高いと考えるべきです。投資助言・代理業に該当しない例外要件である「随時に購入可能」であることは、当然に当該契約が「売買契約」であることを含意します。しかし、継続課金とした場合には、一般的に、当該契約が売買契約ではなく役務提供契約であることを含意すると考えられますので、例外要件を満たさない可能性が高いものと思われます。

これらに関する詳細は、自動売買ツール(EA)と投資助言・代理業の記事により詳しくまとめていますので、併せてご参照ください。

新しいサービスへの規制適用

SNS・オンラインサロン等

現在、facebook、discord、note等のサービスを利用して、SNS性の強い投資に関するオンラインサロンやこれに準ずる業態を展開する事業者が増えています。

こういった方式でも、株式等をアドバイス対象として、有価証券の価値等(値動きの動向)に言及する場合には投資助言・代理業になります。また、FXやバイナリーオプション等のデリバティブ取引の場合には、売買ポイントにおける投資判断(売買等)を具体的にアドバイスする場合には同じく投資助言・代理業になります。

オンラインサロンでは、サロンの運営者が自ら投資を行っており、その実績に基づいてアドバイスするという形態のサービスも多いと思います。

しかしながら、投資助言・代理業に登録した場合には、金融商品取引業者の役職員として投機的利益の追求を目的として有価証券の売買その他の取引等を行うことが禁止されます。そのため、株式の短期売買や、FXをはじめとするデリバティブ取引を行うことに問題が出てきますので注意が必要です。

ユーザー相互間の投資助言

自動売買システムでは、FXを中心として、ユーザー相互に取引シグナルの配信が可能な形態が存在します。

2010年以前は、判断分析者、助言者が投資助言・代理業者の内部にいないと金融商品取引法に違反するという見解が主流であって、こうしたユーザー相互間のシグナル配信サービスを有償で提供するモデルはほぼ存在していませんでした。

しかしながら、世界的にコピートレード・ミラートレードサービスの普及が進み、国内でもこれを提供する某社が2014年頃よりサービス提供を開始したことで風穴が開けられました。その後可能なサービス範囲も、アルゴリズムトレードを原則とするものから裁量トレードも含むものへと、実務上の対象がなし崩し的に広がっています。

2010年代後半にはシステムトレードに関して、金融庁から解釈の指針が内示されましたが、そこにはアルゴリズム/裁量トレードの差異は盛り込まれませんでした。

なお、上記のように、近年ではオンラインサロンの形態で投資助言サービスを提供する業態も増えてきましたが、こういった業態で事業者が投資助言に該当する行為をすれば投資助言・代理業に該当して登録義務を負うのはもちろんのこと、ユーザー相互に投資アドバイスを提供し、利用料を課金するというサービス形態の場合には、例え登録したとしても、投資助言・代理業者としての判断・分析者、助言者は誰になるのか、という法的に微妙な問題も発生しえます。

ロボアド

ユーザ相互間の投資助言とある意味で近しい法的論点ですが、2010年代半ば以降、無人的ロボアドやAIによるポートフォリオ推奨サービス、構築サービスが段階的に普及しています。

こうしたシステムを利用した投資者へのアドバイザリーサービスの提供は、国際的にみて新たな投資助言・代理業の主要業態の一つです。これ以外にも抽象的な「ロボアド」業務は第一種金融商品取引業(有価証券関連業務を含む)や、投資運用業もカバーする裾野の広い業態になりつつあります。

登録申請の実務上、こうしたシステムの利用が、投資助言・代理業又はその他金融商品取引業等の業法に該当するのか、慎重に審査されることになります。

こうした業態の金融商品取引業登録は、財務局への持込前のスキーム等の法的事前整理の必要性が、証券業務や一任業務等のクラッシックな業態と比べても、相対的に高いといえます。

各種業態と投資助言・代理業の関係

スクールビジネス

お金の学校や投資の学校といった切り口で、投資に関する基本的事項や、テクニカル・ファンダメンタルズ分析の方法等を教える業態が存在します。

その具体的な内容は、例えば、お金の基礎教育というFP性の強いものから、FXやバイナリーオプションで収益を上げる投資方法の伝授のように、収益期待性の強いものまでさまざまです。こうした投資に関するスクールビジネスが投資助言・代理業に該当するかは、昔から存在する論点です。

こうしたスクールビジネスについても、基本の通り、投資に関する講義の中で、株式等の有価証券の価値等(値動きの動向)に言及する場合には投資助言・代理業になります。また、FXやバイナリーオプション等のデリバティブ取引の場合には、売買ポイントにおける投資判断(売買等)を具体的にアドバイスする場合には同じく投資助言・代理業になります。

こうした際の講義方法は、対面個別指導、セミナー等の集合指導に加え、近年zoom等のビデオ会議システムを利用する方法も増えてきました。規制の適用は、オンライン・オフラインで変わりはなく、また個別指導・集合教育でも変わりありません。内容次第では投資助言・代理業に該当すると考えられます。

FP・IFA

FP業務においても、アセット・クラスレベルでのアセット・アロケーションの範囲を超えて、個別の投資信託や株式銘柄等の推奨を行う場合、投資助言・代理業に該当します。とりわけ、日経平均やダウ等のインデックスのETFや、公社債等によるパッシブ運用であっても、個別銘柄の組入の助言をすれば、通常は投資助言・代理業に該当すると解されますので注意が必要です。

FPは、投資助言・代理業としてではなく、401kを扱う保険代理店やIFA(金融商品仲介業者)の形態をとるのが一般的でしたが、近年、顧客本位の業務運営に関する原則が叫ばれる中で、投資助言・代理業への注目が高まっています。

証券会社に所属して金融商品取引業(通称「IFA」)を行っていた方が、手数料商売を廃して顧客の目線に立つために投資助言・代理業者に登録替えをしたい、又は、追加的に投資助言・代理業の登録を受けたいというご相談を頂くことが多くなってきました。とりわけ、投資助言・代理業と金融商品仲介業の同時登録には、高度の弊害防止措置が必要になりますので、慎重に検討する必要があります。

こうした場合には、特定の業者に所属する必要のない金融サービス仲介業の登録も考えられますので、総合的な検討が必要です。

なお、IFAと称して海外積立型商品の代理店業務を営む事業者を散見しますが、こうした業務は、一般に金融商品仲介業を含意するIFAというよりも、集団投資スキームの取扱いを行う「第二種金融商品取引業」に該当すると考えられます。

海外積立型商品の居住者への勧誘は、令和4年現在では平成の遺物といってもいい過去の商売であり、一部の例外的な事業者を除き、こうした商品を積極的に取扱う業者は殆どいなくなっています。

ウェルスマネジメント

主に、外資系や国内大手金融機関の出身で、主に富裕層を対象とするプライベートバンキング業務を行われてきた方が新たに独立するにあたっては、前述のIFA(金融商品仲介業)として開業する方と並んで、投資助言・代理業に登録して開業する方も多くなっています。

いわば、富裕層資産管理を専門とする独立系プライベートバンクといった位置づけであり、かなりの契約資産規模にある事業者も存在しています。

この業態は、ファミリーオフィス、宅地建物取引業、第二種金融商品取引業の信託受益権関連業務、コンシェルジュ業務などと親和性が高い半面で、投資運用業者と異なり、顧客資産の運用権限の委託を受けることはできないため「本人に代わって発注しておく」ことができません。また、第一種金融商品取引業者やファンド運用業務等の一定の業務を行う第二種金融商品取引業者と異なり、資産を預かることも禁止されています。

そのため、投資助言・代理業の登録後に、追加で投資運用業等の変更登録を行う事業者も散見します。

なお、シティやHSBCが国内のプライベートバンキング業務から撤退したことが象徴するように、邦人向けのプライベートバンキング業務は、国内拠点のみから提供されているわけではありません。香港、シンガポール、リヒテンシュタイン、スイス等に所在する事業者も、かなり大きな存在感を占めており、これらの在外業者ないしそのOBに関連した投資助言・代理業の登録事例も多く存在します。

もっとも、投資助言・代理業に登録しても、海外の銀行の口座開設の媒介等のエージェントを行うことはできません。一部の外国金融機関は、国内の事業者に対して、自行の代理店になるために、本邦の投資助言・代理業に登録するように求めていると聞いていますが、これは法令理解に誤りがあります。

システムトレードをめぐる神学論争

近年は、投資助言・代理業の枠内でシステムトレード・サービスを提供をする事例が増えています。こうした場合の課題としてシステムトレードの導入先が特定FX業者の口座の場合で、特定FX業者の口座開設を勧奨した場合にどう評価されるのか、そしてアドバイザーである「投資助言・代理業」の枠を超えて「投資運用業」に該当してしまわないかという主要な問題があります。

口座開設の議論

口座開設の問題は、アフィリエイト契約等に付帯して第一種金融商品取引業者に事実上の送客をする行為や、特定FX業者の環境に紐づいたツールを提供する行為が、第一種金融商品取引業に該当する「媒介業務」にならないかという問題です。

これは、どこまでが金融商品取引法の定める「勧誘」で、どこまでが「広告」なのかという定義の問題も横たわっています。そもそも「勧誘」の定義は、開示規制に関してとはいえ、かつて金融法委員会でも議論された諸問題(平成22年6月21日金融法委員会「金融商品取引法の開示規制上の「勧誘」の解釈を巡る現状と課題」)が存在します。そのため、実務上の評価が非常に難しいです。

こうした場合、投資助言・代理業における媒介業務と整理して、適法に第一種金融商品取引業者に送客する余地も理論上はありそうに思えます。

また、特定のFX業者が投資助言・代理業としてサービスを提供している場合には、当該業者への投資助言の提供、すなわち「助言の助言(通称「副助言者」とも言われます。)」として構成する方法もあります。また、当然ながらFX業者だけではなく、証券会社でも、外部業者と連携してシストレを導入すれば、同じ議論が発生します。

投資運用業の議論

投資運用業に該当しないかという点は、いくつかの論点があります。

システムトレードにおいてID・PASSの預かりをするのかしないのか、預かりはどのように行われるのか。動作するのは顧客のパソコン・サーバーか、それとも業者側のサーバーなのか、顧客側での操作が可能かという点などが、総合的に業務内容が投資運用業なのか投資助言・代理業なのかの判断に関わってきます。ちなみにこれに関しては、より細かい裁判所の判例もあります。

一般に、閲覧権限だけでなく、取引権限もあるID・PASSを顧客から預かった場合には、金融商品取引法第2条第8項第12号ロに掲げる投資一任契約の要件である「当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約」の権限委任に該当する可能性が高いものと考えられます。

なお、現在は、解釈実務上、自動売買以外にも単にシグナル情報配信を受けるだけという形態が許容されているサービスかどうか、顧客により任意で自動売買のオンオフを切り替えることが可能になっているかという点がひとつの基準であると考えられています。

個別事例での検討の依頼

これだけ読んだだけでは、具体的なビジネスで、どのような登録を要するかは、なかなか判断がつかないと思います。事業者様にとっては、何の登録を要するのか、そもそも登録を要さないかは極めて重要な問題です。当事務所は金融商品取引業の専門事務所として長年にわたる数多くの実績があり、こうした事例での登録の必要性に関して適切なアドバイスが可能です。

無料相談適用条件

(1)金融商品取引業者又は登録金融機関で勤務経験のある方及び勤務経験のある役職員がいる法人様、又は、(2)必要な役職員を雇用して、投資助言・代理業の登録をすることを希望している事業者様に対しては、初回無料にて、登録の要否及び登録要件に関し、詳しく説明させていただきます。

メール・電話等にて是非お気軽にご相談ください。

有料相談適用条件

金融商品取引業者又は登録金融機関に勤務経験のある役職員が在籍しておらず、また、投資助言・代理業へ登録を検討中又は予定がない事例で、登録の要否を相談したいというケースの場合には、ご相談の上、有料にて、登録の要否に関する一般的なアドバイスを承っております(相談料1時間2万円及び消費税。ただし、投資助言・代理業の登録を要しない業務の構築・整理の依頼や、投資助言・代理業の登録手続きの依頼時には、当該報酬から、受領済み相談料を差し引きます。)。

※実質的支配者が不透明で、実質経営者が確認できない事業者に関しては、相談及び受任をお断りしておりますので併せて申し添えます。

金融機関勤務経験者がいない場合の対応

金融商品取引業者又は登録金融機関に勤務経験がある方がいない会社や個人が、投資助言・代理業に登録できる可能性はありません。

金融商品取引業の職務経験のある方がいないケースでは、例えば弁護士や行政書士にコンプライアンス等を外部委託したところで無意味です。そんなことで登録できるほど甘い世界ではありません。またコンプライアンス業務の全面外部委託は不可と令和5年に明示されています。

金融庁も金融業界も、銀行や証券等の金融事業者で働いた経験がない方が、金融商品取引業に参入してくることを歓迎していません。

こうした問題をクリアして投資助言・代理業に登録したい場合には、一般に、金融商品取引業者又は登録金融機関に勤務経験がある方を常勤で2名以上採用する必要があり、通常は年間で1000万円程度の人件費を見込む必要があります。ちなみに、名前ばかりの経験者を連れて来ても財務局の審査能力は極めて高いので必ず見破られます。

つまり、金融商品取引業者又は登録金融機関に勤務経験がある方がいない会社の場合、人件費として年間で1000万円程度を計上することが可能であれば、投資助言・代理業に参入できる可能性があるといえます。

なお、残念ながら、2023年以降、参入抑制方針を受けて新規の登録は非常に難しくなっております。

かかる状況において、内外の資産運用業者が、投資運用業や投資助言・代理業に参入することを、あまりお勧めしておりません。

ここまでの説明で概要はわかったので詳細を知りたいという方は以下へどうぞ。

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