行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

投資運用業とは

このページの目次
総論 投資運用業の定義投資助言と投資一任の類似性第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業との関係自主規制団体
登録 登録要件プロ向け業務の登録要件緩和
登録義務の例外 登録義務の例外適格機関投資家等特例業務海外投資家等特例業務海外業者の登録義務の除外会社型ファンドは原則として投資運用業の対象外

投資運用業の定義

投資運用業とは、顧客の資産を、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて、有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資で運用を行う業務であり、投資法人資産運用業、投資一任業、投資信託委託業及び投資法人資産運用業の4つの形態があります。

投資一任業務は、旧投資顧問業法の投資顧問(一任)を引き継いだ業務であり、投資信託委託業務は、投資信託及び投資法人に関する法律で認可制だった旧投資信託委託業を引き継いでいます。投資法人資産運用業務は、同じく同法で認可制だった投資法人資産運用業を引き継いでいます。一方で、ファンド運用業は、金融商品取引法で新たに規制対象になった業態であり、金融商品取引法が施行されるまでは、自己私募の範囲内では、登録許認可等は必要がありませんでした。

それぞれの業務の定義は、以下の金融商品取引法の条文の通りです。

投資法人資産運用業(12号イ)及び投資一任業(12号ロ)

十二 次に掲げる契約を締結し、当該契約に基づき、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、金銭その他の財産の運用(その指図を含む。以下同じ。)を行うこと。
イ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十三項に規定する登録投資法人と締結する同法第百八十八条第一項第四号に規定する資産の運用に係る委託契約
ロ イに掲げるもののほか、当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約(以下「投資一任契約」という。)

金融商品取引法第2条第8項第12号

投資信託委託業(14号)

十四 金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、第一項第十号に掲げる有価証券に表示される権利その他の政令で定める権利を有する者から拠出を受けた金銭その他の財産の運用を行うこと(第十二号に掲げる行為に該当するものを除く。)。

金融商品取引法第2条第8項第14号

ファンド運用業(15号)

十五 金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、次に掲げる権利その他政令で定める権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の運用を行うこと(第十二号及び前号に掲げる行為に該当するものを除く。)。
イ 第一項第十四号に掲げる有価証券又は同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十四号に掲げる有価証券の性質を有するものに限る。)に表示される権利
ロ 第二項第一号又は第二号に掲げる権利
ハ 第二項第五号又は第六号に掲げる権利

金融商品取引法第2条第8項第15号

いずれも「金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて」「有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資」として行われますが、ファンド運用業だけは、有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資に「主として」の要件が加わっています。それぞれの詳細は、こちらの記事をご覧ください。

なお、これらの業務種別とはまた異なる話として、既存の登録業者がいわゆるセキュリティトークン(トークン化有価証券及び電子記録移転権利)又は暗号資産等関連デリバティブ取引への投資業務を行うには、それぞれにつき金融商品取引法第31条に定める変更登録を受ける必要があります。

投資助言と投資一任の類似性

投資助言・代理業と投資一任業は、同じ旧投資顧問業法にはじまる制度で、規制にも共通の部分が多くなっています。

業務内容もオーバーラップする場合があり、例えば自動売買ソフトやシステムトレード等では、顧客との契約が投資助言契約の名称であっても、実際には「当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約」である投資一任契約に該当する可能性があるため、論点になることがあります。

なお、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う者は判断分析者と呼称され、重要な使用人として届出をする必要があります。

第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業との関係

投資運用業は、「運用行為」のライセンスであり、有価証券等の「販売行為」のライセンスではありません。これは、投資運用業があれば、主として有価証券又はデリバティブ取引でファンドを運用する行為、投資信託の運用行為及び投資法人の運用行為などは行うことができても、有価証券であるこれら投資商品の「販売」をすることができないということです。

ファンド(集団投資スキーム)を販売するには第二種金融商品取引業登録が必要です(第一種金融商品取引業である電子記録移転権利の取扱いを除く)。また、投資信託の販売をする場合には、投信直販の場合には第二種金融商品取引業、取扱いの場合には第一種金融商品取引業(適格投資家向け投資運用業におけるみなし第二種金融商品取引業を除く)の登録となります。

さらに、投資法人投資証券についてもその取扱いは第一種金融商品取引業の登録が必要になります。

もっとも、他の第一種金融商品取引業又は第二種金融商品取引業の登録業者に勧誘を一任して、自社は投資運用業に基づく運用行為のみを行うことも可能です。

なお、金融庁は「投資運用業者が証券会社主催の投資セミナーに同席し、自己の個別商品の内容に言及する場合であっても、勧誘を証券会社等に委託するなどしていれば、追加の業登録(第二種金融商品取引業)は基本的には不要と解される(平成20年2月21日「金融商品取引法の疑問に答えます」質問⑨)」としています。

こうした当局の見解や社会実行を根拠として、とりわけ投資信託や投資法人の機関投資家に対する説明においては、実務上、販売を担当する証券会社の担当者同席の上であれば、投資運用業者の担当者が、取得者に対して、運用に関する説明を行ったとしても、基本的に問題ないと理解されています。

自主規制団体

投資一任業と、ファンド運用業は、一般社団法人日本投資顧問業協会が自主規制団体となります。同協会定款第6条は、投資運用業者のうち会員資格がある者を「(1)法第29条の規定に基づく登録を受けた投資運用業者(法第2条第8項第12号ロに掲げる行為又は同項第15号に掲げる行為を業として行う者に限る。)」としています。

一方で、投資信託委託業及び投資法人資産運用業は、一般社団法人信託協会が自主規制団体であり、同協会の定款第7条では、正会員資格がある者を「金商法第29条の規定に基づき投資運用業を行うことの登録を受けた者(同法第2条第8項第12号イに掲げる行為又は同項第14号に掲げる行為を業として行う者に限る。)及び投信法第47条に規定する委託者非指図型投資信託の受託者となる信託会社等(信託業法(平成16年法律第154号)第3条又は第53条の規定に基づき免許を受けた信託会社又は信託業務を営む金融機関をいう。)」としています。

一般社団法人日本投資顧問業協会は、投資運用業及び投資助言・代理業以外の業務に関しては業務範囲外ですが、一般社団法人信託協会では、受益証券等(受益証券、投資証券(振替投資口を含む。)若しくは投資法人債券(振替投資法人債を含む。))の募集又は私募その他の取引等の投資運用業以外の業務も業務範囲に含む点に違いがあります。

また、投資運用業者に所属する金融商品仲介業者が行う受益証券(振替投資信託受益権を含む)の募集又は私募の取扱いも同じく業務範囲に含んでいます。

そのため、例えば投信委託業を行う者が投資信託受益証券の自己募集を行うことは第二種金融商品取引業に該当しますが、当該業務で紛争が発生した場合の紛争解決(ADR)は、ファンドと信託受益権関連業務の自主規制団体である一般社団法人第二種金融商品取引業協会ではなく、一般社団法人投資信託協会が担うこととされていることに特徴があります。

登録要件

投資運用業は、こちらの記事の通り比較的厳密な登録要件が課せられています。法令及び監督指針の定める投資運用業の主要な登録要件は以下の通りです。

ただし、後述の適格投資家向け投資運用業の場合には、一定の要件緩和があります。一方で、不動産証券化のGKTKスキーム等を扱う不動産関連特定投資運用業には登録要件の加重があります。

組織規制 株式会社(取締役会及び監査役、監査等委員会又は指名委員会等を置くものに限る)又は外国の法令に準拠して設立された取締役会設置会社と同種類の法人
 財産規制 5000万円の純資産及び資本金
国内拠点 国内拠点設置義務あり
人的構成 ・経営者要件:経営者が、その経歴及び能力等に照らして、投資運用業者としての業務を公正かつ的確に遂行することができる資質を有していること。
・常務役員要件:常務に従事する役員が、金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、及び金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験を有すること。
・運用担当者要件:権利者のために資産運用を行う者として、運用を行う資産に関する知識及び経験を有する者が確保されていること。
・コンプライアンス担当者要件:資産運用部門とは独立してコンプライアンス部門(担当者)が設置され、その担当者として十分な知識及び経験を有する者が十分に確保されていること。
・全体的配置:行おうとする業務の適確な遂行に必要な人員が各部門に配置され、内部管理等の責任者が適正に配置される組織体制、人員構成にあること(→実務上、原則複数の運用担当者の設置及び内部監査担当者の独立した設置が必要となる)。
・投資信託計算担当者:投資信託財産の運用を行う場合、投資信託財産に係る計算及びその審査を行う経験者が必要。
兼業規制 あり(損失の危険の管理が困難であるために投資者保護に支障を生ずる業務の不存在)
主要株主規制 あり(不適格な主要株主の不存在)

プロ向け業務の登録要件緩和

適格投資家のみを相手方として、運用資産額200億円以下で投資運用業を行う場合には、適格投資家向け投資運用業として登録を受けることが可能です。この場合取締役会設置義務がないほか、資本金及び純資産額は1000万円以上が登録要件になります。

なお、人的構成について、監督指針上は、運用を行おうとする資産に関し、少なくとも1年以上、助言又は運用を行う業務に従事していた者又はこれに準ずる者及び金融商品取引業に関し、少なくとも1年以上、法令等を遵守させるための指導に関する業務に従事していた者又はこれに準ずる者の配置が求められている点が、適格投資家向け投資運用業に該当しない投資運用業(フルの投資運用業)とやや異なります。

もっとも、これらの要件は事実上、フルの投資運用業者でも求められていることであって、適格投資家向け投資運用業にだけ課せられている加重の要件という印象はありません。フルの投資運用業者のコンプライアンス担当者は、投資運用業者の経験がある者を据えるのが一般的です。

また、適格投資家向け投資運用業の場合、自らが投資一任契約で運用する投資信託及び外国投資信託並びに投資法人等の一定の受益証券や投資証券等等の私募の取扱いを行うことは、第一種金融商品取引業ではなく第二種金融商品取引業とみなすことのできる、いわゆるみなし第二種金融商品取引業の制度があります。

これに加えて、適格投資家向け投資運用業はコンプライアンス業務の弁護士等への外部委託が認められている点に特徴があります。もっとも、当事務所の関与した適格投資家向け投資運用業の登録事例では、コンプライアンス業務の完全外部委託は稀で、実務上の利用頻度は限定的だと思います。

登録義務の例外

適格機関投資家等特例業務

投資運用業の4つの業務のうち、ファンド運用業務に限っては、これに相当するファンドの私募及び運用を開始する前に、適格機関投資家等特例業務の届出を行えば、適格機関投資家等(1名以上の適格機関投資家及び49名以下の特例業務対象投資家)を相手方として、金融商品取引業の登録を受けることなく業務を行うことができます。

また、金融商品取引業者も適格機関投資家等特例業務を行うことができますが、投資運用業者が適格機関投資家等特例業務を行う際には、届出と登録の重複の排除の観点から、原則的にはファンド運用業務に関して適格機関投資家等特例業務の届出は要せず、適格機関投資家等特例業務に該当する15号業務を行う旨を業務方法書に記載すればいいとされています。

また、7号業務であるファンドの私募を行う場合で、第二種金融商品取引業の登録を有している場合もこれと同様です。ただし、これは近年当局から示された解釈ですので、実務上の状況は個別の事業者によりに異なります。

なお、手続的議論であるかかる登録と届出の重複排除とは、角度が異なる論点として、投資運用業のうちファンド運用業務及び第二種金融商品取引業のうち自己私募業務を行うものとして金融商品取引業登録を有する事業者に対しては、金融庁・財務局は当該業務を金融商品取引業として行い、金融商品取引業者の行う適格機関投資家等特例業務としては行わないように慫慂する傾向があります。

趣旨は大いに理解できますが、これは成文法に基づくものではありません。当該業務を行う金融商品取引業者として登録を受けている事業者に対して、正面から当該業務として行うよりも適用される業規制が緩やかになる「金融商品取引業者の行う適格機関投資家等特例業務」として、当該業務を行わないよう求める行政指導といえます。

海外投資家等特例業務

令和3年改正金融商品取引法は「海外投資家等」を相手方とする一定の要件を満たす金融商品取引法第2条第2項第5号及び第6号に掲げる集団投資スキームのファンド運用業務(15号業務。いわゆる集団投資スキームの自己運用)及びかかる集団投資スキームの募集又は私募業務を、海外投資家等特例業務として届出により行うことができると定めています。

また、海外投資家等特例業務とは別に、国内拠点で海外投資家向けに投資運用等の業務(投資一任業務、投信委託業務、外国集団投資スキームのファンド運用業務及び政令に定める業務並びに投資一任業務を行う外国投資信託受益証券、外国投資証券及び外国集団投資スキームの募集又は私募の取扱い、自らを委託者とする外国投資信託受益証券の募集又は私募、自らを発行者とする外国集団投資スキームの募集又は私募)を行うことができる「移行期間特例業務」に関する特例の制度が設けられました。

移行期間特例業務を行うことができるのは届出から5年間の間に限定され、かつ、施行日から5年間の時限措置です。登録拒否事由として、外国でライセンスを受けていない者、ライセンスを受けてから政令で定める期間が経過しない者や人的構成を有しない者等が盛り込まれており、外国で投資運用業務を行った実績のある業者が制度の対象になっています。また、移行期間特例業務では国内投資家は原則として勧誘対象とすることができないとされています。

海外業者の登録義務の除外

ファンド運用業務は、一定の海外ファンドの登録義務の除外が定められています。

国内投資家が少数である外国籍組合型ファンドの運用業務に係る特例(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第16条1項13号)があり、外国籍の組合型ファンドのうち、⒜当該ファンドに直接投資する国内投資家(直接出資者)が適格機関投資家又は適格機関投資家等特例業務の届出者のみ⒝当該ファンドにファンド・オブ・ファンズ形式で投資を行う国内投資家(間接出資者)が適格機関投資家のみ⒞直接出資者及び間接出資者の合計数が10未満、⒟直接出資者の拠出する資金がファンド全体の出資額の3分の1以下である場合における、当該海外ファンドの運用業務については、投資運用業(ファンド運用業)の登録は不要となっています。

また、投資一任業務とファンド運用業務は、国内の投資運用業者又は信託銀行へのサービス提供について登録義務の除外が定められています。

具体的には、外国において投資運用業(投資一任業)を行う法人が、投資運用業(投資一任業)を行う投資運用業者又は信託銀行に対して、投資運用業(投資一任業)を行う場合は、投資運用業の登録は不要になります。

さらに、外国において投資運用業(ファンド運用業)を行う法人が、投資運用業者又は信託銀行(投資運用業を行う者に限ります)に対して、投資運用業(ファンド運用業)を行う場合も、投資運用業の登録は不要になります。

海外業者への金融商品取引法の適用関係はこちらの記事にも詳しく記載しています。また、金融庁は投資運用業等 登録手続ガイドブックでもこれら登録の要否をチャート形式で分かりやすく示しています。

会社型ファンドは原則として投資運用業の対象外

前記の海外業者の登録義務の除外に加え、外国拠点において外国籍ファンドを運用する場合で、ファンド形態が信託型・会社型の場合には、そもそも投資運用業にはあたりませんので、運用行為には投資運用業の登録は不要です。

これは、外国拠点の外国事業者に限った話ではありません。もちろん、投信投資法人法上の投資法人は資産運用に投資運用業登録が必要ですが、その他のいわゆる会社型ファンドは登録不要が原則です。

国内では、例えば合同会社の社員権を利用した実質的なファンドの募集又は私募(いわゆる自己募集)や、合同会社社員権に基づき出資された金銭の運用(いわゆる自己運用)業務に関しては、それぞれ第二種金融商品取引業に該当する7号業務(自己募集)及び投資運用業に該当する15号業務(ファンド運用業)には原則として該当しません。

こうした場合、いわゆるセキュリティトークンに該当して自己募集が第二種金融商品取引業に該当するケースを除いては、金融商品取引業登録は不要と解されています。

ただし、合同会社の社員権(持分会社の社員権)の自己募集は、その主体は業務執行社員に限定されており、従業員は第二種金融商品取引業登録を受けない限り、これを行うことができません。これに伴い、持分会社の社員権は、発行者も業務執行社員と位置付けされています。

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