行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

第二種金融商品取引業の運営

第二種金融商品取引業の運営

このページの目次
高まる規制ハードル最初のファンドの販売の準備ファンドの審査募集又は私募の取扱契約の締結分別管理口座の開設特定有価証券等管理行為と有価証券等管理業務の競合顧客向け交付書面及び法定帳簿を整備ファンド等の販売には外務員資格が必要なのか第二種金融商品取引業の日常の運営第二種金融商品取引業者がやってはいけないこと

高まる規制ハードル

第二種金融商品取引業は、金融商品取引法施行からしばらくの間、現在の登録審査水準に比べると、比較的低いハードルで登録できました。金融商品取引法及び金融商品取引業者等に対する総合的な監督指針に掲げる第二種金融商品取引業者の登録要件は、当時と現在でさほど変わっていません。しかし、人的構成を始めとする、態勢審査における実際の要求水準は年々高くなっており、第二種金融商品取引業の登録の難度は10年前と現在では比べ物にならない高度なものになっています。

また、新規登録に限らず、既存の第二種金融商品取引業に対しても、求められる法令等遵守の水準は高まっています。

平成20年代には第二種金融商品取引業において、出資金の大宗の消滅を含む投資家保護上の問題が頻繫したことに加え、平成30年代から令和にかけては、主としてソーシャルレンディング関連事業者の不祥事が相次ぎました。それにより、第二種金融商品取引業務を運営していくのは、金融商品取引業に関する専門的な知識を有する多数の役職員が必要になりつつあり、また実際に第二種金融商品取引業者の経営戦略を検討するうえでも、金融商品取引法に関する深い理解が必要な時代になりました。

金融商品取引法等の法令面で十分な知識がないと、実務には盲点となる事項が多く、容易に法令違反状態を生じかねません。

ここでは、第二種金融商品取引業の登録が終わり、一般社団法人第二種金融商品取引業協会に加入した後に、ファンドを販売するにはどのようなステップが必要で、どのような手続きが生じるかを、事業型ファンドの私募の取扱い業務を例にして簡単にご説明します。

第二種金融商品取引業には、他に投資信託受益証券の自己募集、有価証券等管理業務を含まない通貨関連市場デリバティブ取引、不動産信託受益権関連業務等の複数の類型がありますが、留意点、着目点はそれぞれに異なります。当事務所は、これら第二種金融商品取引業の業務類型いずれにも経験に基づく的確な支援が可能です。

最初のファンドの販売の準備

ファンドの審査

第二種金融商品取引業を開始するに当たり必要な準備は多岐にわたりますが、投資運用業等を兼業せず、一般投資家向けに貸付型ファンドを含む事業型ファンドの取得勧誘を検討する場合に、はじめに必要となるのは、一般社団法人第二種金融商品取引業協会の規則である「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」又は「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」に則して、ファンドの発行者や事業内容を審査することです。

「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」は、取扱いだけではなく自己募集の場合も適用され、主として有価証券又はデリバティブ取引に投資するファンド、不動産ファンド、商品ファンド、競走馬ファンド、電子申込型電子募集取扱業務で募集又は私募するファンド、一定のプロ投資家のみを対象とするファンド以外のファンドに、網羅的に適用される規則です。

ここでの一定のプロ投資家のみを対象とするとは、ほぼ、適格投資家等特例業務における適格投資家等に該当します。本規則の適用対象外になる場合には、審査以外にもモニタリング等の同規則の定める規制の適用対象から外れます。

電子申込型電子募集取扱業務(いわゆる投資型クラウドファンディング)に限っては、「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」が適用されて、審査は同規則に基づいて行うことになります。また、同規則には「 電子申込型電子募集取扱業務等に関するガイドライン」も存在しますので、ガイドライン内容も把握しておく必要があります。

事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則は、平成30年1月1日より施行された、比較的新しい規則ですが、第二種金融商品取引業の運営の上では非常に重要な規則となりますので、把握しておく必要があります。また、同規則には「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則』に関するQ&A」「貸付型ファンドに関するQ&A」が存在しますので、同様にこれらのQ&A内容に関しても把握しておく必要があります。

また、第二種金融商品取引業者は、仮に一般社団法人第二種金融商品取引業協会に加入をしていない場合でも、法令上、金融商品取引法第29条の4第1項第4号ニに規定されている協会の定款その他の規則に準ずる社内規則を整備する義務を負っています。

よって、一般社団法人第二種金融商品取引業協会に非加入の業者であっても、協会規則を遵守する必要があります。もっとも、実務上は現在の新規登録であれば、ほぼ例外なく一般社団法人第二種金融商品取引業協会に加入しているようです。

審査の内容は、事業の実在性、財務状況、事業計画の妥当性等多岐にわたって各規則で定められています。第二種金融商品取引業者は、これに従い漏れなく審査を実施して顧客開示をするとともに、証跡を保存する必要があります。

募集又は私募の取扱契約の締結

販売の開始に先だって、ファンドの取扱い(他社発行ファンドの販売やSPCスキーム等での代理販売)を行う場合には、予めファンドの発行者との間で、募集又は私募の取扱いに係る事務委託の契約も必要になります。取扱契約において規定しなければならない事項も、前述の「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」又は「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」に定められています。

分別管理口座の開設

金融商品取引業等に関する内閣府令第125条により、ファンドの口座は発行者の固有口座とは異なる別段名義口座(当該出資金等であることがその名義により明らかなもの)であることが義務付けられています。そのため、ファンドの発行時すなわち払込みを受ける前までに必ず分別管理口座を開設する必要があります。分別管理口座の詳細は、契約締結前交付書面の記載事項ですので、実務上、勧誘を開始するまでに、別段名義口座の開設を行うことになります。

分別管理口座の開設は、ファンドの出資対象事業毎に口座を開設すればよく、ファンド毎の口座開設の必要まではありません(「ファンドの分別管理・金銭の預託に関するQ&A Q5)。また、ファンド用のSPCであっても、会社固有の口座とは別に、ファンド用の別段名義口座の開設が必要です(同 Q6)。

また、特定有価証券等管理行為(金融商品取引法第二条の定義に関する内閣府令第16条第1項第14号及び14号の2)を行う際には、出資者からの出資金の払い込み先は取扱者の口座になりますが、電子申込型電子募集取扱業務の場合に関しては、その後払込金を一定期間内に分別金信託で保全する義務(同14号の2の適用)がありますので注意が必要になります。

特定有価証券等管理行為とは、出資者の金銭を、直接取扱いを行うファンド口座に送金させず、いったん第二種金融商品取引業者が預かる行為を指します。いわゆる「口座」を開設させ、資金を預かったうえでファンドを買い付けさせるというフローを採用した場合、特定有価証券等管理行為に該当します。

この行為は、本来は有価証券等管理業務として第一種金融商品取引業に該当するのですが、資本金5000万円以上の第二種金融商品取引業者会社が分別管理を行ったうえで取扱い業務を行う場合に限り、第一種金融商品取引業の登録を受けることなく顧客資金の預かりができます。但し、上記のように電子申込型電子募集取扱業務に該当する場合には、分別金信託で顧客資産を信託することが必要です。

特定有価証券等管理行為と有価証券等管理業務の競合

また、第一種金融商品取引業と第二種金融商品取引業双方の登録を受けている事業者は、特定有価証券等管理行為(金融商品取引法第二条の定義に関する内閣府令第16条第14号及び第14号の2)と有価証券等管理業務(金融商品取引法第43条の2)のいずれも預かりの根拠法とすることができます。

そのため、顧客資産の預託がいずれの根拠によるのか法的に整理したうえで、求められる体制を整備する必要があります。仮に、特定有価証券等管理行為の求める要件を満たすことができない場合、金融商品取引業等に関する内閣府令第141条第1項第7号に掲げる顧客分別金信託に金銭を信託する必要が出てきます。

事務的には、特定有価証券等管理行為は金融商品取引業等に関する内閣府令第125条で、別段名義の銀行口座が求められるのに対して、顧客分別金信託に分別管理が担保された有価証券等管理業務では、顧客資産の当初受け入れ銀行口座は別段名義である必要がないという実務上の差異も存在します。

なお、特定有価証券等管理行為を行う場合には、顧客がファンドへの出資を申込む前であっても、ファンドの私募等の取扱いに関する場合には、二種業者は、顧客から金銭の預託を受けることができます(「ファンドの分別管理・金銭の預託に関するQ&A Q13)。

また、ファンドの分配金・償還金の預託を受けることに関して同Q&AのQ15では、「二種業者が顧客から金銭の預託を受け、ファンドの出資金を銀行等の預貯金口座で管理する場合には、預貯金による管理は倒産隔離機能が十全ではないことから、少なくとも3ヶ月に1度、顧客の投資意思を確認する必要があり、確認ができない場合には、速やかに預託を受けた金銭を顧客に払い出す必要があります。」としています。

また、特定有価証券等管理行為は取扱い業務(9号業務)を行う際の制度ですので、自己募集・自己私募(7号業務)業者は、特定有価証券等管理行為を行うことができません。よって、自己募集・自己私募のファンドへの出資の申込み前に顧客から金銭の預託を受け、または既に償還されたファンドの分配金・償還金を預かることは法令違反の恐れがあります(同 Q20)。

ただし、上記Q20では、「ただし、顧客にファンドの分配金・償還金を支払うにあたり、顧客とのファンドの規約や出資契約書などに定めた送金等にかかる事務処理のために必要な期間の範囲で当該金銭を出資金等管理口座で管理することは、顧客からの預託金には該当しないと考えられます。」とされておりますので、本Q&A回答の枠内の資金管理は、法令に違反しないものと考えられます。

顧客向け交付書面及び法定帳簿を整備

顧客向け交付書面では、契約締結前交付書面、契約締約締結時交付書面、取引残高報告書がなどがあり、法定帳簿として写しの保存も必要になります。

ただし、特定投資家に該当する顧客に対しては、書面交付義務が不要であるなど、一部の行為規制が免除されますので、プロ投資家相手に業務を行う場合には、その点に関しても考慮する必要があります。

また、その他の社内用の法定帳簿として、取引日記帳、募集若しくは売出し又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に係る取引記録(自己募集)、募集若しくは売出しの取扱い又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱いに係る取引記録(取扱)、注文伝票、顧客勘定元帳などもあり、いずれも忘れずに作成する必要があります。

また、顧客から本人確認書類の提出を受け、対面・非対面の取引形態に応じて、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認を実施する必要があります。犯罪収益移転防止法に関連しては、同法の改正により事業者としてリスク評価書を作成の上、AML/CFTに関して体制整備する必要が生じたため、こうした社内規程等の整備も欠かせません。

ちなみにこれらの書類に関しては主要なものを例示で挙げただけですので、実際に必要な書類は他にもあります。また、保存の年限と方法も、法令と金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針で細かく決まっておりますので、遵守する必要があります。

このように、最初の立ち上げだけでも規制は入り組んでおり、十分な知識がないと正確な準備をすることは非常に困難です。買収で第二種金融商品取引業者を買われた方や、自力で登録まではしたものの、その先で壁に当たっている方は、是非とも当事務所までお気軽にご相談いただければと思います。

とりわけ開業にあたっての事前審査で、当局に審査を受ける場合には、これらの法令上の規制を以下に把握して適切に事務処理をする態勢を構築することができるかどうかが、印象面でも非常に重要になってきます。

ファンド等の販売には外務員資格が必要なのか

よく、第二種金融商品取引業者が、ファンドや信託受益権を販売する際に、外務員資格が必要なのかと質問を受けることがあります。結論から言うと必要ありません。

いわゆる外務員資格には、日本証券業協会の証券外務員資格(1種及び2種)、一般社団法人金融先物取引業協会の金融先物取引業務の外務員資格及び日本暗号資産取引業協会の外務員資格あります。

これらの資格の存在意義の法的基盤である、金融商品取引法第64条に規定されてた外務員制度は、第一種金融商品取引業のうち、いわゆる一項有価証券に関する証券業務と金融先物取引業を行う場合のみ適用されることとなっています。

また、いわゆる証券業務(≒有価証券関連業)に該当しないため、第二種金融商品取引業と位置付けられている一部の一項有価証券の自己募集又は自己私募業務にも外務員制度に準ずる仕組みが存在します。

すなわち、委託者指図型投資信託の受益証券の募集若しくは私募及びその他の業務、自らが資産運用の業務を受託している投資法人が発行する投資証券又は投資法人債券の募集若しくは私募の取扱及びその他の業務、又は委託者非指図型投資信託の受益証券の募集若しくは私募及びその他の業務に関しては、一般社団法人投資信託協会の定める「受益証券等の直接募集等に関する規則」により、外務員制度に準ずる協会への届出制度が整備されています。

しかしながら、これ以外の投資助言・代理業投資運用業及び第二種金融商品取引業には、外務員制度が存在しません。よって外務員資格も不要です。ファンド、信託受益権関連業務を行うほとんどの第二種金融商品取引業者には、外務員制度も外務員資格も直接的には関係ないといえます。

もっとも、証券外務員資格や、内部管理責任者資格は、第二種金融商品取引業者及び投資助言・代理業の登録に関して関東財務局が示している人的構成書面の記載例でも言及されており、基本的に資格を有しているに越したことはありません。

第二種金融商品取引業の日常の運営

第二種金融商品取引業において、ファンドを販売したらそれで終わりとはなりません。自社設立のファンドであればもちろん、他社の設立したファンドであっても、第二種金融商品取引業者が販売した以上、協会規則等に基づき、ファンド内容の監視・監督の義務を負っています。

法令でも、分別管理が確保されていない場合の売買等の禁止(金融商品取引法第40条の3)及び金銭の流用が行われている場合の募集等の禁止(同法第40条の3の2が定められていますが、かかる法令上の制限を超えて、自社の販売したファンドが分別管理義務違反や流用、ずさんな資金運用等の問題を起こせば、販売した第二種金融商品取引業者が、取扱の時点では善意だったとしても当局から事実上の「結果責任」を問われる例が多数見受けられます。そのため、ファンド販売後は償還まで気を抜けません。

また、自主規制規則に基づくファンドの財務や分別管理のモニタリング義務の他、第二種金融商品取引業者は各種の変更届出の義務を負っています。所在地や商号、役員、定款変更など、ありとあらゆる細かいことが届出事項と決まっており、これを怠ると罰則があります。そのため、何が届出事項で、何かをしたいときにはどのような手続きを踏むのか、あらかじめ全体像をよく理解しておかないと法令を遵守した運営は困難でしょう。

また、当然ながら新しいファンドを売りたい場合にも、業務方法書の変更という手続きを踏む必要があります。この手続き、本来は届出ですが、実際には事前の許可とでもいうべき制度運用がなされています。そのため、迅速な新ファンドの販売のためには、行政との折衝や資料作りなどを効率よく進める必要があります。また、新ファンドの広告を行う際には、金融商品取引法の広告規制及びこれを受けた一般社団法人第二種金融商品取引業協会「広告等に関するガイドライン」にも配慮する必要があります。

第二種金融商品取引業者がやってはいけないこと

第二種金融商品取引業者の義務は様々あり、義務の違反にはそれぞれの罰則があります。しかしながら、第二種金融商品取引業者として、どこまではミスで許されて(行政処分されず)、何が許されないのか(行政処分されるのか)という線引きは、金融商品取引業に長年携わってきた人間以外に感覚として理解することは難しいと思います。

これを第二種金融商品取引業者に関して言えば、詐欺性(資金消滅)、資金流用が伴う分別管理義務違反、無登録業者への名義貸し等は、非常に重い処分が科される傾向にあります。さらに、以前に他の業者で処分されたことや、以前の自社への検査で問題になったことを繰り返した場合も、通常よりも処分が重くなる傾向があるといえます。

第二種金融商品取引業者を運営するのであれば、本来他社が指摘された事項については、すべての事例を知識として知っているべきです。また、もしすでに貴社で問題が生じており、問題の解決策に関してお悩みであれば、是非当事務所にご相談ください。

基本的には、自社で発見し、自社で改善に着手した問題に関しては、金融庁・財務局は寛大です。もし貴社に問題があるのであれば、一刻も早く解決をする必要があります。当事務所は。法令上の適切な解決のお手伝いをします。

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