行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

不動産関連特定投資運用業の登録

不動産関連特定投資運用業とは

不動産ファンドには様々な法的形態があります。そのうち、信託受益権化された不動産に投資するファンドは、基本的に投資運用業により運用をすることになりますが、投資運用業のうち、不動産関連の投資運用業務(アセットマネジメント業務)に関しては、投資運用業の中でも特別な規制に服します。

不動産関連の投資運用は、「不動産関連特定投資運用業」と呼称され金融商品取引業等に関する内閣府令第7条第7号において「投資運用業(法第二条第八項第十二号イに掲げる契約に係る同号に掲げる行為及び同項第十四号に掲げる行為を行う業務を除く。)のうち、不動産信託受益権又は組合契約、匿名組合契約若しくは投資事業有限責任組合契約に基づく権利のうち当該権利に係る出資対象事業が主として不動産信託受益権に対する投資を行うものを投資の対象とするものをいう」と定義されています。

法第二条第八項第十二号イに掲げる契約に係る同号に掲げる行為及び同項第十四号に掲げる行為を行う業務とは、それぞれ、投資法人資産運用業務及び投信委託業務ですので、それ以外の投資運用業である、投資一任業務(12号ロ)と、ファンド運用業務(15号)が、不動産関連特定投資運用業に該当します。

一般的な業務スキーム

不動産証券化においては、ファンドの法的な運営会社になる営業者が倒産しても、スキームの継続性に影響が及ばないようにするため、営業者の親会社として一般社団法人を設立して、実際に運用する会社とは別の会社をファンドの運営会社とする、いわゆる「倒産隔離」を実施するのが一般的です。

そのため、通常、不動産関連特定投資運用業は、投資運用業者自らがファンドの発行者になるファンド運用業として行われるのではなく、ペーパーカンパニーのGK(SPC)と、投資運用業者が投資一任契約を締結し、GKが発行する匿名組合契約(TK)に基づき投資家から拠出された金銭を、投資運用業者が不動産信託受益権を投資対象財産として投資一任契約に基づき運用する形態が採用されます。

REITの場合

不動産関連特定投資運用業の対象にならない、投資法人資産運用業務で、いわゆるJ-REIT(不動産投資法人)の運用を行う場合は、宅地建物取引業の免許を受け、併せて宅地建物取引業法第50条の2第1項の認可(取引一任代理等の認可)を受けたうえで、投資運用業登録をすることにより、同様の運用行為及び現物不動産による特定運用行為を行うことができます。

取引一任代理等の認可には、大規模な投資判断等を行う重要な使用人が必要となります。かかる重要な使用人の要件は、後述の総合不動産投資顧問業とほぼ同等に、資格保有(①公認不動産コンサルティングマスター、②ビル経営管理士、③ARES認定マスター、④不動産鑑定士、⑤不動産業務経験のある弁護士、⑥不動産業務経験のある公認会計士)に加えて、20億円以上の大規模な投資判断又は宅地若しくは建物の売買、交換、貸借及び管理に係る各判断に関する業務につき、一定の経験が必要です。

不動産関連特定投資運用業の登録要件

ファンド運用業と投資一任業務に係る不動産関連特定投資運用業につき、金融商品取引業については、金融商品取引業等に関する内閣府令第15条第5号、登録金融機関については、金融商品取引業等に関する内閣府令第49条第5号で、それぞれ「不動産関連特定投資運用業を行う場合には、金融庁長官の定める要件に該当しない」場合には登録拒否事由に該当することとされています。

具体的には、不動産関連特定投資運用業を行う場合の要件を定める件(金融庁告示第五十四号)において「不動産投資顧問業登録規程(平成十二年建設省告示第千八百二十八号)第三条第一項の総合不動産投資顧問業者としての登録を受けている者であること、又はその人的構成に照らして、当該登録を受けている者と同程度に不動産関連特定投資運用業を公正かつ適確に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であると認められること」が、不動産関連特定投資運用業の登録要件になっています(国土交通省HP参照)。

実務上、不動産関連特定投資運用業を行うためには、総合不動産投資顧問業の登録を受ける必要があるという運用がなされています。投資運用業の登録申請又は変更登録申請までには総合不動産投資顧問の登録が必要です。

なお、国土交通省の不動産投資顧問業の制度は任意規定であり、資金の拠出を伴わない現物不動産の一任形態での投資顧問業務に関しては、有価証券又はデリバティブ取引の投資顧問業の場合とは異なり、登録義務があるわけではありません。

但し、投資者の拠出を伴う不動産ファンドに関しては、不動産特定共同事業法や金融商品取引法の業規制の対象なので、注意してください。

総合不動産投資顧問業の登録要件

不動産投資顧問業の登録は、不動産投資顧問業登録規程にその詳細が定められています。不動産投資顧問業登録第6条の総合不動産投資顧問業の登録要件は、以下の通りです。

①登録申請者がその営もうとする業務を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有し、かつ、その者の当該業務の収支の見込みが良好なものとして次に掲げる要件を満たすこと。

ア 資本金の額が5000万円以上の株式会社であること。
イ 登録申請時の収支見込みに基づく純資産額が、収支見込み対象期間(登録申請日の属する営業年度及びその翌営業年度から起算して三営業年度をいう。次号において同じ。)において5000万円を下回らない水準に維持されていること。
ウ 投資一任業務の収支見込みが、収支見込み対象期間内に黒字になると見込まれること。

②登録申請者が、その人的構成に照らして、その営もうとする業務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有するものとして次に掲げる要件を満たすこと。

ア 総合不動産投資顧問業に係る業務を公正かつ的確に遂行できる経営体制であり、かつ、経営方針も健全なものであること。
イ 役員に、経歴及び業務遂行上の能力等に照らして総合不動産投資顧問業者としての業務運営に不適切な資質を有する者がいないこと。
ウ 役員又は重要な使用人のうちに判断業務統括者が置かれていること。
エ 判断業務統括者が、担当する業務に応じて大規模な投資判断又は不動産取引若しくは不動産の管理に係る各判断に関する業務を的確に遂行することができる知識及び経験を有していること。
オ 管理部門(法令その他の規則の遵守状況を管理し、その遵守を指導する部門をいう。)の責任者が定められ、法令その他の規則が遵守される体制が整っていること。
カ 不動産投資事業(自己の計算において不動産取引を行うことによる事業であって、不動産特定共同事業以外の事業をいう。以下同じ。)を行っている者においては、当該不動産投資事業部門の担当者及びその責任者と投資一任業務に係る運用部門の担当者(投資一任業務を担当する者及びその営業を担当する者をいう。)及びその責任者が兼任していないこと。
キ 顧客からの資産運用状況の照会に、短時間に回答できる体制となっていること。

上記要件の詳細

国土交通省は、上記登録規程に関する通達である「不動産投資顧問業登録規程の運用について」の2.②イにおいて、判断業務統括者について、「担当する業務に応じ、少なくとも一般不動産投資顧問業の場合の登録申請者又は重要な使用人と同等の知識(※1)を有しており、かつ数十億円以上の不動産に関する投資、取引又は管理に係る判断の経験(※2)があり、これらの判断に係る業務に2年以上従事し、各業務について適切な判断を行ってきたと認められること」と定めています。

(※1)不動産コンサルティング技能登録者、ビル経営管理士、不動産証券化協会認定マスター、不動産鑑定士、弁護士、公認会計士いずれかの資格
(※2)20億円以上の不動産に関する投資、取引又は管理に係る判断の経験

府令第13条第4号書面

不動産関連特定投資運用業に基づき運用している不動産信託受益権を組み入れたファンドの売買、売買の媒介、募集又は私募の取扱等は、不動産関連特定投資運用業と同時に、不動産信託受益権等売買等業務に該当します。

不動産信託受益権等売買等業務は、金融商品取引業等に関する内閣府令第7条第6号で、宅地若しくは建物に係る不動産信託受益権又は組合契約、匿名組合契約若しくは投資事業有限責任組合契約に基づく権利のうち当該権利に係る出資対象事業が主として不動産信託受益権に対する投資を行うものの売買その他の取引に係る業務と定義されています。

そのため、不動産信託受益権関連業務の記事で記載した通り、不動産信託受益権等売買等業務の統括に係る部門(営業)、内部監査に係る部門、法令等を遵守させるための指導に関する業務に係る部門(コンプライアンス)それぞれに、宅建主任者の資格者の配置が必要となります。

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