海外FXの違法性

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利用者側とサービスプロバイダー側利用者側は適法業者側は違法規制の体系機関投資家向け業務の登録免除IBの適法性アフィリエイトの適法性無登録営業の実態無登録営業のエンフォースメント無登録営業被害救済の困難性被害回復はほぼ不可能運用上海外FX業者の利用が必要な場合

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利用者側とサービスプロバイダー側

国内のFX業者は、個人のレバレッジが原則25倍、法人のレバレッジは業界団体(一般社団法人金融先物取引業協会)の定める倍率までと、取引レバレッジの上限が決まっています。それに対して、主にオフショア地域のFX業者では、数百倍などの高いレバレッジで取引ができることから、FXトレーダーの間では海外FXの利用に一定のニーズがあります。

また、海外FX業者では日本の業者はあまり提供していないPAMMやMAMM等のサービスも利用できる業者が多いことから、こうした機能を利用して投資家の資産を運用したいという資産運用事業者からの利用ニーズもあります。

とりわけ、MT4のように広く利用されるプラットフォームをベースにサービス展開している業者には強いニーズがあります。

金融庁は無登録の海外所在業者による勧誘にご注意くださいを公表して、こうした無登録業者に対する注意を呼び掛けています。

海外FX業者の適法性を検討する上では、まずは、利用者側と、サービスプロバイダー(業者)側を区別して考える必要があります。

利用者側は適法

法令は、事業者が居住者に対してこうした金融サービスを提供する行為には制限を設けていますが、居住者側がユーザーとしてサービスを利用する行為には、罰則や制限はありません。

よって、ユーザーが海外FXに口座を開設したりトレードをすることは、利用者側は適法といえます。無登録で居住者にFX取引を提供するのは後記の通り原則的には違法行為ですが、利用者側は、いわば「犯罪の被害者」の立場であり、被害者側に罰則がないのは当然ともいえます。

このことは、保険業法186条第2項で「日本に支店等を設けない外国保険業者に対して日本に住所若しくは居所を有する人若しくは日本に所在する財産又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機に係る保険契約の申込みをしようとする者は、当該申込みを行う時までに、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の許可を受けなければならない」とされ、無許可の海外保険の加入行為に対して、契約者側の罰則を定めた保険業法とは対照的といえます。

業者側は違法

これに対して、海外FX及び関連サービスを提供する側は、原則として国内の金融商品取引業の登録を受けない限り、一般投資家である居住者に対してサービスを提供することはできません。

ちなみに、海外業者の登録義務に関する規制体系は、FX(通貨関連店頭デリバティブ取引)・証券CFD(有価証券関連店頭デリバティブ取引)・仮想通貨FX(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)で、いずれも一般投資家に対してはほぼ同じです。但し機関投資家向けの場合の例外規定には差異があります。よって、以下の適法性の議論は、一般投資家向けである限り証券CFDや仮想通貨FXの場合も妥当します。

なお、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針「X-1-2 外国証券業者によるインターネット等を利用したクロスボーダー取引」において、金融庁は外国証券業者に以下のような措置を講ずることを求めています。ただし外国FX業者の場合は、これらを遵守したとしても、そもそも居住者の口座を開設させて取引をさせる行為自体が違法ですので、法令違反には変わりなく、以下は直接の適用はありません。

しかし、金融庁が海外FX業者に警告を行う際の実務としては、以下に倣って日本語サイトの有無や日本からの申し込みの可否を重要な基準として警告の有無を判断しています。

(1)担保文言

日本国内の投資者が当該サービスの対象とされていない旨の文言が明記されていること。
上記措置が十分に講じられているかを判断する際には、以下に掲げる事項に留意する必要がある。
①当該担保文言を判読するためには、広告等を閲覧する以外の特段の追加的操作を要しないこと。
②担保文言が、当該サイトを利用する日本国内の投資者が合理的に判読できる言語により表示されていること。

(2)取引防止措置等

日本国内にある投資者との間の有価証券関連業に係る行為を防止するための措置が講じられていること。
上記措置が十分に講じられているかを判断する際には、以下に掲げる事項に留意する必要がある。
①取引に際して、投資者より、住所、郵送先住所、メールアドレス、支払い方法その他の情報を提示させることにより、その居所を確認できる手続を経ていること。
②明らかに日本国内の投資者による有価証券関連業に係る行為であると信ずるに足る合理的な事由がある場合には、当該投資者から注文に応ずることのないよう配意していること。
③日本国内に顧客向けのコールセンターを設置する、或いは国内投資者を対象とするホームページ等にリンクを設定する等を始めとして、日本国内にある投資者に対し有価証券関連業に係る行為を誘引することのないよう配意していること。

また、以上に掲げる措置はあくまで例示であり、これらと同等若しくはそれ以上の措置が講じられている場合には、当該広告等の提供は、国内投資者向けの「勧誘」行為に該当しないものとする。

(3)なお、以上に掲げるような合理的な措置が講じられていない場合には、当該広告等の提供が国内投資者向けの「勧誘」行為に該当する蓋然性が極めて高いことから、当該外国証券業者は、日本国内の投資者との間で勧誘を伴う実際の有価証券関連業に係る行為が行われていない旨を証明すべきである。

X-1-2 外国証券業者によるインターネット等を利用したクロスボーダー取引

規制の体系

オフショア地域でラインセスを取得して、国内在住の投資家を相手方として、外国為替証拠金取引(FX)の提供ができないかという相談を頂くことがあります。こうしたご相談では、「外国当局のライセンスがあるので合法ではないか」「海外所在業者なので日本法は適用されないのではないか」「国内で勧誘をしなければいいのではないか」「日本で第二種金融商品取引業や投資助言・代理業の登録があればいいのではないか」等と聞かれることが多いですが、どれも誤りです。

機関投資家向け業務の登録免除

外国為替証拠金取引に関しては、金融商品取引法施行令第一条の八の六第1項第2号で、第一種金融商品取引業者(第一種少額電子募集取扱業者を除く。)、登録金融機関、適格機関投資家、外国の法令上これらに相当する者及び資本金10億円以上の株式会社を相手方とする場合は、金融商品取引業登録が不要と規定されています。

よって、機関投資家に対する取引の提供や、FX業者に対するカバー取引の提供(リクイディティプロバイダー業務)等に関しては、金融商品取引業の登録を受けずとも業務を行うことができます。

これら以外の一般投資家を顧客とする場合は、たとえ勧誘を行っておらず、外国当局の許認可を有する外国所在業者であっても、必ず国内での第一種金融商品取引業の登録が必要になります。金融商品取引業の登録を受けずに居住者に対してFX取引を提供した場合、無登録営業として罰則があります。

IBの適法性

海外FX事業者だけではなく、海外FXに送客をする者も原則として違法になります。

いわゆるIB(イントロデューシングブローカー)が行う口座開設等の媒介は、第一種金融商品取引業者に該当します。そのため、IBの無登録営業は、金融商品取引法に違反します。なお、IBとは、FX業者に送客して、送客した顧客の取引高に応じて報酬を受け取る紹介業者のことです。

かなり昔には、自動売買等を商材にして投資家に海外FXの口座開設をさせ、海外FX業者から、IB報酬(スプレッドバック)を受け取るという違法行為が一部で行われていました。また、こうしたスプレッドバックでは多くの場合、BVI法人の香港やシンガポール銀行口座へ支払われ、国内では所得を申告しないという脱税も併せて行われていました。

もっとも、さすがにこうしたスキームの違法性への認識が浸透してきたこと、共通報告基準(CRS)により海外口座であっても実質支配者と残高情報が国税庁に情報共有されることになったこと、国際的なマネーロンダリング防止の観点から、オフショアのペーパーカンパニーでは例えオフショア銀行であっても新規の口座開設が困難になったことなどにより、現在ではあまり行われません。

アフィリエイトの適法性

IBまではしないものの、海外FX業者のアフィリエイトやバナー広告の貼り付け等をしている例を散見しますが、そうした海外FXの広告宣伝行為はグレーゾーンです。ブログ・メルマガ等のメディア上の情報提供に留まり、媒介といわれるような行為までは行っていなければ、一般論としては金融商品取引業の無登録営業とは言えないと思います。

しかしながら、無登録業者の広告宣伝を行うことは、金融商品取引法違反という犯罪を幇助していると解する余地もありそうに思えます。また、過去の金融庁の警告公表事例で、海外FXのアフィリエイト・サービス・プロバイダーが、無登録営業をする者として警告された事例がありますので、アフィリエイトだから違法ではないと断ずることはできません。

常識的に考えて、違法行為の宣伝を行うことは慎むべきでしょう。

加えて、こうした海外FX事業者は、自動売買サービス、いわゆるPAMM/MAMMを提供しているケースが多いですが、これらのサービスの提供は投資運用業又は投資助言・代理業に該当すると考えられ、またそのMM(マネーマネージャー)と称される運用者に関しても、同様に投資運用業又は投資助言・代理業に該当します。

無登録営業の実態

事実上海外業者に対して、当局が警告以上の監督権を及ぼすことができないことをいいことに、今から十数年前には、海外無登録業者が相当蔓延した時期がありました。

実際に外国に拠点があり、外国資本が経営している業者のケースでは、確信犯、過失による法令違反、いずれのケースもあるものの、中東、香港、マルタ等に拠点を置き、何らかの外国ライセンスを保有している業者が国内居住者からの口座開設を受け付けているという事例が多々見られました。しかしながら、こうした事例は金融庁の対応強化で、今ではあまり見られなくなっています。

これら外国業者の中には、日本国内で第一種金融商品取引業の登録又は買収をして正式な参入を行おうとする業者が多数ありました。悪意の無登録営業をしてしまった外国業者は、その後国内で参入をしようとしても新規登録は不可能に近いですが、経緯が過失によるものであり、警告に至る前に是正した業者に関しては、新規登録が認められている事例が複数存在します。

ただ、外国の有力な外国為替証拠金取引業者の国内参入検討が一巡したこと、世界的にFX業界が成熟化していること、レバレッジ規制の強化により国内事業の収益性が低下していることなども関連して、近年の外資系業者の国内参入意欲は低調なものになっています。

信託義務化、レバレッジ規制、ストレステストと、FX業者を巡る規制上の経営環境は年々厳しさを増しており、現代のFXビジネスは、信託義務化以前、さらにいえば金融先物取引法制定以前のような、高収益のビジネスモデルではなくなっています。

他方、海外FX業者のおそらくは半分以上は、実質的には日本居住者が日本居住者向けに国内から提供しており、名義だけオフショア法人になっているケースであると考えられています。自動売買ソフトウエア、連鎖販売取引、オフショア脱税等と組み合わせて、国内でも非常に多数の名義上の無登録海外業者が活動しており、金融庁の警告を見ても、実質的に居住者が日本国内から経営又は関与していると認定された事例が見られます。

無登録営業のエンフォースメント

現代では国際間の規制監督強化もあり、規制当局のエンフォースメントは強化されています。具体的には、金融庁から無登録営業の警告があった場合、当該無登録業者は、海外銀行から銀行口座を閉鎖されたり、外交ルートにより外国金融当局から許認可を取り消しされたり、入出金の際のクレジットカードが提携を切られて利用不可になったり、カバー取引の相手方から取引口座を閉鎖される等の形で、運営手段を封じられ、実質的に営業が不可能になるケースが頻発しています。

あまり報じられていないので、広く認識はされていませんが、こうした海外法人の名義で外国為替証拠金取引を実質的に日本国内で勧誘をして無登録で提供する事業者に関しては、逮捕者もかなり出ています。

また、前述のように、こうした海外FX事業で得た収益、又は同IB(媒介)業務により得た報酬は、典型的にはケイマン・BVI等の法人の名義で、香港・シンガポールの銀行に滞留させて国内では申告しないという原始的な脱税行為が10年以上前には広く行われていました。しかし、現代では、オフショア銀行の口座開設の厳格化、共通報告基準(CRS)による銀行口座情報の自動共有、国外財産調書の提出義務化により、そのような脱税はすぐに露見する可能性が高くなっています。

法的、倫理的な是非はされておき、国内から海外FX業者を始めるという行為は、あたかも原野商法や仕手筋のように、どこか「昭和感」漂うビジネスになってしまっているのが、令和の温度感であるように感じられます。

無登録営業被害救済の困難性

海外FX業者の出金拒否、不正な約定、システム障害等により被害を受けた場合、法的な保護はほぼ期待できません。海外無登録バイナリーオプション取引と同じです。

国内で第一種金融商品取引業者として登録を受けている外国為替証拠金取引業者と異なり、海外無登録業者に対して金融庁・財務局は監督権限を及ぼすことはできません。また、日本居住者に対して無登録で口座を開設させる違法行為をあえて行っている悪質な海外FX業者は、そもそもどの国のライセンスも受けていない、純粋な無登録業者も珍しくありません。

無登録業者の中でも、比較的著名な大手業者もありますので、そうした業者は存在そのものが詐欺という訳ではないと思いますが、マイナーな業者は、そもそも投資家の資金をだまし取るための詐欺業者である可能性も十分あります。そのため、金融庁金融先物取引業協会が注意喚起を行っているほか、国民生活センターサイトにも相談事例が掲載されています。

実態として国内所在の者が運営している海外FX業者で、国内で対面側の勧誘を行っている場合には、前記のように逮捕事例も散見しますが、実際に海外所在の者により運営されていたり、又は、運営者が国内所在の者であっても、完全にオンラインのみで勧誘を行っている事業者の場合には、金融商品取引法違反であっても現実的に被疑者を逮捕、起訴することは不可能に近いです。

被害回復はほぼ不可能

海外無登録バイナリーオプションの記事でも書きましたが、こうした業者との取引で被害を受けてもその回復は、事実上不可能と考えられます。

無登録営業を行う法人は、こちらの通り、セイシェル、英領バージン諸島、サモア等のタックスヘイブンがほとんどです。香港やシンガポール法人も多いですが、どちらも比較的簡単に外国人がペーパーカンパニーを設立できる国であって、そのほとんどは現地行ってもに実体はないでしょう。

こうした法人相手に、訴訟を起こして資金を取り返すことは現実的ではありません。日本のほとんどの弁護士は、回収可能性がないとして、基本的にこうした事件は事件として受任しないと思われます。さらに、仮に訴訟を起こすとしても、現地の弁護士に依頼する必要があります。しかし、基本的に、海外の弁護士費用は、日本の弁護士費用より遥かに高額です。

さらに、こうしたタックスヘイブン地域では、法人数に対して裁判所のキャパシティーが小さすぎるために、訴訟の審理が始まるまでに数年かかり、事実上、裁判を起こすことが不可能になっている地域もあります。

海外無登録バイナリーオプションのケースと同じくクレジットカード入金に関連してクレジットカード会社に苦情を申し立てる方法はあります。しかし、海外取引で、かつ自分の意志で入金している場合には、クレジットカード会社がチャージバックに応じるかは不透明です。

運用上海外FX業者の利用が必要な場合

投資手法その他の技術的な理由により、海外FX業者を利用する必要があるケースも想定されます。

そうした場合には、投資者保護上問題のない形で適法に海外FX業者を利用する方法がないか検討することになります。

例えば、PAMM・MAMM等の資産運用ビジネスとしての色彩が強い取引では、一般投資家に口座を開設させることは行わず、ファンドへの出資の形態で業務を行うという対案が考えられます。海外にファンドヴィークルとなる法人とリミテッドパートナーシップを組成し、国内で適格機関投資家等特例業務の届出又は投資運用業及び第二種金融商品取引業の登録を行ったうえで、当該海外ファンドヴィークルが海外FX業者に口座を開設してFX取引を行うといったスキームは、成立しうるものと考えられます。

また、ファンド自体は国内で組成し、いわばファンド・オブ・ファンズに類する形で、オフショア法人のshareへ再投資する形式を採用することも可能です。タックスヘイブン対策税制を検討する必要はありますが、いわゆる会社型ファンドとして構成することができます。

また、国内投資信託から外国籍投資信託に再投資するスキームで、同様にオフショアでFX取引を行っているスキームも見たことがあります。

なお、投資運用業者や適格機関投資家等特例業務届出者は、金融商品取引法上、忠実義務や善管注意義務を負っていますので、こうした場合でも、いいかげんな海外FX業者に資金を預託するのは法令違反を構成する可能性があります。実質的な投資者保護の観点から、適切な業者選定と取引スキームの十分な適法性の検証が求められることは、いうまでもありません。

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