行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

外国業者の金融商品取引法等の適用

外国業者の金融商品取引法の適用と登録

このページの目次
概要:総論
販売業務:販売関連業務外国証券業者有価証券関連店頭デリバティブ取引(証券CFD等)非有価証券店頭デリバティブ取引(FX等)暗号資産等関連店頭デリバティブ取引(仮想通貨FX等)商品関連店頭デリバティブ取引(商品CFD等)
運用業務:運用関連業務投資助言業務に関する登録免除投資一任業務に関する登録免除ファンド業務に関する登録免除組合型ファンドその他の形態のファンド少人数の適格機関投資家向けファンドの登録義務免除海外投資家等特例業務関連
仮想通貨:暗号資産交換業等

総論

外国において金融商品取引業に相当する業務を行っている事業者が、国内に拠点を設置し又は居住者を相手方として業務を行う場合には、登録・届出義務に関して業態別に複雑なクロスボーダー規制があります。以下に、その具体的な規制に関して解説します。なお、海外金融事業者の支援に関しては、こちらに特集ページがありますので、併せてご確認ください。

金融庁は、「外国金融サービス業者が我が国市場に参入するにあたって適用される法規制」を公開しています。十数年前に公開された記事であり、現行法に照らして内容は既に時代遅れになっていますが、大枠の理解としては有益な情報です。

なお、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業及び投資運用業に関しては、金融商品取引業登録を受ける場合、国内に営業所を設置する義務がありますが、投資助言・代理業に限っては国内の営業所設置義務がないため、金融商品取引業を受けているにも関わらず、国内に営業所を有しない投資助言・代理業者が存在します。

令和4年11月現在、外国に本店等が所在する金融商品取引業者としてアメリカ、イギリス、スイス、香港、シンガポール等の登録業者が存在しています。外国業者の金融商品取引業登録に関しては、令和5年に金融庁の国際金融センター特設ページにおいて参考になるQ&Aが公表されていますので併せてご参照ください。

販売関連業務

金融商品取引業者及び銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関以外の者で、外国の法令に準拠し、外国において有価証券関連業を行う者は、外国証券業者と呼称されます。有価証券関連業は金融商品取引法第28条第8項に規定がありますが、ほぼ旧来の証券会社のことです。

外国証券業者に関する法令の基本的考え方として、金融庁は、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針で、以下のように示しています。

※X.監督上の評価項目と諸手続(外国証券業者等)
X-1-1 外国証券業者に関する法令の基本的考え方
外国証券業者は、日本国内における有価証券関連業の本拠として設ける主たる営業所又は事務所について登録を受けない限り、国内にある者を相手方として金商法第28条第8項各号に掲げる行為(以下「有価証券関連業に係る行為」という。)を行うことはできない。他方、国内に拠点を有しない無登録の外国証券業者であっても、有価証券関連業に係る行為についての勧誘をすることなく、あるいは金融商品取引業者(第一種金融商品取引業に限る。)による代理又は媒介により、国内にある者の注文を受けて外国からその者を相手方として有価証券関連業に係る行為を行うことについては許容されている。
また、外国証券業者は、金商法第60条第1項に基づく当局の許可を受けて、国内の金融商品取引所における取引を業として行うことができる。当該業者に対しては、X-2-1で示す留意点を踏まえて監督するものとする。
X-1-2 外国証券業者によるインターネット等を利用したクロスボーダー取引
外国証券業者がホームページ等に有価証券関連業に係る行為に関する広告等を掲載する行為については、原則として、「勧誘」行為に該当する。
ただし、以下に掲げる措置を始めとして、日本国内の投資者との間の有価証券関連業に係る行為につながらないような合理的な措置が講じられている限り、国内投資者に向けた「勧誘」には該当しないものとする。
(1)担保文言
日本国内の投資者が当該サービスの対象とされていない旨の文言が明記されていること。上記措置が十分に講じられているかを判断する際には、以下に掲げる事項に留意する必要がある。
①当該担保文言を判読するためには、広告等を閲覧する以外の特段の追加的操作を要しないこと。
②担保文言が、当該サイトを利用する日本国内の投資者が合理的に判読できる言語により表示されていること。
(2)取引防止措置等
日本国内にある投資者との間の有価証券関連業に係る行為を防止するための措置が講じられていること。上記措置が十分に講じられているかを判断する際には、以下に掲げる事項に留意する必要がある。
①取引に際して、投資者より、住所、郵送先住所、メールアドレス、支払い方法その他の情報を提示させることにより、その居所を確認できる手続を経ていること。
②明らかに日本国内の投資者による有価証券関連業に係る行為であると信ずるに足る合理的な事由がある場合には、当該投資者から注文に応ずることのないよう配意していること。
③日本国内に顧客向けのコールセンターを設置する、或いは国内投資者を対象とするホームページ等にリンクを設定する等を始めとして、日本国内にある投資者に対し有価証券関連業に係る行為を誘引することのないよう配意していること。
また、以上に掲げる措置はあくまで例示であり、これらと同等若しくはそれ以上の措置が講じられている場合には、当該広告等の提供は、国内投資者向けの「勧誘」行為に該当しないものとする。
(3)なお、以上に掲げるような合理的な措置が講じられていない場合には、当該広告等の提供が国内投資者向けの「勧誘」行為に該当する蓋然性が極めて高いことから、当該外国証券業者は、日本国内の投資者との間で勧誘を伴う実際の有価証券関連業に係る行為が行われていない旨を証明すべきである。

外国証券業者

上記の監督指針の根拠となる法令として、金融商品取引法第58条の2及び金融商品取引法施行令第17条の3に、国内にある者を相手方として有価証券関連業に係る行為を行うことができる場合が定まっています。

それによれば、外国証券業者が、金融商品取引業者のうち、一定の有価証券関連業を行う者を相手方とする場合、政府又は日本銀行を相手方とする場合、一定の金融機関や信託会社を相手方として一定の取引をするの場合、投資運用業者を相手方とする投資運用業に関する業務の場合、登録証券会社の代理又は媒介による場合などと並んで、金融商品取引法施行令第17条の3第2号イで外国証券業者が勧誘をすることなく外国から「国内にある者の注文を受けて、当該者を相手方として行う法第二十八条第八項第一号から第三号まで若しくは第五号に掲げる行為若しくは同項第六号に掲げる行為(同項第四号に掲げる取引の媒介、取次ぎ及び代理を除く。)のうち内閣府令で定めるもの又は当該者(第一条の八の六第一項第二号イ又はロのいずれかに該当する者に限る。)を相手方として行う法第二十八条第八項第四号に掲げる行為若しくは同項第六号に掲げる行為(同項第四号に掲げる取引の媒介、取次ぎ及び代理に限る。)」も、金融商品取引業登録を要さないと定まっています。

(外国証券業者が行うことのできる業務)
第五十八条の二 外国証券業者は、国内にある者を相手方として第二十八条第八項各号に掲げる行為を行つてはならない。ただし、金融商品取引業者のうち、有価証券関連業を行う者を相手方とする場合(当該外国証券業者がその店頭デリバティブ取引等の業務の用に供する電子情報処理組織を使用して特定店頭デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理を行う場合を除く。)その他政令で定める場合は、この限りでない。

金融商品取引法第58条の2

(国内にある者を相手方として有価証券関連業に係る行為を行うことができる場合)
第十七条の三 法第五十八条の二ただし書に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合(特定投資家向け有価証券について一般投資家(法第四十条の四に規定する一般投資家をいう。以下この条において同じ。)を相手方として法第二条第八項第一号から第四号まで又は第十号に掲げる行為を行う場合(当該特定投資家向け有価証券に関して開示が行われている場合、一般投資家に対する勧誘に基づかないで一般投資家のために売付けの媒介を行う場合その他投資者の保護に欠けるおそれが少ない場合として内閣府令で定める場合を除く。)及び当該外国証券業者がその店頭デリバティブ取引等の業務の用に供する電子情報処理組織を使用して特定店頭デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理を行う場合を除く。)とする。
一 外国証券業者が外国から次に掲げる行為を行う場合
イ 政府又は日本銀行を相手方とする法第二十八条第八項各号に掲げる行為
ロ 金融機関(銀行、協同組織金融機関及び第一条の九各号に掲げる金融機関をいう。以下この条において同じ。)のうち内閣府令で定めるもの又は信託会社(信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第三条又は第五十三条第一項の免許を受けた者をいう。)を相手方とする法第二十八条第八項各号に掲げる行為で、これらの者が投資の目的をもつて又は信託契約に基づいて信託をする者の計算において行う有価証券の売買又は有価証券関連デリバティブ取引に係るもの
ハ 金融商品取引業者のうち、投資運用業を行う者を相手方とする法第二十八条第八項各号に掲げる行為で、当該者が行う投資運用業に係るもの
ニ 金融機関のうち内閣府令で定めるものを相手方とする法第二十八条第八項各号に掲げる行為で、法第三十三条第二項第一号から第五号までに掲げる有価証券又は取引に係るこれらの号に定める行為
ホ 金融機関のうち内閣府令で定めるものを相手方とする法第二十八条第八項各号に掲げる行為で、当該金融機関が顧客の書面による注文を受けてその計算において行う有価証券の売買又は同項第三号若しくは第五号に掲げる行為(当該注文に関する顧客に対する勧誘に基づき行われるもの及び当該金融機関が行う投資助言業務に関しその顧客から注文を受けて行われるものを除く。)のうち、内閣府令で定めるものに係るもの
ヘ 長期信用銀行(長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第四条第一項の規定により内閣総理大臣の免許を受けた者をいう。)、金融機関の合併及び転換に関する法律(昭和四十三年法律第八十六号)第八条第一項(同法第五十五条第四項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)に規定する普通銀行で同法第八条第一項の認可を受けたもの(金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成十年法律第百七号)附則第百六十九条の規定によりなおその効力を有するものとされる同法附則第百六十八条の規定による改正前の金融機関の合併及び転換に関する法律(以下この号において「平成十年改正前合併転換法」という。)第十七条の二第一項(平成十年改正前合併転換法第二十四条第一項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)に規定する普通銀行で平成十年改正前合併転換法第十七条の二第一項の認可を受けたもの及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号。以下この号において「会社法整備法」という。)第二百条第一項の規定によりなお従前の例によることとされる会社法整備法第百九十九条の規定による改正前の金融機関の合併及び転換に関する法律(以下この号において「平成十七年改正前合併転換法」という。)の規定により合併契約書又は転換計画書が作成された合併又は転換を行う場合において、平成十七年改正前合併転換法第十七条の二第一項(平成十七年改正前合併転換法第二十四条第一項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の認可を受けた普通銀行を含む。)又は信託会社等(貸付信託法(昭和二十七年法律第百九十五号)第三条第一項の信託会社等をいう。)を相手方とする法第二十八条第八項各号に掲げる行為で、それぞれ長期信用銀行法第八条若しくは第九条の規定により発行する長期信用銀行債、金融機関の合併及び転換に関する法律第八条の規定により発行する特定社債(平成十年改正前合併転換法第十七条の二第一項及び平成十七年改正前合併転換法第十七条の二第一項の規定により発行する債券を含む。)又は貸付信託法第二条第二項に規定する受益証券に係るもの
二 外国証券業者が、法第二十八条第八項各号に掲げる行為についての勧誘をすることなく、外国から次に掲げる行為を行う場合(前号に該当する場合を除く。)
イ 国内にある者の注文を受けて、当該者を相手方として行う法第二十八条第八項第一号から第三号まで若しくは第五号に掲げる行為若しくは同項第六号に掲げる行為(同項第四号に掲げる取引の媒介、取次ぎ及び代理を除く。)のうち内閣府令で定めるもの又は当該者(第一条の八の六第一項第二号イ又はロのいずれかに該当する者に限る。)を相手方として行う法第二十八条第八項第四号に掲げる行為若しくは同項第六号に掲げる行為(同項第四号に掲げる取引の媒介、取次ぎ及び代理に限る。)
ロ 有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行うことにつき法第二十九条の登録を受けた者に限る。)による代理又は媒介により、国内にある者を相手方として行う有価証券の売買若しくは法第二十八条第八項第三号若しくは第五号に掲げる行為のうち内閣府令で定めるもの又は国内にある者(第一条の八の六第一項第二号イ又はロのいずれかに該当する者に限る。)を相手方として行う法第二十八条第八項第四号に掲げる行為
三 外国証券業者が、内閣府令で定めるところにより、その行う有価証券の引受けの業務のうち元引受契約(有価証券の募集、私募若しくは売出し又は特定投資家向け売付け勧誘等に際して締結する次のいずれかの契約をいう。次条において同じ。)の内容を確定するための協議のみを当該元引受契約に係る有価証券の発行者又は所有者と国内において行う場合(当該有価証券の売出し若しくは特定投資家向け売付け勧誘等又は当該有価証券の募集、私募若しくは売出しの取扱い若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱いが国内において行われる場合を除く。)
イ 当該有価証券を取得させることを目的として当該有価証券の全部又は一部を発行者又は所有者から取得することを内容とする契約
ロ 当該有価証券の全部又は一部につき他にこれを取得する者がない場合にその残部を発行者又は所有者から取得することを内容とする契約
ハ 当該有価証券が新株予約権証券である場合において、当該新株予約権証券を取得した者が当該新株予約権証券の全部又は一部につき新株予約権を行使しないときに当該行使しない新株予約権に係る新株予約権証券を発行者又は所有者から取得して自己又は第三者が当該新株予約権を行使することを内容とする契約

金融商品取引法施行令第17条の3

つまり、一定の有価証券関連業(証券業務)に関しては、プロ相手等の投資者保護上の要請が高くないケースに加えて、一般投資家相手であっても、居住者を相手方として勧誘行為を一切行わなければ、居住者を相手方として業務を行っても法令違反にはならない規制体系となっています。

なお、集団投資スキームや投資信託受益権証券等の一定の有価証券の私募又は募集(以下本節で「自己募集等業務」という。)は、第二種金融商品取引業に位置付けされています(金融商品取引法第2条第8項第7号)。しかしながら、かかる自己募集等業務は、法令上、有価証券関連業には位置付けされていません。

そのため、外国証券業者が関与せず、かつ勧誘を行わない自己募集等業務の適法性に関しては、論議の余地があります。

金融庁の公表している投資運用業等登録手続きガイドブックでは、(2) 主要な事業スキーム例④(1)で、勧誘を伴う場合には、登録要としています。

しかし、勧誘を伴わず、かつ外国証券業者の取扱いによらない集団投資スキームや投資信託受益権証券等の一定の有価証券の自己募集等業務がどのように取り扱われるかは条文・解説上、クリアにされていません。

第1項有価証券と第2項有価証券で取得勧誘の人数計算の判定タイミングが異なることもあって、正解は判然としませんが、積極的な勧誘がないことをもって金融商品取引法第2条第8項第7号に該当する自己募集等業務を構成しないと考える余地はあるでしょう。

とはいえこうした場合には有価証券の募集又は私募の取扱者として金融商品取引業者又は外国証券業者を取引に入れたほうがベターと言えます。

なお、金融庁は「原則として、国外において非居住者のみを相手方として取得勧誘が行われる場合には、当該取得勧誘については、金商法の規制は適用されない」(平成19年パブリックコメントP64 No133)としていますが、これは当然といえます。

有価証券関連店頭デリバティブ取引(証券CFD等)

法第28条第8項第4号に掲げる有価証券関連業たる店頭デリバティブ取引(証券CFD取引を含む。)に関しては、外国証券業者の登録義務の免除規定の対象になるのは、相手方が適格機関投資家などに限られており、個人向けの取引の場合には適用がありません(金融商品取引法第58条の2ただし書及び同施行令17条の3第2号)。

よって、第一種金融商品取引業者(第一種少額電子募集取扱業者を除く。)、登録金融機関、適格機関投資家、外国の法令上これらに相当する者及び資本金10億円以上の株式会社を相手方とする場合等の一定のケース以外は、外国証券会社は、たとえ勧誘を行っていない場合であっても、金融商品取引業登録が必要になります。

非有価証券店頭デリバティブ取引(FX等)

有価証券関連店頭デリバティブ取引以外の店頭デリバティブ取引(通貨関連、暗号資産等関連の店頭デリバティブ取引。外国為替証拠金取引を含む)に関しては、そもそも有価証券関連業に該当しないため、当然に外国証券業者には該当せず、証券CFDの事例と同様、外国証券業者に対する登録義務の除外の適用はありません。

原則として居住者を相手方として取引を提供しただけで金融商品取引法に違反すると解されています。そのため、一般投資家相手の無登録の海外FX業者及び海外バイナリーオプション業者は法令違反です。

ただし、有価証券関連店頭デリバティブ取引以外の店頭デリバティブ取引についても、金融商品取引法施行令第1条の8の6第1項第2号で、第一種金融商品取引業者(第一種少額電子募集取扱業者を除く。)、登録金融機関、適格機関投資家、外国の法令上これらに相当する者及び資本金10億円以上の株式会社を相手方とする場合には、暗号資産等関連店頭デリバティブ取引の場合を除き、金融商品取引業登録が不要と規定されています。

よってこれらの者を相手方とするFX取引は無登録でその提供が可能です。こうした機関投資家向けの業態は、いわゆるリクイディティー・プロバイダーと称され実例があります。

暗号資産等関連店頭デリバティブ取引(仮想通貨FX等)

暗号資産等関連店頭デリバティブ取引に関しては、同不要規定が適用されず、有価証券関連店頭デリバティブ取引と同様に条文上、金融商品取引法施行令第1条の8の6第1項第2号の対象から除外されています。

そのため、別途、金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令第 16 条第1項第4号の2で定められている「金融商品取引業から除かれる行為」に該当しない限り、適格機関投資家や資本金10億円以上の株式会社に顧客を限定したとしても、サービスの提供は無登録営業にあたります。

金融商品取引業から除かれる行為は、暗号資産関連店頭デリバティブ取引が、ステーブルコインを取り込んで暗号資産関連店頭デリバティブ取引であった段階においては、「外国の法令に準拠し、外国において暗号資産等関連店頭デリバティブ取引等を業として行う者が外国から行うものであって、政府又は日本銀行、金融商品取引業者及び金融機関のうち、暗号等資産関連店頭デリバティブ取引等を業として行う者、金融機関、信託会社又は外国信託会社(これらの者が投資の目的をもって又は信託契約に基づいて信託をする者の計算において暗号資産関連店頭デリバティブ取引を行う場合に限る。)、投資運用業者(当該者が投資運用業に係る行為を行う場合に限る。)を相手方とする暗号資産関連店頭デリバティブ取引等であり、かつ、特定店頭デリバティブ取引並びにその媒介、取次ぎ及び代理に該当しないもの」となっていました。

暗号資産を用いたデリバティブ取引については、国内外のFX取引や証券CFDの外国証券会社特例(適格機関投資家など向け)よりも、プロ向け業務の登録義務免除の範囲が狭く、すなわち規制が厳しいということになります。

金融庁は、その理由として「原資産である暗号資産の有用性についての評価が定まっておらず、また、専ら投機を助長しているとの指摘もある中で、その積極的な社会的意義を見出し難い」(令和2年金融庁パブリックコメントP23 No.60)ためであると説明しています。

商品関連店頭デリバティブ取引(商品CFD等)

金融商品取引法の規制範囲ではありませんが、商品先物取引取引法に定める商品関連店頭デリバティブ取引(いわゆる商品CFD)に関しては、FXや証券と類似したクロスボーダー規制が採用されています。

商品先物取引法第2条第15項で、商品デリバティブ取引の定義から「店頭商品デリバティブ取引について高度の能力を有する者として主務省令で定める者若しくは資本金の額が主務省令で定める金額以上の株式会社を相手方として行われ、又はこれらの者のために行われる店頭商品デリバティブ取引」が除外されています。

商品先物取引法施行規則第1条第1項では、店頭商品デリバティブ取引について高度の能力を有する者等の定義として、商品先物取引業者、商品投資顧問業者等と並んで、適格機関投資家や第一種金融商品取引業者等が定められており、また、同第2項で資本金の額が十億円以上の株式会社も対象とされています。

運用関連業務

続いて、投資助言・代理業及び投資運用業について見ていきましょう。

投資助言・代理業及び投資運用業に関しては、令和2年1月に金融庁から発表された、「投資運用業等登録手続ガイドブック」にも詳しく記載されています。

はじめに、当然ながら、国内の拠点において投資助言・投資運用を行わず、また、居住者向けに投資助言業務務・投資運用業務をしない場合には登録不要です。

金融庁は、原則として海外に所在するファンドが、非居住者のみから出資を受けた財産の投資運用を海外において行っている場合は金商法の規制は適用されないとしています(平成19年パブリックコメントP64 No133)。

投資助言業務に関する登録免除

外国運用業者等による国内金融機関に対する運用・助言業務に係る特例(金融商品取引法第61条、金融商品取引法施行令第17条の11)があり、外国において投資助言業務を行う者が、投資運用業者又は信託銀行(登録金融機関のうち投資運用業を行う者。以下同じ。)に対して、投資助言業務を行う場合は、投資助言・代理業の登録は不要です。

投資一任業務に関する登録免除

外国において投資運用業(投資一任業)を行う法人が、投資運用業(投資一任業)を行う投資運用業者又は信託銀行に対して、投資運用業(投資一任業)を行う場合も、国内での投資運用業の登録は不要になります。

これにより、投資助言・代理業の登録を受けて、投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介業務(13号業務)を行う金融商品取引業者は、金融商品取引業の登録を受けておらず外国において投資助言業務を行う者と、国内に所在する投資運用業者を行う投資運用業者又は信託銀行の間の投資顧問契約の締結の代理又は媒介業務が可能です。

また、同様に外国において投資運用業(投資一任業)を行う法人と、国内に所在する投資運用業者(投資一任業)を行う投資運用業者又は信託銀行の間の投資一任契約の締結の代理又は媒介業務も可能になります。

ファンド業務に関する登録免除

組合型ファンド

外国において投資運用業(ファンド運用業)を行う法人が、投資運用業者又は信託銀行(投資運用業を行う者に限ります)に対して、投資運用業(ファンド運用業)を行う場合も、投資運用業の登録は不要になります。

また、平成19年パブリックコメントP535 No.1で、金融庁は「投資運用業の登録を受けた運用者が運用するファンドが契約の相手方となる場合についても、金商法第61条第2項又は第3項の適用があり、外国の投資運用業者は登録・届出を行うことなく当該業務を行うことができる」としています。

よって、いわゆるファンド・オブ・ファンズ(FoF)の形態で、外国籍の集団投資スキームファンドに投資するファンドを組成する際は、顧客が取得するファンドの運用が投資運用業者より行われていれば、外国籍の集団投資スキーム側のGPが投資運用業の登録又は適格機関投資家等特例業務の届出を行っていなくとも、適法にスキームを構築することが可能です。

同第2項は投資一任契約、同第3項はファンド運用業ですので、投資運用業の種別として、投資一任業務(12号ロ業務)であっても、ファンド運用業務(15号業務)であっても、FoFの投資先GPは、かかる登録義務の免除が享受可能です。

ただし、外国籍の集団投資スキーム側のGPによるファンド持分の募集又は私募にあたって、前述の通り外国証券業者の登録義務の免除等の適用が受けられるか、別途検討が必要になります。つまり「募集の話と運用の話は別」ということです。

また、ファンド・オブ・ファンズ(FoF)の形態で、顧客が取得するファンドの運用が、投資運用業者ではなく、適格機関投資家等特例業務届出者により行われている場合には、この登録義務の免除は利用できません。

よって、適格機関投資家等特例業務で、無登録かつ無届のGPが組成する外国ファンドにFoF形態で投資をすることは法令違反を構成する可能性あります。

その場合、別途、後述の「少人数の適格機関投資家向けファンドの登録義務免除」が利用できるか検討する必要があります。

その他の形態のファンド

さらに、外国拠点において外国籍ファンドを運用する場合で、ファンド形態が信託型・会社型の場合には、運用行為には投資運用業の登録は不要です。

なお、信託型のファンドの場合の委託者としての運用行為や、会社型のファンドの自己資金としての運用行為は投資運用業の登録は必要ないものの、これらのヴィークルを国内から投資一任契約に基づき別会社が運用指図する場合には、別会社に投資運用業が必要になるので、注意が必要です。

また、そうした信託型ファンドや会社型ファンドの募集又は私募若しくは募集又は私募の取扱等が金融商品取引業を構成しないかは、別途の検討が必要です。

また、会社型ファンドの募集又は私募(自己募集)に該当する場合、電子移転記録権利に該当しない限り、業規制は適用されないとしても、開示規制に関しては依然として検討する必要があります。

少人数の適格機関投資家向けファンドの登録義務免除

国内投資家が少数である外国籍組合型ファンドの運用業務に係る特例(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第16条1項13号)があり、外国籍の組合型ファンドのうち、⒜当該ファンドに直接投資する国内投資家(直接出資者)が適格機関投資家、適格機関投資家等特例業務又は海外投資家等特例業務の届出者のみ⒝当該ファンドにファンド・オブ・ファンズ形式で投資を行う国内投資家(間接出資者)が適格機関投資家のみ⒞直接出資者及び間接出資者の合計数が10未満、⒟直接出資者の拠出する資金がファンド全体の出資額の3分の1以下である場合における、当該海外ファンドの運用業務については、投資運用業(ファンド運用業)の登録は不要となっています。

これは要するに、直接出資、間接出資問わず、無登録、無届の外国ファンドにとって、少数の適格機関投資家(及び特例業務届出者)のみから、マイナー出資を受けるケースを除き、日本居住者の資金を受け入れる適法なFoFスキームは構築できないということです。

なお、FoFでの組合型ファンドの顧客の属性の判定は、組合ヴィークルではなく、組合員ベースで行われるが、例外的にLPSは組合ベースで判定され、かつLPSは適格機関投資家であるとの見解があります(実務問答金商法 金商法・実務研究会 商事法務 P263 設問24)。しかし、いずれにせよLPSへの出資者が全員適格機関投資家でないとFoFを受ける側が(b)の要件を満たすことができません。

ちなみに、居住者から拠出された金銭を含む集団投資スキームの外国GPとの間で締結する在外業者による投資一任契約は、直接的には外国法人に提供されているものであることから、金融商品取引業に該当しないとされています(平成19年パブリックコメントP535 No.3)。

他方で、適格機関投資家等特例業務の届出をした外国GPが発行、運用する外国ファンドからFoFを受ける外国ファンドの外国GPの運用行為が、金融商品取引業(15号業務)に該当するかは判然としません。

なお、これらファンドの募集又は私募に関しては、別途規制が適用されます。会社型ファンドの自己募集(募集又は私募)に該当する場合を除き、ファンドの取得勧誘には、原則として第一種金融商品取引業又は第二種金融商品取引業の登録が必要になります。この場合、前記のように外国証券業者の登録義務の免除等の適用が受けられるかも検討する必要が出てきます。

つまり、運用行為に国内投資家が少数である外国籍組合型ファンドの運用業務に係る特例を使うとしても、原則的には、第二種金融商品取引業者に投資勧誘(募集又は私募の取扱い(金融商品取引法第2条第8項第9号)を委託し、自らは勧誘行為を行わない場合、外国証券業者が同特例による登録免除業務の範囲内で私募の取扱等を行う場合、 国内の投資家が適格機関投資家及び49名以下の特例業務対象投資家のみで、かつ、ファンドの運用会社が事前に適格投資家等特例業務の届出を行って適法に自己私募ができる場合(金融商品取引法第63条)又は海外投資家等特例業務による場合を除き、この特例を利用したとしても居住者に対して適法に取得勧誘をすることができないということになります。

海外投資家等特例業務関連

令和3年金融商品取引法改正で、海外投資家等特例業務の制度が新設されたため、国内に拠点を設置すれば、届出により、主として海外投資家向けのファンド運用業務(15号業務。いわゆる集団投資スキームの自己運用)及びかかる集団投資スキームの募集又は私募業務を行うことができるようになっています。海外投資家等特例業務として、勧誘が可能な「海外投資家等」には、一定の国内の機関投資家等も含まれます。

また同時に移行期間特例業務の制度が設けられました。これにより実績のある指定国の海外資産運用業者が、国内で海外向けの資産運用業務等を継続して行うことが可能になっています。ただし、こちらは、基本的に国内投資家は勧誘可能な顧客から除外されています。

ただし、令和5年現在、移行期間特例業務は届出事例がなく実務上利用されていない制度になっています。海外投資家等特例業務届出者は、令和5年に入って初の届出例が出ました。

暗号資産交換業等

世界的な大手暗号資産取引所を含む、外国暗号資産取引所が居住者の資金を受け入れしていることが散発的に問題になっています。

しかし、資金決済法第63条の22は「外国暗号資産交換業者の勧誘の禁止」として「第六十三条の二の登録を受けていない外国暗号資産交換業者は、国内にある者に対して、第2条第7項各号に掲げる行為の勧誘をしてはならない。」と定めています。

資金決済法第2条第7項各号は、「暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換」「前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理」「その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。」「他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)」が暗号資産交換業にあたるとしています。

無登録営業で金融庁から警告を受けていることもあり、本邦居住者に口座を開設させる暗号資産交換所、取引所の運営はすべて違法な印象がありますが、これはこうした条文の理解を欠く表面的な理解です。資金決済法で禁止されているのは「居住者に対して暗号資産交換業に係る取引の勧誘をする」ことです。

これは外国証券業者への規制と類似し、また、居住者に対する取引の提供が原則禁止されている海外FX/CFD/仮想通貨FX業者よりも緩やかな規制です。日本語サイトを設置せず、居住者に対する積極的なプロモーションも行わず、他方、本邦居住者の口座開設を希望があれば、随時受け入れる外国暗号資産交換業者は、適法と見ることができます。

また、ステーブルコインに関しては、法定通貨と換金が「約束(保証)」されたデジタルマネー類似型コインと、一定のアルゴリズムにより価格を法定通貨にリンクさせるアルゴリズム型コインが存在します。アルゴリズム型コインは、暗号資産の一種であると解されており、上記の暗号資産交換業に対する規制が適用されれます。

もっとも、令和5年現在、ステーブルコインは、国内業者では取扱いがありません。もっともメジャーなステーブルコインであるUSDTすら、国内の暗号資産交換業者のホワイトリストに存在しません。

これに対して、デジタルマネー類似型コインは、電子決済手段と位置付けられており、その発行をすることができる者は、銀行、資金移動業者及び信託会社に限られています。また、その仲介者として、電子決済手段等取引業者の制度が定められています。

登録を受けていない外国電子決済手段等取引業者は、資金決済法第63条で、国内にある者に対して、電子決済手段等取引業に該当する行為又は同法2条10項第4号に掲げる行為に相当する行為の勧誘をしてはならないとなっていますので、資金決済法で禁止されるのは居住者に対してステーブルコインの勧誘等をすることです。

電子決済手段等取引業者は、外国で発行された電子決済手段に関しても外国において同様の銀行等のライセンスを取得した発行者が発行している場合には取扱うことができます。ただし、その場合、一定の追加的な規制に服することになっています。

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