行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

金融商品取引業と業務方法書

業務方法書とは

このページの目次
業務方法書は社内の憲法変更届出と変更登録「別紙」又は「別に定める」規程業務方法書の変更届出を超え変更登録になるもの業務方法書の変更届の実務業務方法書の記載要件共通記載事項第一種金融商品取引業特有の記載事項第二種金融商品取引業特有の記載事項投資助言・代理業特有の記載事項投資運用業特有の記載事項電子募集取扱業務及び高速取引行為特有の記載事項

業務方法書は社内の憲法

金融商品取引業者は、金融商品取引業を行うにあたり、社内規程の最上位となる規程として「業務の内容及び方法を記載した書面(業務方法書)」を制定し、登録申請の際に添付書類として提出することが求められています。

また、社内の業務の根幹となる「業務方法書」に変更があった場合には、その都度、財務局に遅滞なく(1か月以内に)届出する義務があります。

業務方法書は、法令ガイドライン及び各種自主規制団体による自主規制規則に続いて金融商品取引業者が守るべき「社内の憲法」です。

金融商品取引業者として行っていい業務や守るべき事項は、この業務方法書によって基本を定めることになっています。そのため業務方法書を見れば、どんな業態で何をやっている金融商品取引業者なのかがほぼ正確に把握できます。

変更届出と変更登録

新規業務を開始する場合や、M&Aによる参入により、金融商品取引業者として行う業務の内容を変更するケースでは、業務方法書の変更で済む場合と変更登録が必要な場合で2パターンあります。

業務方法書(別紙を含む)の変更は、財務局に届出が必要であり、届出制とはいえ、その大幅な変更には、財務局による受理の可否の事前審査が行われるのが通常です。他方、形式的、軽微な修正は、ほぼ無審査で受理される場合もありますので、その実質的な内容により変更の難易度には差があります。

投資助言・代理業における助言対象商品の変更、料金体系の大幅な変更、第一種金融商品取引業における取り扱い有価証券の変更、第二種金融商品取引業における取り扱いファンドの変更等の大きな変更の際には、比較的綿密な受理審査が行われます。

さらに、投資助言・代理業を行う業者が投資運用業を行う場合や、対面型の第二種金融商品取引業を行う業者が電子募集取扱業務を開始する場合等、業務の種別の変更を伴う場合には、業務方法書の変更だけではなく、金融商品取引法第31条に基づく変更登録が必要になります。

 軽微な変更 届出のみで完結
 大きな変更 実質的には審査あり。内容によっては変更登録

「別紙」又は「別に定める」規程

業務方法書で「別紙」としている規程を変更した場合には、その都度届出する義務がありますが「別に定める」としている規程や、業務方法書及びその別紙に言及がない社内規程は、業務方法書を構成しません。

そのため、これらを変更した場合にも財務局への届出義務は構成しません。なお、関東財務局の業務方法書記載例では、業務方法書を構成しない規程は「別添の」と記載されていますが、基本的にはここで言及する「別に定める」と同じ意義を有します。

別紙 変更毎に届出義務
 別に定める 変更の際に届出義務なし

業務方法書の変更届出を超え変更登録になるもの

変更登録が必要になるケースは、金融商品取引法第31条第4項に定められています。

第一種金融商品取引業(証券業務/商品関連市場デリバティブ取引/店頭デリバティブ取引等/引受業務等/PTS/有価証券等管理業務)/第二種金融商品取引業/投資運用業/投資助言・代理業の金融商品取引業を構成する4業務種別(下位概念含む)間の変更があります(金融商品取引法第29条の2第1項第5号)。

さらに、その下位カテゴリーとして、電子募集取扱業務(同第6号)、高速取引行為(同第7号)、電子記録移転有価証券表示権利等関連業務(セキュリティトークン及びトークン化有価証券(第8号))、暗号資産等関連デリバティブ取引(同第9号)も、変更登録の対象になります。また、適格投資家向け投資運用業から投資運用業へのアップグレードも変更登録の対象です。

変更登録手続きは、金融商品取引法第31条に定められています。

(変更登録等)
第三十一条 金融商品取引業者は、第二十九条の二第一項各号(第五号、第六号、第七号ロ、第八号及び第九号を除く。)に掲げる事項について変更があつたときは、その日から二週間以内に、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
(略)
4 金融商品取引業者は、第二十九条の二第一項第五号、第六号、第七号ロ、第八号又は第九号に掲げる事項について変更をしようとするときは、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の行う変更登録を受けなければならない。

(登録の申請)
第二十九条の二第一項
(略)
五 業務の種別(第二十八条第一項第一号、第一号の二、第二号、第三号イからハまで及び第四号に掲げる行為に係る業務並びに有価証券等管理業務、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業並びに投資運用業の種別をいう。)
六 第三条各号に掲げる有価証券又は金融商品取引所に上場されていない有価証券(政令で定めるものを除く。)について、電子募集取扱業務(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより第二条第八項第九号に掲げる行為を業として行うことをいう。以下この章において同じ。)を行う場合にあつては、その旨
七 高速取引行為に関する次に掲げる事項
ロ 第一種金融商品取引業及び投資運用業を行わない場合において、第二種金融商品取引業として高速取引行為を行うときにあつては、その旨
八 第二条第二項の規定により有価証券とみなされる権利(当該権利に係る記録又は移転の方法その他の事情を勘案し、公益又は投資者保護のため特に必要なものとして内閣府令で定めるものに限る。)又は当該権利若しくは金融指標(当該権利の価格及び利率等並びにこれらに基づいて算出した数値に限る。)に係るデリバティブ取引についての次に掲げる行為を業として行う場合にあつては、その旨
イ 当該権利についての第二条第八項第一号から第十号までに掲げる行為又は当該デリバティブ取引についての同項第一号から第五号までに掲げる行為
ロ 第二条第八項第十二号、第十四号又は第十五号に掲げる行為
九 暗号資産又は金融指標(暗号資産の価格及び利率等並びにこれらに基づいて算出した数値に限る。)に係るデリバティブ取引についての次に掲げる行為を業として行う場合にあつては、その旨
イ 第二条第八項第一号から第五号までに掲げる行為
ロ 第二条第八項第十二号、第十四号又は第十五号に掲げる行為

金融商品取引法第29条の2及び第31条

上記の規程に関わらず、金融商品取引法第30条及び第31条第6項で私設取引所業務(PTS)は認可制になっており変更登録よりも高いハードルがあります。

具体的には金融商品取引法第30条は「金融商品取引業者は、第二条第八項第十号に掲げる行為を業として行おうとするときは、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。」としています。

また、同第31条第6項では「第三十条第一項の認可を受けた金融商品取引業者は、第三項の規定にかかわらず、当該認可を受けた業務に係る損失の危険の管理方法、売買価格の決定方法、受渡しその他の決済の方法その他内閣府令で定める業務の内容及び方法を変更しようとする場合においては、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。」としています。

業務方法書の変更届の実務

業務方法書の変更届におけるハードルや着目点には、業態の中でも差異があります。

例えば、第一種金融商品取引業者に関しては、証券業務内での売買、媒介、私募の取り扱いといった業態の変更には比較的緩やかである一方で、有価証券等管理業務電子募集取扱業務、店頭デリバティブ取引の追加等の変更登録はもちろんのこと、FXからの証券CFDやバイナリーオプション取引等のデリバティブ取引間の種別変更等にもかなり厳密な審査があります。

FX専業からの証券CFDの参入は、日本証券業協会への加入を伴う手続きになります。日本証券業協会の加入審査は、ある意味で金融庁・財務局以上の厳密性をもって行われるため、手続きは簡単ではありません。

他方、FXや証券CFD等の大きなカテゴリーの中での取扱い通貨ペアや銘柄等の細かい商品性については、あえて業務方法書には記載せず、必要な時は行政手続きなしで任意に変更できるようになっているのが一般的です。

また、セキュリティトークンや暗号資産等関連デリバティブ取引に関する業務は、変更登録事項であり業務方法書の変更だけでは行うことができません。一般に相当に強固な態勢が構築できない限りは、おいそれと認められる業務ではないのが現状です。

第二種金融商品取引業に関しては、変更登録に関しては電子募集取扱業務、業務方法書の変更に関しては、信託受益権からファンドへの扱う有価証券の変更又は扱うファンドの出資対象事業の変更は、非常に難易度が高い手続きとなっています。

もっとも、普段から活発に業務を行っていて監督当局と信頼関係のある業者と、問題視されていたり休眠状態にある業者では、業務方法書の変更手続きの大変さには大きな違いがあります。

また、ファンドの出資対象事業の変更のうち、いわゆるソーシャルレンディング業務に関しては、昨今の不祥事頻発により、大幅な制度改正が予定されており、その新規参入へのハードルは、登録済みの第二種金融商品取引業者の業務方法書の変更であっても、非常に高いものになっています。

投資運用業者に関しては、変更のハードルは比較的に低くなっていますが、投資一任業務及びファンド運用業と、投資法人資産運用業及び投信委託業の間には、わりと大きな差異があります。

投資助言・代理業者に関しては、業務方法書にどこまで詳細に記載すべきかに関して、関東財務局のホームページに記載されている業務方法書の記載例が業界的に標準とされており、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業及び投資運用業に比して、細かい約諾、料金等に関して書き込んで、事実上の事前届出制料金(※)とすることが求められています。

※行政手続法上は届出ですが、主要な変更は事前に規制当局に届出を済ましておくのが一般的です。また、過去の登録業者には比較的幅のある料金設定も許容される余地がありましたが、直近の登録の、とりわけ一般投資家向け業者には、明確な料金体系の設定が求められています。令和2事務年度の証券モニタリング事例集でも「基本料金に見合う収益を得ることができなかった既存顧客の契約更新に際し、基本料金を個別に設定するための基準を設けずに、当社社長の独自の判断により個別に基本料金を減免し、顧客間で公平性を欠いた不適切な取扱いをしていた」事例が内部管理態勢不備に係る指摘として掲載されており、統一的な基準を設けない料金体系は不適切であるとの考え方が明らかにされています。

業務方法書の記載要件

業務方法書は、金融商品取引業の登録申請の際に登録申請書の別紙として添付することが義務付けられており、その記載要件は金融商品取引業等に関する内閣府令第8条に定められています。

共通記載事項

(業務の内容及び方法)

第八条 法第二十九条の二第二項第二号に規定する内閣府令で定めるものは、次に掲げるものとする。

一 業務運営に関する基本原則
二 業務執行の方法
三 業務分掌の方法
四 業として行う金融商品取引行為の種類
五 苦情の解決のための体制(法第三十七条の七第一項第一号ロ、第二号ロ、第三号ロ又は第四号ロに定める業務に関する苦情処理措置及び紛争解決措置の内容を含む。)

金融商品取引業等に関する内閣府令

第一種金融商品取引業特有の記載事項

共通記載事項に加え、第一種金融商品取引業者には、以下の記載要件が追加されています。

店頭デリバティブ取引や有価証券等管理業務等における記載事項の追加が目立ちますが、実際には第一種金融商品取引業者に対する規制密度は、業務方法書はおろか政令や内閣府令を超え、自主規制団体規則(日本証券業協会、金融先物取引業協会、日本STO協会及び日本暗号資産交換業協会)においても詳細が定められています。

第一種金融商品取引業は、自己資本規制比率の算定やリスク管理等に関しても業務方法書及び別紙規定で詳細に定めることが一般的であり、十分なリスク管理体制の構築が非常に重要になります。

登録審査を進める過程で、社内規程を極めて複雑に構築する必要が生じます。また、こうした態勢に不備があって、かつて臨店検査での指摘や行政処分等を受けた事業者は、その改善措置として、リスク管理や自己資本規制比率算定等の検証が、一般的に求められる3つの防衛線の水準を超えて、多重化されている場合があります。

登録審査が厳しく、臨店検査が多い第一種金融商品取引業者では、実際の過去の経緯を踏まえた各業者特有の社内体制があるのが一般的です。コンプライアンス担当者を引き継いだりM&Aで会社を承継する場合には、とくにこうした過去の経緯の把握を的確に行う必要があります。

六 第一種金融商品取引業を行う場合には、次に掲げる事項(第一種少額電子募集取扱業務のみを行う場合には、ロからニまで及びトに掲げる事項を除く。)

イ 取り扱う有価証券及び業として行うデリバティブ取引の種類(当該有価証券又はデリバティブ取引が電子記録移転有価証券表示権利等又は法第二十九条の二第一項第八号に規定するデリバティブ取引である場合にあってはその旨並びに次号ロ及びハに掲げる事項を含み、商品関連業務を行う場合にあっては取引の対象とする商品又は商品に係る金融指標を含む。)
ロ 損失の危険の管理方法に関する次に掲げる事項
(1) 損失の危険相当額(第百七十八条第一項第一号に規定する市場リスク相当額、同項第二号に規定する取引先リスク相当額及び同項第三号に規定する基礎的リスク相当額を含む。以下この号において同じ。)の算定方法
(2) 損失の危険相当額の限度枠の設定及び適用方法
(3) 損失の危険相当額の算定及び限度枠の管理を行う部署の名称及び体制
(4) 損失の危険相当額の算定の基礎となる資料の作成及び保存の方法
(5) 損失の危険相当額及びその限度枠の適用状況について、検査を行う頻度、部署の名称及び体制
(6) その他損失の危険の管理に関する重要な事項
ハ 店頭デリバティブ取引等に係る業務(電子取引基盤運営業務を除く。)を行う場合には、次に掲げる事項
(1) 当該業務を管理する責任者の氏名及び役職名
(2) 当該業務を行う部署の名称及び組織の体制
(3) 当該業務に係る顧客との取引開始基準
(4) 当該業務に係る損失の危険相当額の算定方法及び算定の頻度(取引所金融商品市場における相場、金利、通貨の価格その他の指標の変動により発生し得る損失の危険、取引の相手方の契約不履行その他の理由により発生し得る損失の危険及びこれらの理由以外の理由により発生し得る損失の危険ごとに記載すること。)
(5) 当該業務に係る損失の危険相当額の限度枠の設定及び適用方法並びに取引の種類及び顧客の属性別の当該限度枠の設定及び適用方法
(6) 当該業務に係る損失の危険相当額の算定及び限度枠の管理を行う部署の名称及び体制
(7) 当該業務に係る損失の危険相当額及びその限度枠の適用状況について、代表権を有する取締役又は執行役(外国法人にあっては、国内における営業所若しくは事務所に駐在する取締役若しくは執行役若しくはこれらに準ずる者又は国内における代表者)に報告する頻度
(8) 当該業務に係る損失の危険相当額の算定の基礎となる資料の作成及び保存の方法
(9) 当該業務の執行並びに損失の危険相当額及びその限度枠の適用状況について、検査を行う頻度、部署の名称及び体制
(10) その他当該業務に係る損失の危険の管理に関する重要な事項
ニ 有価証券の元引受けに係る業務を行う場合には、次に掲げる事項
(1) 当該業務を管理する責任者の氏名及び役職名
(2) 当該業務を行う部署の名称及び組織の体制
(3) 当該業務に係る損失の危険相当額の算定方法
(4) 当該業務に係る損失の危険相当額の限度枠の設定及び適用方法
(5) 当該業務に係る損失の危険相当額の算定及び限度枠の管理を行う部署の名称及び体制
(6) 当該業務の執行並びに損失の危険相当額及びその限度枠の適用状況について、検査を行う頻度、部署の名称及び体制
(7) その他当該業務に係る損失の危険の管理に関する重要な事項
ホ 有価証券等管理業務を行う場合には、法第四十三条の二から第四十三条の三までの規定による管理の方法
ヘ 有価証券関連業を行う場合には、第七十条の四第一項各号に掲げる措置に関する次に掲げる事項
(1) 当該措置の実施の方法
(2) 当該措置の実施を所掌する組織及びその人員の配置
ト 電子取引基盤運営業務を行う場合には、次に掲げる事項
(1) 電子取引基盤運営業務において行う特定店頭デリバティブ取引の種類及びその具体的内容
(2) 電子取引基盤運営業務を管理する責任者の氏名及び役職名
(3) 電子取引基盤運営業務を行う部署及び法第四十条の七第二項の規定に基づく公表に係る業務を行う部署(電子取引基盤運営業務の一部又は同項の規定に基づく公表に係る業務の一部を他の者に委託する場合にあっては、その者を含む。)の名称及び組織の体制
(4) 電子取引基盤運営業務に係る顧客との取引開始基準及び顧客の管理方法
(5) 料金に関する事項
(6) 売付け及び買付けの気配その他価格情報を顧客に公表する方法(電子情報処理組織の使用その他の電子的方法に限る。)
(7) 取引価格の決定方法(特定店頭デリバティブ取引において当事者が想定元本として定めた金額が、第百二十五条の八第二項各号に掲げる特定店頭デリバティブ取引の効力が生じる日から当該効力が消滅する日までの期間の区分に応じ、当該各号に定める金額以下である場合には、次の(i)に掲げるもの又は次の(i)若しくは(ii)に掲げるもののいずれかを顧客が選択することができるものに限る。)及び取引の成立の時期
(i) (6)の規定により公表された自己又は顧客の売付け及び買付けの気配に基づく価格を用いる方法
(ii) 顧客の間の交渉(顧客の指定に基づき三以上の他の顧客に対して売付け又は買付けの気配の提示を求め、当該求めに応じ当該他の顧客が提示した売付け又は買付けの気配、(6)の規定により公表された売付け又は買付けの気配及び自己が売付け又は買付けの気配を提示する場合における当該気配を当該顧客に通知した上で行うものに限る。)に基づく価格を用いる方法
(8) 法第四十条の七第二項の規定に基づく公表を行う方法
(9) 電子取引基盤運営業務において使用する電子情報処理組織の概要、設置場所、容量及び保守の方法並びに当該電子情報処理組織に異常が発生した場合の対処方法
(10) 電子取引基盤運営業務に係る決済の方法(法第百五十六条の六十二第一号又は第二号に掲げる取引に基づく債務を金融商品取引清算機関(当該金融商品取引清算機関が連携金融商品債務引受業務を行う場合には、連携清算機関等を含む。)又は外国金融商品取引清算機関に適切かつ迅速に負担させるための方法を含む。)及び顧客の契約不履行が生じた場合の対処方法
(11) 電子取引基盤運営業務に係る取引記録の作成及び保存の方法
(12) 電子取引基盤運営業務の執行状況について、検査を行う頻度、部署の名称及び体制
(13) 不公正な取引の防止の方法その他の取引の公正の確保に関する事項
(14) その他電子取引基盤運営業務に係る損失の危険の管理に関する重要な事項
チ 第百二十三条第一項第十八号ホ及び第二十四号ニ並びに第百五十三条第一項第七号ト及びリに規定する場合において情報を受領し、又は提供するときは、電子情報処理組織の保守及び管理に関する業務並びに同条第三項に規定する内部の管理及び運営に関する業務に関する次に掲げる事項
(1) 当該情報を受領し、又は提供する登録金融機関又は親法人等若しくは子法人等の商号又は名称
(2) 業務執行の方法
(3) 当該業務を所掌する組織及びその人員の配置

金融商品取引業等に関する内閣府令

第二種金融商品取引業特有の記載事項

第二種金融商品取引業向けの記載事項の追加は以下の通りです。

下記の中で、実務上特に重要なのは、信託受益権を扱う場合には、その信託財産の内容を記載しなければならず、また、集団投資スキームを扱う場合には、その出資対象事業を記載しなければならないことです。ちなみに、とくに後者に関する具体的な記載の粒度は、業者によって相当の差異があります

また、業務方法書の記載事項中、業務で扱うことが可能な集団投資スキームの出資対象事業には、業者によってその粒度に大きな差異があります。登録時期が古い第二種金融商品取引業や、投資運用業を兼業する第二種金融商品取引業の中には、オールマイティとも思える業務方法書で登録されている業者も存在しています。

例えば、集団投資スキームの出資対象事業が、「有価証券又はデリバティブ取引」及び「各種事業への投融資」等となっていると、事実上、事前の届出なしで、殆どのファンドを自由に組成できてしまいます。こうした業務方法書はある意味でジョーカーのようなもので、直近の登録事例では殆ど存在しませんが、登録時期が金融商品取引法施行直後の業者にはこれに近いような事例が一定数存在します。

なお、金融庁は、金融商品取引法施行時に、業務方法書に記載すべき集団投資スキームの出資対象事業の概要について、以下のように基準を示しています。

  • 投資型ファンドの場合には、登録申請時点で投資先が確定していない場合であっても、投資対象となる有価証券の種類や基本的な運用方針等について、可能な範囲で記載する(平成19年パブリックコメントP157 No.36)
  • 事業型ファンドの場合には、当該事業スキームの概要も含め、その行おうとする事業の事業計画の概要等を記載する(同No.37)
  • 商品ファンドの場合にはその行う商品投資の種類・対象商品や基本的な運用方針等について、可能な範囲で記載する(同No.38)
  • 信託受益権に投資をするファンドについても、単に「信託受益権の取得・保有」といった概括的な記載にとどまらず、例えば、信託財産の種類やその選定方針等を記載する(同No.39)

業務方法書に記載すべき信託財産の種類としては、金銭、有価証券、その他の権利、商品及び不動産といった分類ごとにその内容を記載する(同No.40)としています。

七 第二種金融商品取引業を行う場合には、次に掲げる事項
イ 取り扱う有価証券及び業として行うデリバティブ取引の種類(当該有価証券又はデリバティブ取引が電子記録移転有価証券表示権利等又は法第二十九条の二第一項第八号に規定するデリバティブ取引である場合にあっては、その旨を含む。)
ロ 法第二条第二項第一号又は第二号に掲げる権利を取り扱うときは、当該権利に係る信託財産の種類
ハ 法第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利を取り扱うときは、当該権利に係る出資対象事業の概要
ニ 法第二十九条の五第二項に規定する業務を行う場合には、その旨
ホ 前条第十一号に規定する業務を行う場合には、法第四十三条の二及び第四十三条の三の規定による管理の方法

金融商品取引業等に関する内閣府令

投資助言・代理業特有の記載事項

投資助言・代理業に関しては、業府令で以下のように記載事項が定まっています。業府令における記載の加重はさほど広くはありません。

このなかで重要なのは、第二種金融商品取引業と同じく、信託受益権を扱う場合には、その信託財産の内容を記載しなければならず、また、集団投資スキームを扱う場合には、その出資対象事業を記載しなければならないことです。

よく、外国ファンドの販売促進をするために投資助言・代理業登録をしたいという話を聞くことがありますが、この手の話は原初的不能です、発行者(≒ファンドの運営者)と有償無償の委託関係がある場合には、投資助言・代理業ではなく第二種金融商品取引業に該当します。

それを隠して投資助言・代理業で外国ファンドを販売しようとしても、その出資対象事業の詳細の記載を業務方法書に記載する必要があり、登録後にも、年次の事業報告書において、助言したファンドに関する詳細の記載が求められています。

さらに言えば、業務方法書の当初審査段階においても、助言対象となる有価証券(集団投資スキーム)が、金融商品取引法第2条第2項第5号の国内ファンドではなく、第6号の外国ファンドとなる時点で、財務局に詳細な説明が求められることになります。
八 投資助言・代理業を行う場合には、次に掲げる事項
イ 投資助言・代理業の種別(法第二条第八項第十一号及び第十三号に掲げる行為に係る業務の種別をいう。)
ロ 助言を行う有価証券及びデリバティブ取引に係る権利の種類
ハ 法第二条第二項第一号又は第二号に掲げる権利に関し助言を行うときは、当該権利に係る信託財産の種類
ニ 法第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利に関し助言を行うときは、当該権利に係る出資対象事業の概要

金融商品取引業等に関する内閣府令

投資運用業特有の記載事項

投資運用業の業務方法書の変更は、運用財産や運用方法の軽微変更程度であれば、実務上比較的ハードルが低い業務と意識されています。もっとも、大きく業務内容が変わる場合にはその限りではありません。

他方、金融商品取引法第2条の号数を跨ぐ変更届、すなわち、投資一任業務、ファンド運用業務、投信委託業務、投資法人資産運用業務の間を跨ぐ移動は相対的に綿密な審査が行われる傾向にあり、とりわけ後者2者に関しては、前者2者に比しても、十分な体制構築が求められています。

そのため、通常は号数を跨ぐ変更届には相応に厳格な受理審査があります。

また、投資運用業の中でも不動産関連特定投資運用業を行うことを希望する場合には、総合不動産投資顧問業登録を併せて行う必要があり、また、不動産関連特定投資運用業を行うに足りる人的構成及び社内規程の整備状況を問われることから、同じく受理審査は厳格なものとなります。

九 投資運用業を行う場合には、次に掲げる事項
イ 投資運用業の種別(法第二条第八項第十二号イに掲げる契約に係る同号に掲げる行為、同号ロに掲げる契約に係る同号に掲げる行為、同項第十四号に掲げる行為及び同項第十五号イからハまでに掲げる権利に係る同号に掲げる行為に係る業務の種別をいい、適格投資家向け投資運用業を行う場合には、その旨を含む。)
ロ 投資の対象とする有価証券及びデリバティブ取引に係る権利の種類(当該有価証券又はデリバティブ取引が電子記録移転有価証券表示権利等又は法第二十九条の二第一項第八号に規定するデリバティブ取引である場合にあっては、その旨を含む。)
ハ 法第二条第二項第一号又は第二号に掲げる権利を投資の対象とするときは、当該権利に係る信託財産の種類
ニ 法第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利を投資の対象とするときは、当該権利に係る出資対象事業の概要
ホ 有価証券又はデリバティブ取引に係る権利以外の資産を投資の対象とするときは、当該資産の種類

金融商品取引業等に関する内閣府令

電子募集取扱業務及び高速取引行為特有の記載事項

クラウドファンディングを行う上で重要なのは、電子募集取扱業務の変更登録です。インターネット上で、他社の発行する有価証券の私募の取扱い(9号業務)を行うにあたっては、上場有価証券や貸付型ファンド等の一定の例外を除き、原則として電子募集取扱業務の登録を受けなければなりません。

いわゆるクラウドファンディング、エクイティー・クラウドファンディング(第一種少額電子募集取扱業者)等の業者は、電子募集取扱業務の登録を受けています。

クラウドファンディングを行う事業者については、貸付型ファンド事業者と同様、登録審査実務上、発行体やファンド審査に関する社内規程を業務方法書の別紙と位置づけすることが求められることが多くなっています。行政指導により事実上、審査体制に関しても業務方法書記載事項と位置づけられる傾向があります。

なお、既存の当該登録を受けていない業者にとって、電子募集取扱業務は変更登録ですが、電子申込型電子募集取扱業務は電子募集取扱業務の登録を受けている業者にとっては変更届事項となります。

十 電子募集取扱業務(法第二十九条の二第一項第六号に規定する電子募集取扱業務をいい、法第三条各号に掲げる有価証券又は金融商品取引所に上場されていない有価証券(令第十五条の四の二各号に掲げるものを除く。)について行うものに限る。以下同じ。)を行う場合には、次に掲げる事項
イ 取り扱う有価証券の種類(当該有価証券が電子記録移転有価証券表示権利等である場合にあっては、その旨を含む。)
ロ 第一種金融商品取引業のうち第一種少額電子募集取扱業務のみを行う場合には、その旨(その業務に関して顧客から金銭の預託を受ける場合にあっては、その旨を含む。)
ハ 第二種金融商品取引業のうち第二種少額電子募集取扱業務のみを行う場合には、その旨
ニ 電子申込型電子募集取扱業務(第七十条の二第三項に規定する電子申込型電子募集取扱業務をいう。第百四十九条第一号ハ及び第百五十条第一号ハにおいて同じ。)を行う場合には、その旨
十一 金融商品取引業として高速取引行為を行う場合には、次に掲げる事項
イ 取引戦略ごとに、当該取引戦略の概要(次に掲げる事項を含む。)
(1) 取引戦略の類型
(2) 高速取引行為に係る金融商品取引所等(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第二十六条第一項に定める者をいう。以下同じ。)の名称又は商号
(3) 高速取引行為の対象とする有価証券又は市場デリバティブ取引の種類
ロ 高速取引行為に係る業務を管理する責任者(法第二条第四十一項の判断並びに高速取引行為に係るプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)の作成及び電子情報処理組織その他の設備の管理の責任者を含む。以下同じ。)の氏名及び役職名
ハ 高速取引行為に係る電子情報処理組織その他の設備の概要、設置場所及び保守の方法
ニ 高速取引行為に係る電子情報処理組織その他の設備の管理を十分に行うための措置の内容
十二 法第二十九条の二第一項第九号に規定するデリバティブ取引についての次に掲げる行為を業として行う場合には、次のイ又はロに掲げる行為の区分に応じ、当該イ又はロに定めるデリバティブ取引に係る暗号資産及び金融指標の名称
イ 法第二条第八項第一号から第五号までに掲げる行為 業として行うデリバティブ取引
ロ 法第二条第八項第十二号、第十四号又は第十五号に掲げる行為 投資の対象とするデリバティブ取引

金融商品取引業等に関する内閣府令

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