第二種金融商品取引業者のM&A(買収)について

金融商品取引業のM&Aの難しさ

このページの目次
買収の経済合理性兵力の逐次投入は愚策中の愚策買収の際も新規登録の際もやることは同じ買収リスクの把握買収に関する監督指針

ファンド及び信託受益権の取扱や募集又は私募等を行う第二種金融商品取引業に新たに参入するための方法として、既存の登録業者の株式取得等の方法により経営権を取得して参入する手法が存在します。

金融商品取引業は、法人又は個人に対して登録が付与されていることから、ライセンスだけを買うということはできません。そのため、ライセンス取得を目的とするM&Aの際は、通常、事業譲渡ではなく株式譲渡の形態がとられます。こちらでは、主に第二種金融商品取引業の買収、M&Aについて解説します。

なお、こちらでは主に第二種金融商品取引業について述べていますが、第一種金融商品取引業、投資運用業及び投資助言・代理業でも、基本的な考え方は同じです。

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M&Aは信頼できる方に支援を依頼するのが重要です。金融商品取引業者の買収売却を検討されている方は金融M&Aコンサルタンツにも相談してみるといいと思います。

買収の経済合理性

第二種金融商品取引業は、個人でも法人でも登録を受けることが可能です。そのうち、法人として登録を受けた場合には、株式の譲渡により経営権を第三者に譲渡することが可能です。第一種金融商品取引業者や投資運用業者と異なり、第二種金融商品取引業者には、主要株主規制はありませんが、株主がどのような資本かは、各種関連手続き(親法人子法人届出書、事業報告書等)を通じて、事実上、財務局の監視下に置かれており、事実上の報告義務があります。

第二種金融商品取引業を買収するにあたり、役員又は重要な使用人、商号、所在地、業務の内容又は方法等、従来と大きく社内態勢が変わる場合には、概要書の再提出を求められるほか、新たに行おうとする業務の種別に応じて、変更登録や業務方法書の変更届出手続(関東財務局HP)が必要になります。

こうした手続きは、新規登録に近い密度で行われることが通例ですので、多くの場合6か月以上の手続き期間を見込む必要があるほか、事務量的にも相当の量のドキュメンテーション(社内規程の整備やファンド内容・人的構成の説明等)が必要になります。

実際、令和4年4月には、M&Aによる金融商品取引業者の買収に関して、大きな業務内容や体制の変更が伴う場合には、新規登録と同等の審査を行うとする監督指針案が公表され、同6月22日に同監督指針が施行されています。

商号の変更 商号、名称又は氏名の変更届出及び定款の変更届出
人員の変更 役員又は重要な使用人の変更届出
新ファンドの販売 業務の内容又は方法の変更届出
親会社の変更 親法人子法人等の届出
休業及び再開 業務休止、又は再開の届出
本店移転 本店その他の営業所又は事務所の名称及び所在地の変更届出

参考:買収に伴いよく生じる手続きの例

第二種金融商品取引業に参入したいものの、登録に要する半年~1年の期間を待てないので、早期参入のために第二種金融商品取引業の買収をできないかと検討される方がいます。

しかしこれは、稼働している会社において人員を引き継ぐことができ、かつ、信託受益権関連業務や、既存業務と同一ファンドを継続して販売するケース以外では機能しにくいスキームです。たとえ買収しても多くの場合で、新規登録の場合と同様に、何らかの財務局の審査に服することになります。

協会審査によるブロック

上記に加えて、一般社団法人第二種金融商品取引業協会へ未加入の業者は、新規業務を開始する際に事前の加入を求められることが通例であり、その加入審査にも長い時間がかかります。

とりわけ、海外投資や非典型的スキーム等の、資本・事業内容に既存金融から見て怪しい印象を持たれる投資スキームに関しては、協会が事実上のブロッカーの役割を果たしており、審査を無期限に棚上げされることで、事実上第二種金融商品取引業の開業が阻止される例が多く生じています。

買収の時短効果

買収の時間短縮効果は限定的です。既存事業のそのままを買収するケースを除き、急ぎの場合は、事実上、適格機関投資家等特例業務以外の選択肢はないといえます。

買収しても、新規登録の場合と比してかえって長い時間がかかることもあります。また、最初に甘い認識のまま参入したことに起因して、結局十分な態勢を整備できずに手詰まりになってしまう事例も多いことから、当事務所では、一般論としては、第二種金融商品取引業取引業のM&Aはお勧めしておりません。

とはいえ、買収後も既に買収前から行っている事業とほぼ同一の事業を行うケースで、役職員をそのまま引き継ぎを行うことが可能である場合や、既存の金融商品取引業者がその業務の延長線上で関連する業態の金融商品取引業者を買収する場合など、個別の状況により買収による参入が合理的なケースも存在します。

また、投資助言・代理業者の買収の場合には、第二種金融商品取引業者ほど長時間の変更手続きを経ずとも、新たな業務を開始できる例もあります。とくに、業務内容に比較的変更が少なく、また、買収側も十分な人員を確保できる場合には、比較的スムーズに、短い期間で希望する業務を開始できることがあります。

もっとも、これは投資助言・代理業者の買収審査が緩いからではなく、新規登録の場合にも、投資助言・代理業者の審査期間は第二種金融商品取引業よりも短いことが多いので、新規並みの密度で審査をしたとしても、半年、1年と長期間の所要時間を要することは多くないことに起因することです

兵力の逐次投入は愚策中の愚策

第二種金融商品取引業の買収後に新たなファンド関連の事業を開始するには、人的構成の審査をクリアするため、新規採用を前提とする場合、人件費で最低年3千万円程度の予算確保は必要になります。第二種金融商品取引業、とりわけソーシャルレンディングやクラウドファンディングは、十分な予算の確保が必須です。内部にすでに銀行・証券出身のプロが揃っている場合を除き、予算がとれない場合には、第二種金融商品取引業への参入は考えないほうがいいと思います。

常勤かどうか怪しい実態のない人を集めたり、知り合いの伝手で業務とあまり関係ないキャリアしか持たない金融マンを、1、2名連れてきただけの会社などをよく見ますが、人的構成が脆弱なのは、必ず財務局に見抜かれることになります。そうなると、そこまでかけてきた時間とお金の無駄になります。

よくある悪い回答

人的構成を揃えるために、的外れの取り組みをする事業者が後を絶ちません。

例えば、非常勤の街弁をコンプライアンス担当者として役員に入れてみたり、内部管理責任者と称して地銀等の商業銀行のOBを連れてきてみたり、内部監査として公認会計士を選任したりの取り組みです。これは、制度への無理解を自ら証明する布陣です。

コンプライアンス担当者は、ごく特殊な例外を除き常勤以外は就任不可能です。

また、第二種金融商品取引業では、日本証券業協会規則に立脚する、証券会社のような内部管理責任-統括内部管理責任者という制度はなく、第二種業内部管理統括責任者等があるのみですし、これも通常は法令等遵守指導にあたる役員が兼任します。

そうしたなかで、第二種金融商品取引業者の部署として内部管理責任者、通称「内管」という言葉が出ること自体、第二種金融商品取引業と監督官庁を甘く見ていることを意味します。

また、内部監査担当者も、金融商品取引業者又は登録金融機関での職務経験があることが前提であって、公認会計士、税理士その他士業では代替できません(金融実務経験を有する弁護士等除く)。

人材採用には費用がかかる

採用活動に十分な予算を投じて、求められる人材の要件に適合した人材を人材紹介会社経由で採用すべきです。小金を惜しむことは、まさに昔日のガダルの如き兵力の逐次投入であり、投じた費用をすべて無駄にすることに繋がります。

また、M&A後の円滑な業務開始には、ファンドの中身も重要です。具体的にどんな商品を売りたいのか詳細具体的に決まっていない場合には、そもそも業務の内容又は方法の変更届出ができません。業務の内容又は方法の変更届出をするにあたり、予めファンド内容の詳細かつ具体的な説明が必要になるためです。また、ファンド内容がいわゆる胡散臭いものではなく、専門的なキャリアに裏付けられた、伝統的な金融マンの目線から見ても十分に受け入れられる内容であることも必要です。

断言してもいいですが、人も決まっていない、決まっていても名ばかり、誰も専門知識がなく、ファンド内容もはっきりしない、予算もかけられないという状態では、100%その買収は失敗します。

買収の際も新規登録の際もやることは同じ

かつては、役員や業務の内容又は方法を段階的に変更していくことで、スムーズに新体制に移行していくことが合理的とされていましたが、財務局の監督密度が依然と比べて高度化した現在では、そのような手法は時代遅れで通用しません。そうしたカビの生えた手法は、化石化しています。

第二種金融商品取引業の買収後に行うべきことは、小手先で誤魔化すことではなく、正面から十分な役職員の人的構成を揃えること、社内規程を完璧に整備して業務に向けたITシステムやマニュアル類を完備すること、取り扱おうとするファンドが適切なものであることを疎明するに足る十分な審査資料を揃えて説得的に財務局に提示することです。

突き詰めるところ、求められる作業は第二種金融商品取引業の新規登録のケースとほぼ同様であると言えます。

人員が引き継ぎでき、かつ、行おうとする業務が現在行っている業務に近しい場合は、現在の業務の信頼性や整備済み体制を援用できることから、買収後の審査もスムーズに進むことが期待できます。

体制がきちんとした第二種金融商品取引業を、同じく事業実態がきちんとした会社が、既存業務を活かす形で買収し、ともに協力して事業を拡大していくということが、第二種金融商品取引業におけるM&Aの最も幸福な形であるといえますし、逆にそうでないのであればあまり買収には意味がないともいえると思います。

買収リスクの把握

第二種金融商品取引業を買収しても、新規登録とあまり変わらない場合もあると説明しましたが、実際には新規登録よりも悪い結果になる場合もあります。それは、買収前に詐欺性のあるファンドを販売していたことにより、民事上の紛争を抱えているリスクがあったり、もしくは行政処分を受けた後の改善が進んでいない場合などです。

なお、行政処分を受けたこと自体が悪いのではありません。改善が完了する前に対応せずに投げ出してしまっている例が散見されますので、そうしたケースが問題です。

こうした事態を防ぐには、買収前のデューデリジェンスが重要になります。当事務所では、こうした買収前のデューデリジェンスへの対応や、買収後の諸手続きの支援等、総合的に第二種金融商品取引業への参入事務を支援しておりますので、是非ともお気軽にお声がけくださいませ。初回相談の段階では、相談料は頂いておりません。

買収に係る監督指針

金融庁は、令和4年6月22日より、監督指針で、いわゆるハコの状態の会社のM&Aを生む原因となってきた、長期間にわたって業務を休止する金融商品取引業者に対して、休止をする正当な理由がない限りは行政処分を積極的に発動することを明示しています。

休止状態で業務を行っておらず、かつ、所有者が転々としてきた第二種金融商品取引業者は、従来質の悪いM&Aの温床となってきました。こうしたケースでは、もとより、買収側も企業信頼性、知識経験が不十分なケースが多く、もとより買収してもうまくいかないことが多かった態様です。

また、監督指針では買収等による株主構成の重要な変更があった場合で、役員や重要な使用人の構成、事業内容、経営方針又は事業の決定方法等に重要な変更が生じ、又は生じるおそれがあると認められるときに該当する場合については、新規の登録審査と同様に態勢を検証することになっています。

これは、至極当たり前と言えば当たり前の話で、すなわち買収に伴い人員や経営体制に大きな変化が予定されている場合には、新規同様の審査を経ないと計画業務を実施できなくなるということです。

例えば、不動産関係事業者が、信託受益権関連の第二種金融商品取引業者を顧客や取引先のネットワーク価値を込みで買収するなど、実態があり現に動いている金融商品取引業者を買収して事業に参入するという本来のM&Aであれば、こうした監督指針があっても大きな影響は受けないはずです。

買収による参入で、ハコを買う、ライセンスを買うという考え方は時代遅れです。

買収側としても、金融商品取引業者の経営管理を十全にできる適切な責任態勢を確保したうえで、事業者の本来の事業価値に着目して事業を買うという発想に転換する必要があります。

適用される報酬額
スポット相談:タイムチャージ方式 数万円程度(担当者により異なる)/1時間(初回相談無料)
単発でのご依頼時・変更届出書(役員・本店等):3万円~(要見積)
買収時のデューデリジェンスの支援:金30万円~

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M&Aは信頼できる方に支援を依頼するのが重要です。金融商品取引業者の買収売却を検討されている方は金融M&Aコンサルタンツにも相談してみるといいと思います。

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