2022/08/19
令和4年8月18日付の報道によると、大阪府警は、勧誘の目的を隠匿するとともに、無登録でFX(外国為替証拠金取引)への投資助言をしたとして、特定のグループにつき、特定商取引法違反(目的隠匿勧誘等)容疑で、17人、金融商品取引法違反(無登録営業)容疑で8人を逮捕したと報じられています。
今回立件されたグループは、近畿、東海を中心に活動していたと報じられています。インターネット上での当事者の風評を見る限り、かなり広範に消費者被害を及ぼしていたようです。
本件は、2016年以降に約1万4000人から少なくとも約19億円を集めたという記事と、去年5月からの1年間で19億円を集めていた、という記事の二通りの報道がなされています。
後者だとすると、無登録営業の中でも相当大手の部類になります。登録を受けた投資助言・代理業者でも、年間20億円クラスの収入がある業者はあまりいないです。
スクールビジネスへの金融商品取引法の適用
一般に、投資の教育を行うとする投資スクールは、玉石混交が顕著です。
公的機関のバックアップの下で、役所の外郭団体同然の様態で行っているスクールもありますし、投資助言・代理業の登録を得ている業者が投資助言業務として行っている場合もあります。
また、投資助言・代理業者でなくとも、その他の登録された正規の金融業者が、最終的には自社サービスへ誘導することを目的として展開しているサービスもあります。
総じて、こうした公的枠組みや許認可登録に基づき手続きを踏んでいる業者のセミナーはマトモです。金融商品取引業者が主催している投資教育講座であっても、直接的な「投資セミナー」ではなく、教育、スクールの形態を取っている事業者は、一定の良心に基づき開催している傾向がみられます。
これに対して、純粋な無登録業者が行っているセミナーは、その内容に相当の差が見られます。
無登録投資スクールの適法性
無登録業態のうち、マトモな類型としては、長年の投資経験や、エコノミストとしての知見を踏まえて、一般的な金融知識、ファンダメンタルズ、テクニカル分析等の一般論を教える投資や金融のスクール、オンラインサロン等が存在します。
総じて中心となる講師が伝統的金融機関での職務経歴を十分にもっていたり、個人投資家としての地味ながら長年のキャリアを持っているスクールは、きちんとやっている傾向があります。
金融商品取引法との関係では、有価証券の価値等や投資判断に関する助言は行わない、すなわち現在相場への投資助言(いわゆる「リアルトレード」サービス)は行わないという線引きを遵守すれば、こうしたスクールビジネスに違法性はありません。
また、こうした業態から発展して投資助言・代理業に登録してライセンスを得たいという一定のニーズがあります。当事務所でも、こうした業態から、実際に投資助言・代理業の登録を支援した経験が多数あり、登録完了後に、広くビジネスを展開している事業者も存在します。
こうした業態では、新規に登録を受ける前に行っていた既存事業が投資助言・代理業の無登録営業に該当していなかったのか、新規登録の際に財務局に詳しく内容の説明を求められる場合があります。その場合も、無登録営業を行っていなかったことをきちんと説明できれば問題はありません。
当局の審査は基本的に実態主義なので、適切な知識経験を持っている事業者であって、かつ法令に一定の注意を払って事業を行ってきた者に対して、必要以上の色眼鏡をもって臨むことはありません。
問題がある類型
これに対して、問題がある類型は、まさに投資助言・代理業の無登録営業を構成してきた類型です。
一般論としての投資教育を超えて、現在相場の取引銘柄への言及(リアル・トレード)や、継続課金のシステム・トレードツールの提供、シグナル配信等、実際の取引の内容に関して踏み込む場合です。
こうした事業者の系統としては、競馬予想サイト系、ネット広告代理店系、不動産系、金融崩れ系、情報商材系など、色々なパターンがあります。ただし、第二種金融商品取引業と違って、MLMや商品先物崩れ系はあまり見ません。
総じて、簡単な副業、スマホで××、のような宣伝は、事業者側はかなりのリーガルリスクを負担しますし、消費者側ではこうした宣伝を9割5分割り引いて考える必要があります(なお、当事務所は消費者相談は受けません。)。
今回も特定商取引法に基づき、販売目的を隠匿する集客行為が立件の対象になっています。
別の畑の出来事
投資系の広告では、「不労所得」「投資セミナー」「自分年金」等と称して、新築ワンルームマンションの販売などを行う不動産業者の広告宣伝が出てくる場合があります。
こうした業態も、一定の消費者紛争は生じているのだと思いますが、金融商品取引業等に関係する規制関係者の目線では、興味関心の対象から外れます。
身も蓋もない話ですが、宅地建物取引業は国土交通省の管轄であって、金融規制には無関係だからです。こうした場合、財務局や金融庁等の金融当局に何を言っても間違い電話です。不動産事業者に対する苦情は、国土交通省や都道府県、消費者センター等に申し立てることになります。