行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

外国業者の登録要件等のQ&A公開

2023/03/17

令和5年3月15日、金融庁の特設サイトである国際金融センター特設ページがリニューアルされました。

同サイトのコンテンツに、よく寄せられる質問・お問い合わせが追加されましたが、そこでは今まで金融庁が明示していなかった登録の要件が開設されており、外国業者のみならず国内の登録業者及び登録検討者にとっても有益な情報となっています。

日本への配置人数・経験の定義

Q1の日本に配置すべき人数に関する質問では、金融庁は「日本に拠点を設置する場合は、一般的には、金融商品取引法に関する知識と、日本の登録金融商品取引業者での実務経験(ただし、適格機関投資家等特例業務などの届出業者での経験は含まない。)があり、かつ日本に居住する常勤の役員を最低1人は配置する必要があります」としています。

拠点設置が義務付けられている第二種金融商品取引業投資運用業及び第一種金融商品取引業は、必ず日本に拠点を設置する必要があります。在外の投資助言・代理業者が任意に国内に拠点設置をした場合も含め、今まで、国内拠点への常勤者の配置義務の有無は必ずしも明らかではありませんでした、今回のQ&Aで、そうした場合は日本に常勤の役員を1名以上置かなければならないことが明示されました。

また、金融商品取引業での実務経験に「適格機関投資家等特例業務などの届出業者での経験は含まない」ことも、従来から実務では常識ではありましたが、はっきりとした形で明示されました。さらに、実際の業者が存在しないため理論上の話ではありますが「届出業者」での実務経験の登録要件該当性が否定されたことで、海外投資家等特例業務及び移行期間特例業務の届出者での実務経験も、登録要件上の職務経験とはならないことが明らかになったことも注目に値します。

代表者の日本居住

Q2の代表者の居住の必要性では、「原則として、代表者は、日本に居住する必要があります。ただし、各事業者の人的構成、業務の内容及び方法等を踏まえ、代表者が的確に業務を遂行できると当局が判断した場合は、日本国外から業務を行うことが認められることもあります(その場合、当該代表者が業務を行う国外の住所も登録申請書に記載する必要があります。)。」としています。

代表者が原則として日本に居住している必要があるという要件も、内国法人では常識ではありましたが、外国法人の場合は必ずしもその限りではないと考えられていて、従来、明示されていなかった事項であると考えます。

金融庁はあわせて「海外在住の代表者が日本において業務を行う前提で登録申請書を提出する場合は、原則、申請書の提出までに当該代表者が来日している必要があります。」としています。

国際的で大規模な在外金融商品取引業者が外国法人の国内拠点として日本に拠点を設置する事例を想定すると、代表者に原則として日本に居住することを求めることには無理があると考えられます。

在外金融関係事業者の経営者で、税率の高い日本に好き好んで移民したがる者は少数派と考えられるためです。金融庁は但し書きで、代表者が日本に居住せずとも登録が認められる可能性は肯定していますが、原則として代表者が居住する必要があることが明示されたことは、実務上重いと思われます。

今後、そうした場合には、居住者を代表者として採用して現地法人(日本子会社)を設立する方式を採るケースがますます多くなりそうです。

コンプライアンス担当者の居住の必要性

Q3ではコンプライアンス担当者に関しても、原則として日本居住を求めています。金融庁は「原則として、コンプライアンス担当者は、日本に居住し、日本の金融商品取引法に通じている必要があります。ただし、各事業者の人的構成、業務の内容及び方法等を踏まえ、日本の法律事務所等のサポートを前提として、海外グループ会社のコンプライアンスオフィサーが適確に業務を遂行できると当局が判断した場合は、海外に居住しながら日本のコンプライアンス担当者としての登録が認められることもあります。」としました。

これは、従来の実務から離れた解釈ではないとはいえ、コンプライアンス担当者が原則として日本居住である必要があるということが明示的に示されたことは重要だと思います。

投資助言・代理業では、法律事務所等のサポートを前提とした、海外グループ会社のコンプライアンスオフィサーの就任のケースは実務上多く見られますが、第二種金融商品取引業や投資運用業等では現実的には難しいケースが多いと思います。

コンプライアンス業務の外部委託

Q4に関しては、コンプライアンス業務の委託に関する従来の解釈の変更となります。

コンプライアンス業務の委託に関して、金融庁は「適格投資家向け投資運用業者においては、当局や当該業者と外部委託業者との間の連絡体制などが構築できる場合等には、コンプライアンス担当者を自社(登録申請者)に置くことなく、コンプライアンス業務を外部委託することが認められることもあります。」

「それ以外の業種については、コンプライアンス担当者を自社(登録申請者)に置くことなく、コンプライアンス業務を外部委託することは認められませんので、各事業者の実態や行う業務の内容等に即して、自社(登録申請者)にコンプライアンス担当者を置き、適切なコンプライアンス体制を整備する必要があります。」としています。つまり、プロ向け運用業以外の金融商品取引業のコンプライアンス業務の外部委託は一切不可ということです。

これに対して、平成24年のコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(パブリックコメント)では、金融庁は「個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきものと考えられますが、当局や当該業者への連絡体制などが構築できる場合等には、必ずしも顧客が適格投資家である場合に限らず、コンプライアンス業務を外部委託することが認められる場合もあるものと考えられます」(同No39)「コンプライアンス業務を外部委託することの適否については、個別事例ごとに実態に即して判断されるべきものであり一律に規定することは適当でないと考えられますが、当局や当該業者への連絡体制などが構築できる場合等には、外部委託が認められる場合もあるものと考えられます。」(同No40)と、投資助言・代理業者のコンプライアンス業務の外部委託の余地を認めていました。

現在では、すでに実務上、コンプライアンス業務の完全な業務委託の形式で投資助言・代理業者の登録申請を通すのは事実上不可能となっており、当該パブリックコメントは死文化していました。今回の解釈変更は現在の制度運営を追認するものです。

今回のQ&Aで、文献上は可能でも実際には不可能であったコンプライアンス業務の外部委託が明示的に不可になったことで、登録要件が整理されて、すっきりしました。

シェアオフィスでの登録

Q5のシェアオフィスの使用の可否に関しても、明瞭な解釈が示されました。

金融庁は「シェアオフィスで金融商品取引業を行うこと自体は可能ですが、登録申請者の従業員以外の第三者がみだりに立ち入ることができない等、適切な情報管理が担保される部屋が別途必要となります。よって、シェアスペース(コワーキングスペース)のみを使用して、金融商品取引業を行うことは認められません。また、標識掲載義務等にも留意する必要があります。」としています。

これは、従来の行政指導及び登録申請実務と同じであり、違和感ない整理です。

このように従来不文律になっていた事項がQAの形で明文化されることは、外国金融業者にとっても本邦の規制の明確化に繋がります。国際金融センターを目指す我が国における金融ビジネスの活性化に資する取り組みだと思います。

お気軽にお問い合わせください

お電話無料相談窓口 03-6434-7184 受付時間 : 9:00 -17:00  営業曜日 : 月〜金(除祝日)
メール無料相談窓口メールでのご相談はこちらをクリック