行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

金融商品取引業の登録可能性

このページの目次
金融商品取引業の登録可能性M&Aによるライセンス取得登録できる方とできない方常勤金融経験者のいない会社は絶対に登録できない職業的専門性がマスト
登録種別による参入例-第一種金融商品取引業の参入投資運用業の参入第二種金融商品取引業の参入投資助言・代理業の参入参考:暗号資産交換業(STO・ICO業務含む)

金融商品取引業の登録可能性

金融商品取引業登録にあたっての可能性、費用、期間等を質問されることが多いので、以下に説明します。ここに記載した内容は、最近金融商品取引業登録に至った事例を参考にした、おおまかなイメージです。

よって出てくる条件は例示であり、絶対的なものではありません。正確で詳細な要件は、各登録種別における、当事務所内解説ページをご覧ください。

また、必要総費用は、必要な人員を新たに雇用し、最低限の業務システムを導入して、自主規制団体に加入し、当事務所報酬その他経費を支払う場合に、総額でどの程度費用がかかるかを、おおまかなイメージとして記載しております。

そのため、実際の費用はご状況により大きく上下します。実際のご依頼の際には、お話を伺って、経費を下げる余地がないか検証させていただき、全体的にできるだけ省コストで開業できるようには、助言させていただいております。

なお、登録の期間は、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資運用業では、基本的に1年程度はかかります。但し、特定投資家(金融機関等)限定で業務を行う場合には、半年くらいで登録できる余地もあります。他方、個人投資家を相手にする場合には期間短縮は非常に難しいとお考え下さい。

令和2~3年ごろには、投資運用業を中心に、一部業態の登録審査速度が早まり、投資運用業では半年以内の登録の余地が出た時期もありました。令和4年前半までは、一般投資家を相手方とする対面型第二種金融商品取引業者で、最速半年強の登録事例もありました。

しかし、投資助言・代理業を中心に、令和4年後半から令和5年にかけて、再び登録難度が大幅に高まりました。

従来、新規登録では投資助言・代理業では、標準的には登録まで6-8か月程度でしたが、業務内容により3、4か月程度で登録できている事例もありました。しかし、全体的な難度は令和5年に入り高まっており、長期化はもちろん、そもそも登録自体が難しい事例も増えています。

M&Aによるライセンス取得

金融商品取引業の株主の異動は基本的は報告事項であり、第二種金融商品取引業者は買収しても業務をすることができない可能性が高く(経験的に第二種金融商品取引業では8割以上無理)、また、投資助言・代理業では、業務をできるとしても、極めて厳格な事実上の再審査に服するため時短効果がないため、登録や業務開始までの期間をM&Aで短縮するのは容易ではありません。

他方、第一種金融商品取引業、投資運用業及び暗号資産交換業のM&Aは、業者数が少ないこともあり、事実上の政策的事項です。買収を認めるか等の詳細は、金融庁、財務局及び日本証券業協会をはじめとする自主規制団体等の政策的裁量に属する部分が多く、綿密な事前調整を要します。

登録できる方とできない方

はじめに、率直なところを申し上げれば、役職員及び会社の実質的支配者の経歴や来歴が、実務上もっとも重要な登録の可否の決定要素です。

MLM、何らかの消費者被害を与えた前歴を有する事業者、悪意の無登録営業をしたことのある事業者、外国所在でどんな企業なのかがはっきりしない事業者、表に出ている支配者以外に実質的な支配者がいることが透けて見える事業者、無登録海外FXやバイナリーオプションに関わっている事業者は、参入不可能類型です。なお、財務局は、極めて高い審査能力を持っているので、隠してもこれらは遅かれ早かれ必ず見破られます。

他方、一流金融機関で長年お勤めになった、俗にいう「ピカピカ」のキャリアの方は、登録審査上、そうでない方よりも明らかも優遇・好意的な姿勢を受けるというのが実情です。もちろん、優遇要素は、キャリアだけに留まりません。

生き方そのものも、審査に関わってきます。例え、超一流のキャリアでなくとも、私共の目から見て明らかに投資家のためを思っていて、真剣に仕事に取り組んでいる方で、さらに行おうとしているビジネスに関して確固たる専門知識をお持ちの方に関しては、やはり参入動機の記載や財務局の面談で姿勢が伝わります。そういった方は、当局から好意的に扱われているのをよく目にします。

確固たる専門知識、というのが重要で、たとえ主観的にきちんとビジネスをしているつもりであっても、いわゆるHYIP (High Yield Investment Program)やポンジスキーム等の案件は、金融商品取引業の登録上は当局に相手にされません。

線引きとして、投資内容的に異常に高利回りではないか、もしくは伝統的金融(ベテラン銀行マン、金融庁・財務局、消費者系弁護士等のプレーヤー)の目線からみて、胡散臭いものと判断されるものではないか、というのが判断基準です。正直なところ、通常あり得ない利回りを謳うような、くだらないビジネスは、そもそも登録自体が無理とお考え下さい。

他方、母体企業や関係役職員が、確固たる金融商品取引業に関する知識と技術を持っている場合の、FINTECHビジネスや、オンラインサロンビジネス等に関しては、当局は必ずしも後ろ向きではありません。そのため、非伝統的金融ビジネスがいけない、というわけではなく、あくまでも詐欺性・悪質性・素人性が疑われる事業内容が問題なのだということになります。

常勤金融経験者のいない会社は絶対に登録できない

なお、金融商品取引業者又は登録金融機関(銀行・信金・証券・FX業者・二種業者、運用業者等)並びにこれらの規制実務に係る関係者(財務省、金融庁、自主規制団体及び金融関係業務を取扱う法律事務所等)に勤めていた方が、常勤で1人もいない会社は、絶対に登録不可能です。

金融庁・財務局から見ると、金融商品取引業者又は登録金融機関等にいたことのある方が、常勤で在籍していない会社は「どれだけ知識があろうと認めない。登録業者として絶対に傘の下には入れない」という確固とした意志があるのだと思います。

法律事務所等にコンプライアンス業務を委託することで、経験者が1名もいなくとも登録ができないかという質問を頂くことがありますが、それも不可能です。また、元証券会社の人を名目的に非常勤で連れて来ることで登録できないかとも聞かれますが、常勤役員要件がありますのでこれも不可能です。

経験者とは、登録金融機関又は金融商品取引業者での勤務経験者です。金融商品取引法を専門とする弁護士や元金融庁財務局職員のような特殊な例外を除き、登録金融機関又は金融商品取引業者での勤務経験がない方は経験者にはカウントされません。個人投資家としてどれ程経験があろうと、どれだけ投資に関する知識があろうと、何らかの資格があろうと無意味です。

実際、金融商品取引業者の経験者である役職員として配置する際に、何らかの資格が必要かと聞かれることがありますが、基本的に資格は全く関係ありません。過去の職務経験ベースです。

もちろん、証券会社等でお勤めであれば、外務員資格や内部管理責任者資格は保有していると思いますが、これは結果論です。いまだかつて、コンプライアンス業務又は内部監査業務を担当する弁護士等の法曹資格以外の資格の有無で、役職員の適格性の有無が決まった例は見たことがありません。

とはいえ、証券アナリストなどの相応の難度がある資格は、職務経験があることを前提とはしますが、ある程度の掛け算方式での加点材料にはなると思います。なぜ掛け算方式かと申しますと、登録金融機関又は金融商品取引業者の職務経験がない方は、経験者としては0点カウントなので、法曹資格以外の難関資格があっても、掛け合わせの計算結果は、引き続き0点だからです。

職業的専門性がマスト

金融商品取引業者等での職務経験がない者のみで金融商品取引業登録をしようとすることは、予約の取れない寿司屋に客として通っている小金持ちが、修行せずに寿司屋を始めてミシュランに載ろうとすることと同等となります。

予約の取れない鮨の名店で、大将に対して同じことを言ってみろとすら思います。

規制当局や金融業界から見ると、個人投資家の投資ごっこは児戯に等しく、金融商品取引業者として登録できる可能性はありません。業務委託やら顧問やらで安い金で金融業界OBを連れてきても、登録審査上、非常勤はo点なので無意味です

投資家はコンシューマーであり、ライセンスを有する事業者はサプライヤーです。その違いは天と地ほど大きいです。本気で金融ビジネスをしたいならしっかりと経験者を雇用するか、まずは自分が金融機関に勤めましょう。

ただし、金融商品取引業等の経験がなくても、少数ながらビジネスとして成立するまともな事業者も存在していますので、詳細はこちらをご覧ください。

登録種別による参入例

第一種金融商品取引業の参入

参入例

(1)大企業を母体にして、ITやファイナンス事業の延長として証券・外国為替証拠金取引等に参入する場合
(2)日本と同レベルの金融監督がある国で証券事業や投資事業等を営んでいる、十分に認知された外国金融グループが日本に参入する場合
(3)今まで金融商品取引業者又は登録金融機関を経営してきた方や、金融商品取引業者又は登録金融機関に長年お勤めになった方が主体になって開業する場合

参入できないことが多い類型

(1)非金融事業の小規模事業会社が母体の場合
(2)日本で業務経験のある金融商品取引業者又は登録金融機関出身のプロフェッショナルがいない場合
(3)大企業以外で外国為替証拠金取引等への新規参入を希望する場合(リテールの外国為替証拠金取引の新規参入は不可能)

必要資本 諸経費を考慮すると最低1.5億円程度
当事務所標準報酬 490万円及び消費税。別途弁護士費用150万円~
必要総経費 登録開業までに人件費込み5000万円程度は見ておく必要あり
必要期間 10-18カ月程度

第一種金融商品取引業のうち、FX業務は新規参入は極めて難しいとされており、純粋な新規で参入に成功する会社は殆どありません。金融庁は、FX業界に関して現状の業者数と監督密度で満足しているとされており、かつてのように業者数を減らす方向での厳しい監督は行なっていません。

しかし金融庁はこの10年ほど、FXに類似した業態である外国のバイナリーオプション取引業者の新規登録で知る限り1例、機関投資家向けのFXで知る限り1例の合計2件しか、通貨関連の金先業務の新規登録を認めていません。リテール向けのFXの新規登録事例は知る限りゼロです。新規登録以外の外国FX業者の本邦参入事例は、M&Aによる既存FX業者の買収事例となります。

投資運用業の参入

参入例

(1)大企業を母体にして、例えば不動産事業では証券化、経営コンサルティングであればVCやPE、IT事業であればFINTECHやロボアド等の資産運用ビジネス等の関連する分野に参入する場合
(2)日本と同レベルの金融監督がある国でファンド等の事業を営む、十分に認知された外国金融グループが日本に参入する場合
(3)今まで金融商品取引業者又は登録金融機関を経営してきた方や、金融商品取引業者又は登録金融機関に長年お勤めになった方が主体になって開業する場合
(4)金融商品取引業者又は登録金融機関に長年お勤めになった方が複数いる既存の金融商品取引業者又は登録金融機関による投資運用業務への参入の場合

参入できないことが多い類型

(1)非金融事業の小規模事業会社が母体の場合
(2)日本で業務経験のある金融商品取引業者又は登録金融機関出身のプロフェッショナルがいない場合

必要資本 諸経費を考慮すると最低1.2億円程度
当事務所標準報酬 490万円及び消費税
必要総経費 登録開業までに人件費込み4000万円程度は見ておく必要あり
必要期間 6-12カ月程度

第二種金融商品取引業の参入

参入例

(1)確固たる実業を持った企業(例えば再エネや船舶・航空機の専門会社や、売上10億円超、一流VCからの出資等)が、その本業に密接関連する金融事業(例えば太陽光会社のエネルギーファンド事業、船舶証券化、有力コンサルティング会社のベンチャーキャピタル事業(併せて投資運用業も登録)、IT会社のクラウドファンディング事業等)を行うために参入する場合
(2)日本と同レベルの金融監督がある国で証券やヘッジファンド等の事業を営む、十分に認知された外国金融グループが日本に参入する場合
(3)今まで金融商品取引業者又は登録金融機関を経営してきた方や、金融商品取引業者又は登録金融機関に長年お勤めになった方が主体になって参入する場合
(4)既存の金融商品取引業者又は登録金融機関による第二種金融商品取引業務への参入の場合
(5)不動産信託受益権業務の場合には、登録金融機関又は金融商品取引業者の職務経験がある方を複数確保できている場合(不動産信託受益権業務は人さえ揃えることができればハードルは低め。)

参入できないことが多い類型

(1)非金融事業の中小事業会社が母体であり、かつ、なぜ第二種金融商品取引業をやりたいのか説得的な理由がない場合(「取引先の資金ニーズが多いので」、「コンサルティング先が多くある」といった素人性のある浅い理由の場合、深い職務経験を持つ役職員の裏打ちが必要。金融業界又はコンサルティング業界でプロフェッショナルキャリアがないと不可能。銀行、証券、会計事務所や戦コン経験者レベルのキャリア的な母体があれば可能性が出てくる。)
(2)日本で業務経験のある金融商品取引業者又は登録金融機関出身のプロフェッショナルがいない場合
(3)投資案件が伝統的金融の目線からみて、胡散臭いものと判断されるものの場合
(4)事業会社の事業資金調達の場合(そもそも事業資金調達のためにファンドを作るという行為は、お金がないから銀行を作る、というような発想。目的に対して手段が大きすぎて現実的ではないし、中小の事業会社が半身で金融商品取引業者を運営することは不可能に近く、金融出身のプロフェッショナルを複数揃える必要があるので現実味がない。)
(5)そもそも第二種金融商品取引業だけではできないビジネスをしようとしている場合(よく用いられる「事業投資」「企業投資」という言葉は法令上存在しないので、多くの場合には株式、社債、集団投資スキームへの投資となる。その場合投資運用業に該当。)

必要資本 ファンドの場合には諸経費を考慮すると最低3000万円程度はあるのが望ましい。不動産信託受益権であれば1000万円あれば可能。
当事務所標準報酬 ファンドの場合290万円及び消費税、不動産信託受益権の場合200万円及び消費税
必要総経費 ファンドの場合には登録開業までに人件費込み3000万円程度は見ておく必要あり。不動産信託受益権業務の場合には人件費+500万円みておけば間に合う可能性が高い。
必要期間 6-18カ月程度

投資助言・代理業の参入

参入例

(1)5年以上金融商品取引業者又は登録金融機関でキャリアを積んできた方が何人かで助言ビジネスを開業する場合
(2)数十年にわたって一線の金融マンとして活躍してきた方が新たに職務経験に基づく他人へのアドバイス的業務を展開する場合
(3)既存の金融商品取引業者、登録金融機関又は国内外の確固たる実業を持った企業による助言業務への参入の場合

参入できないことが多い類型

(1)金融商品取引業者又は登録金融機関で勤務経験がある方がいない場合
(2)海外無登録FX・バイナリーオプション取引に関連している場合
(3)無登録投資案件に関わっている場合
(4)既存業務で消費者からの悪評が蓄積してる場合

必要資本 諸経費を考慮すると最低700万円程度はあるのが望ましい
当事務所標準報酬 80万円及び消費税
必要経費 500万円の供託金以外には人件費+100~200万円程度
必要期間 6-8カ月程度

参考:暗号資産交換業(STO・ICO業務含む)

参入例

(1)大企業が母体になっている場合
(2)一流企業が出資しており必要に応じて数億円単位の事業資金を難なく確保できる場合

参入できないことが多い類型

(1)中小企業が単独で母体になっている場合
(2)国際的にトップクラスの海外暗号資産取引所以外の中小外国業者が単独で参入を希望する場合

必要資本 一定しないが必要に応じて億単位で投下できる体制は必要と思われる。
当事務所標準報酬 上限なしタイムチャージ方式
必要経費 一定しないが登録開業までに10億程度の投下資本は見ておく必要があると思われる。
必要期間 12カ月以上

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