行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

オフショア積立型保険、投資証券等の募集

2022/04/15

先日、投資助言・代理業を行う某社に対する行政処分が発表されましたが、その内容は「当社は、平成30年8月から令和2年12月までの間、外国投資証券であるAファンドについて取得勧誘(顧客12者)を行い、同ファンドの管理会社から当該取得勧誘に係る報酬を受領していたほか、別の外国投資証券であるBファンドについて取得勧誘(顧客14者)を行い、同ファンドの運用会社から当該取得勧誘に係る報酬を受領していた。このような当社の行為は、有価証券の募集又は私募の取扱いを行ったものと認められる。」というものです。

投資助言・代理業者が海外金融商品の取扱いを行って、変更登録を受けずに第一種金融商品取引業第二種金融商品取引業を行ったと当局から認定され行政処分されるケースは、かなり久々の感じがします。

平成20年代の前半から半ばにかけて、香港やマン島を拠点とする海外積立型(保険とも呼ばれる)金融商品を日本国内で、エージェント、IFA等と称する代理店が一般投資家に販売するというスキームが一世を風靡しました。

海外積立型商品にかかるIFAは、事実上、募集又は私募の取扱い業務(発行体に有償又は無償の委託を受けた取得勧誘)及び投資助言業務を行っており、IFAの言葉が一般に含意する金融商品仲介業務の範囲を超えて、第二種金融商品取引業及び投資助言・代理業の無登録営業を構成するのが一般的です。

しかし、その後の当局の取り締まり強化により、投資助言・代理業の登録を受けた業者を含む、オフショア大手某社系の代理店に連続的な行政処分が行われました。

こうした処分は業界に衝撃を与え、結果、海外だ、オフショアだ、保険だ、助言だと理屈を付けても、つまるところは、無登録営業であるということが周知され、今はそうした商品を販売している人を殆ど見なくなりました。

当事務所でも、いまだに年に1、2回くらい、まれにこうした商品を合法的に一般投資家に販売したいという相談を頂くことがありますが、不可能ですので検討するだけ時間と費用の無駄です。

こうした海外積立型金融商品に関しては、平成20年代から監督官庁や業界内で散々検討されつくしており、適法にする余地なしという結論がほぼ出ていると思います。

当時問題となった事業者の中には、真摯な業務改善と法令等遵守態勢強化で、現在では我が国を代表する優良な投資助言・代理業者となっている例も見受けられますが、いずれにせよ、現在ではこうした業務は行っていません。

当時、海外積立型金融商品は集団投資スキームと整理されましたので、第二種金融商品取引業と考えられていましたが、今回問題になっているのは外国投資証券なので外国投資法人がヴィークルのようです。そのため、第一種金融商品取引業該当性が論点になっています。

ただ、ネット情報を見ると同社は有名な積立型金融商品のIFAもしていたようですね。

総じて、こうしたケースでは、第一種金融商品取引業や第二種金融商品取引業の取得は現実的には無理だが、投資助言・代理業で投資家に推奨すれば適法という理屈で、今回の処分のように発行体側からフィーを収受しているにも関わらず、投資助言業務と整理しようとする向きがあります。

しかし、実際にはそうした業務の新規の登録申請は通らず、またM&Aで取得して無理やり業務をしたとしても、当局に発見され次第、今回のように行政処分されます。

理論上、こうした行為を適法にするには、商品の発行者に関して言えば、集団投資スキーム型の場合には投資運用業の登録、信託型の場合には投信法上の届出をするとともに、公募する際は有価証券届出等を行えばいいのではないかと考えられます。

また、その仲介者は、内容に応じて第一種金融商品取引業又は第二種金融商品取引業の登録をすることになります。なお仲介者が顧客からPOAをもらって、顧客のポートフォリオの組み換えをする場合は投資運用業(一任)も必要です。

しかし、そもそもがグレーなスキームに端を発した事業者にとって、これらの登録等はスキーム、人的構成や商品の内容面で現実性を欠いた絵に描いた餅であり、ほぼ実現性はありません。

ちなみに、政治的な折衝の結果、国内で投資運用業の登録をするに至った某社も、新規の居住者投資家の受け入れはしていないと聞いています。

上記のような結論は平成20年代後半にはほぼ業界的なコンセンサスとして出来上がったと考えていいと思われます。

なお、現在、財務局は、投資助言・代理業者に対して、年次の事業報告書の際に、助言した一部有価証券に関して、発行体からの経済的利益の収受の有無を報告することを求めていますので、隠れて行うことも難しくなっています。

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