行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

第二種金融商品取引業の発行体審査及びモニタリングの実務

法令と実務の隙間

第二種金融商品取引業者の行う募集又は私募の取扱業務(9号業務)に関しては、実務上の投資者保護の要請と、金融商品取引法の条文構造には、乖離があります。というのも、募集又は私募の取扱業務は、あくまで新たに発行される有価証券の取得勧誘を行う行為ですので、金融商品取引業者の行う金融商品取引行為として、業規制に基づく投資者に対する各種責任を負うのは、基本的に「当初の販売時」のみです。

例えば証券会社が、上場している事業会社の公募増資の取扱を行う際に、これに応募、購入した投資家に対し、株券の販売後も継続的に、事業会社の経営内容の適切性を監視、説明する義務を投資家に対して負うのか、という議論がありえます。

販売の当初段階で審査義務を負うのは当然であって、2020年には最高裁がIPOに関連して証券某社の賠償責任を認めています。

しかしながら、仮に証券会社が過去に取扱をした有価証券に関して、無限にモニタリング義務、説明義務を追うとすれば、例えばその事業会社に、取扱時には生じていなかったスキャンダルが事後的に生じた場合、過去の主幹事証券も連座して行政処分されることになりかねません。

このように、株式市場の例で考えると、金融商品取引法の条文構造は、理論上も実務上も当然の内容といえます。

運営行為への規律の欠缺

ところが、第二種金融商品取引業が取扱う有価証券のうち、とくに集団投資スキーム持分(ファンド)に関しては、株式等の一般的な上場有価証券と異なり、発行者は、有価証券報告書提出義務者ではない場合がほとんどです。また、金融商品取引所等の外部規律も働かず、過去には、杜撰なファンド運営で、投資者資金の大宗を不正に費消してしまう例が多数発生しました。

それでも、主として有価証券又はデリバティブ取引により運用するファンドは、投資運用業者(12号ロ又は15号業務)もしくは適格機関投資家等特例業務(63条業務)によるファンド運用が求められるため、金融商品取引法の規律が働くのですが、運営行為に業規制が存在しない事業型ファンドには、この傾向が強く見られます。

また、自己私募又は自己募集(7号業務)のケースにおいても、同じく金融商品取引法の規制対象になるのは、本来、当初の募集又は私募行為のみであり、その後の運営行為は事業型ファンドであれば金融商品取引行為を構成せず、また、投資者への説明や開示に関しても、法令上何も定まっていない状況にありました。

実際、投資運用業者として運用されているファンドであれば運用報告書の交付義務が定められています。しかし、事業ファンドとして運営されている場合、募集完了後に投資家に対して何らかの定期報告書を交付する必要は、税法上の確定申告のための必要性はさておき、金融商品取引法上はありませんでした。

募集行為(募集又は私募、募集又は私募の取扱い) 販売時のみ規制対象(金融商品取引業)
募集行為及び運用行為 販売時 + 運用行為も規制対象!

販売時の審査規律の欠缺

募集又は私募の取扱い、自己私募又は自己募集のいずれにおいても、当初の販売の際に、どういったファンドであれば販売することが可能で、どういったファンドは販売していけないのか、ということも具体的な基準としては定まってはいませんでした。

一般社団法人第二種金融商品取引業協会資料、事業型ファンドへの信頼性確保に向けた取組みを見ればわかる通り、金融商品取引法は、分別管理義務や金銭の流用が行われていることを知っている場合の取扱いの禁止を定めるほかは、問題のあるファンドに対して「出資対象事業に係る虚偽告知」「出資対象事業に係る虚偽表示」「信用リスクに係る重要事項誤解表示」でしか、処分をすることができていません。

どれだけ杜撰で不適切なファンドでも、運用行為そのものや、事後説明義務を果たさないこと自体を罪に問うことはできないため規制構造に限界がありました。

分別管理及び金銭流用時の取り扱い禁止

こうした状況を受けて、ファンドを販売する第二種金融商品取引業者にも、当初販売だけではなく、その事後的な運営の適切性の確保に関しても措置を講ずることが、実務上求められるようになりました。

金融商品取引法の条文上は、販売時に金融商品取引業者として責任を果たせば、第二種金融商品取引業者はその後のファンドの運営責任は負わないはずですが、投資者保護上の要請に基づき、まずは平成26年に、従来の分別管理が確保されていない場合の売買等の禁止に加えて、金融商品取引法第40条の3の2で金銭の流用が行われている場合の募集等の禁止義務を新設しました。

この規定は、審査義務やモニタリング義務そのものではないのですが、第二種金融商品取引業者のファンドの販売業務に関して事後的モニタリングの要請を強化する嚆矢になりました。

金融庁は、同改正で「金融商品取引法第40条の3は、同条は、ファンドの規約等に分別管理についての記載がなされることにより分別管理が確保されていることを求めているにとどまり、分別管理が行われていることまで求めていない。実際に、一部のファンド販売業者が販売勧誘したファンド持分については、分別管理が行われておらず、資金の流用も行われ、投資者に損害が生じる事案が発生した。」「上記の問題事案を踏まえ、投資者保護の観点から、金融商品取引業者等が、ファンド持分等に関し出資された金銭について、出資対象事業に充てられていないことを知りながら、当該ファンド持分等の自己募集・売出し、募集等の取扱いをすることを禁止する必要がある。」と改正の趣旨を明らかにしています。

(分別管理が確保されていない場合の売買等の禁止)
第四十条の三 金融商品取引業者等は、第二条第二項第五号若しくは第六号に掲げる権利又は同条第一項第二十一号に掲げる有価証券(政令で定めるものに限る。)若しくは同条第二項第七号に掲げる権利(政令で定めるものに限る。)については、当該権利又は有価証券に関し出資され、又は拠出された金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)が、当該金銭を充てて行われる事業を行う者の固有財産その他当該者の行う他の事業に係る財産と分別して管理することが当該権利又は有価証券に係る契約その他の法律行為において確保されているものとして内閣府令で定めるものでなければ、第二条第八項第一号、第二号又は第七号から第九号までに掲げる行為を行つてはならない。

(金銭の流用が行われている場合の募集等の禁止)
第四十条の三の二 金融商品取引業者等は、第二条第二項第五号若しくは第六号に掲げる権利又は同項第七号に掲げる権利(同項第五号又は第六号に掲げる権利と同様の経済的性質を有するものとして政令で定める権利に限る。)については、これらの権利に関し出資され、又は拠出された金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)が、当該金銭を充てて行われる事業に充てられていないことを知りながら、第二条第八項第七号から第九号までに掲げる行為をしてはならない。

立法及び自主規制規則の制定

平成27年には、電子募集取扱業務に関しては、金融商品取引法改正と一般社団法人第二種金融商品取引業協会の電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則の制定により、他のファンド種別に先駆けて、具体的な取扱い時の発行体の審査及び顧客への情報提供義務が盛り込まれました。

法令改正に伴い制定された同規則の適用対象は、電子申込型電子募集取扱業務(いわゆる投資型クラウドファンディング)のみであり、自己募集や対面でのファンド勧誘は含まないなど規制の適用範囲は限定的ですが、はじめて第二種金融商品取引業者に審査とモニタリングの具体的な基準を示した点で画期的でした。

なお、電子的な方法で募集を行う貸付型ファンド(ソーシャルレンディング・貸付型クラウドファンディング)の取扱いに関しては、金融商品取引法施行令第15条の4の2で「法第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項第五号又は第六号に掲げる権利のうち、当該権利を有する者が出資又は拠出をした金銭その他の財産の価額の合計額の百分の五十を超える額を充てて金銭の貸付けを行う事業に係るもの」として、電子募集取扱業務の規制対象から除外されています。

同規則の定める審査事項は、以下の通りです。

また、審査を行う際の、募集又は私募の取扱いに関する審査の独立性の確保も求められており、社内規則及びマニュアルの制定義務、営業部門から独立した審査担当者の設置や審査結果の記録義務等が定まっています。

電子申込型電子募集取扱業務の審査事項

① ファンドの場合
イ) 資金調達者としての適格性
・ 事業の適法性及び社会性
・ 事業者の経営理念
・ 経営者の法令遵守やリスク管理等に対する意識
・ 反社会的勢力への該当性及び反社会的勢力との関係の有無並びに反社会的勢力と
の関係排除への仕組み及びその運用状況
ロ) 財政状態及び経営成績
・ 財政状態及び資金繰りの状況
・ 財政状態及び経営成績の変動理由の分析
ハ) 事業の計画及びその見通し
・ 事業計画の策定根拠の妥当性
・ 事業を巡る経営環境
・ 利益計画とその進捗状況
ニ) 事業のリスクに関する検討
・ 事業のリスクについての分析と評価
ホ) 調達資金の額、その使途
・ 調達する資金の調達額及びその使途の妥当性(事業計画との整合性)
ヘ) 事業者と正会員又は電子募集会員との間の利害関係の状況
・ 出資関係、役員派遣、取引等の関係の状況
ト) 経理の状況(分別管理の状況を含む)
・ 経理処理の適正性
・ 帳簿、伝票などの管理状況、領収書などの原始書類の保存状況
・ 会計専門家(公認会計士、公認会計士試験に合格した者、税理士、監査法人、税理士法人等)からの指摘事項の有無、指摘事項があればその対応状況チ) 過去1年以内にみなし有価証券の発行により資金調達をしていた場合のその後の状況
・ 資金調達の額及びその使途の状況
・ 事業計画との整合性
リ) 適切な情報提供を行う体制
・ 情報提供への適応力
・ 事業のリスクに関する情報提供の妥当性
・ 内部統制の整備及び運用の状況(外部監査が行われる場合に限る)
ヌ) その他必要と認める事項
※別途信託の受益権の場合も定まっています。

「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」に関する細則より引用

投資者への報告に関しては、事業年度毎、最低限1年に1回以上の報告を行うこと、発行価額の総額が5億円以上又は顧客当たりの個別払込額が 500 万円以上のいずれかに該当する場合には、公認会計士又は監査法人の外部監査を受ける必要があること等が規定されており、具体的な報告事項は以下のように定まっています。

電子申込型電子募集取扱業務の報告事項

① 計算期間の出資対象事業の概況及び出資金(施行令第1条の3で定める金銭に類するもの及び金商法第2条の2の規定により金銭とみなされるものを含む。以下同じ。)の使途並びに売上の状況その他のキャッシュ・フローの状況
② 計算期間における分配金及び償還金に関する次の事項
イ)計算期間における分配金及び償還金の有無
ロ)計算期間における分配金及び償還金の金額
ハ)「計算期間における一口当たりの分配金及び償還金の金額
③ 出資対象事業に関する売上に関する帳簿及び入金に関する確認(公認会計士、公認会計士試験に合格した者又は税理士により行われるものに限る。)が行われる旨

2 正会員及び電子募集会員は、次項に掲げる事由に該当する場合には、業務委託等の契約及び出資対象事業の持分に係る契約において、事業者が出資を行った顧客に対し、以下の各号の情報について、出資対象事業の計算期間の終了毎(当該事業の計算期間が1年を超えるものにあっては少なくとも年に1回とする。)に適切に提供する旨が規定され
ていることを確認しなければならない。
① 前項各号に掲げる情報
② 計算期間の末日における出資金の額及び一口当たりの出資金の額
③ 事業者の貸借対照表及び損益計算書又はこれに代わる書類
④ 前号に規定する書類が公認会計士又は監査法人の監査を受けた場合は、当該監査に
係る監査報告書の写し
⑤ 第3号に規定する書類が公認会計士又は監査法人の監査を受けたものでない場合には、その旨
3 前項本文に規定する事由とは、次の各号のいずれかに掲げるものとする。
① 金商業等府令第 16 条の3第1項に規定する算定方法による一の事業者の募集又は私募に係るみなし有価証券の発行価額の総額が1億円以上となる場合。
② 金商業等府令第 16 条の3第2項に規定する算定方法による一の事業者の募集又は私募に係るみなし有価証券に対する1顧客当たりの個別払込額が 500 万円以上となる
場合。

電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則第36条

事業型ファンドに関する包括的な規則の制定

平成30年には、一般社団法人第二種金融商品取引業協会の自主規制規則である「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」にて、包括的かつ具体的なファンドの審査及び取扱い業務時のモニタリング義務が制定させるに至りました。

現在の第二種金融商品取引業の一般投資家向けファンドの発行実務は、この規則に準拠して行われており、第二種金融商品取引業に参入したい、又は、新たなファンドを設定したいというときは、常に同規則を念頭において検討を進める必要があります。

同規則では、ファンドの取扱等の際の当初の審査義務及び事後的なモニタリング義務を詳細に規定しています。また、本規則に基づいて貸付型ファンドに関するQ&Aが令和元年に制定されています。

そのため、貸付型ファンド(ソーシャルレンディング・貸付型クラウドファンディング)に関しては、前述のように、電子申込型電子募集取扱業務の規制対象ではなく、本規則及びQ&Aに基づいて、審査及びモニタリング事務を進める必要があります。

事業型ファンドの審査事項

1.事業者・運営者共通
(1) 事業の実在性
① 例えば、事業者及び運営者の登記事項証明書の確認、所在地の訪問、代表者等の本人確認、出資対象事業に必要となる契約の締結状況及び各種契約内容の確認、経営者等へのヒアリングなどに基づき、出資対象事業の実在性を確認する。
② 例えば、出資対象事業と同様の事業に係る過去の実績や事業者及び運営者における組織体制を証する資料の確認、経営者等へのヒアリング、次の(2)の財務状況などに基づき、事業者及び運営者の業務遂行能力を審査する。
○ 自己私募・募集では、「事業者=正会員」となる。
(2) 財務状況
例えば、事業者及び運営者の貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、金融機関等からの借入れ及び返済状況が確認できる資料などに基づき、事業者及び運営者の財務状況及び資金繰りの状況を確認する。
(3) 事業計画の妥当性
例えば、事業計画及び当該計画を裏付ける資料などに基づき、次の事項などに留意し、当該計画の妥当性を判断する。
① 事業計画が合理的根拠に基づいて作成されているか。
② 事業のリスクに関する検討が適切に行われているか。
③ 事業を巡る経営環境の前提(新規性、競合他社の存否等)は妥当なものか。
(4) 法令遵守状況・社会性
例えば、次の事項に係る資料、ヒアリングなどに基づき、事業者及び運営者の法令遵守状況及び社会性を確認する。
① 経営者等は法令遵守やリスク管理等に対して十分な意識を有しているか。
② 許認可等の手続を要する事業にあっては、必要な手続が満たされているか。
③ 金商業等府令第 125 条に定める分別管理を確保するための措置が実施されているか。
④ 反社会的勢力への該当性及び反社会的勢力との関係の有無並びに反社会的勢力との関係排除への仕組み(暴排条項の導入等)及びその運用状況に問題は認められないか。
(5) 資金使途・妥当性
上記(3)の事業計画及び(2)の財務状況の確認資料などに基づき、次の事項などに留意し、資金使途及び目標募集額の妥当性を判断する。
① 目標募集額は、事業計画及び事業者の財務状況に照らして、合理的な金額となっているか。
② 目標募集額及びその使途は、事業計画と整合しているか。
(6) その他正会員が必要と認める事項

2.事業者
(1) 過去1年以内に金商法第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利により資金調達していた場合のその後の状況例えば、過去1年以内に金商法第2条第2項第5号又は第6号に掲げる権利により資金調達した事業に係る資料(契約書、請求書、注文書、領収書、インボイス、登記簿謄本、送金依頼書、通帳の写し、月次試算表、補助元帳等)などに基づき、次の事項などに留意し、過去の資金調達が適切に運用されているかを確認する。
① 出資金が当初予定された使途に使用されているか。
② 運用財産の分別管理は適切に行われているか。
③ 事業が事業計画どおりに推移しているか。
○ 事業者の法令遵守状況(特に出資金の費消・流用がないこ
と)、業務遂行能力、事業計画の立案能力等を判断するため、
過去のファンドの運営状況を確認する必要があることから、
対象となるファンドは事業型ファンドに限定しない。
(2) 適切な情報提供を行う体制
① 出資契約において、事業者によるファンド報告書の作成及び顧客(対象
除外顧客を除く。)に対する交付が義務付けられていることを確認する。
② 例えば、組織図、業務分掌などに基づき、顧客及び正会員に定期的な情
報提供を行うための担当者・部署、業務内容・役割が定められているかを
確認する。
(3) その他正会員が必要と認める事項

事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則別表3

また、報告事項は以下のように定まっています。募集又は私募の取扱い業務の場合には、決算期毎の発行者からの報告を、会計監査が実施されている場合を除き、確認する義務が定められています。

確認内容は、報告書内容、分別管理の状況、事業者・運営者の財務状況、その他第二種金融商品取引業者が必要と認める事項とされています。

発行者がファンド報告書を交付しないとき、確認の結果、出資対象事業の状況等に不正又はその疑いが認められたとき、 その他第二種金融商品取引業者が出資対象事業の状況等に不正又はその疑いを知ったときは発行者に対し調査を行い、又は改善を求めるとともに、必要に応じて、顧客に通知しなければなりません。

また、自己私募又は自己募集の場合には、第二種金融商品取引業者は、各決算期に係るファンド報告書を作成し、顧客に対して、交付する義務を負います。 また、出資対象事業の状況等に不正又はその疑いを知ったときは、速やかに、調査を行い、又は改善を図るとともに、必要に応じて、顧客に通知する必要があります。

事業型ファンドの報告事項

1.決算期中の出資対象事業の概況(運用状況の経過及び出資金の使途を含む。)
2.当該決算期に係る分配金及び償還金(中途解約を含む。以下同じ。)に関する次の事項
① 当該決算期に係る分配金及び償還金の有無
② 当該決算期に係る分配金及び償還金の金額
③ 当該決算期に係る一口当たりの分配金及び償還金の金額
3.決算期間末時点における事業型ファンドの財務状況(貸借対照表、損益計算書に記載すべき内容をいう。本表及び別表4の2において同じ。)又は貸借対照表、損益計算書等に記載される財務情報(総資産、総負債、純資産、売上高、営業損益、経常損益、当期純損益額などの主な経営・財務指標など。)
4.事業者及び運営者の直近の決算期における次の財務状況又は財務情報(一の事業型ファンドの出資対象事業のみを行う事業者の財務状況又は財務情報を除く。)
(1) 正会員が私募の取扱い又は募集の取扱い、若しくは売付けにより取得させた事業型ファンド事業者及び運営者の財務状況又は貸借対照表、損益計算書、税務申告書等に記載
される財務情報(資本金、総資産、総負債、純資産、売上高、営業損益、経常損益、当期純損益額などの主な経営・財務指標など。次の(2)②及び別表4の2において
同じ。)
(2) 正会員が私募又は募集により取得させた事業型ファンド
① 当該正会員の貸借対照表、損益計算書
② 運営者の財務状況又は財務情報
5.出資金及び運用財産の分別管理の状況
決算期末日における分別金の額及び分別管理の方法(金商業等府令第125条第2号に掲げる方法をいう。)
6.事業型ファンドが第7条第2項で定める監査を受けている場合には、当該監査を行った者の氏名又は名称並びに当該監査の対象及び結果の概要
7.事業計画の大幅な修正、運営者の変更、事業者及び運営者の財務状況の著しい悪化等、出資対象事業に重大な影響を生じる事由が発生した場合はその旨及びその要因

事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則別表2

市場制度ワーキング・グループでの制度改正議論

貸付型ファンドに関しては、実際に大手数社で不祥事が発生したことを受けて、令和4年6月22日の金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」中間整理では、有価証券投資型ファンドと同様に、善管注意義務や忠実義務、投資家に対する追加的な情報提供を含めた運用行為に係る制度等(主要株主規制含む)を整備する方向性が打ち出されてました。

また、電子申込型電子募集取扱業務に対する規制は貸付型ファンドや自己募集業務には適用されていませんが、金融審議会はソーシャルレンディングを含む投資・運用行為を行っている事業者等に対して、同様の行為を行うファンドと同様のルールを適用させるべきだとしています。

具体的には、貸付型ファンド等の募集に関しても、電子募集取扱業務に準じた業務管理体制の整備義務を課すことや、実質的な貸付先に対する審査及び審査結果等の投資判断に必要な情報の投資家への提供を求めることが提唱されています。

これらの動きについては、令和5年3月14日付で公表された、令和5年の金融商品取引法等の改正を含む第211回国会における金融庁関連法律案にて具体的な法案が示されました。

主として有価証券又はデリバティブ取引を行うファンドの審査等

法令や自主規制規則は、電子申込型電子募集取扱業務や、事業型ファンドの私募の取扱等に関して審査及びモニタリング義務を定めています。また、第一種金融商品取引業の領域ではありますが、社債の私募等に関しても同様の審査等の義務が定まっています。

しかし、令和に入ってからは、主として有価証券又はデリバティブ取引を行うファンドに関しても、上記類型のファンドと同様に、事前審査及びモニタリング義務の履行が求められる傾向が強まっています。

かかるケースでは、独立した審査担当者の設置までは求められないことが多いとはいえ、審査及びモニタリングに関する社内規程の整備が必要となるケースが多くなっていますので留意が必要です。

審査義務及びモニタリング義務への実務対応

電子申込型電子募集取扱業務の場合も、事業型ファンドの場合も、実際の審査部門のワークフローとしては大きな違いはありません。

もちろん、電子申込型電子募集取扱業務の場合は、信託銀行との契約等の払込事務が複雑であり、顧客に対する情報開示範囲や、方法等の事務面でも細かな違いは多数ありますが、大枠としての審査部門、モニタリング部門の設置、機能、行うべき業務の内容は、基本的にはほぼ同じと把握したほうがわかりやすいと思います。

社内組織の構築

審査部門は営業部門から独立していることが求められています。

とくに、第二種金融商品取引業務として電子申込型電子募集取扱業務を行う場合には、般社団法人第二種金融商品取引業協会の「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」で、審査部門の設置が義務付けされています。

また、電子申込型電子募集取扱業務に限らず、事業ファンド全般で、審査部門は、実務上コンプライアンス部門等の他部門との兼務も不可とされています。そのため、審査部門は独立して知識経験のある担当者の配置が必要になります。モニタリング部門は、審査部門と兼務の例も多く、独立して設置することは求められないことが多いです。

また、貸付型ファンドを組成する場合に、貸付審査部門とファンド審査部門を1名の役職員で兼務できないかという質問を受けることがよくありますが、一般的には両部門は分離するように行政指導が行われておりできないと考えるべきです。

ただし、審査義務自体が、比較的最近に出てきた議論ですので、それ以前の時期に登録された業者では、コンプライアンス部門と審査部門が兼務となっていたり、審査部門自体が存在しない例は普通にあります。ただし、一般投資家を相手方とする場合、そうした体制では新規での登録は困難です。

規程・マニュアルの制定

登録を受けるうえでは、審査部門に関する社内規程及び審査マニュアルの制定が非常に重要になります。

社内規程は、協会規則に準じた形で大枠及び意思決定プロセスを定めるものですので、制定はそう難しくないとはいえ、審査マニュアル(若しくは規程の細則)で、具体的にどういったファンドなら審査可決し、どのようなファンドであれば否決するのかという基準を明文化していく作業は、簡単ではありません。

一般的な傾向として、出資対象事業に対する知識経験が深い事業者でないと、具体的な基準を用意できずに手詰まりになる傾向がみられます。

例えば、太陽光発電であれば、どのような設備仕様であれば可決か、どのようなEPC業者なら適切か、どのような保険を付保すればいいのか、といったことは、実際にその事業分野で長年の実績を積んできた事業者様にとっては、明文化することはさほど難しくありません。

他方、出資対象事業に対する深い知識がなく、単に漠然とクラウドファンディングをやりたい、といった薄いモチベーションでは、説得力のある審査マニュアルを当局に提示することは難しいといえます。とりわけ、第二種金融商品取引業の新規の登録審査の際には、第1号となる案件を具体的に明示し、エビデンスとともに審査規程及び審査マニュアルに基づいて審査した審査結果を、財務局に提出しなければなりません。

多数の経験に基づく支援の実施

当事務所は、豊富な登録支援の経験を生かし、こうした規則・マニュアルの制定も含めた第二種金融商品取引業関連手続き全般の助言を行っております。また、貸付型ファンド・電子申込型電子募集取扱業務のいずれにおいても、多数の支援実績がございますので、クラウドファンディング事業にご関心のある事業者様も是非お気軽にお問い合わせください。

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