行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

投資助言等業務のパブリックコメント

2023/08/06

令和4年12月23日付で実施された金融商品取引業等に関するパブリックコメントに関して、令和5年8月1日付で「金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等についてが発表されました。

今回の制度改正では、投資助言・代理業に関して、有価証券関連業を行う第一種金融商品取引業者、つまり証券会社がこれを行う場合には、一定の条件の下、判断分析者を重要な使用人として届出することを不要となりました。

一定の条件とは、照会に対して速やかに回答できる体制であり、例えば、当該分析者等又は助言の業務を行う者の氏名に係る記録が、投資助言業者において適切に作成・保存されることにより、顧客からの照会に対して、速やかに当該記録を確認し、回答できる態勢とされています。

また、併せて、金融商品取引業等に関する内閣府令で投資助言・代理業者の法定帳簿に位置付けられておりながら、従来はその記載要件が明確化されていなかった助言記録に関しても、その要件を監督指針に明示することとしています。

改正の大筋は、既報の通りですので、本項ではパブリックコメントにより判明した金融庁の考え方に関して取り上げます。

届出の免除

はじめに、パブリックコメントでは金商業等府令第6条第2項に基づき重要な使用人として届出が不要となる「外務員の職務を併せ行う」者の要件に関して、「外務員として登録されている者が、その金融商品取引業者等が行う投資助言業務に関し金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行うときは、現に外務員の職務を行っているか否かにかかわらず、金商業等府令第6条第2項又は第 44 条第1号ロの「併せ行うもの」にあたり、投資助言業務に関し「金融商品の価値等・・の分析に基づく投資判断を行う者」として申請・届出すべき使用人から除かれる」(No.1 No.2)として、外務員職務を行っているかではなく登録しているかを判断基準としました。

他方「外務員として登録されていない者や、金融商品仲介業者のためにその職務を行う外務員として登録されている者)が投資助言業務に関し金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う場合は、投資判断者として、引続き、登録申請書への氏名の記載等が必要」(No.3)とされました。

つまり証券会社の本体に所属する外務員であることが、本改正による証券会社の投資判断分析者の届出義務免除の要件となります。

変更届出義務

既存の証券会社は「今回の改正以前に提出された登録申請書において、投資助言業務に関し金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う者であって第一種金融商品取引業(有価証券関連業に該当するものに限る。)又は登録金融機関業務に係る外務員の職務を併せ行うものの氏名の記載がある場合、今回の改正後、変更届出等をご提出いただく必要」(No.5-No.7)があり、従来通り氏名を記載したままにすることは許容されないという扱いが示されました。

「具体的には、上記併せ行うものの氏名を登録申請書に記載しない旨の変更届出及び変更後の登録申請書並びに業務方法書に「その者の状況及びその業務の実施状況を管理するための体制」に係る記載を加える旨の変更届出及び変更があることを記載した書類が必要」(No.5-No.7)であるとされています。

本改正は令和5年8月15日施行ですので、該当する証券会社は、同日から14日以内に、役員又は重要な使用人の変更届出が必要になることに注意しましょう。

ただし「今回の改正は、投資助言業務又は投資運用業に関し、助言又は運用を行う部門を統括する者が「外務員の職務を併せ行う」場合に、登録の申請又は届出に係る使用人から当該統括する者を除外する趣旨ではない(No.13)ことに留意が必要です。

なお、FX取引や暗号資産関連デリバティブ取引を専業として金融先物取引を行う第一種金融商品取引業者は、有価証券関連業を行う証券会社ではありませんので、今回の改正に基づく届出の免除の対象にはなりません。

業務方法書の変更届出

届出手続きに関連し、届出義務の除外に該当する場合には業務方法書の変更届出にも注意する必要があります。証券会社等、有価証券関連業を行う第一種金融商品取引業者が投資助言業務を行い、その外務員として登録されている者が、その証券会社等が行う投資助言業務において金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う場合には、金商業等府令第8条第8号ホに規定する「管理するための体制」の業務方法書への記載が必要となります。

なお、それ以外の業態の「金融商品取引業者が投資助言業務を行う場合」は「「管理するための体制」の業務方法書への記載は必要」ない(No.15)とされていますので、該当する証券会社以外には業務方法書の変更届出義務は生じません。

顧客交付書面の記載要件改正

金商業等府令第96条第1項第3号及び金商業等府令第107条第1項第7号において、契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面について、投資運用業の投資一任業務での投資判断者についても、投資助言・代理業と同様に、契約締結前交付書面・契約締結時交付書面に、一定の要件の下、個人名を省略することが可能になりました。

しかしながら金融庁は、「投資運用業に関し、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う者については、外務員として登録されていても引続き、登録申請書への氏名の記載等が必要」(No.11)として、重要な使用人の届出除外は投資助言・代理業のみであることを改めてパブリックコメントで示しています。

なお、契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面に関しては、「既に成立している投資顧問契約・投資一任契約において、分析者等、助言の業務を行う者又は投資判断若しくは投資判断とともに投資を行う者が特定されている場合において、これらの者を特定しないこととすることは、基本的に、契約の相手方である顧客との間で既に成立している投資顧問契約・投資一任契約の一部変更となる」ため「契約の変更に伴い、既に成立している投資顧問契約・投資一任契約に係る契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面(以下「契約締結前交付書面等」という。)の記載事項に変更すべき事項があるところ、金商業等府令第80条第1項第4号ロに定める契約変更書面及び金商業等府令第110条第1項第6号ロに定める書面を当該顧客に交付した場合に限り、契約締結前交付書面等の交付が不要となる」(No.24,No.25)としており、以前からの通説の通り、氏名が契約事項を構成している場合には、変更時に契約変更書面が必要になることを明らかにするとともに、取扱いの変更時の具体的な事務手続きを解説しています。

また、同項目で金融庁は「今回の改正は、既に成立している投資顧問契約・投資一任契約において引続き分析者等、助言の業務を行う者又は投資判断若しくは投資判断とともに投資を行う者を特定しておくことや、新たに締結する投資顧問契約・投資一任契約においてこれらの者を特定することを妨げるものではありません」としており、証券会社が従来通り、判断分析者を契約に記載するオペレーションを継続することも許容する考えを明示しました。

助言記録の要件

投資顧問契約に基づく助言の内容を記載した書面(助言記録)に関しては、パブリックコメントの指摘を受けて、記載事項である「売買の別」が、「売買の別(有価証券の価値、有価証券関連オプションの対価の額又は有価証券指標の動向を含む。)」に訂正されたことも注目です(No.47)。

また、今回明示された音声の方式による助言記録の要件について金融庁は「所要の方式による記録媒体に音声を記録した日を起算日として、10 年間保存することが必要(No.36)としました。

投資顧問契約に基づく助言の内容を記載した書面(以下「助言記録」という。)の保存方法についても「個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきものでありますが、例え
ば、各種ファイル(メール、PDF)の保存や、ウェブサイト画面のキャプチャ保存、口頭で行った助言の内容の要約の保存などによる方法が考えられ」る(No37-No.39)としています。

さらに「特定の個人を「助言を行った者」とすることが難しい場合」や「助言を行った者の氏名を助言記録に入れることに現状の助言記録の作成に係るシステムが対応できないものがある」ところ、金融庁は「特定の個人ではなく一のチームとして助言を行っているなど、助言者を特定できない場合」で「部署の助言者として登録されている者が事後的に確認できるような場合には、助言を行った部署を記載することが実態に即して適当(No41)として、氏名を記載しないことを許容する柔軟な姿勢を示しました。

助言記録に関しては、以降も総じて柔軟な回答が続きます。

金融庁は「助言対象とするポートフォリオで、助言の記録を管理している」場合で「助言記録に顧客名の記載がなくとも、速やかに顧客名が確認できる状況にあれば、助言記録において、顧客名が明確にされていなくてもよいかとの問いに、「ポートフォリオから直ちに顧客名を認識できる状況となっているのであればご指摘の方法も可能」(No.42)回答しています。

また、従来保存対象が明確ではなかった、口頭で助言(分析に基づく投資判断の提供)を行った際に、補足資料として目論見書等の法定の説明書や社内で作成した個別有価証券に関する広告等を用いた場合に関しても助言記録に含まれない(No.43)との解釈を是認。

さらに、助言段階では、どのようなスキームとするのかが確定しておらず有価証券の種類が明確となっていないことが想定される」「ケースの助言記録への銘柄の記載については、顧客との間で、助言を行う対象となり得る有価証券を記載すればよい(No.48)との解釈を是認しています。

また金融庁は「特定の銘柄について言及せずに、有価証券の種類についてのみ助言する場合(例えば、特定銘柄について言及せずに、『日本株』や『外貨建て債券』の取得・売却について助言する場合)は、特定銘柄の記載に代えて、助言を行った有価証券の種類の記載をすればよいか」との質問を肯定しており(No.49)、さらに「助言に含めていない事項については助言の内容を記載した書面において記載を要しない」(No.50)としています。

パブリックコメントの中で「金商業者等監督指針Ⅶ-3-3に明示している事項は、顧客への助言において重要な要素と考えられる事項を列挙したものであり、該当する事項について助言を行った場合には記載する必要があります」(No55)と言及されている通り、あくまで項目に該当がある場合に、助言記録記載事項になるという扱いであり、助言の対象としていない事項に関して、項目事項の網羅的な助言又は記載が求められるわけではありません。

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