法定帳簿及び報告書関連の諸改正

2023/01/27

昨年末から今月にかけ、主に資産運用関連事業者向けに金融商品取引法等に基づく法定帳簿や報告書等に複数改正がありましたので、ここでまとめて取り上げます。

投資助言・代理業関連制度改正

投資助言・代理業の法定帳簿、報告書等に関しては、令和4年6月に公表された金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」中間整理を踏まえて、令和4年12月23日に公表された「金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等において、いくつかの動きがありました。

今回の改正で第一種金融商品取引業を行う投資助言・代理業者の判断分析者について、別途外務員登録を有する者に関しては重要な使用人の概念から除外されました。それにより登録申請書への氏名の記載義務及び変更届出の義務を免除することが打ち出されています。

また、投資顧問契約及び投資一任契約の契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面の記載ルールの変更案も公表されています。具体的には、顧客からの分析者等に関する照会に対して、速やかに回答できる体制が整備されている場合で、契約において分析者等を特定しないときは、分析者等の氏名を記載せずとも投資判断を行う部署の名称を記載すればよいとされました。

さらには併せて公表された監督指針案で、今まで記載事項がはっきりしていなかった「投資顧問契約に基づく助言の内容を記載した書面」に記載すべき事項に関して、はじめてその詳細が明示されました。

具体的には「助言日、助言を行った者、相手方である顧客、銘柄及び売買の別並びに、口頭で助言を行った場合にはその要約を記載するものとする。また、書面で助言を行った場合には当該書面の写しを保存する」とされています。また、今回の内閣府令等の改正において、書面での作成に代えて、その全部又は一部について音声の記録により保存することも認められましたが、監督指針はその留意事項も定めています。

帳簿書類の国外保存に関する監督指針の改正案

令和5年1月27日付で、金融庁は「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)を公表し、法令に作成及び保存義務が規定されている金融商品取引業者等の業務に関する帳簿書類について、当該帳簿書類を国外において保存することに係る留意事項を明確化しました。

金融商品取引業者及び暗号資産交換業者に対して、ほぼ同等の内容の監督指針案又は事務ガイドライン案が示されていますが、ここでは金融商品取引業者向けの監督指針を採り上げます。監督指針案では「Ⅲ.監督上の評価項目と諸手続(共通編)Ⅲ-3 諸手続(共通編)Ⅲ-3-3 業務に関する帳簿書類関係(1)基本的留意事項」に⑨を新設するとしています。その具体的な内容は以下の通りです。

⑨金商業等府令第 157 条第3項ただし書及び同第 181 条第4項ただし書の各後段は、同条第1項各号に掲げる帳簿書類が外国に設けた営業所又は事務所において作成されたか否かにかかわらず、それが電磁的記録をもって作成され、かつ、国内に設けた営業所若しくは事務所において当該電磁的記録に記録された事項を表示したものを遅滞なく閲覧することができる状態に置いているときは、当該帳簿書類を国外において保存することを認めるものである。ただし、金融商品取引業者において、顧客等に関する情報管理態勢(Ⅲ-2-4)やシステムリスク管理態勢(Ⅲ-2-8)等に十分留意されている必要があり、また、当該国外において不正アクセスに限らず第三者への情報流出やシステムの安定稼働への支障が生じるリスクについても適切に勘案されている必要がある。

金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(案)

本件が、先日発生したアメリカ系暗号資産交換業者の親会社の破綻に関連したものかどうか、背景事情はわかりません。

いずれにせよ外資系の金融商品取引業者や暗号資産交換業者は、バックオフィスのシステムを親会社に依存していることが一般的です。

外資系の業者で、国内においてエンジニアを多数配置して独自の業務系システムを維持管理している業者はごく少数だと思います。今回の監督指針の改正案はこうした外資系業者にとって留意すべき事項が明確に示されたという意味で有意義な内容です。

なお、こうした業務系システムで、法定帳簿だけでなく、顧客の犯罪収益移転防止法に基づく確認記録等の個人情報も併せて保存・管理しているのが一般的だと思います。個人情報保護法では、外国にある第三者への個人情報の提供に関しても一定の制限が設けられていることに注意が必要です。

業務系システムを管理する法人が、我が国と同等の水準にあると認められる個人情報保護制度を有している国(EU及び英国)にある場合、個人情報取扱事業者が講ずべきこととされている措置に相当する措置を継続的に講ずるために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に適合する体制を整備している場合等の一定の要件に該当しない限り、あらかじめ顧客から「外国にある第三者への個人データの提供を認める旨の本人の同意」を得る必要が出てきます。

金融安定理事会(FSB)関連の監督指針改正

上記の「帳簿書類の国外保存に関する監督指針の改正案」の公表日と同じ令和5年1月27日付にて、金融庁は「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)を公表しました。こちらの監督指針の改正は、金融安定理事会(FSB)及び証券監督者国際機構(IOSCO)による議論を踏まえた制度改正案です。

FSBは、世界金融危機(いわゆるリーマンショック)を契機として、従来から存在していた金融安定化フォーラム(FSF、Financial Stability Forum)を前身として平成21年4月に設立された、国際的な金融システムの安定を目的とする組織です。

改正監督指針案では、一定以上の資産を運用する投資運用業者及び適格機関投資家等特例業者に対し、運用するファンド等に係るレバレッジ等を含む概要に関する報告義務を定めています。

監督指針案では、その報告の閾値を「1ファンド又は1契約あたりの純資産額が 500 億円以上のファンド又は顧客資産を運用する者」と定めており、国際的な金融システムの安定性に対して、実質的に影響を与えうる大規模な資産運用業者のみがその対象となることを明らかにしています。

金融庁の1年(2021事務年度)によると、適格機関投資家等特例業務による集団投資スキームの運用金額は2021年度で38兆円7639億円です。金融商品取引業者と合計した、集団投資スキームによる運用財産額でみると、1000億円以上のファンドは66本、100億円以上1000億円未満のファンドは724本だそうです。

対象となる事業者及びファンドは業者総数に対して多くはないことが予想されます。

また、一般社団法人投資信託協会において、MMF等の強靭性向上に対応した関係規則が改正されたことに対応し、コンティンジェンシープランに関して監督上の着目点も明らかにしています。

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