2023/02/03
令和4年12月16日、金融庁は「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」の一部改正(案)の公表」で、ブロックチェーン上で発行されるNFT、ゲームアイテム等の各種トークンの暗号資産該当性に関する解釈の明確化や、暗号資産交換業者への監督上の対応、暗号資産交換業者のM&Aに等に関する監督上の対応を明示しました。
こうした明示方針は既に先行する報道により伝えられていたところです。
暗号資産の該当性の解釈の明確化は、政府方針である「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」や「経済財政運営と改革の基本方針2022」から下りてきた国策であり、いわゆるweb3.0の振興策と関連しています。
NFTやブロックチェーンゲームなどのデジタルアセット関連ビジネスの事業者にとって、今回の資金決済法上の暗号資産の解釈の明確化には大きな意義があります。
暗号資産該当性の新設項目
改正案で、金融庁は「本件は、暗号資産に該当しないと考えられると当庁がこれまでに解釈を示してきた事例等に関して、その解釈に変更を加えるものではありません」との立場を示すとともに、事務ガイドラインに以下の記載の追加案を示しています。
(注)以下のイ及びロを充足するなど、社会通念上、法定通貨や暗号資産を用いて購入又は売却を行うことができる、物品等にとどまると考えられるものについては、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」ものという要件は満たさない。ただし、イ及びロを充足する場合であっても、法定通貨や暗号資産を用いて購入又は売却を行うことができる物品等にとどまらず、現に小売業者の実店舗・ECサイトやアプリにおいて、物品等の購入の代価の弁済のために使用されているなど、不特定の者に対する代価の弁済として使用される実態がある場合には、同要件を満たす場合があることに留意する。
イ.発行者等において不特定の者に対して物品等の代価の弁済のために使用されない意図であることを明確にしていること(例えば、発行者又は取扱事業者の規約や商品説明等において決済手段としての使用の禁止を明示している、又はシステム上決済手段として使用されない仕様となっていること)
ロ.当該財産的価値の価格や数量、技術的特性・仕様等を総合考慮し、不特定の者に対して物品等の代価の弁済に使用し得る要素が限定的であること。例えば、以下のいずれかの性質を有すること
・最小取引単位当たりの価格が通常の決済手段として用いるものとしては高額であること
・ 発行数量を最小取引単位で除した数量(分割可能性を踏まえた発行数量)が限定的であること
なお、以上のイ及びロを充足しないことをもって直ちに暗号資産に該当するものではなく、個別具体的な判断の結果、暗号資産に該当しない場合もあり得ることに留意する。
代価の弁済機能の要件
この概略をまとめてみます。
事務ガイドライン案では、例えばブロックチェーンを使っているデジタルアセットであっても発行者が「不特定の者に対して物品等の代価の弁済のために使用されない意図であることを明確」にしたうえで、「高額」か、又は「発行数量が少ない」ものは、暗号資産で購入することのできるただのモノ(法定通貨や暗号資産を用いて購入又は売却を行うことができる、物品等にとどまる)と整理されます。
当該デジタルアセットは代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができないため暗号資産には該当せず、暗号資産交換業登録がなくても販売等が可能であるということになります。
つまり、デジタルアセットの販売等に関して、引き続きNFTやブロックチェーンゲームアイテムであるとして資金決済法の適用外状態を維持したければ、はじめに、販売等の際の規約や商品説明等において決済手段としての使用の禁止を明示することが必要になります。
かつ、当該デジタルアセット自体も相当に「高額」であるか、そうでない場合には「発行数量が少ない」発行である必要があります。
これを見る限り、さほど高額ではなく発行数が多いゲームアイテムに関しては、この除外要件に該当しない場合も出てきそうです。
また、上記の除外要件を満たしている場合でも「現に小売業者の実店舗・ECサイトやアプリにおいて、物品等の購入の代価の弁済のために使用されているなど、不特定の者に対する代価の弁済として使用される実態がある場合」には暗号資産に該当するとされています。
悪意の第三者が特定のNFTやゲームアイテムを意図的に購入の代価の弁済のために使用させるマーケットプレースを開設した場合、発行者が意図せずして暗号資産の発行になってしまうことが考えられそうです。もっとも、金融庁はイ及びロを充足しないことをもって直ちに暗号資産に該当するものではないとしていますので、そうした限界事例の詳細はパブリックコメントの結果を待ちましょう。