契約締結前交付書面について

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契約締結前交付書面の交付義務契約締結前交付書面の記載事項契約締結前交付書面の記載方法業態別の契約締結前交付書面記載事項自主規制規則による実質的な記載事項の追加交付義務を負う書面種別の特定電磁的方法での交付みなし有価証券募集時の契約締結前交付書面の届出

契約締結前交付書面の交付義務

金融商品取引法第37条の3は、金融商品取引業者に対し、契約を締結する前に顧客に対して契約締結前交付書面の交付をすることを義務付けています。書面交付義務は、投資家が特定投資家に該当する場合には免除されますが、一般投資家が契約の相手方である限り、契約締結前交付書面をはじめとする法定書面を必ず交付しなければいけません。

契約締結前交付書面は、取引の種類に応じて、取引の概要、リスク、手数料、税金など細かく記載事項が定まっています。また、適格機関投資家等特例業務届出者も、金融商品取引業者に準じてファンドの権利者に対して契約締結前交付書面の交付義務を負っています。

法令や自主規制団体の自主規制に基づき交付すべき書面は、契約締結前交付書面だけでなく、契約締結時交付書面をはじめとして複数あり、慣れていないとあれもこれも作成しなければいけない書面があるように感じられます。しかし、実際には契約締結前交付書面以外の書面の記載事項は限定的です。新たに金融商品取引業登録を受けるときや、登録済みの業者が新たな商品を販売する際の、いわゆる顧客向け「ドキュメンテーション」作業の中心は、契約締結前交付書面の作成となります。

契約締結前交付書面の記載事項は非常に詳細に定まっています。

契約締結前交付書面の記載事項

金融商品取引法第37条の3は、契約締結前の書面の交付について、「金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、顧客に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。ただし、投資者の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定める場合は、この限りでない。」としており、同条では具体的な記載事項を以下のように定めています。

当該金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名及び住所
金融商品取引業者等である旨及び当該金融商品取引業者等の登録番号
当該金融商品取引契約の概要
手数料、報酬その他の当該金融商品取引契約に関して顧客が支払うべき対価に関する事項であつて内閣府令で定めるもの
顧客が行う金融商品取引行為について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生ずることとなるおそれがあるときは、その旨
前号の損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金その他内閣府令で定めるものの額を上回るおそれがあるときは、その旨
前各号に掲げるもののほか、金融商品取引業の内容に関する事項であつて、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして内閣府令で定める事項

上記の通り、詳細は内閣府令に委任する形になっており、契約締結前交付書面の記載事項の詳細に関しては、金融商品取引業等に関する内閣府令に定めが置かれています。金融商品取引業等に関する内閣府令第79条-82条が通則になっており、同各条はあらゆる業態に適用されます。

契約締結前交付書面の記載方法

同79条では、契約締結前交付書面の記載の方法が定まっており、契約締結前交付書面は、JIS規格8ポイント以上の文字で記載しなければいけないこと、また、その中でも特に重要な事項は、12ポイント以上の文字で記載すること義務付けています。

契約締結前交付書面の最初には、以下の事項を記載することが求められています。

第八十二条第一号に掲げる事項
【つまり】当該契約締結前交付書面の内容を十分に読むべき旨
第九十二条の二第一項第三号に掲げる事項(その締結しようとする金融商品取引契約が、出資対象事業持分のうち当該出資対象事業持分に係る出資対象事業が主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資を行う事業以外の事業であるものの売買その他の取引に係るものである場合に限る。)
【つまり】事業型出資対象事業持分の売買その他の取引に係る契約の特性及び当該特性を理解した上で投資を行うべきである旨
法第三十七条の三第一項各号に掲げる事項のうち顧客の判断に影響を及ぼすこととなる特に重要なもの(※)

※顧客の判断に影響を及ぼすこととなる特に重要なものに関して、金融庁は「金商業等府令第79条第3項の規定は、顧客が当該金融商品取引の特徴を十分理解できるようにする観点から、「当該金融商品取引契約の概要」(金商法第37条の3第1項第3号)のうち特に重要な事項や元本損失・元本超過損が生ずるおそれがある旨等を簡潔かつ平易に記載することを想定するものです。」(平成19年パブリックコメントP295 No 121-130)と解説しています。

上記に続いて、枠線に囲んだうえで、12ポイント以上の文字で記載する必要がある事柄として、以下の項目があります。

法第三十七条の三第一項第四号に掲げる事項の概要並びに同項第五号及び第六号並びに第八十二条第三号から第六号までに掲げる事項
【つまり】
・手数料、報酬その他の当該金融商品取引契約に関して顧客が支払うべき対価に関する事項であつて内閣府令で定めるもの
・市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生ずることとなるおそれがあるときは、その旨
・前号の損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金その他内閣府令で定めるものの額を上回るおそれがあるときは、その旨
・顧客が行う金融商品取引行為について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として損失が生ずることとなるおそれがある場合にあっては、次に掲げる事項
イ 当該指標
ロ 当該指標に係る変動により損失が生ずるおそれがある理由
四 前号の損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金の額を上回ることとなるおそれ(以下この号において「元本超過損が生ずるおそれ」という。)がある場合にあっては、次に掲げる事項
イ 前号の指標のうち元本超過損が生ずるおそれを生じさせる直接の原因となるもの
ロ イに掲げるものに係る変動により元本超過損が生ずるおそれがある理由
五 顧客が行う金融商品取引行為について当該金融商品取引業者等その他の者の業務又は財産の状況の変化を直接の原因として損失が生ずることとなるおそれがある場合にあっては、次に掲げる事項
イ 当該者
ロ 当該者の業務又は財産の状況の変化により損失が生ずるおそれがある旨及びその理由
六 前号の損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金の額を上回ることとなるおそれ(以下この号において「元本超過損が生ずるおそれ」という。)がある場合にあっては、次に掲げる事項
イ 前号の者のうち元本超過損が生ずるおそれを生じさせる直接の原因となるもの
ロ イに掲げるものの業務又は財産の状況の変化により元本超過損が生ずるおそれがある旨及びその理由
【要するに】
手数料とリスク
金融商品取引契約が店頭デリバティブ取引契約(令第十六条の四第一項第一号イからハまでに掲げる取引(以下「店頭金融先物取引」という。)若しくは同号ニに掲げる取引に係る同号に掲げる契約又は同項第二号に掲げる契約(第百十六条第一項第三号イ及びロに掲げる取引に係るものを除く。)をいう。以下同じ。)であるときは、第九十四条第一項第一号及び第四号に掲げる事項
【つまり】
・当該金融商品取引業者等が顧客を相手方として行う店頭デリバティブ取引(第百十六条第一項第三号イ及びロに掲げる取引を除く。以下この項、第百十七条第一項第二十六号並びに第百二十三条第一項第二十号及び第二十一号において同じ。)により生じ得る損失の減少を目的として、当該金融商品取引業者等が行う市場デリバティブ取引若しくは外国市場デリバティブ取引又は他の金融商品取引業者等その他の者(以下この号及び次号並びに第百十七条第一項第二十八号の二ロにおいて「他の業者等」という。)を相手方として行う店頭デリバティブ取引その他の取引で、当該顧客が行った店頭デリバティブ取引と取引の対象とする金融商品若しくは金融指標及び売買の別その他これらに準ずる事項が同一のもの(以下「カバー取引」という。)を行う場合の当該カバー取引に係る取引所金融商品市場の商号若しくは名称若しくは外国金融商品市場を開設する者の商号若しくは名称を当該外国金融商品市場が開設されている国若しくは地域において使用されている言語により表示したもの及びそれを日本語により翻訳して表示したもの又は店頭デリバティブ取引その他の取引の相手方となる他の業者等(以下「カバー取引相手方」という。)の商号、名称若しくは氏名及び業務内容並びにこれらの者が外国法人である場合にあっては、監督を受けている外国の当局の名称
・法第四十三条の二第一項若しくは第二項又は第四十三条の三の規定に基づく財産の管理方法及び預託先
【要するに】
FX等の店頭デリバティブの場合はカバー先と分別管理
金融商品取引契約が電子申込型電子募集取扱業務等(第七十条の二第三項に規定する電子申込型電子募集取扱業務等をいう。以下同じ。)に係る取引に係るものであるときは、第八十三条第一項第六号ヘ及びトに掲げる事項
【つまり】
・電子申込型電子募集取扱業務等に係る顧客が当該有価証券の取得の申込みをした後、当該顧客が当該申込みの撤回又は当該申込みに係る発行者との間の契約の解除を行うために必要な事項
・当該有価証券の取得に関し、売買の機会に関する事項その他の顧客の注意を喚起すべき事項
【要するに】
クラウドファンディングの場合、クーリングオフと流動性等の注意喚起事項
四 第八十二条第九号に掲げる事項
【つまり】
・九 当該金融商品取引契約への法第三十七条の六の規定の適用の有無
【要するに】
クーリングオフの有無

枠線忘れ、過小フォント

実務上、枠線を忘れている事業者や、文字のポイントが小さい事業者をよく見かけます。また、web上に掲載する際に、テキスト+スクロールで表示する形式にして、枠線が表示できない状態で閲覧に供している事業者も見ます。これらはいずれも法令違反になります。

ちなみに、こうした法令違反のレイアウトは、システム業者主導で、システム仕様の都合に基づき採用されることが多い印象です。

システムの都合に合わせて法令を破ろうとする試みは、コンプライアンスに携わる実務者にとって、かなりフラストレーションの溜まることです。令和3年、日本証券業協会は、委託業者となるシステム関係事業者等が資格取得することを念頭に金融商品取引業基礎試験を導入しましたが、実務者として日本証券業協会の狙いはよくわかります。

冒頭部分の終わり

こうして条文引用を並べると読む気が失せると思いますが、要するに契約締結前交付書面の冒頭は「よく読んで」からスタートして、枠線の中に大きな文字で「リスク・手数料等・クーリングオフプラスアルファ」を並べて書く、というイメージです。

ちなみに、金融商品取引業等に関する内閣府令の並び順の都合で、この冒頭の大きな文字の枠線部が終わると、多くの場合、「租税の概要」から記載が始まります。

同第82条では、契約締結前交付書面の共通記載事項として以下が定まっています。こうして見て頂くと、なぜファンド等の多くの契約締結前交付書面の、枠線の後の記載事項が「租税の概要」で始まるかわかると思います。

なお、既に上記の記載事項で登場済みの項目を重複して記載する必要はありません。

当該契約締結前交付書面の内容を十分に読むべき旨(登場済み)
令第十六条第一項第二号に掲げる事項
【つまり】
・金融商品取引契約に関して顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金その他内閣府令で定めるものがある場合にあつては、その額又は計算方法
顧客が行う金融商品取引行為について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として損失が生ずることとなるおそれがある場合にあっては、次に掲げる事項(登場済み)
イ 当該指標
ロ 当該指標に係る変動により損失が生ずるおそれがある理由
前号の損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金の額を上回ることとなるおそれ(以下この号において「元本超過損が生ずるおそれ」という。)がある場合にあっては、次に掲げる事項(登場済み)
イ 前号の指標のうち元本超過損が生ずるおそれを生じさせる直接の原因となるもの
ロ イに掲げるものに係る変動により元本超過損が生ずるおそれがある理由
顧客が行う金融商品取引行為について当該金融商品取引業者等その他の者の業務又は財産の状況の変化を直接の原因として損失が生ずることとなるおそれがある場合にあっては、次に掲げる事項(登場済み)
イ 当該者
ロ 当該者の業務又は財産の状況の変化により損失が生ずるおそれがある旨及びその理由
前号の損失の額が顧客が預託すべき委託証拠金その他の保証金の額を上回ることとなるおそれ(以下この号において「元本超過損が生ずるおそれ」という。)がある場合にあっては、次に掲げる事項(登場済み)
イ 前号の者のうち元本超過損が生ずるおそれを生じさせる直接の原因となるもの
ロ イに掲げるものの業務又は財産の状況の変化により元本超過損が生ずるおそれがある旨及びその理由
当該金融商品取引契約に関する租税の概要
当該金融商品取引契約の終了の事由がある場合にあっては、その内容
当該金融商品取引契約への法第三十七条の六の規定の適用の有無(登場済み)
当該金融商品取引契約が法第三十七条の六の規定が適用されるものである場合にあっては、同条第一項から第四項までの規定に関する事項
当該金融商品取引業者等の概要
当該金融商品取引業者等が行う金融商品取引業(登録金融機関にあっては、登録金融機関業務)の内容及び方法(当該金融商品取引契約に関するものに限る。)の概要
顧客が当該金融商品取引業者等に連絡する方法
当該金融商品取引業者等が加入している金融商品取引業協会(当該金融商品取引契約に係る業務を行う者を主要な協会員又は会員とするものに限る。)の有無及び加入している場合にあっては、その名称並びに対象事業者となっている認定投資者保護団体(当該金融商品取引契約が当該認定投資者保護団体の認定業務(法第七十九条の十第一項に規定する認定業務をいう。)の対象となるものである場合における当該認定投資者保護団体に限る。)の有無及び対象事業者となっている場合にあっては、その名称
次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める事項
イ 指定紛争解決機関(当該金融商品取引契約に係る業務をその紛争解決等業務の種別とするものに限る。以下この号において同じ。)が存在する場合 当該金融商品取引業者等が法第三十七条の七第一項第一号イ、第二号イ、第三号イ、第四号イ又は第五号イに定める業務に係る手続実施基本契約を締結する措置を講ずる当該手続実施基本契約の相手方である指定紛争解決機関の商号又は名称
ロ 指定紛争解決機関が存在しない場合 当該金融商品取引業者等の法第三十七条の七第一項第一号ロ、第二号ロ、第三号ロ、第四号ロ又は第五号ロに定める業務に関する苦情処理措置及び紛争解決措置の内容

業態別の契約締結前交付書面記載事項

各業態別の契約締結前交付書面の記載事項をここで記載するとあまりに冗長になりますので、別の記事に譲るとして、こちらのページでは業態別の契約締結前交付書面の記載事項の参照条文と注意事項のみを記載します。

有価証券の売買等の共通記載事項

金融商品取引業等に関する内閣府令第83条では、有価証券の売買その他の取引に係る契約締結前交付書面の共通記載事項が定まっています。

デリバティブ取引を提供する事業者以外の、一般的な第一種金融商品取引業者や第二種金融商品取引業にとっては、この条文はほぼ共通記載事項に近いと思います。また、電子募集取扱業務を行う際の追加的な契約締結前交付書面の記載事項もこの条文に記載されています。

信託受益権等

信託受益権等(受益証券発行信託の受益証券及びみなし有価証券の信託受益権)の売買業務は、同84条に定義があります。

さらに、不動産信託受益権の場合には同85条に不動産信託受益権の売買その他の取引に係る契約締結前交付書面の記載事項の特則が定まっています。同条は、例えば「十 当該不動産信託受益権に係る信託財産である建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容」と記載事項があるなど、その内容は、「金融商品」というよりは、ほぼ宅地建物取引業であって、いわゆる「重説」を彷彿とさせます。

抵当証券

同86条は、現代ではあまり見なくなった抵当証券に関する特則が定められています。

ファンド関係

同87条は出資対象事業持分の売買その他の取引に係る記載事項の特則が定まっています。この出資対象事業持分とは、要するにファンドのことです。

同88条には、外国出資対象事業持分の記載事項が定まっており、ケイマンのpartnership等の外国のヴィークルを使って集団投資スキームを組成する場合には、こちらの条文も参照する必要があります。また、同89条は信託受益権等に投資をする集団投資スキームの記載事項、同90条は主として信託受益権等に対する投資を行う事業を出資対象事業とする出資対象事業持分の記載事項が定められています。これらは匿名組合等を利用するものの、実質的には信託受益権等を取得しているのと経済的にはあまり変わらないスキームである場合には、信託受益権等の現物を買ったのと同じような開示・説明を義務付けるものです。

同91条には、商品ファンド関連取引、すなわち商品投資顧問業を利用したコモディティーファンドの記載事項、同92条は競走用馬投資関連業務、いわゆる競走馬ファンドの場合の記載事項が定まっています。これらのファンドは、かつて商品投資規制法で規制されていましたが、金融商品取引法の施行時に金融商品取引法に移管されて実質的に引き継いだ規定です。

同92条の2は、集団投資スキーム型のファンドのうち、いわゆる事業型ファンドの特則です。これは、事業型ファンドの不祥事頻発を受けて後から追加された条文です。

デリバティブ取引

同93条はデリバティブ取引の共通記載事項、同94条はFX等の店頭デリバティブの特則です。デリバティブ取引の説明義務に関しては、後述の通り自主規制団体規則で手当てされている部分が多く、金融商品取引業等に関する内閣府令での必要的記載事項は限定的です。

投資顧問業

同95条には、投資顧問契約等の記載事項、同96条には投資一任契約等の記載事項が定まっています。これらは主に旧投資顧問業法から引き継いだ規定です。なお、投資助言業務に関しては、一般社団法人日本投資顧問業協会が契約締結前交付書面、契約締結時交付書面及び投資顧問契約書のサンプルを公開していますので、実務上はサンプルに沿って書面を作成することになります。

自主規制規則による実質的な記載事項の追加

日本証券業協会や一般社団法人金融先物取引業協会等の自主規制団体は、会員に、投資家に対する追加的な情報提供義務を定めている場合があります。例えば、FX業務であれば、一般社団法人金融先物取引業協会の金融先物取引業務取扱規則第8条で「会員は、顧客との金融先物取引等の開始に当たっては、あらかじめ、当該顧客に対し、法第37条の3に規定する契約締結前の書面として本協会、執行取引所又は会員が作成する説明書(以下「取引説明書」という。)を交付し、当該取引の概要、取引に伴う危険に関する事項及び第9条第1項、第3項又は第4項の約諾書等の内容について十分説明するとともに、顧客の判断と責任において当該取引を行う旨の確認を得るため、当該顧客から確認書を徴求するものとする。」と定めており、契約締結前交付書面の記載事項を協会規則により追加しています。

情報提供義務

直接的に契約締結前交付書面へ記載事項を追加しない場合でも、例えば、一般社団法人第二種金融商品取引業協会は「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」第6条で「正会員は、事業型ファンドの私募の取扱い等に当たっては、顧客(対象除外顧客を除く。以下本条において同じ。)に対して、別表4に定める情報その他の重要な情報を提供し、顧客に分かりやすく説明を行わなければならない。」としています。そのため、契約締結前交付書面とあえて分冊して説明書を作るという事務処理をしない限り、契約締結前交付書面の記載事項に、同規則が求める情報提供に関する記載を追加するのが一般的です。

このように、契約締結前交付書面の作成に当たっては、法令だけでなく、自主規制規則に配慮する必要があります。

交付義務を負う書面種別の特定

以上で見てきたように、契約締結前交付書面の交付義務は、「金融商品取引行為」別に定まっているため、特定の取引において自社が交付すべき書面はどれになるのか、金融商品取引法に照らし合わせて検討しなければいけません。「自社がどの取引を提供しているかわからない」なんて、そんなバカな話があるかと感じられる方もいると思いますが、意外と複雑です。

例えば、投資運用業及び第二種金融商品取引業の登録を受けた業者が、GKTKスキーム、すなわち、SPCである合同会社と投資一任契約及び私募の取扱い契約を締結して、匿名組合持分を投資家に販売する業務を行うと仮定しましょう。この場合、金融商品取引業者の行う業務は、私募の取扱い業務(9号)と投資一任業務(12号)です。

では、投資家に対して、私募の取扱い業務と投資一任業務に関して記載した契約締結前交付書面を交付すればいいのかというと、そうではありません。

投資一任業務の書面交付

投資一任業務の相手方はSPCである合同会社になりますので、投資家に対する投資一任業務の契約締結前交付書面の交付は不要となります。

他方、SPCに対しては、投資一任業務に関する契約締結前交付書面の交付義務があるのですが、SPCの場合、実質的には投資運用業者と同一当事者であり書面交付する実益は薄いので、実務上、SPCを特定投資家に移行させることにより、契約締結前交付書面等の書面交付を省略することになります。

私募の取扱業務

私募の取扱業務に関してはどうでしょうか。私募の取扱は、第二種金融商品取引業者にとって、SPCと投資家双方が顧客ということになります。しかし、発行者に対する書面交付義務は免除(金融商品取引業等に関する内閣府令第80条第1項第8号リ)されていますので、投資家に対してのみ、私募の取扱業務の契約締結前交付書面の交付をすればいいということになります。

では、記載事項の適用条文はどうなるでしょうか。上記のスキームの場合、共通記載事項の他には、金融商品取引業等に関する内閣府令83条及び87条は確実に適用されることになります。

それ以外にどの条文が適用されるかは、出資対象事業次第になります。例えば不動産証券化で信託受益権を取得するファンドであれば同89条及び90条となる一方、例えば不動産担保融資の貸付型ファンドの場合には、同92条の2となります(GKTKで融資型は貸金業の問題で多くはないですが、貸金業法のグループ貸付の登録義務の除外を利用してたまに見かけるスキームです)。

また、前述のように協会規則に配慮する必要があります。例えば、貸付型ファンドスキームの場合には、一般社団法人第二種金融商品取引業協会の事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則の別表4の情報提供義務及び同貸付型ファンドに関するQ&AにおけるQ13「勧誘時に提供・説明すべき情報」の記載事項に関してもクリアする必要があります。

電磁的方法での交付

金融商品取引法第37条3第2項及び同項が準用する第34条の2第4項及び金融商品取引業等に関する内閣府令第56条第1項で、契約締結前交付書面を、顧客の承諾を得たうえで一定の電磁的方法で交付できる旨が定められています。顧客の承諾は、「契約締結前交付書面」「契約締結時交付書面」のように、特定して事前に承諾を得る必要があり、法定書面全般といった抽象的な同意では認められません。

一 電子情報処理組織を使用する方法のうち次に掲げるもの
イ 金融商品取引業者等(法第三十四条の二第四項に規定する事項の提供を行う金融商品取引業者等との契約によりファイルを自己の管理する電子計算機に備え置き、これを当該事項を提供する相手方(以下この条において「顧客」という。)又は当該金融商品取引業者等の用に供する者を含む。以下この条において同じ。)の使用に係る電子計算機と顧客等(顧客及び顧客との契約により顧客ファイル(専ら顧客の用に供せられるファイルをいう。以下この条において同じ。)を自己の管理する電子計算機に備え置く者をいう。以下この条において同じ。)の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて書面に記載すべき事項(以下この条において「記載事項」という。)を送信し、顧客等の使用に係る電子計算機に備えられた顧客ファイルに記録する方法(同項に規定する方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、同項に規定する事項の提供を行う金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
ロ 金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された記載事項を電気通信回線を通じて顧客の閲覧に供し、顧客等の使用に係る電子計算機に備えられた当該顧客の顧客ファイルに当該記載事項を記録する方法(法第三十四条の二第四項に規定する方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
ハ 金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられた顧客ファイルに記録された記載事項を電気通信回線を通じて顧客の閲覧に供する方法
ニ 閲覧ファイル(金融商品取引業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルであって、同時に複数の顧客の閲覧に供するため記載事項を記録させるファイルをいう。以下この条において同じ。)に記録された記載事項を電気通信回線を通じて顧客の閲覧に供する方法
二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに記載事項を記録したものを交付する方法

また、電磁的方法での交付の際には、金融商品取引業等に関する内閣府令第56条第2項で以下のように適合すべき基準が定められています。

顧客が顧客ファイル又は閲覧ファイルへの記録を出力することにより書面を作成できるものであること。
前項第一号イ、ハ又はニに掲げる方法(顧客の使用に係る電子計算機に備えられた顧客ファイルに記載事項を記録する方法を除く。)にあっては、記載事項を顧客ファイル又は閲覧ファイルに記録する旨又は記録した旨を顧客に対し通知するものであること。ただし、顧客が当該記載事項を閲覧していたことを確認したときはこの限りでない。
前項第一号ハ又はニに掲げる方法にあっては、記載事項に掲げられた取引を最後に行った日以後五年間(当該期間が終了する日までの間に当該記載事項に係る苦情の申出があったときは、当該期間が終了する日又は当該苦情が解決した日のいずれか遅い日までの間)次に掲げる事項を消去し又は改変することができないものであること。ただし、閲覧に供している記載事項を書面により交付する場合、顧客の承諾(令第十五条の二十二に規定する方法による承諾をいう。)を得て前項第一号イ、ロ若しくは同項第二号に掲げる方法により提供する場合又は顧客による当該記載事項に係る消去の指図がある場合は、当該記載事項を消去することができる。
前項第一号ハに掲げる方法については、顧客ファイルに記録された記載事項
前項第一号ニに掲げる方法については、閲覧ファイルに記録された記載事項
前項第一号ニに掲げる方法にあっては、次に掲げる基準に適合するものであること。
イ 顧客が閲覧ファイルを閲覧するために必要な情報を顧客ファイルに記録するものであること。
ロ 前号に規定する期間を経過するまでの間において、イの規定により顧客が閲覧ファイルを閲覧するために必要な情報を記録した顧客ファイルと当該閲覧ファイルとを電気通信回線を通じて接続可能な状態を維持させること。ただし、閲覧の提供を受けた顧客が接続可能な状態を維持させることについて不要である旨通知した場合は、この限りでない。

みなし有価証券募集時の契約締結前交付書面の届出

金融商品取引法第37条3第3項では、「金融商品取引業者等は、第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利に係る金融商品取引契約の締結の勧誘(募集若しくは売出し又は募集若しくは売出しの取扱いであつて、政令で定めるものに限る。)を行う場合には、あらかじめ、当該金融商品取引契約に係る第一項の書面の内容を内閣総理大臣に届け出なければならない。ただし、投資者の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定める場合は、この限りでない。」とされています。

届出重複の排除

契約締結前交付書面の届出を要しない場合として、金融商品取引業等に関する内閣府令第97条は「法第37条の3第3項ただし書に規定する内閣府令で定める場合は、同項に規定する金融商品取引契約の締結の勧誘に関し法第四条第一項又は第二項の届出がされている場合(その届出の書面に契約締結前交付書面に記載すべき事項のすべてが記載されている場合に限る。)とする。」としています。

みなし有価証券のうち、主として有価証券への投資を行う有価証券投資事業権利等に該当する場合には、公募の際には有価証券届出書の提出義務を負っています。そうした場合、契約締結前交付書面及び有価証券届出書の届出義務の重複が発生しないよう、有価証券届出書だけを出せばいいという趣旨の定めです。

よって、有価証券届出書を提出しており、有価証券届出書に契約締結前交付書面に記載すべき事項のすべてが記載されている場合には、契約締結前交付書面の提出義務が免除されます。

届出義務が生じるケース

みなし有価証券の募集は取得者が500名以上となる場合が該当するとされています。財務局に対して契約締結前交付書面の届出を行うのは、ほとんどの場合、いわゆる事業型ファンドの集団投資スキーム(匿名組合、投資事業有限責任組合等)を500人以上に募集する場合となります。

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