外資系の暗号資産交換業者の撤退

2022/01/15

世界的なインフレーションによって、コロナショック後の各国の中央銀行の大規模金融緩和は終わりを迎えました。これにより、世界的にリスク資産は下落基調にあります。一昨年ピークを迎えた暗号資産価格もその例外ではありません。

昨年のFTX社の破綻以降は、暗号資産冬の時代に入ったと考えられており、また、我が国では昨年末の日銀による金融緩和政策の修正から急激に進んだ円高により、円ベースで評価した暗号資産価格の下落に拍車がかかっています。

こうした状況を背景にして、我が国では今年に入って、米系の暗号資産交換業者の大型撤退報道が相次いでいます。令和3年後半から令和4年前半までは、業界内で暗号資産交換業の新規登録及び既存業者の買収の検討が盛んでしたが、直近になってそうした話はあまり聞かなくなりました。

暗号資産交換業登録の絞り込み

平成30年1月の某社での大型流出事件の後、仮想通貨交換業(現・暗号資産交換業)の新規登録は極端に絞り込まれました。事件直前の最後の登録業者の登録日は平成29年12月26日ですが、事件後の最初の登録業者の登録日は平成31年1月11日と1年以上間が空いています。

もっとも、そこからは緩やかに登録件数が増加し、また、さほど大規模な事業者でなくとも登録が現実的に検討できるのではないかと思わせる登録事例も出てきました。

しかし、令和4年からは登録事例はまたも減少しています。

昨年の暗号資産交換業の純粋な新規登録は、メガベンチャー系の1社のみです。

監督当局は暗号資産交換業の新規登録に関しては、抑制的な姿勢であると報じられており、世界的な暗号資産冬の時代とあわせて考えると、しばらくは業界は活性化しそうもありません。

NFT、DefiやDAO等の暗号資産から派生した新たなデジタルアセットに関連するビジネスも盛り上がりを欠いており、昨年後半には日本経済新聞が、NFT取引の低迷を複数回にわたって報じています。

株安、債券安

厳しいのはこうしたデジタル資産に限られません。株式市場の低迷により、株式等の伝統的資産に対しても投資家の投資意欲が低下しているとされています。

昨年末に発表された与党の令和4年度税制改正大綱では、NISA拡充、恒久化等の金融庁の要望がほぼそのまま通ったと評されていますが、肝心の市場は低迷しています。

株式市場の活況を背景として通称「レバナス」投資が個人投資家の間で大いに流行った一昨年のような盛り上がりを欠きます。

個人投資家に限らず機関投資家も一連の利上げにより債券の含み損を多く抱えているとされます。利上げによる債権価格の下落に関しては、金融庁は地銀20行の運用体制を点検すると報じられています。欧州では、大手金融機関の経営危機の噂も報じられるなど、世界経済の先行きは不透明です。

今のところ、一連の動きは不動産価格には影響を及ぼしていませんが、今後不動産価格に影響が出て来るようであれば、活況が続いた不動産関連アセットマネジメント業務に関しても変調が生じる可能性がでてきます。

2023/1/17 続報

令和4年の1月17日付のブルームバーグによる金融庁の柳瀬護参事官に対するインタビュー報道で、外資系企業の撤退をも含む暗号資産交換業者の動向に関する金融庁のスタンスが明らかにされました。

報道では、柳瀬参事官は、暗号資産関係のビジネスに関して「極めて厳しい状況に置かれているという認識はある」と述べる一方で、相次ぐ海外交換業者の日本市場からの撤退については、シェアは大きくなく、国内の暗号資産業界にそれほど大きな影響はない」として、仮想通貨業界に対する影響は限定的であるという見方を示しました。

当該事業者のプレゼンスや取引高の面では妥当な見解であるといえます。

そして、より重要なのは報道で示された金融庁の姿勢です。報道では「金融庁としては個人投資家の資産形成の手段として暗号資産を広めるつもりはないとの考えも示した。むしろ暗号資産に活用されている「ブロックチェーンベースの技術の可能性について一定の期待をしている」と語った。」と報じられています。

従来の金融庁の行政的な方針通りの見解ではありますが、web3.0の促進が国策として官邸及び政府与党から唱えられている現在においても、引き続き「個人投資家の資産形成の手段として暗号資産」を広めるつもりはないというスタンスが再確認されたことは、政策の方向性として重要です。

与党主導で提唱されている暗号資産の分離課税導入等の優遇措置の実現が、これでまた遠のいた印象もあります。またそのことは、暗号資産交換業者の新規登録に関して現在もなお金融庁が抑制的な姿勢を堅持していることと整合的でもあります。

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