行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

デジタル・分散型金融研究会(第6回)議事録の公開

2022/11/04

令和4年6月20日開催のデジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会(第6回)の議事録が金融庁から公開されました。DeFi及びステーブルコインの送金決済に関する規制が論点になっています。後者のステーブルコインについては、金融商品取引業者との距離が大きいので、ここでは取り上げません。DeFiに関する議論に関してみていきます。

金融庁は、DeFiは、伝統的な金融サービスと機能において類似、重複する面があるとして、同じビジネス、同じリスクに同じルールを適用することの是非並びにDeFiに存在する中央集権的要素、トラストポイントに着目して規制対象としていくことの是非を論点にしています。

DeFi概念の虚構性

議論では、委託調査報告書「分散型金融システムのトラストチェーンにおける技術リスク等に関する研究」の報告書をもとにして、総じてDeFiに関して実態、存在意義ともにメンバーから次々と懐疑的な見解が示されました。

岩下メンバーは「DeFiという言葉自体が必ずしも正確ではな」く、「分散は分散なのかもしれませんけれども、非中央集権では全くない仕組みというものが多数見受けられ」るとして、「ビットコインが非中央集権であるというのは、そういうふうに一生懸命つくったからで、今現在も中央に当たるものは存在しませんが、ビットコインに続く暗号資産の多くが実は中央集権の仕組みを残しています」と指摘しています。

そして「あたかも分散している、DAOであるということをふるまうことによって、責任を逃れようとしている、規制の対象から逃れようとしている」と指摘しています。

規制できないサービスの違法化論

岩下メンバーは規制論議に関して「既存の金融サービスと同じ規制を適用するというのは、これは当たり前です。当たり前なので、それは当然そうするべきだと思うんですが、問題は、先ほど申し上げたように、分散化しているふりをする人」がいるとして「一般の伝統的金融機関に比べると、逃げ回っている人たちなわけです。そういう人たちを規制するのは、技術的には非常に難しい」ために「現時点で規制できないものについては、国内で認める必要はない」としています。

これに関して森下メンバーは「規制のエンフォースメントを確保するという観点からは、金融システムにとって重要な取引との関係では、コンプライアンスを、規制を遵守できるような仕組みがない、あるいは、そういった規制を遵守できるような人がいないというようなシステムについては、サービスの提供自体を違法とするというのも考えられるべき」としており、そもそもDeFi、DAO等そのものの違法化にまで言及しています。

確かに自律分散、DeFi、DAO等は概念だけ独り歩きしてあるきらいがあります。その利用者保護上の高いリスクに対して、実際に利用者や社会が享受可能な社会的ポテンシャルがはっきりせず、リスクにメリットが見合ってないのではないかという議論は一定の説得力があります。

分散型金融(DeFi) が有しうるリスク例(事務局説明資料2022年6月20日より引用)

投資助言・代理業や貸金業を巻き込む議論

また、規制議論に関して坂メンバーの発言も注目されます。

坂メンバーは「分散台帳技術による場合も、金融機能実現のための課題がなくなるわけではありませんので、基本的に、既存の金融規制を適用するということが大前提」としたうえで、「現物の暗号資産を対象とする投資助言は、現行の金商法の規制対象になっていないということですけれども、これは対象とする必要があると思います。」と発言しています。

暗号資産現物の投資顧問は、投資助言・代理業の規制対象ではないため、全くの無登録でこれを営むことができます。これに対して、いわゆるビットコインFX等の暗号資産関連デリバティブ取引は規制対象であるため、現状、ビットコイン信用取引は無規制であるものの、差金決済取引は金融商品取引法に規制される状況になっています。

明らかに規制間の平仄が取れておらず、実務上、制度の穴と認識されてきました。今後、暗号資産現物取引の投資顧問契約に関しても、何らかの形での規制が志向されることとなるのか、議論の先行きが注目されます。

また、坂メンバーは「暗号資産を用いた貸金業行為、例えば、100万円相当のビットコインを貸し付けて、100万円相当のビットコインを返済させるという行為は、これは貸金業の機能を営むものにほかなりませんので、これは規制対象であることをアナウンスすべきと思います。」としています。

暗号資産を利用した高利貸し行為に貸金業法、利息制限法及び出資法並びに暗号資産交換業の業規制等の規制が適用されないことも、一部では制度の穴として認識されていました。レンディング取引はすでに存在していますが、暗号資産の貸借を利用して社会問題化した事案はまだ聞きません。しかしながら、将来こうした事案が出てくる可能性は十分にあるため、先手を打った規制を提案した格好です。

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