行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

資金決済法(電子決済手段等)関連の政令・内閣府令案公表

2023/01/06

金融庁は、令和4年12月26日付で、令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等を公表しました。なお、同改正法のうち、前払式支払手段に係る部分に関する内閣府令等は、令和4年10月5日に公表され、既に同11月7日に意見募集が終了しています。

そのため、今回の令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案のパブリックコメントは、主にステーブルコインに関するものです。

令和4年資金決済法等改正では、ステーブルコインを電子決済手段と定義しました。同法では電子決済手段を以下のように定義しています。

一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権、第三条第一項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(次号に掲げるものに該当するものを除く。)
三 特定信託受益権

安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律

政令・内閣府令案の概要

改正法は電子決済手段の発行者を銀行・資金移動業者及び信託会社に限定するとともに、仲介者を電子決済手段等取引業者と定めて新たな登録制を設けました。金融庁は、今回の政令・内閣府令案等の要旨を以下のように説明しています。

(1) 電子決済手段等に係る規定の整備

・ 特定信託受益権の要件及び電子決済手段に該当する前払式支払手段の要件を定める。
・ 電子決済手段等取引業及び電子決済等取扱業に係る登録手続を整備する。
・ 電子決済手段等取引業者及び電子決済等取扱業者による利用者への情報提供等の利用者保護に係る措置や業務の適切かつ確実な遂行を確保するために必要な措置等、業務に関する規定を整備する。
・ 電子決済手段等取引業に関し、利用者の金銭・電子決済手段の管理方法、一定の要件を満たさない外国電子決済手段に係る規定を整備する。
・ 電子決済手段等取引業者及び電子決済等取扱業者に関する法令等の適用にあたり留意すべき事項や監督上の着眼点等を整備する。

2. 特定信託会社による特定資金移動業
・ 特定信託受益権を発行する特定信託会社が特定資金移動業を営もうとする場合の届出手続を整備する。
・ 特定信託会社の利用者に対する情報提供等の利用者保護に係る措置や業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置等、業務に関する規定を整備する。

3. 信託会社・信託銀行による電子決済手段の信託の受託
・ 信託会社に加え、信託銀行も電子決済手段の信託の受託を行うことができることとする。
・ 電子決済手段の管理方法や、一定の要件を満たさない外国電子決済手段に係る規定を整備する。

4. 金融商品取引法に関する規律
・ 金商法上の「有価証券」から除外しても公益等のため支障が生ずることがないと認められる特定信託受益権の要件を定める。

5. その他
・ その他、関係政令、内閣府令等について所要の改正等を行う。

令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について

ステーブルコイン関連事業者には、新制度である電子決済手段等取引業者にかかる登録手続きや業規制の詳細は登録等の手続きを進めるうえで非常に重要となりますので、内容を押さえておく必要があります。

金融商品取引法への影響

令和 4 年改正により金融商品取引法第2 条の2の「暗号資産」は「暗号等資産」に改められて、従来の暗号資産に加えて資金決済法 第2条5項第4号の電子決済手段(内閣府令で定めるものに限る)を含む概念となりました。

これに伴い、金融商品取引業等に関する内閣府令でも、従来の暗号資産への言及箇所が広く暗号等資産に修正されています。また、業府令では「暗号資産等」の概念も新設して「暗号資産等暗号資産又は電子決済手段をいう」と定義しています。

今回「暗号資産関連デリバティブ取引」が、「暗号資産等関連店頭デリバティブ取引」と定義が改められたことで、従来から金融商品取引法の規制対象にされてきた、いわゆる仮想通貨のデリバティブ取引の範囲が広がり、概念の変化が生じていますので注意が必要です。

なお、併せて公表された金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針案を見ますと、殆どが用語の置き換えのようです。

前記の「有価証券」から除外しても公益等のため支障が生ずることがないと認められる特定信託受益権の要件についても、資金決済法で規制される電子決済手段たるステーブルコインへの資金決済法と金融商品取引法の重複適用を避ける趣旨であると解されます。よって、本改正が金融商品取引業者等に対して与える影響は、暗号資産での資産受入れやデリバティブ取引を行っている事業者以外にとっては限定的である印象です。

為替取引分析業者

また、AML/CFTに関する規制強化を背景に、「複数の金融機関等(資金決済に関する法律(以下「法」という。)第2条第18項に規定する金融機関等をいう。以下同じ。)の委託を受けて、為替取引に関し、同項各号に掲げる行為のいずれかを業として行う」者を為替取引分析業と定義し、本法改正で許可制が導入されました。

具体的には取引フィルタリングや取引モニタリング等が対象であり、これに伴って本パブリックコメントでも、「為替取引分析業者向けの総合的な監督指針」(案)が新設されています。資金決済法施行令案第2条によればここでの金融機関等は銀行等の預金取り扱い金融機関が対象であり、金融商品取引業者は対象外のようです。

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