2022/06/17
金融庁は、渥美坂井法律事務所・外国法共同事業に調査を委託していたアメリカにおけるステーブルコインに関する「海外のステーブルコインのユースケース及び関連規制分析に関する調査」報告書を令和4年6月3日付で公表しました。
同報告書では、ステーブルコインの発行残高の80%以上は、Tether、USD Coin、 Binance USDで占められており、調査研究も主にこの3つのステーブルコインに焦点を絞って行われています。
米国法の適用関係
連邦法単位で規制は主に資金移動に関する部分で、ステーブルコインは、「convertible virtual currency とみなされるため、ステーブルコインを取り扱うに当たっては、Money Transmitter に係るAML等の諸規制に服するとしています。
また、同時にステーブルコインのスキーム次第では、毎度おなじみのHowey Testをクリアする「投資契約」に該当する場合「証券(security)」として連邦証券諸法が適用される可能性があるとしています。
さらに、報告書では、その商品性により、 ステーブルコインもコモディティーとしてCommodity Exchange Act が適用されることも考えられるとしています。実際、 Tether 社は、過去にCEA に基づきCFTC から処分を受けているとしています。
また、個別の州法との関係で注目されるのは、ニューヨーク州法では、ステーブルコインと呼ばれる多くのコインは、NY 州仮想通貨規制において定義される暗号資産(仮想通貨)(Virtual Currencies)に該当すると考えられているとしていることです。
非常に興味深い報告書です。印象としては総じて、アメリカでもステーブルコイン規制は端緒についたばかりで、連邦法はもちろん、州法でも体系的に規制を整理した例はない印象を持ちました。
改正資金決済法
これに対し、日本では議論が進んでいます。ステーブルコインの商品性に応じて、ステーブルコインをアルゴリズム型ステーブルコインとデジタルマネー類似型ステーブルコインに区別したうえで、デジタルマネー類似型ステーブルコインを規制する新制度の施行が予定されています。
令和4年6月3日に成立した改正資金決済法で、デジタルマネー類似型ステーブルコインの発行を、従来の銀行、資金移動業者に加えて、信託会社も可能とするとともに、同改正により、これを仲介する電子決済手段等取引業の制度が新設されました。
国内の取引所(暗号資産交換業者)ではTetherを買うことすらできないという、欧米と比べて立ち遅れていた国内のステーブルコイン関連ビジネスですが、制度上の位置付けが明確化されたことで、今後徐々に拡大していく可能性もあります。