行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

FATF第4次対日相互審査とマネロン対策

2021/08/13

この数年、当局・業界を挙げて対応をしてきた、FATFによる対日第4次審査の報告書が今月下旬にも公表される見通しとなっています。一部報道では、対策の不十分さから今回も実質的に不合格となる厳しい結果が予想されると報じられています。

令和3年7月28日付の日本経済新聞の報道によれば口座開設後の継続的な顧客・取引管理が不十分であると指摘される見込みであるとされています。また、金融庁は地域金融機関などのマネロン対策の課題が指摘される見通しとなったことを受けて、地方銀行や信用金庫などの地域金融機関を対象にマネーロンダリング対策の実施状況を調査すると時事通信で報じられています。

地域金融機関のマネロン対応策

さらに、7月に新任の長官に就任した中島金融庁長官は、産経新聞に対し、国内の地方銀行や信用金庫等に対してマネロン対応の強化を促す方針を明らかにしています。

同インタビューでは「マネロン対策の一環として、不正が疑われる取引を判断する政府と金融業界の共同システムを来年6月までに構築する方針を強調。システム構築の金銭的負担を軽減し、対策の加速につなげる。」としています。

これは、まさに業界で必要とされていることだと考えます。

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインに基づく、AML/CFT対応は、銀行等の預金取り扱い金融機関や証券会社だけでなく、投資助言・代理業者、果ては適格機関投資家等特例業務届出者にも同様に求められており、毎年、当局への報告が求められています。

大手金融機関、大手証券会社などの十分な資金力と人的リソースがある会社であればともかく、地域金融機関や、はては数人程度で運営する小規模事業者にまで、自力で不正取引の検知システムやデータベースの導入などの万全のAML/CFT対応を構築することを求めるのは酷であろうと感じていました。

小規模事業者の事務負担軽減の観点から、政府・業界団体が主導して事業者による具体的な取り組みを支援することは、非常に有意義であると思います。

地銀再編方針

同インタビューでは、金融庁は、引き続き資金交付制度や独占禁止法の特例などを通じ、地銀再編を推進する方針を示しています。

地銀再編方針は、本来は地方経済の低迷と貸出金利の低下による収益力の低下に起因するものですが、マネロン対策の記事と併せて読むと、そもそも小規模地域金融機関というビジネスモデル自体が、限界に近づいていることを感じざるを得ません。

小規模金融機関であっても、決済システムを通じて世界とつながっている以上、その杜撰な運営は国際金融システムの脆弱性となりかねず放置することができません。しかし、求められる人的、資金的リソースを、すべての地域小規模金融機関が確保できるかと考えると、なかなか難しいと思います。

ちなみに暗号資産に関しても、その普及のネックは、資産価値の不安定さに加えてマネロン対策の難しさにあります。先進国の金融当局の間では、マネロン対策が不十分な現在の技術的、制度的な枠組みのままでは、暗号資産が国際金融システムでメジャーな位置を占めることはないと考えられています。

業態の限界

現在、業界では、大手金融機関と第一種金融商品取引業者の数は適正である一方、主に外資系や機関投資家向けの投資助言・代理業者と投資運用業者については、その参入を促進してさらに数を増やすべきであると考えられています。

これに対し、前述の地域金融機関に加え、第二種金融商品取引業者の数も過剰であると考えられており、当局もその数を減らすことが基本方針であるとされます。

暗号資産交換業者に関しては、現在の事業環境は厳しいという認識の上で、暗号資産投資信託の禁止を維持し、税制改正でも分離課税を要望しないなど、現時点では積極的に育成する政策は採用していません。

マネロン対策等の問題をクリアできる国際的な規制枠組みが構築されるまで、金融庁は抑制的に監督する方針であると思われます。

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