2021/07/30
金融庁は、令和3年7月26日付で、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第1回)議事次第」を公表しています。
資料によれば、ブロックチェーンの金融業への導入を巡っては、送金、証券、暗号資産の3分類と整理されており、その外枠にコンテンツ・著作権での利用もあると見取り図が作成されています。
それぞれの業態毎に、メリットと共に問題点が指摘されており、送金はマネロン・テロ資金供与対策、送金の安定・確実な履行、暗号資産はマネロン・テロ資金供与対策・なお続く価格の乱高下、証券は、デジタル化に対応した取引インフラ・私法上の権利義務関係、コンテンツ・著作権は実態としてマネロンなどに用いられる懸念が指摘されています。
これらは、突き詰めるところ、ブロックチェーンが、社会的・技術的に未成熟であることが要因であると考えられますが、DefiやNFTのような新しい技術は日進月歩で、制度整備が追い付いていません。
また、資料では、デジタルマネーとトークンを分類したうえで、ステーブルコインをその中間に位置付けています。ステーブルコインを巡っては、各国の金融当局にとって重大な関心事項となっており、共通原則の制定を目指す本年6月の7か国財務大臣・中央銀行総裁声明も引用されています。
公表されている井上メンバーの意見書では研究会の目的について以下のように指摘しています。
「デジタル・分散型金融に適用される規制のあり方を考えるにあたっては、どの金融規制を考えるときもそうであるように、一定の切り口で資産ないし取引を類別し、それに見合った規制を定めていくことになります。しかし、デジタル・分散型金融については、動きの激しい分野ですから、技術の進展に応じ、あるいは規制の目的に応じて、そのような類別毎の規制がそれぞれの資産ないし取引に見合っているか否かを継続的に検討しこれを見直すとともに、類別自体が適切か否かについての継続的な検討ないし見直しが欠かせないと思います。本研究会においては、検討対象をどのように捉えるか、検討の目的や視点に応じて検討対象に対してどこから光を当て、それをどのように分類するのかといったことを、規制そのものの中身とともに、所与の前提を置かずに、考えてみたいと思います。」
これを踏まえれば、現在の金融商品取引法、資金決済法の中で極めて多数の業態にまたがっているブロックチェーン・デジタルマネー関連の諸制度は、整理・統合される方向に議論が進んでいくかもしれません。
資金移動業は新たな制度が今年開始されたばかりであり、また、暗号資産に関しては暗号資産交換業への名称変更、デリバティブ取引とSTOの金融商品取引業への組み入れが昨年行われたばかりです。近年のFINTECH関係の法令の改正速度の速さには目を見張るものがあります。
また、ここで共通の指摘されているマネロン問題に関しても、FATF第4次対日審査などを受け、ただでさえ金融関連事業者に求められる体制整備水準が、短期間で急激に引き上げられているところ、今回の検討を受け、犯罪収益移転防止法や、既存の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」にも、何らかの改訂がでてくる可能性もありそうです。
FINTECH事業者、暗号資産交換業者、金融商品取引業者等の関連プレーヤーは、本研究会の議論の動向を注視する必要があります。