行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

本人確認書類の変更(戸籍関係)

2023/02/11

令和5年2月1日、警察庁は「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令案」に対する意見募集結果について公表し、同日、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則が改正されました。

これにより、個人の取引時確認に用いることのできる本人確認書類のうち「顔写真が貼付されていない書類」であった「戸籍謄本又は戸籍抄本(戸籍の附票の写しが添付されているものに限る。)」が「戸籍の附票の写し」へと改められました。

これらは対面での取引時確認において、提示を受けたうえで転送不要郵便による取引関係文書の送付を行わなければならない類型です(「犯罪による収益の移転防止に関する法律の実務対応に関するQ&A」参照(一般社団法人第二種金融商品取引業協会))。

金融商品取引業者等を始めとする特定事業者においては、取引時確認に関する社内規程を改定するとともに、顧客に対する説明文書及びwebサイト等における関係する記載を修正する必要がありますので、注意が必要です。

住居の記載のない書類

同パブリックコメントで、「戸籍の謄本又は抄本についてが削除されているのはとても腑に落ちない」との意見に対し、警察庁は「戸籍の謄本又は抄本には、氏名及び生年月日(出生の年月日)があるものの、住居の記載がありません。そのため、これを戸籍の附票の写しと切り離して単独で本人確認書類とすることは妥当ではないと考えております。」としています。

本人確認書類としての実効性を考えると、警察庁の説明に理あると思います。そもそも、戸籍に関してはそもそも本籍地が機微情報であるという問題もあります。

パスポートは法的なカテゴリーとしては、未だに写真付きの本人確認書類として利用可能ですが、同様の理屈で、2020年2月4日以降発行のパスポートは所持人記載の住所欄がないため、単独では本人確認書類として使えなくなっています。

同じく平成9年1月以降に発行された年金手帳も、住所の記載欄が存在しないため、法的には本人確認書類として利用可能であるものの、実際には単独では本人確認書類としては通用しなくなっています。

本人確認書類として用いるには、確認すべき本人特定事項である「氏名・住居・生年月日」の記載が必要である(経済産業省解説)ためです。

マスキング

ちなみに、年金手帳は、本人確認書類として、住居の記載がないだけではなく、もうひとつの問題があります。それは、国民年金法第108条の4により基礎年金番号の告知を求めることが禁止されていることです。そのため、本人確認書類として年金手帳を利用する場合には、番号法におけるマイナンバーカード等と同様、写しを保存する際には基礎年金番号部分をマスキングする必要があります。

また、令和2年10月1日より、医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求も禁止されたため、健康保険証も同様の対応が必要になっています。

これに対して運転免許証は、かつては本籍地が機微情報であるためマスキングが必要になる欠点がありましたが、現在では本籍地が記載されないようになりました。そのため特定事業者における事務処理の観点では、取引時確認に用いる本人確認書類としての運転免許証の使い勝手は群を抜いて優れています。

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