行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

米SECの運用資産管理の規制強化

2023/02/17

令和5年2月15日、アメリカ合衆国の証券取引委員会(SEC)は、SEC Proposes Enhanced Safeguarding Rule for Registered Investment Advisersを公表しました。本リリースは、登録投資顧問業者の運用財産のカストディー(資産保管)に関するルールを改正する案です。

我が国の報道では、本改正案に関して、主に米国の暗号資産交換業者にとっての事実上の規制強化であると報じられています。また、Bloomberg等の米国の経済メディアでも、同じくアメリカに基盤を置く主要な暗号資産交換業にとって、本改正案は、試練でもありチャンスでもあると報じられています。

基本的に今回の改正案は、カストディアンにおける資産管理義務の対象が暗号資産へ拡大したことが実務上の焦点であるといえます。

改正案の詳細

SECによれば本改正案は、投資顧問業者による運用財産の不適切な費消、損失及び濫用を防ぐ目的としており、適格な資産保管機関(以下「カストディアン」という。)で運用財産が保管されることになるため、投資者保護が強まるとされています。

これはDodd-Frank法section 411に基づくSECの権限行使であり、現在の規制でも存在している顧客資産の保管義務(銀行や証券会社等の一定のカストディアンへの委託)の範囲を拡張するものです。

今回SECからパブリックコメントに付されている改正案は、投資顧問業者の運用財産に関して、カストディアンがその管理をするべき対象財産を、以前より広げ、従来はカストディアンが対象としてこなかった、特定の有価証券や実物資産の保護をも強化する内容です。

カストディアンによる運用財産の保護では、カストディアンの固有資産と顧客資産の分別管理による倒産隔離が適切に行われるよう制度設計されているとしています。

また、改正案は投資顧問業者の運用財産に関しての公認会計士の抜き打ち検査に関する実施ルールの改正による実効性の拡大など、それ以外の投資家の保護ルールの制定を含んでいます。

本邦への影響

我が国では、暗号資産のカストディー業務は暗号資産交換業に位置付けられています。また、昨年には信託銀行による暗号資産の管理型信託を可能にする内閣府令の改正が行われています。

web3.0の振興は我が国の国家戦略と位置付けられており、デジタル資産の利用の裾野が緩やかに広がっている現在、我が国でも段階的ながら暗号資産に関するカストディー業務の制度整備が進んでいます。

現時点では、資産運用業者に対する暗号資産での資産保管に関する規制は、金融商品取引業等に関する内閣府令第125条第2号及び準用する同第132条第1項におけるファンド運用業の「暗号資産交換業者等(資金決済に関する法律第2条第8項に規定する暗号資産交換業者又は同条第9項に規定する外国暗号資産交換業者)への管理の委託」義務等に留まっており、受託する暗号資産交換業者等に対してカストディー業務における加重的規制を課す動きはありません。

もっとも、今後、内国での暗号資産関連投資信託の設定等、資産運用関連ビジネスにおいて、欧米並みに規制の緩和が進んでいった場合、暗号資産カストディー業務に関し、米国同様の制度の再整理が必要になる場面も想定可能です。

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