行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

TOB規制及び大量保有報告制度等改正

2023/03/05

令和5年3月2日に金融庁で開催された第51回金融審議会総会・第39回金融分科会合同会合において、公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方に関する検討が打ち出されています。

TOBに関する制度設計は、ライブドアによる放送局に対するTOB事件を巡り2006年に制度改正されて以来、現在まで大きな制度変更がありません。

今回、金融庁から公開された説明資料(公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方に関する検討)では「日本の公開買付制度は1971年に、大量保有報告制度は1990年にそれぞれ導入され、その後の市場環境の変化等を踏まえて改正されてきたが、2006年以降、大きな改正はなされていない」としています。

制度改正に関する課題

金融庁はTOB規制に関して、以下を課題として取り上げています。

・公開買付規制の適用範囲(市場内取引の取扱い、閾値等) の見直し
・公開買付けの強圧性を解消・低減させるための方策
・公開買付規制の柔軟化

また、大量保有報告制度に関しては、同じく以下が課題とされています。

・特例報告制度の適用要件の明確化
・共同保有者の範囲の明確化
・現金決済型エクイティ・デリバティブ取引の取扱いの明確化

その他説明資料では実質株主の透明性を図るための方策についても指摘があります。

TOB規制の拡大

複数の報道機関が本件を報じていますが、令和5年3月2日付のロイターの報道によるとTOBについて金融審議会は「市場内での株式取得により敵対的買収を行う例などもあり、市場の内外を問わず3分の1を超える場合はTOBを義務付けることを検討する。また、株主総会の特別決議の水準となる3分の1以上となるTOBには応募してきた株の全部買付が義務付けられているが、この水準を引き下げる必要があるか否かなども検討する。」としています。

これは、要するに市場内での買い集めにも規制対象を拡大すること及び規制が適用される敷居値を下げることで、TOB規制の範囲を広げるということです。

また、公開買付けの強圧性を解消・低減させるための方策に関しては、TOBに応募を希望しない少数株主について、TOB価格等に納得がいかなくても、事実上、株式を売却しなければならない状況が生じうることにつき、少数株主保護の観点から制度を再検討する趣旨のようです。

大量保有報告制度の改正

大量保有報告制度に関しては、現在、要件が明確ではないと指摘がなされている一定の関係にある複数者による共同保有者(金融商品取引法第27条の23、金融商品取引法施行令第14条の7、株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令第5条の3、同府令第6条)についても範囲の明確化を議論するとされています。確かに、現在の共同保有者の定義は、相当に曖昧な部分があります。

5 前項の「共同保有者」とは、株券等の保有者が、当該株券等の発行者が発行する株券等の他の保有者と共同して当該株券等を取得し、若しくは譲渡し、又は当該発行者の株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している場合における当該他の保有者をいう。
6 株券等の保有者と当該株券等の発行者が発行する株券等の他の保有者が、株式の所有関係、親族関係その他の政令で定める特別の関係にある場合においては、当該他の保有者を当該保有者に係る第四項の共同保有者とみなす。ただし、当該保有者又は他の保有者のいずれかの保有株券等の数が内閣府令で定める数以下である場合においては、この限りでない。

金融商品取引法第27条の23第5項及び第6項

実質株主の透明性

実質株主の透明性を図るための方策については、信託銀行が信託勘定で保有する株券のように、のように、実質株主と株主名簿における表記が異なる場合の実質株主の表示に関する透明性を意図したもののようです。

実質株主の透明性については、信託勘定だけでなく、組合型ヴィークルを株主とする株式保有のケースも、制度改正議論の射程範囲内となった場合、投資運用業者適格機関投資家等特例業務届出者等のファンド運用業者に多くの影響を与えます。

組合型ヴィークルを株主とした上場企業のIPO及び株式取得等における、実質的な出資者に関する開示ルールの甘さは、以前より指摘されているところです。

もっともこれは議論がどうなるかまだ未知数です。

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