倒産隔離とは

証券化と倒産隔離とは

倒産隔離とは、資産の証券化の組成手法です。

証券化商品に関して投資家からの資金を受け入れる法人について、証券化対象資産に関する、元々の関係法人が倒産した場合にも影響が及ばす、投資家の経済的な権利が保全されるように構築する法的な仕組みを差します。不動産証券化事業に典型的に利用されます。

そもそも、資産証券化資産の原保有者(オリジネーター)は、資産オフバランス化や手許現金の確保等の意図で保有資産の流動化を行います。しかし、オリジネーターが保有する資産をそのまま内部的に匿名組合勘定に移行した場合、オリジネーターのデフォルトや倒産が生じた際は、匿名組合財産も差押の対象となり、また破産財団に組み入れされることになります。

また、仮に匿名組合の保有財産を保有する会社を、本体と分社したとしても、法的な不安定性は解消できません。オリジネーターと資本的に接着した子会社、関連会社を匿名組合の営業者とした場合も、オリジネーターが倒産した際には、営業者の法的清算等が必要になることから、匿名組合の存続も難しくなる場面も想定されます。

そのため、元々の資産保有者であるオリジネーターと資本的に関連を有しないヴィークルが、資産証券化証券の発行者となることが、不動産、船舶、航空機及び再生可能エネルギー設備等のキャッシュフローの安定的である資産の証券化にとっては非常に重要になります。

「オリジネーターと資本的に関連を有しないヴィークル」、すなわちオリジネーターの倒産リスクから隔離されている証券化ヴィークル組成をすることを、通称「倒産隔離」と呼称します。

中立的ヴィークル

オリジネーターと資本的に関連を有しないヴィークルであり、かつ、オリジネーターの実質的な支配下にあるヴィークルをどのように作り出すかという二律背反の問題は、資産証券化の手法が広まった90年代、00年代からの実務上の法的課題になっています。

証券化証券の発行者は、前回の記事の通り、SPC的な合同会社とすることが多いですが、倒産隔離には、その親会社(業務執行社員)を倒産隔離された法人とする方式を用いる必要があります。00年代初頭には、出資と意思決定の分離ができるケイマン諸島の事前信託を親会社として、有限会社を子会社及び証券化証券発行者とする方式が用いられていました。

そうしたなかで、00年代半ばから、中間法人法に基づく中間法人もまた、所有と意思決定を分離できるということが明らかになり、また、証券化証券の発行者自体も、新会社法で新たに創設された合同会社にシフト。中間法人や合同会社の利用が広がっていきました。

中間法人法は、平成20年に法人法に発展的に解消され、現在では証券化スキームでは、一般社団法人を親法人とし、子会社として合同会社を設立、合同会社が匿名組合を発行して、第二種金融商品取引業者が私募の取扱いに入るのが典型的スキームになっています。また、主として有価証券又はデリバティブ取引を行う証券化ヴィークルでは、投資運用業者をアセットマネジメントとして投資一任契約を締結するのが通例です。

一般社団法人は設立時社員が複数必要になりますが、一般的にはいずれも弁護士や公認会計士が就任します。さらに、設立時社員のうち1名が代表理事及び合同会社の職務執行者に就任し、オリジネーターとは人的に関係のない証券化証券発行法人の組織体制を構築するのが、現代の証券化スキームでは典型的です。

現状と課題

名目的に設立時社員や職務執行者に就任した公認会計士や弁護士が資金流用等の不正をした場合にはどうなるのかという疑問が湧いてきますが、当事務所の知見及び関連する文献を参照する限り、少なくとも本邦ではまだそうした事態が表面化した先例はないようです。

このことは、銀行等のレンダーの預金口座のモニタリングや、会計事務所のキャッシュマネジメントも、牽制体制として効率的に機能していることを示すといえます。

とはいえ、本質的には、ケイマン諸島法等のタックスヘイブン地域に存在するProtected Cell Companyのように、法的により安定的に分離資産管理が確保される制度を立法措置により構築するべきなのだと思います。

本邦では証券化関連プレイヤーの職業倫理に支えられ、いまのところGKTKSHの倒産隔離スキームが十全に機能していることから、新たな制度の制定の機運は盛り上がっていません。しかしこのことは、遠からず規制課題として持ち上がってきそうな予感がします。

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