2021/03/19
某大手ソーシャルレンディング事業者が過去に取扱いを行った、再生エネルギー事業に貸し付けを行う某ファンド業者では、資金の貸し付けに関する問題が財務局に指摘をされて行政処分を受けた後も、運営していたファンドの償還が進んでおらず、問題になっていました。それにを受けて、同大手ソーシャルレンディング事業者は、債権者として東京地裁に某ファンド業者の債権者破産を申し立て、3月10日、同地裁より保全管理命令を受けたと日経新聞で報道されています。
このところ、ソーシャルレンディング関連で不祥事が相次いでおり、業界の存続にもかかわる事態になりかねない様相を呈しています。
こうした状況を受けて、現在、貸付型ファンドの募集を行おうとする第二種金融商品取引業の新規登録の際の財務局の審査の難度も劇的に上昇しています。
とりわけ、ファンドの審査と貸付の審査の双方で、非常に高い水準の体制構築が求められるようになっています。
貸付先がSPCに近いような業態では、実質的にはファンド審査と貸付審査はほとんど差がありません。そのため、審査部門の兼務や、片一方のみの実施でもいいのではないかという質問をよく受けますが、貸付型ファンドではファンド審査部門と融資審査部門の設置と分離を求める行政指導が行われていることから、審査部門の兼務や片方のみの設置は認められません。
予め社内規程やマニュアルで審査の流れを精緻に構築し、また審査項目に関して詳細に設定することで、ファンド審査、融資審査ともに万全の体制を構築する必要があります。
登録審査の際には、実際に融資を行う予定の具体的な案件を明示して、実際に社内規程通りに審査を行い、その証跡とともに審査結果を財務局に提出する必要があります。そのため、融資審査担当者は実際に銀行やノンバンクで長年融資に携わってきた方が就任する必要があり、また専門的な融資審査ノウハウがあることを示すために審査に主体的に関わることが必要になります。
いずれにせよ貸付型ファンドの第二種金融商品取引業の登録は、業態にもよりますが場合によっては第一種金融商品取引業や投資運用業をも上回る登録難度となりつつあります。
とりわけ、ソーシャルレンディングの参入ハードルは、もはや「1000万円、2000万円程度の少額の資金で、金融マンを数人集めれば開業できる」という生易しいレベルではありません。ソーシャルレンディング事業への参入を希望する事業者は、証券会社に匹敵するような社内体制を構築する必要があることを認識して準備を進めていく必要があります。