2023/04/19
昨年12月に財務省から発表された税制改正大綱で、船舶・航空機等のアセットファイナンスを行う第二種金融商品取引業者に大きな影響がある制度改正が示されました。
これを受けて、令和5年4月1日から船舶の特別償却制度が改正されています。船舶ファイナンス事業者はとっくにご存じだと思いますが、その他業態の金融商品取引業者のための参考情報として取り上げます。
財務省は令和5年税制改正大綱 三 法人課税 4その他の租税特別措置等(2)において、以下のように示しています。
特定船舶の特別償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(所得税についても同様とする。)。
1外航船舶について、次の見直しを行う。
イ海上運送法の改正を前提に、同法の認定外航船舶確保等計画(仮称)に従って取得等をした同法の特定外航船舶(仮称)の特別償却率を次のとおりとする。
(イ)特定先進船舶である特定船舶に該当する船舶(現行:18%(日本船舶については、20%))
a海上運送法の本邦対外船舶運航事業者等(仮称)の対外船舶運航事業の用に供される船舶30%(日本船舶については、32%)
b上記a以外の船舶28%(日本船舶については、30%)
(ロ)特定先進船舶以外の特定船舶に該当する船舶(現行:15%(日本船舶については、17%))
a上記(イ)aの船舶27%(日本船舶については、29%)
b上記(イ)bの船舶25%(日本船舶については、27%)
(注)上記の改正は、海上運送法の改正法の施行の日以後に取得等をする船舶(同日前に締結した契約に基づいて取得する船舶を除く。)について適用する。
ロ特定先進船舶について、液化天然ガスを燃料とする船舶を加え、耐食鋼を用いた船舶を除外する。
ハ対象船舶から匿名組合契約等の目的である船舶貸渡業の用に供される船舶(海上運送法の認定先進船舶導入等計画に従って取得等をした同法の先進船舶を除く。)を除外する。
これを受けて、当初はオペレーティングリースのスキームである、いわゆるJOLCO(購入選択権付き日本型オペレーティングリース)が封じられたという論旨の報道も見られましたが、制度上は、高度なIT・環境性能を備えるとされる「先進船舶」であれば、引き続き特別償却制度の適用を受けられるとしています。
JOLCOは、船舶ファイナンスでは一般的な手法であり、いわゆるアセットファイナンスとして、第二種金融商品取引業者がファンド持分の私募の取扱、特定引受行為による売付及びセカンダリーの売買の媒介等を行う例が多く存在しています。
租税特別措置法の第11条と第43条で船舶の特別償却が定められていますが、租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令により、令和5年4月1日より、租税特別措置法施行令第5条の8にて、対象資産から、匿名組合契約等の目的である船舶貸渡業の用に供される一定の船舶で、その貸付けを受けた者の海洋運輸業の用に供されるものが、除外されています。
同施行令同第2項は「法第十一条第一項に規定する特定海上運送業の経営の合理化及び環境への負荷の低減に資するものとして政令で定める船舶は、鋼船(船舶法(明治三十二年法律第四十六号)第二十条の規定に該当するものを除く。)のうち、海洋運輸業の用に供されるもの(船舶のトン数の測度に関する法律(昭和五十五年法律第四十号)第四条第一項に規定する国際総トン数が一万トン以上のものに限る。)又は沿海運輸業の用に供されるもの(匿名組合契約(当事者の一方が相手方の事業のために出資をし、相手方がその事業から生ずる利益を分配することを約する契約を含む。)又は外国におけるこれに類する契約の目的である船舶貸渡業の用に供されるもので、その貸付けを受けた者の沿海運輸業の用に供されるものを除く。)で、国土交通大臣が財務大臣と協議して指定するものとする」とあります。
これを受けて、日本海事新聞は海外造船所での先進船舶認定には不確実性がある旨を報じており、また、海外ヤードの対応を不安視する意見も採り上げています。
船舶ファイナンスにはいろいろな在り方が存在するので、実際には第二種金融商品取引業者の組成するファンドもJOLCO一辺倒ではありませんが、いずれにせよ、減価償却費による各種課税操作を目的としたアセットファイナンスを行う事業者にとって、非常に重要性を持つ制度変更には違いありません。