行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

海外投資家等特例業務の初の制度利用例

2023/05/15

令和5年5月10日、金融庁は海外投資家等特例業者に関する届出者のリストを更新し、令和5年3月31日付で、初となる海外投資家等特例業務の届出を受け付けたことを公開しました。

同リストで、届出者の社名、所在地や役員及び政令で定める使用人の他、具体名なファンドの概要に関しても掲載されています。

公開されている業務の内容は日本の中小規模の成熟企業の株式取得とあり、海外資金をともに国内企業の買収を行うスキームであることが予想されます。

海外投資家等特例業務の制度利用状況

一般に、既に海外に運用拠点があり、かつ、運用財産のポートフォリオに関して日本との関連性が薄い資産運用業者を本邦に呼び込むことは、税制の問題からほぼ不可能に近いと解されています。

そのため、従前、海外投資家等特例業務の届出を検討する者は、総じて国内の企業又は不動産への投資を目的とする海外事業者が殆どでした。

しかしながら、令和3年の制度発足からここまで、新型コロナウイルスの感染拡大による国際往来の停止もあってか実際の届出に至る事例がなく、そのニーズが必ずしも明らかになっていませんでした。

今回、初めて制度の利用実績ができたことで、海外投資家等特例業務は、海外投資家からの対日投資の受け皿側のライセンス的選択肢になり得ることが目に見える形で明らかになりました。

適格機関投資家等特例業務との違いとは

制度発足時の当事務所の解説記事でも記載しましたが、海外投資家等特例業務と適格機関投資家等特例業務の違いについて注目されるのは、集団投資スキームの「募集」業務が含まれることです。

「適格機関投資家等特例業務は私募に限定されていますので、1つのファンドあたりの権利者数は二項有価証券の私募の上限である499人(特例業務対象投資家は49名ですがこれは募集又は私募の別とは別の規制)に限定されています。しかしながら、海外投資家等特例業務では、私募の範囲を超えて、ファンドの組成及び運用ができる」ことが、適格機関投資家等特例業務と比較した重要な制度的な差異なのですが、今回の届出者は、業務の種別で募集に〇が付されておらず、私募スキームのようです。

適格機関投資家等特例業務でも、海外投資家等特例業務に近いことが出来てしまうことが、今までの制度の利用低迷に繋がっていたのですが、引き続き、両者の棲み分けは規制上の課題になりそうです。

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