金融商品取引業の隣接領域

業界という観点からの金融商品取引業

金融商品取引業を「業界」という観点から分類すると、「証券」「FX」「投資銀行」「ファンド」「資産運用」「投資顧問」などの、各種証券派生ビジネスのすべてを包含した、広い意味での「証券業界」を構成する業であり、さらに広くは「金融業界」も属すと整理できると思います。

銀行業

証券業界以外の金融業界では、特定の業界の関連プレイヤー(業界出身者含む)からの金融商品取引業への参入のしやすさや、兼業する場合の「相性の良さ」という意味で、銀行業(登録金融機関業務を行う系統金融機関含む。)が、もっとも証券業との垣根が低いと思われます。

銀行業は、登録金融機関業務として、投資信託や債券の販売等の証券業務も行っているのが通常であり、そもそも銀行業と金融商品取引業は業務内容自体も多くの部分で密接に関連しています。

金融商品取引業の登録審査における人的要件についても、銀行出身者は多くの場面で金融商品取引業者の経験者に準ずる者として取り扱われます。実際の経験上も、銀行出身の方は、金融商品取引業を行う上で必要な金融業界的常識を、ある意味では証券業界出身者よりも、高いレベルで身に着けている方が大半なので、登録審査上も高い人的な信頼性があるとみられる傾向があります。

保険業

生損保業界に関しては、同じ金融庁傘下の金融業界ですが、やや毛色が異なります。保険会社の本社の事務方だった方は、金融業界での最低限の常識は有する者として、他業界出身者よりはある程度の業務適性が認められるケースがあり、また保険会社内での登録金融機関業務や、資金運用業務に携わっていた方の場合には、金融商品取引業経験に準する者として扱われる余地があります。

しかし、いわゆる保険の一般の勧誘員をされていた方や、生損保の代理店業務をされていた方は、金融商品取引業を行う上での職務経験審査の観点からは、経験なし扱いです。

ノンバンク・金融会社

金融業界の他の業態を見ると、貸金業に関しても、基本的には、金融商品取引業を行う上での職務経験審査の観点からは、ノーカウント(経験なし扱い)です。また、資金移動業、仮想通貨交換業等の新しい業態に関しては、その取り扱いが確立されておらず、内容により個別判断ですが、金融商品取引業→新業態は問題なく経験ありになりやすい一方、新業態の経験があっても金融商品取引業の経験者とは認められない、という一般傾向はあると思います。

宅建業

金融業界以外だと、「宅建業」もかなり近い業界ですが、宅建業と金融商品取引業は、業務内容の見かけの近さに反して、浅い層では食い合わせの悪い業態です。

不動産ファンド関連事業としては、いわゆる現物の不動産の証券化は国土交通省の不動産特定共同事業許可であり、金融商品取引業には該当しません。また、金融商品取引業の枠内で行う場合には、投資運用業及び第二種金融商品取引業登録を行い、信託受益権取得を出資対象事業とする不動産証券化事業や、不動産投資法人を設定し、投資運用業者として運用を行う事業等があります。

不動産特定共同事業許可も含め、これらの不動産ファンド、不動産証券化業務は、不動産アセットマネジメント業務のプロ(≒大企業かその出身者の集団)でないと、事実上許可・登録を受けることは不可能です。求められる人的資本的要件が高く、いわゆる「町の不動産屋さん」や「中小規模投資用マンション販売事業者」が、これらのライセンス取得をすることは、現実味に欠けます。

他に、不動産担保ローンへの投資であるソーシャルレンディングを第二種金融商品取引業として行う業態もありますが、第二種金融商品取引業の登録難度は非常に高いので、上記のように複数のシニアな金融商品取引業の経験者を揃える必要があります。一般の宅建業者が、銀行出身者を非常勤で1、2人雇って、というようなレベル感では、登録は難しいです。

また、不動産信託受益権の売買媒介業務を第二種金融商品取引業として行う事業がありますが、これに限っては、上記のように「大企業かその出身者の集団」ではないと無理、というほどのレベル感ではなく、不動産の信託受益権の媒介業務の実務経験者を数名確保できれば登録の余地があります。

ただ、いずれにせよ実際に登録されている事例では、大手不動産業者出身者が在籍している事例が多く、そうした方がいない場合には採用する必要があり、それなりの予算が要求されると思います。

商品先物取引

その他、金融商品取引業に関連する業態としては商品先物取引業もあります。商品先物取引業に関しては、ある程度職務内容が関連する業態ではあるものの、そこでの経験は金融商品取引業を行う上での職務経験審査の観点からは、経験なし扱いです。

商品先物取引業を資本的、キャリア的母体とする事業者の金融商品取引業登録に当たっては、顧客勧誘の適切性の確保やいままでの過去の業務遂行状況の適切性等が重要なテーマになります。

その他関連プレーヤー

人的構成の確保上は、事業会社のコンプライアンス経験者、各種法律系資格者、公務員OB等も経験者とすることができないか、よく議論に挙がります。

事業会社のコンプライアンス経験者に関しては、例えば金融商品取引業を受けている総合商社で、金融商品取引業部分のコンプライアンスも経験したことがある等の例外的な事例を除き、金融商品取引業を行う上での職務経験審査の観点からは、経験なし扱いです。

また、各種法律系資格者に関しては金融商品取引業に関連する業務の職務上の取り扱いがあることが前提ですが、弁護士は比較的認められやすく、非常勤内部監査担当になったり、常勤であればコンプライアンス部長になったりということは比較的容易です。他方、その他の士業に関しては、非常勤内部監査担当は認められる例が多いですが、コンプライアンス部長に就任するには、資格だけではなく、行おうとする金融商品取引業の実務経験も必要になります。

公務員OBに関しては、財務省、財務局、金融庁出身という場合で、金融商品取引業に関連する公務員としての職務経験があれば、実際に金融商品取引業の中で働いたことがなくても、経験者として認められる場合があります。ただ、在籍したのがこれら官庁でない場合には、金融商品取引業を行う上での職務経験審査の観点からは、経験なし扱いになる可能性が高いと思われます。

但し、経産省、農水省や内閣府等では、金融商品取引業に何らかの形で関連する職務は存在すると考えられるので、経験者と認められるかどうかは、個別事例に応じて具体的に検討する必要があります。

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