行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

貸付事業等権利関連の政令内閣府令案

2024/07/06

このページの目次
電子募集取扱業務規制の貸付型ファンドへの適用除外の廃止ファンドの募集又は私募に係る電子募集業務への規制適用貸付型ファンドの定義電子申込型電子募集業務行為規制等関係会社発行ファンドの取扱い禁止の撤廃詳細は協会規則待ち経過措置

電子募集取扱業務規制の貸付型ファンドへの適用除外の廃止

令和6年6月27日に金融庁が公表した、令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等において、令和5年金融商品取引法改正に伴う、第二種金融商品取引業者が取り扱う貸付型ファンド、いわゆるソーシャルレンディングに関する規制強化案の全貌が明らかになりました。

従来、貸付型ファンドは、いわゆる投資型クラウドファンディングへの規制である、電子募集取扱業務・電子申込型電子募集取扱業務に関する各種規制の適用を免れてきました。

金融商品取引法施行令第15条の4の2に、登録申請書における電子募集取扱業務を行う旨の記載を要しない有価証券が列挙されているところ、同7号に「法第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項第五号又は第六号に掲げる権利のうち、当該権利を有する者が出資又は拠出をした金銭その他の財産の価額の合計額の百分の五十を超える額を充てて金銭の貸付けを行う事業に係るもの」が記載されていたためです。

これにより、貸付型ファンドの取扱いを金融商品取引業者が行ったとしても、その行為は電子募集取扱業務として登録申請書に記載する必要はないとされていました。

後述しますが、従来は貸付型ファンドを含むファンドの自己募集(募集又は私募。以下本項目において同じ。)に関しても電子募集規制は存在していませんでしたので、整理すると以下のような状況でした。なお、金融商品取引法における取扱いとは、第三者(SPC含む)発行ファンドの取得勧誘、自己募集とは自社発行のファンドの取得勧誘のことです。

貸付型ファンド以外のファンドの取扱い 電子募集規制あり
貸付型ファンドの取扱い 電子募集規制なし
自己募集 電子募集規制なし

今般の同施行令の改正案では、上記の条文は削除され、貸付型ファンドの適用除外はなくなっています。

今後は貸付型ファンドであっても、投資型クラウドファンディングと全く同様に、電子募集取扱業務・電子申込型電子募集取扱業務の各種規律に服することとなりそうです。

なお、後述しますが、電子募集取扱業務・電子申込型電子募集取扱業務に対する行為規制に関しては、今回の法令で大きな改正はなく、基本的に従来の制度が維持されています。今回の改正は、貸付型ファンドを既存の電子募集取扱業務規制に組み込むという色彩が強い内容になっています。

ファンドの募集又は私募に係る電子募集業務への規制適用

令和5年金融商品取引法改正において、従来は電子募集取扱業務に係る規制の対象外とされていたファンドの自己募集(自己私募及び売出し業務を含む。以下同じ。)による電子募集行為が、新たに「電子募集業務」として、規制対象となることが明らかになって以来、どこまで電子募集業務として規制の対象となるかが注目されていましたが、今回の政令・内閣府令案でその範囲が示されました。

改正金融商品取引法第29条の2第1項第6号では、新たに規制対象となる電子募集業務の定義が定められています。同条では電子募集取扱業務とは、(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより第二条第八項第七号又は第八号に掲げる行為(政令で定めるものを除く。)を業として行うこととされていました。

今回発表された、これを受けた政令案である金融商品取引法施行令案第15条の4の2第2項では「法第二十九条の二第一項第六号に規定する法第二条第八項第七号(新設)又は第八号に掲げる行為から除くものとして政令で定めるものは、貸付事業等権利(法第二十九条の二第一項第十号に規定する貸付事業等権利をいう。第十五条の十の二第一項第二号において同じ。)に係る行為以外の行為とする」とされており、いわゆる貸付型ファンド以外のファンドの電子募集に関しては、引き続き自己私募の場合は電子募集規制の適用範囲外であることが示されました。

貸付型ファンドの定義

貸付型ファンドの定義に関しても、今回の政令案で示されています。貸付型ファンド、すなわち「貸付事業等権利」の範囲は、同施行令案第15条の4の3において、「法第二十九条の二第一項第十号に規定する政令で定めるものは、当該権利に係る出資対象事業(同号に規定する出資対象事業をいう。)が主として金銭に係る貸付け、貸付債権の取得その他内閣府令で定めるものを行う事業であるものとする」とされました。

これにより、狭義の貸付型ファンドだけではなくファクタリングファンド等も、広義の貸付型ファンド(貸付事業等権利)として、電子募集規制の対象となることが明らかになっています。

とはいえ、それ以外の出資対象事業を行うファンドの自己募集は、電子募集業務から除外されたことは、実務上非常に重要です。これにより、当局の意図は貸付型ファンドに関する規制強化に主眼があり、それ以外の関係ない業態のファンドの電子自己募集に関して規制強化したいという意図を持っているわけではないことが確認されました。これをまとめると以下のようになります。

ファンドの取扱い 電子募集規制あり
貸付型ファンドの自己私募 電子募集規制あり
貸付型ファンド以外の自己募集 電子募集規制なし
電子申込型電子募集業務

また、金融商品取引業等に関する内閣府令案第70条の2第3項では「前項第二号から第六号までの「電子申込型電子募集業務等」とは、電子申込型電子募集業務(電子募集業務(適格機関投資家等特例業務又は海外投資家等特例業務に該当するものを除く。以下同じ。)のうち、次に掲げる方法により当該電子募集業務の相手方に有価証券の取得の申込みをさせるものをいう。以下同じ。)及び当該電子申込型電子募集業務において取り扱う募集又は私募に係る有価証券についての法第二条第八項第七号又は第八号に掲げる行為をい」うとされました。

つまり、電子募集取扱業務・電子申込型電子募集取扱業務の関係と、電子募集業務・電子申込型電子募集業務の相互対応関係は、取扱と自己募集の差はあれども基本的に同じということです。

行為規制等

金融商品取引業等に関する内閣府令を見ると、業務管理態勢の整備(同70条の2)をはじめとする行為規制の適用に関しては、ほぼ既存の電子募集取扱業務及び電子申込型電子募集取扱業務の規制内容がそのまま維持されており、そこに貸付型ファンドが横滑りの形で新たに追加される格好になります。

行為規制の実質的な変更としては、特定投資家に対する適用除外が打ち出されています。投資助言・代理業では、従来よりクーリングオフは、特定投資家に対しては適用さません。今回の改正は、これと平仄を揃えるものといえそうです。

電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等に係る顧客(特定投資家(法第三十四条の二第五項の規定により特定投資家以外の顧客とみなされる者を除き、法第三十四条の三第四項(法第三十四条の四第六項において準用する場合を含む。)の規定により特定投資家とみなされる者を含む。以下同じ。)を除く。)が電子申込型電子募集業務等又は電子申込型電子募集取扱業務等において取り扱う有価証券の取得の申込みをした日から起算して八日を下らない期間が経過するまでの間、当該顧客が当該申込みの撤回又は当該申込みに係る発行者との間の契約の解除を行うことができることを確認するための措置がとられていること

金融商品取引業等に関する内閣府令第70条の2第2項第5号

また、同案70条の2第8項で、貸付型ファンド(貸付事業等権利)の事業者に対して、投資助言・代理業者投資運用業者と同様に、忠実義務、善管注意義務を定める措置を取ることを金融商品取引業者に対して求めています。これは、貸付型ファンドの事業者に対して投資運用業者と同程度の規律を求める趣旨です。

投資運用業者と異なり、事業型ファンド(貸付型ファンド)の行う運用行為は金融商品取引業に該当しないことから、事業者を直接の名宛人とする法令上の明示的な義務を課すことができないため、今回の改正案では、金融商品取引業者の体制整備義務を通じて、事実上、こうした事業者に対して、忠実義務及び善管注意義務を課す内容になっています。

8 第三十五条の三の規定により金融商品取引業者等(貸付事業等権利(法第二十九条の二第一項第十号に規定する貸付事業等権利をいう。以下同じ。)についての法第二条第八項第一号若しくは第二号に掲げる行為、同項第七号に掲げる行為(法第六十三条第一項第一号又は第六十三条の八第一項第二号に掲げる行為に該当するものを除く。)又は同項第八号若しくは第九号に掲げる行為を業として行う者に限る。)が整備しなければならない業務管理体制は、第一項の要件のほか、これらの行為に係る業務において取り扱う貸付事業等権利について、当該貸付事業等権利に係る契約その他の法律行為において次に掲げる事項の定めがあることを確保するための措置がとられていることとする。

一 当該貸付事業等権利に係る出資対象事業(法第二十九条の二第一項第十号に規定する出資対象事業をいう。次号及び第百二十五条の二において同じ。)を行う者(当該出資対象事業に係る業務を遂行する者を含む。同号及び同条において同じ。)は、当該貸付事業等権利を有する者のため忠実に当該出資対象事業を行わなければならないこと。

二 当該貸付事業等権利に係る出資対象事業を行う者は、当該貸付事業等権利を有する者に対し、善良な管理者の注意をもって当該出資対象事業を行わなければならないこと。

金融商品取引業等に関する内閣府令第70条の2第8項

関係会社発行ファンドの取扱い禁止の撤廃

従来は金融商品取引業等に関する内閣府令153条第1項第14号で、当該金融商品取引業者の親法人等又は子法人等が発行する有価証券に係る電子申込型電子募集取扱業務等を行うことが禁止行為になっていましたが、同改正案では同号の削除が打ちされています。

従来の制度では、関係SPCであっても、電子申込型電子募集取扱業務の対象とすることが出来ない場合があるなど、実務上ファンドの電子募集の障害になってきた条文ですので、これが削除されるのは規制の緩和であり、かつ制度の改善であると評価できると思います。

詳細は協会規則待ち

ファンドに関する行為規制は、金融商品取引法並びに同政令及び内閣府令のみならず、一般社団法人第二種金融商品取引業協会における自主規制規則がその多くの規律を定めています。

今回の政令、内閣府令の改正案を受けて、当然ながら「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」及び「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」等の自主規制規則に改正が入ると思われますが、具体的にどのような自主規制規則の改定案が打ち出されるかを確認するまで、新制度の全貌は依然として不明の部分が大きいです。

経過措置

電子募集業務等にかかる行為規制に関しては、金融商品取引業等に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(附則)(案)において、一定の事業者に対して6か月の経過措置が設けられる予定です。

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