2024/10/31
このページの目次
貸付型ファンドの電子募集規制への組み入れ-経過措置-貸付事業等権利の定義見直し-親法人等子法人等の発行する有価証券の留意点-自主規制規則の改正
貸付型ファンドの電子募集規制への組み入れ
令和6年10月30日に金融庁から「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等に関するパブリックコメントの結果等について」が公表され、貸付事業等権利の電子募集取扱業務の対象化及び電子募集業務の新設その他の令和5年金融商品取引法改正の制度詳細が確定しました。
本件政令内閣府令等は令和6年10月25日(金曜)に閣議決定、令和6年10月30日に公布されており、令和6年11月1日(金曜)から施行(一部は令和6年10月30日から施行)となっています。
なお当初の改正案の解説は既報(法改正及び政令内閣府令等)の通りです。
本件政令内閣府令の施行を受けて、いままで電子募集取扱業務規制に服していなかったソーシャルレンディング関連の第二種金融商品取引業者も、募集又は私募の取扱いは電子募集取扱業務、募集又は私募等では電子募集取扱業務として、新たに追加的な規制に服することになりました。
経過措置
既存事業者には6か月間の経過措置(改正法の施行日前から、貸付事業等権利について電子募集業務及び電子募集取扱業務を行っていた者については、引き続き当該業務を行う場合、改正法施行日から6ヶ月を経過するまでの間に変更登録を行う必要(令和6年10月30日コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方No.47))が置かれていますが、いずれにせよソーシャルレンディング事業者には極めて大きな制度改正となります。
ただし、金商法施行令案第15条の4の3より、貸付事業等権利について自己私募を行う業者は、登録申請書に記載する必要が生じるが、施行前からこの業務を行っていた業者は、施行後に変更届出を行えばよいとされており、かかる届出をするに際しては変更登録は不要であると回答しています(同No.48)。
よって、既存のソーシャルレンディング事業者は、6か月以内に行うべき変更登録に先だって、登録事項の変更届出(法施行後2週間以内)、業務方法書の変更届出(遅滞なく)を実施する必要があります。
また、施行日以降、貸付事業等権利について募集を行う場合には、改正法の規定が適用されるとのことで、改正法の出資対象事業の状況に係る情報の提供が確保されていない場合の売買等の禁止規定は施行日前に募集を開始した貸付事業等権利で施行日以降も募集が続くものには適用されるとされています(同No.53)
また、顧客資金の預託受け入れに関しては、「電子申込型電子募集取扱業務等を行う場合には、定義府令第16条1項第14号の2に規定する方法による管理を行う必要がありますが、改正法の施行の際、現に貸付事業等権利について電子申込型電子募集取扱業務等を行っている場合には、施行日から6か月以内(又は変更登録までの間)に対応を行う必要があります」(同No.63)とのこと。
ソーシャルレンディングを募集又は私募の取扱い形式で行っている事業者は、特定有価証券等管理行為を実施する場合、新たに信託保全措置を取ることが必要になります。
貸付事業等権利の定義見直し
また、貸付事業等権利の定義にはパブリックコメントに付された、当初の修正案から、明確化を目的とした修正がありました。
金融商品取引法施行令第15条の4の3では「主として金銭の貸付けを行う事業であるもの」「主として貸付債権の取得を行う事業であるもの」「前二号に掲げるものに類するものとして内閣府令で定めるもの」が指定されています。主としてとは、事業に「当該権利を有する者が出資又は拠出をした金銭その他の財産の価額の合計額の百分の五十を超える額を充て」られることです(同No.56)
これを受けた金融商品取引業等に関する内閣府令第6条の4は「令第十五条の四の三第三号に規定する内閣府令で定めるものは、法第二条第二項第三号から第六号までに掲げる権利のうち、当該権利に係る出資対象事業(法第二十九条の二第一項第十号に規定する出資対象事業をいう。第七十条の二第八項及び第百二十五条の二において同じ。)が主として金銭の貸付け又は貸付債権の取得を行う事業であるもの(令第十五条の四の三第一号及び第二号に掲げるものを除く。)とする。」と変更され、定義が明確化されました。
これは金銭の貸付けを行う事業と貸付債権の取得を行う事業を合算した場合に「主として」に該当するケースを想定している(No.55)とのことです。
つまり、「資産の半分超を貸付する場合」、「半分超を充てて貸付債権を買い取る場合」及び「貸付と買い取り債権を併せて資産の半分超になる場合」の3つが、規制対象ということです。
親法人等子法人等の発行する有価証券の留意点
「親法人等子法人等の発行する有価証券の電子申込型電子募集取扱業務が解禁されるにあたって金商業者指針V-2-4-3-1(1)では、金商業等府令第70条の2第2項第2号に規定する審査に関して、「電子申込型電子募集業務等又は親子法人等が発行する有価証券に係る電子申込型電子募集取扱業務等を行う場合にあっては、審査において、外部の有識者が関与することとなっている等、顧客の利益が不当に害されることのないよう必要な措置がとられているか。」が留意事項に追加されているが、これは、電子申込型電子募集業務等や親子法人等が発行する有価証券に係る電子申込型電子募集取扱業務等を行う場合、販売に係る審査に外部有識者が関与する(例えば、募集を行うかを審議する委員会に外部有識者が参加するなど)ことが求められ、当該対応を講じなかった場合には、金商業等府令第70条の2第2項第2号に抵触し得る」ということかとの質問に対して、金融庁は理解の通りと回答しています(同No.66)。
審査過程において外部弁護士(同No.64)などの外部有識者が必須であることが示されました。
自主規制規則の改正
令和6年10月31日付で、一般社団法人第二種金融商品取引業協会から「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」等の一部改正に関するパブリックコメントの結果について」が公表され、政令内閣府令等の改正に関連する自主規制規則も改正になっています。
「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」等の改正についてにおいて、要旨が説明されていますが、「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」の「電子申込型電子募集業務等及び電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」と改められ、いわゆるソーシャルレンディング業態も、同規則で規律されるようになりました。
一方で「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」の改正により、電子申込型電子募集業務も、同規則の適用対象から除外されたことにより、いわゆるソーシャルレンディング業態の適用規則が、従来と変更になった形です。
なお、特定有価証券等管理行為を行わない場合の応募代金の取扱いについて、目標募集額に到達していなくとも事業が開始される場合の取扱いが新設された(「電子申込型電子募集業務等及び電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」第22条第1項ただし書き)ことで、電子申込型電子募集取扱業務及び電子申込型電子募集業務で信託保全をしないことが許容されうるようにも思えますが、実務上の扱いは明らかではありません。
両規則共に、審査・モニタリングに関する事項が細かく変更になっているほか、「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」に関するQ&A及び貸付型ファンドに関するQ&Aも変更になっていますので、従来実務との変更点に留意する必要があります。