2022/04/21
令和4年3月29日付で、新規に日本に参入する外国証券会社のうち一定の要件を満たす者について、英語での登録申請書等の提出等及び一定の事項の監督行政が英語化される改正内閣府令等が施行されました。
これに伴い、金融庁の公開している投資運用業等 登録手続ガイドブックにおいても、新たに「新規・変更登録申請者(第一種金融商品取引業)の概要について(概要書)」、いわゆる概要書が日本語及び英語で公開されています。
今まで第一種金融商品取引業者向けの概要書は公開されていませんでしたが、これで既に公開済みの投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業と並んで金融商品取引業のすべての業態で、概要書がひととおり公開された形となります。
概要書審査
金融商品取引業の登録は、他の単純な許認可と異なり、元来、金融庁や財務局のホームーページに公開されている登録申請書や添付書類の記載例を参考に書類だけ埋めたところで審査の土台にも上りません。もちろん、いきなり書類を揃えて登録申請書を財務局に持ち込んだところで、受理されません。
実際の登録審査は非公式な事前審査書面である「概要書」ベースでなされており、概要書の内容をもとに登録申請に関して内諾が得られ次第、正式な登録申請申請をすることができるという形になっています。
登録の許諾と登録申請はいわば内々定と正式内定のような関係にあり、実体的な登録審査プロセスは非公式な事前審査がそのほとんどを占めています。
公開されていなかった概要書
かつては、財務局に電話をして「概要書を貰う」こと自体が、ある意味で最初のハードルとして機能していました。わかっていない業者が要領を得ない照会をしたところで、事実上、財務局から概要書をもらうことができないため、手続き自体のしようがなかったからです。
それを考えると、今回の概要書の公開は隔世の感があります。
とはいえ、こうした手続きのフレンドリー化の目線はあくまで海外資産運用事業者に向けられていることに注意が必要です。国内の個人向けの事業者に対する審査スタンスは、今も以前とそう違うものではありません。
登録審査の実際
現在、外資系をはじめとする主として機関投資家向けの資産運用事業者の登録審査はかなり速くなっています。他方で、いまだに投資運用業者の登録は長い時間がかかるという認識も世間では広く共有されていて、登録審査が長時間かかるのか、かからないのか、諸説ある状況になっています。
これは、どちらも正解であり、インターネットを利用して公衆に広く投資を募るようなスキームであれば、非常に慎重で長時間の審査がなされるのが通常で、機関投資家向けの事業者であれば審査は速く進むという審査の二極化が、近年ますます強まっているような印象があります。
とりわけ、インターネットを利用した一般投資家向けの第二種金融商品取引業の登録審査は難化が顕著であり、機関投資家や富裕層向けの投資運用業よりも登録難度が高い印象があります。
非常に乱暴な議論ではありますが、以前は、第一種金融商品取引業≧投資運用業>>第二種金融商品取引業>投資助言・代理業という漠然とした登録難度の序列があった気がします。しかし、今はこれが第一種金融商品取引業≧投資運用業=第二種金融商品取引業>>>投資助言・代理業となっているというのが肌感覚です。
そもそも通るのか。という問題
とはいえ、登録審査に時間がかかっても、最終的に登録できればまだいいほうです。
金融商品取引業はあくまで登録ですので、財務局で登録を認めるのはほぼ無理と判断していても、当局が申請希望を無理に止めさせることはできません。そのため、概要書をどうにかもらい提出した業者でも、審査は事実上棚上げされ、通る見込みのない手続きを延々と続けているケースも多く見られます。
今まで、最長で5年間審査が続いている案件を見たことがあります。もっとも、その件は当事務所が関与に入ってから約1年でどうにかなりましたが、一般論としてはそこまで滞留すると基本的には通すのは難しいと思います。
当事務所も、この仕事を長年やっているので、もはや通りそうか通らなそうか、多くの場合には話を少し聞けばすぐわかります。さらにいえば、通らなそうなケースは、何か話す前に相手を見た瞬間わかる場合もあります。