2020/11/27
11月25日の時事通信は、政府のファンド運用業者に関する税制改正方針について報じています。
同記事では、「ファンドマネジャーが自社のファンドの運用成果として報酬を得た場合、金融所得に当たるかどうかが明瞭にされていなかった」とされていますが、実際には、投資運用業者のファンドマネージャーたる個人が給与で得た成果報酬は金融所得に当たらず、給与所得として総合課税の対象です。
これを避けるため、適格機関投資家等特例業務を利用した資産運用ビジネスでは、ファンドマネージャー個人が適格機関投資家等特例業務の届出者となったり、又は有限責任事業組合の有限責任組合員となったうえで、当該有限責任事業組合を適格機関投資家等特例業務届出者とすることにより、運用するファンドの運用収益をファンドマネージャーの個人の金融所得として認識する手法も存在しています。
諸説ありますが、理論上、組合契約に基づく内部的利益分配条項に基づいて、GPに対して分配を行うことにより、当該所得を事業所得たるGP報酬ではなく、金融所得たるGPへの利益分配金として、所得税を20.42%の分離課税とする余地があるためです。
しかし、登録要件の関係上、個人事業主は、投資運用業に登録することができないので、基本的には投資運用業者のファンドマネージャーのパフォーマンス連動給は総合課税されると考えるべきです。
さらには、ファンドマネージャーが、投資運用業者である法人の役員の場合、法人税法上の損金算入要件である定期同額給与の制限から、パフォーマンス連動給は、法人税と所得税の二重課税の対象ですらあります。
これにより、現状、投資収益に対するファンドマネージャーの最終的な実効税率は、最悪の場合、社会保険料等のその他負担とあわせて70%超(法人税率30%台、役員賞与に対する所得税・住民税率55%+社会保険料等)となりかねません。
今般の税制改正(金融庁HP)により、これを20.42%の分離課税とできれば、我が国の資産運用ビジネスの拠点としての利便性は大幅に向上し、外国業者の誘致に有利となります。
資産運用ビジネス活性化のための税制改正に向けては、社会保障負担その他の見えない負担も低率に抑え、実効税率が十分低い水準に留まるような設計が求められます。