行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

金融審議会 「顧客本位タスクフォース」の設置

2022/09/27

金融庁から、令和4年9月22日付で金融審議会 「顧客本位タスクフォース」(第1回)議事次第についてが公表されました。同タスクフォースは同26日に金融庁で開催されています。

議事次第では、はじめに「市場制度ワーキング・グループ中間整理」で打ち出された「Ⅱ.経済成長の成果の家計への還元促進」「Ⅱ.経済成長の成果の家計への還元促進」に関する諸整理を抜粋するとともに、成長の成果の家計還元に向けた総合的アプローチを通じて、家計の資産形成を支える各参加者の機能の底上げすることが必要であると示しています。

顧客本位の業務運営の進捗状況

続いて議事次第では、2017年に公表された「顧客本位の業務運営に関する原則」に基づく業界全体での業務運営の進捗状況に関する確認・分析を実施しています。

金融庁は、金融商品取引業者等を「金融商品の販売者」(金融商品取引業者、金融商品仲介業者及び登録金融機関)及び「金融商品の組成者」(運用会社等)に分けたうえで、現時点で当局が持っている問題意識を明らかにしました。

販売者に対する問題意識(個別商品)

販売者に対しては、商品選定や説明のあり方、提案方法等に課題があると指摘するとともに、いくつかの個別商品についても言及しています。具体的には、仕組債、ファンドラップ、外貨建、一時払い保険について、商品名を名指しする形で問題意識を明らかにしています。

とくに、仕組債については「コスト開示等の観点で商品説明が不十分であるなど、販売態勢や商品性に関する問題点があり、中長期的な資産形成を目指す一般的な顧客ニーズに即した商品としてふさわしいものとは考えにくい。」と評価しており、損失率の裾野が広いこと、安定して高めの利子が得られる債券と誤認されていることなども併せて指摘しています。これらを踏まえ、顧客の真のニーズに沿った販売が行われていない可能性があるとして、ほとんど全否定に近いトーンです。

金融商品の組成者である投資運用業者にとって関係のあるサービスであるファンドラップに関しても「契約金額が小口化していく中、顧客にとって投資一任運用に係る報酬とサービスの対価関係が不明確であり、説明が十分になされていない。」と評価されています。

コストが高いファンドラップほどパフォーマンスが劣る傾向があることや、提供されるサービスがその運用資産残高に応じて徴収されるコスト(約1~2%)に見合っているか疑問であるとしています。ファンドラップは、地域銀行等を含め、緩やかに普及が進むサービスではありますが、金融庁としては仕組債と同じく問題含みのサービスであると評価しているといえます。

また、外貨建一時払い保険についても「運用の側面があるが、他の運用商品との比較説明が行われておらず、顧客のポートフォリオ全体における位置付けが不明確。」とされています。

販売者に対する問題意識(顧客評価)

金融商品取引業者等の全般的な取り組み状況に関する顧客からの評価にも言及しています。

顧客からの苦情に関する動向は、原則制定後も横ばいであること、金融機関からの顧客に対する提案及び他の商品との比較説明に関する消費者調査でも、目立った改善は見られず、総じて金融機関による顧客ニーズに応えるための取組みに十分な改善を見ることは難しい、との評価が下っています。

調査結果も2019年から2021年にかけて顧客の金融機関に対する満足度ははやや減少しているとしています。

組成者に対する問題意識

投資運用業者をはじめとする「金融商品の組成者」に対する評価に関しても、資産運用会社の経営体制(ガバナンス)、開示及びプロダクトガバナンスについて課題に挙げられています。

プロダクトガバナンスに関しては、顧客利益最優先の商品組成、コスト控除後のパフォーマンス検証及び適正なコスト水準の設定・検証が必要と指摘しており、コストがアルファを上回ってしまうファンドが多い現状を問題視しています。

また、資産運用会社のガバナンスについては、日系の大手資産運用会社では、親会社や販売会社等のグループ会社からの独立性が不十分であり、社外取締役には運用関連業務の経験者が少ないという課題が指摘されています。

議論の方向と射程

顧客本位タスクフォース第1回は、顧客本位の業務運営に係る現在の進捗を踏まえ、現状に対する評価を実施し、進捗が芳しくない原因を探り、課題、具体的な方策及びフォローアップ方法等を打ち出すことなどを議論事項としました。

タスクフォースにおける2回目以降の本格的議論はこれからではありますが、現時点で金融庁が、金融商品取引業等の「顧客本位の業務運営に関する原則に基づく業務の遂行状況に関してどのような問題意識を持っているか、本資料には端的にまとめられています。

銀行等の大手金融機関グループや、大手資産運用会社に議論の力点が置かれている印象はありますが、金融商品の販売、組成に携わる金融関係事業者には、中小や独立系事業者も含めて大きな影響が及ぶ内容です。

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