行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

仕組債の販売制限

2022/09/09

令和4年8月25日付の日本経済新聞の報道では、金融庁と証券取引等監視委員会が「仕組み債」について、メガバンクや地域銀行、証券会社などの販売実態を総点検すると報じています。

同記事では、重点検査を通じて問題があれば行政処分も視野に入れるとともに、適合性の原則の原則に照らして、リスク説明に問題がなかったか、立ち入り検査で確認するとしています。

金融行政方針

これに続く、同8月31日付の金融庁の2022事務年度金融行政方針では、同コラムP12の販売会社における顧客本位の業務運営に関する取組状況において「金融庁では、このような状況を踏まえて、今後も販売会社の取組状況について、①経営陣が持続可能な経営戦略を検討し、取組方針において明確化・具体化しているか、②経営戦略に沿った取組みが営業現場に定着し、成果が出ているか、③仕組債の商品性や販売体制に係る問題を踏まえ、顧客の資産形成に資する商品組成・販売・管理等を行う態勢が構築されているかについて重点的にモニタリングを行う。 」として、仕組債の販売管理態勢の適切性を問う姿勢を明らかにしています。

また、同P22においては「地域銀行の金融商品の販売構成を見ると、外貨建て一時払い保険や仕組債といった販売手数料の高いリスク性金融商品の販売が多い先が見受けられ、顧客からの苦情の状況等を踏まえると、真の顧客ニーズに基づく販売が行われているか懸念がある。」「例えば、グループに証券会社がある銀行群とそれ以外に分けて比較すると、前者は後者に比べて仕組債の販売(紹介)の割合が多くなっているなど、販売会社の営業姿勢が、顧客が選択する金融商品に影響している可能性も否定できない」と、地銀系証券会社の仕組債販売についてネガティブな文脈で言及しています。

審議官インタビュー

同9月9日付のブルームバーグは、同日に行われた金融庁の屋敷利紀審議官のインタビューで、仕組債販売に関して、業界全体として自浄作用が働いていなかったという認識を示しました。

立入検査は、3メガバンクや地域金融機関を対象とすることが示されており、顧客本位の業務運営に関する原則に合致した販売となっているかを検証するとしています。

また、屋敷審議官は組成する証券会社においても、銀行における販売の適切性に関して検証する必要がるとの考えを明らかにしています。

仕組債販売問題のフォーカスは明らかに銀行、銀行系証券会社にあり、預金取扱金融機関が仕組債、とりわけEB債等の高リスク商品を十分な説明なく販売している現状に対して、金融庁が強い問題意識をもっていることは明らかです。

霞が関には、電話や投書等を通じて、一般に想像されているよりも遥かに国民の声がダイレクトに届いています。一連の動きは、それだけ、銀行グループによるハイリスクな仕組債の一般投資家への不適切販売事例が多いという現実を反映したものだと思います。

日本証券業協会ガイドライン

こうした金融庁の厳しい考え方を受けて、令和4年9月5日付の日本経済新聞の報道は、自主規制団体である日本証券業協会が、仕組債の販売に関して規制強化に乗り出す方針であると報じています。

日本証券業協会では、平成23年改正の店頭デリバティブ取引に類する複雑な商品に対する自主規制規則においてすでに一定の規制を定めていますが、報道によると、今回「投資勧誘、顧客管理等に関する規則」の第3条第3項「有価証券販売を行う場合、その特性やリスクを十分に把握し、適合する顧客が想定できないものは販売してはならない」の具体例をガイドラインに明記するとされています。

ガイドラインでは、退職金運用及び証券口座を開設したばかりの者を仕組債の販売対象外とするとも報じられており、主に個人投資家の保護に乗り出した格好です。

仕組債を巡っては、既に手数料の開示を巡って日本証券業協会は会員各社に要請を行っていましたが、今回の措置は強制力のない情報開示を超え、自主規制で販売制限を導入することとなりました。ガイドラインの制定が決まれば、証券会社業態の第一種金融商品取引業者には大きな影響があります。

相次ぐ販売停止(2022/9/15 update)

一連の規制当局による規制強化の動きを受けて、銀行業界は敏感に反応しています。

同9月14日付の日本経済新聞の報道では、千葉銀行は全面的に販売を停止し、横浜銀行や広島銀行も一部販売を停止する方向としてます。さらに、同日付のブルームバーグでは、三井住友銀行が7月から個人向けの仕組債の販売を停止、みずほフィナンシャルグループでは、今月13日から仕組み債の一部について取り扱いを停止にしたほか、大手証券会社でも販売体制に関して見直す動きが相次いでいると報道しています。

仕組債販売に注力していた金融商品取引業者等は大手金融機関や銀行系証券会社が中心です。なかでも銀行系証券会社では仕組債販売による収益が全体の8割を超えている例もあると報じられています。

そうしたなかで、仕組債販売の証券業務の収益に占める割合が必ずしも高くなかった有力な金融機関グループから先行し、当局の問題意識に素早く対応している格好になっています。

さらに、同9月15日付のブルームバーグでは、金融庁は、販売を行う証券会社等のみならず、仕組債の発行を取扱っている外資系証券会社が、仕組債の販社となっている国内証券等に対して、十分な情報を開示しているか確認するほか、実質的販売手数料について調査を行う方針であると報じています。

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